著者
平野 勝也 森 孝宏 奥村 雄三 林 純 野村 秀幸 宮永 修 吉松 博信 石橋 大海 柏木 征三郎 稲葉 頌一
出版者
社団法人 日本感染症学会
雑誌
感染症学雑誌 (ISSN:03875911)
巻号頁・発行日
vol.62, no.4, pp.388-392, 1988-04-20 (Released:2011-09-07)
参考文献数
14

27歳の健康な女性がB型肝炎ウイルスによる劇症肝炎を発症したが, 血漿交換を含む治療により救命し得た. 患者の過去3回の献血時の検査ではHBs抗原は陰性で, 輸血歴およびキャリアーの家族歴はないが, HBe抗原陽性のB型慢性肝炎患者の婚約者と発症2ヵ月前から親密な交際があったことから, 婚約者が感染源と考えられた.性行為に伴うB型急性肝炎の発症の報告はみられるが, 劇症肝炎の報告は稀であり, 将来も本例のような劇症肝炎の発症をみることが予想される. B型肝炎の予防対策の一環としてのキャリアーに対する教育上示唆に富む症例と思われたので報告する.
著者
吉松 博信
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.100, no.4, pp.917-927, 2011 (Released:2013-04-10)
参考文献数
10
被引用文献数
6 2

肥満症治療では食事・運動療法が用いられる.しかしその実行と継続は困難で,リバウンドすることも多い.肥満を助長する因子は過食や運動不足以外にも数多く存在する.したがって,肥満症患者一般ではなく,患者固有の問題点をそのライフスタイルの中から抽出し,治療に応用する行動療法的アプローチが必要になる.エネルギーバランスの是正だけでなく,ライフスタイルそのものが変容することで,減量とその長期維持が可能になる.
著者
大隈 和喜 吉松 博信 坂田 利家 足立 和代
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.40, no.3, pp.247-253, 2000-03-01 (Released:2017-08-01)
参考文献数
9
被引用文献数
1

肥満者には荒噛み, 早喰いなどの食べ方の問題点がある.一方, 咀嚼で摂食量が減ることも微証がある.そこで肥満症治療の技法として「咀嚼法」を考案した.「咀嚼法」は1口30回咀嚼させ, その成否を○×で用紙に記録させる.21名の肥満症患者に対し, 日本食化超低エネルギー食, ならびに低エネルギー食を用いた入院減量プログラムに本技法を併用した.入院中本技法を継続することで咀嚼習慣をつけさせた.退院後に追跡調査できた12名の患者を, 退院後さらに減量できた減量群とそうでない非減量群に分け, 治療前後の食べ方や満腹感覚を比較した.その結果, 減量群では咀嚼に代表される食べ方の改善が認められ, 満腹感覚も回復していたことなどが示唆された.
著者
坂田 利家 吉松 博信 桶田 俊光 渡辺 建彦
出版者
大分医科大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1995

糖尿病および肥満糖尿病における代謝異常が脳機能にどのように影響するかを神経ヒスタミン系を指標として解析し、以下の結果が判明した。1)糖尿病モデル動物であるSTZ糖尿病ラットおよびZucker obese ratでは神経ヒスタミンが低下していた。2)レプチンは視床下部神経ヒスタミンの代謝回転を増加させた。3)レプチンの摂食抑制作用は神経ヒスタミンの枯渇化によって減弱した。レプチンの摂食抑制作用の約50%は神経ヒスタミンによって調節されていることが判明した。4)レプチン受容体に異常のあるdb/dbマウス、それにob遺伝子異常によりレプチンが欠如しているob/obマウスでは視床下部ヒスタミンおよびtMH含量が低下していた。Zucker obese ratと同様にレプチンによる神経ヒスタミンの賦活化作用が脱落した結果と考えられた。5)食事誘導性ラットでは体重増加が少ない早期から内臓脂肪蓄積が認められ、血漿中性脂肪値が増加していた。血糖値、インスリン値は後期に上昇し、インスリン抵抗性の出現が脂肪代謝異常に遅れて出現することを示唆している。血中レプチンは肥満早期に増加し、肥満発症後期にも増加していた。6)摂食抑制性の神経ペプチドであるCRHはヒスタミン神経系を賦活化した。摂食促進性のNPYは神経ヒスタミンには影響しなかった。インスリン抵抗性発症因子であるTNF-αも神経ヒスタミンには影響しなかった。7)神経ヒスタミンは脳のGLUT1 mRNA発現を促進した。飢餓状態での脳のGLUT1の発現亢進には神経ヒスタミンが関与していた。8)神経ヒスタミンは中枢性にインスリン分泌を制御していた。9)神経ヒスタミンは中枢性に脂肪組織の脂肪代謝を制御する作用を示した。その作用様式は脂肪分解の亢進と脂肪合成系のACS mRNAとGLUT4 mRNAの発現制御によっていた。神経ヒスタミンの脂肪分解作用は脂肪組織に分枝している交感神経活動促進作用によっていた。10)ヒスタミンの基質であるヒスチジンの投与で神経ヒスタミンの代謝回転とHDC活性が亢進した。ヒスチジンの末梢および脳室内投与で摂食抑制が観察された。ヒスチジンの末梢投与で交感神経系を介した脂肪分解反応が促進された。11)遊離脂肪酸のオレイン酸はヒスタミン系を促進することが示唆された。12)神経ヒスタミンは学習機能に促進的に作用した。糖尿病状態でのヒスタミン機能低下が学習機能低下につながる可能性が示された。以上、糖尿病でみられる脳機能異常の可能性について神経ヒスタミンを指標に解析し、神経ヒスタミンの動態には血糖値、インスリン値だけでなく、レプチンやアミノ酸、脂肪酸など種々の代謝成分が関与していることが判明した。またそれらの情報を受けたヒスタミン神経系は食行動を調節するだけでなく、脳内の糖代謝や自律神経系を介する末梢の脂肪代謝調節に積極的に関与していることも明らかになった。
著者
吉松 博信 加隈 哲也 正木 孝幸
出版者
大分大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

ストレスと肥満症における脳内神経ヒスタミン機能を明らかにするために、平成22年度は以下のような研究成果をあげた。1)痛覚ストレスおよび情動ストレスは負荷後24時間の1日摂食量を有意に減少させた。2)4時間拘束ストレスは負荷後24時間の1日摂食量を減少させた。3)飢餓ストレスとしての72時間の絶食負荷後、再摂食時の摂食量はストレス負荷前の摂食量と比べ有意に減少した。4)インスリン誘発性低血糖はインスリン投与後2時間の摂食量を有意に増加させた。5)寒冷ストレスは食行動に影響しなかった。6)tail pinchによるストレス負荷は食行動を誘発した。以上の実験結果から各種ストレスは主に摂食行動を抑制する方向で作用するが、寒冷ストレスは効果がなく、tail pinchは食行動促進性に作用するなど、ストレスの種類にともない反応が異なることが確認された。現在これらのストレスの慢性負荷による影響を検討している。また3),4)より飢餓ストレスの効果は低血糖などのエネルギー欠乏が直接原因ではなく、エネルギー欠乏によって生じる神経ヒスタミンの増加など、他の要因の関与があることが示唆された。そこで、ストレスと神経ヒスタミンに関して以下のことを明らかにした。7)拘束ストレスによる食行動抑制反応はヒスタミンH1受容体欠損マウスでは有意に減弱した。8)拘束ストレスは視床下部において、ヒスタミン合成酵素であるhistidine decarboxylase (HDC)のタンパク量を有意に増加させた。9)拘束ストレスは視床下部の神経ヒスタミン代謝回転を有意に増加させた。10)寒冷ストレスは視床下部のHDCタンパク量を有意に増加させた。以上より、拘束ストレスによる摂食抑制作用は神経ヒスタミンを介していることが明らかになった。他のストレスによる神経ヒスタミンの動態変化を現在解析中である。
著者
佐藤 愛子 穴井 博文 和田 朋之 濱本 浩嗣 嶋岡 徹 首藤 敬史 坂口 健 後藤 孔郎 吉松 博信 宮本 伸二
出版者
特定非営利活動法人 日本心臓血管外科学会
雑誌
日本心臓血管外科学会雑誌 (ISSN:02851474)
巻号頁・発行日
vol.39, no.4, pp.187-190, 2010-07-15 (Released:2010-10-26)
参考文献数
6

僧帽弁閉鎖不全症,三尖弁閉鎖不全症の術後に著しい低血圧,低血糖を来たし,精査の結果副腎皮質刺激ホルモン(adrenocorticotropic hormone,以下ACTH)単独欠損症が判明した症例を経験した.症例は59歳,男性.下腿浮腫の精査を行ったところ弁膜症を指摘され薬物治療を受けていた.急性心不全を来たしたため僧帽弁形成術,三尖弁弁輪縫縮術およびMAZE術を行った.人工心肺離脱したがその直後より低血圧を呈し,輸液負荷,カテコラミン投与を行うも収縮期血圧が40 mmHgより上昇しなかった.アナフィラキシーショックを考慮しバソプレッシンとヒドロコルチゾン投与行ったところ血圧改善を認めた.術後12日目,低血糖による意識障害を起こし,糖大量持続投与にもかかわらず低血糖発作を繰り返した.精査にてACTH単独欠損症と判明した.ヒドロコルチゾン20 mg内服開始したところ血圧,血糖改善し経過良好である.
著者
大石 明 勝 正孝 坂内 通宏 仲村 秀俊 石井 昌俊 井上 亨 福井 俊夫 青崎 登 吉松 博 奥井 津二
出版者
公益社団法人 日本化学療法学会
雑誌
CHEMOTHERAPY (ISSN:00093165)
巻号頁・発行日
vol.40, no.2, pp.327-332, 1992

ME 1207の基礎的および臨床的検討を行い以下の知見を得た。基礎的検討での本剤の抗菌力はグラム陽性菌 (<I>Staphylococcus aureus, Staphylococcus epidermidis, Streptococcus pyogenes, Streptococcus pneumoniae</I>等6菌種) およびグラム陰性菌 (<I>Escherichia coli, Citrobacter freundii, Enterobacter cloacae, Serratia marcescens</I>等11菌種) に対してcefteramと同等またはそれ以上の抗菌力を示した。臨床的検討では急性咽頭炎6例, 急性気管支炎5例 (男4人, 女7人, 年齢24~82歳) に対し本剤を1日600mg分3で2~13日間投与し, 著効3例, 有効6例, 無効1例, 不明1例であった。副作用として嘔吐が1例, 臨床検査値の異常変動としてGOT・GPTの上昇が1例で認められた。
著者
吉松 博信 坂田 利家
出版者
The Japanese Society of Internal Medicine
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.90, no.5, pp.902-913, 2001-05-10
被引用文献数
9 3

肥満症や肥満2型糖尿病の治療に食事療法と運動療法は欠かせない.しかし,継続して実行するとなると,多くの患者は治療から脱落し失敗する,肥満症患者特有の認知能,食行動,ライフスタイルと言った壁に阻まれ,患者はそれを凌駕出来ないからである.なかでも,その主体をなすのが食行動の「ずれ」と「くせ」である.栄養学的な知識だけで患者教育をしたり,それで効果がなければ疾患の怖さを武器に説得したり,言い換えると知識量による防御だったり,患者の恐怖感を煽るといった操作では,これらの障害を克服することは難しい.治療者に授けた知識そのものが「ずれ」と「くせ」に取り込まれ,患者の行動変容には結びつかないからである.治療者の役割として大切なことは,自分の食行動の問題点,具体的には「ずれ」と「くせ」に患者が自ら気付き,しかも治療経過の中でそれらを修復できるような治療的枠組みをどのように創っていくか,この一点にある.このような目的のために編み出された治療技法,その一つが「グラフ化体重日記」である.問題になる食行動の抽出,その修復,波形化されて描出される体重減少という報酬,この繰り返しが治療動機の向上とその長期的維持を可能にする.「咀嚼法」は満腹感の形成を促す.その結果,お腹がはち切れる程食べないと満腹出来ないと思い込んでいた患者に,摂取量は少なくても満腹できるのだと実感させることが出来る.つまり,肥満症患者の満腹感覚の「ずれ」を修復するのに有効な手段である.知識量の増加ではなく,患者自身が感じ取る感覚の修復,これこそが逸脱した脳機能を修復する最短距離なのである.
著者
清水 信義 寺本 滋 人見 滋樹 伊藤 元彦 和田 洋巳 渡辺 洋宇 岩 喬 山田 哲司 山本 恵一 龍村 俊樹 山口 敏之 岡田 慶夫 森 渥視 加藤 弘文 安田 雄司 三上 理一郎 成田 亘啓 堅田 均 鴻池 義純 福岡 和也 草川 實 並河 尚二 木村 誠 井上 権治 門田 康正 露口 勝 宇山 正 木村 秀 香川 輝正 斉藤 幸人 武内 敦郎 森本 英夫 垣内 成泰 横山 和敏 副島 林造 矢木 晋 西本 幸男 山木戸 道郎 上綱 昭光 長谷川 健司 山田 公彌 岡本 好史 中山 健吾 山内 正信 佐々木 哲也 毛利 平 江里 健輔 宮本 正樹 森田 耕一郎 平山 雄 中川 準平 吉松 博 村上 勝 永田 真人 溝口 義人 大田 満夫 原 信之 掛川 暉夫 枝国 信三 足達 明 富田 正雄 綾部 公懿 川原 克信 西 満正 島津 久明 三谷 惟章 馬場 国昭 岡田 浪速 内藤 泰顯 櫻井 武雄 岡田 一男 西村 治 前部屋 進自 前田 昌純 南城 悟
出版者
日本肺癌学会
雑誌
肺癌 (ISSN:03869628)
巻号頁・発行日
vol.31, no.7, pp.1011-1019, 1991-12-20
被引用文献数
1

西日本地区30施設の共同研究により,肺癌の治癒切除例に対する補助化学療法の有用性を検討した.このtrialが終了した後5年の観察期間が経過したのでその成績を報告する.対象は絶対的治癒切除,相対的治癒切除となった肺腺癌であり,A群はMMC(20+10mg)+tegafur600mg1年間経口投与,B群はMMC(20+10mg)+UFT400-600mg1年間経口投与とした.1982年11月から1985年11月までにA群113例,B群111例の計224例が集積された.不適格例が43例であり,A群88例,B群93例を解析対象とした.背景因子には差は認めなかった.成績は5年生存率および5年健存率で検討した.両群の全症例の5年生存率はA群64.3%,B群55.6%で有意差は認めず,健存率でも差はなかった.後層別解析で,N2症例において5年生存率および5年健存率とも,B群が良好であった(p=0.029,p=0.048).