著者
秋葉 秀一郎
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.51, no.6, pp.546-550, 2015 (Released:2018-08-26)

現在,日本の医療の現場では多くの医師,薬剤師が漢方薬を扱っており,医療保険が適用される漢方薬も150種を超え,非常に幅広く漢方薬が用いられている.漢方薬にはエキス剤と煎じ薬があるが,いずれも医療保険が適用される.これらのエキス剤や煎じ薬は処方にしたがった生薬の組合せにより構成されている.日本で使用される漢方薬の原料となる生薬の80%以上は中国からの輸入によって賄われており,また,生薬の種類によっては100%中国からの輸入に頼っているものも多く存在する.しかし,供給国である中国における経済成長や世界レベルでの漢方薬のニーズが高まり,漢方薬の需要は増加している.さらに需要増を見込み,投機目的に生薬が取り引きされ,ここ数年における生薬の価格は著しく高騰している.筆者は漢方薬や生薬製剤などの企業団体である日本漢方生薬製剤協会(以下,日漢協)に所属し,原料生薬の流通に関する活動を行っており,原料生薬の使用量調査を実施した.その活動の中から,原料生薬の流通の現状と課題について紹介する.
著者
木村 通男
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.54, no.9, pp.882-886, 2018 (Released:2018-09-01)
参考文献数
4

今回のAIブームは実は3回目で、2回目の80年代の時にも、医療職はAIに取って変わられるのではと言われた。 2回目のブーム以後、生き残ったシステムは画像認識、音声認識などで、処理能力、データの細緻化により、いま、花を咲かせつつある。 今回の技術的ブレークスルーはディープラーニングであるが、それによる診断には、根拠を示すことが難しい。問題はそれを患者が受け入れるかである。 一方、病気は患者の個性そのものであり、個性に対応することはまさに創造的な行為なのである。 これを念頭に、機械にできることは機械に任せ、新しい職能を常に探せ、と、前回のブームの際、30年前に賢者はすでに記している。
著者
山崎 真巳
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.55, no.7, pp.671-673, 2019 (Released:2019-07-01)
参考文献数
8

最近急速に進んだゲノム科学技術の発展により、植物における有用アルカロイド生合成についても、その特異な物質代謝がどのように進化してきたかに関するゲノムレベルでの解明が進んでいる。筆者らが明らかにしてきたアルカロイド生産の方向決定ステップを触媒する酵素の分子進化、ならびに毒性アルカロイドを生産する植物の自己耐性の分子進化について紹介し、今後の新しい生合成のデザインを目指した展開について説明する。
著者
陰山 卓哉 木下 正行 塩見 幸雄 谷 直樹 羽田野 泰彦 渡邉 昭彦
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.54, no.2, pp.111-117, 2018 (Released:2018-02-01)

前回の座談会では,産学のデスバレイをつなぐ役割を担うアーリー・アクセラレーターの方に,アカデミアシーズの実用化・事業化に向けて,アカデミアシーズの課題,アーリー・アクセラレーターのハンズオン事例等,議論いただいた(本誌53-12ベランダ).今回の座談会では,AMED,製薬企業の事業開発,創薬ベンチャー,TLOの方に,同じく,アカデミアシーズの実用化・事業化に向けて,アカデミアシーズの課題,さらには,多くのプレイヤーが揃ってエコシステムが生まれるためにやるべきこと,政府の支援策について討論いただいた.
著者
池田 幸弘
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.52, no.11, pp.1070-1071, 2016 (Released:2016-11-01)

田辺三菱製薬のルーツをたどると,1678年(延宝6年)初代田辺屋五兵衛が,大坂土佐堀で独立開業し,「田辺屋振出薬」を製造販売したことから始まる.300年をゆうに超える,日本はおろか世界でも屈指の老舗製薬企業である.しかし,さらに遡ると,その祖父・田辺屋又左衛門は,1604年に朱印船でルソンや東南アジア諸国と交易して様々な薬種を輸入していたというから,薬にかかわる実に長い歴史を有している.
著者
田中 庸一
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.52, no.12, pp.1161, 2016 (Released:2016-12-01)
参考文献数
4

6-メルカプトプリン(6-merca-ptopurine:6-MP)やアザチオプリンなどのチオプリンは,急性リンパ性白血病(acute lympho-blastic leukemia:ALL)や炎症性腸疾患の治療の中で主要な薬剤の1つとなっている.しかし,チオプリンへの治療感受性には個人差が大きく,患者によっては治療の中断や投与量の大幅な減量を必要とする場合がある.そのため,チオプリン感受性について患者要因の探索が行われてきており,欧米人ではチオプリン代謝酵素の1つであるチオプリンS-メチルトランスフェラーゼ(thiopurine S- methyl transferase:TPMT)の活性がその因子となっている.しかし,アジア人ではTPMT活性低下の頻度が低いため,他の遺伝要因の探索がゲノムワイド関連解析によって行われた.近年,NUDT15遺伝子多型がアジア人においてチオプリンによる骨髄抑制の重篤化に関連することが報告された.本稿では,NUDT15遺伝子多型によるチオプリン感受性変化と,そのメカニズムを示した論文について紹介する.なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.1) Relling M.V. et al., Clin. Pharmacol. Ther., 93, 324-325 (2013).2) Yang S. K. et al., Nature Genet., 46, 1017-1020 (2014).3) Yang J. J. et al., J. Clin. Oncol., 33, 1235-1242 (2015).4) Moriyama T. et al., Nature Genet., 48, 367-373 (2016).
著者
森山 無価 大野 京子
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.50, no.3, pp.193-195, 2014 (Released:2016-04-19)
参考文献数
9

近視は欧米に比してアジア諸国で頻度の高い疾患であり,特に我が国は世界有数の近視国である.近視人口は年々増大傾向にあり,視覚障害の原因としても大きな割合を占めている.近視の薬物治療については,大きく近視進行の抑制と近視による合併症の治療とに分けられ,前者はまだ保険適応でないものが多いが,後者については近年保険適応となった薬剤も出てきた.本稿では,最近注目されている近視治療に用いられる薬剤に焦点を当てて概説する.
著者
野田 博之
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.55, no.2, pp.111-115, 2019 (Released:2019-02-01)
参考文献数
22

薬剤耐性(AMR)対策の本質は、「耐性菌蔓延の防止」と「抗菌薬開発の促進」に収斂される。抗菌薬開発が耐性菌蔓延に追いつかれないようにするために、利益に至るまでの期間を短くする施策を通して、引き続き、製薬企業が抗菌薬を開発しつづけられるよう支援を進めるとともに、医療関係者及び患者やその家族に対する啓発を進めることで、感染症の適切な診断と抗菌薬の適切な使用を進めていくことが求められている。
著者
伊藤 智夫
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.50, no.12, pp.1232-1233, 2014

この原稿依頼を受けたとき,まず50年前の日本を考え,東京オリンピックが開催された年であることを思い出した.当時はカラーテレビが普及し始めた頃であったが自宅は白黒テレビだったし,また我が家には電話がなく,近くの家で電話を借りていたことを覚えている.現在は4Kテレビが普及し始め,個人がスマートフォンを持っていることを考えると隔世の感がある.一方,当時は1ドル360円の時代で海外旅行は夢のまた夢であり,「兼高かおる世界の旅」を羨ましく思いながら見ていた.今では学生でも気軽に海外旅行をしているが,50年前には想像できなかったことである.ところで,19世紀は化学の世紀,20世紀は物理学の世紀,そして21世紀は生命科学の世紀と呼ばれている.今世紀は脳科学の時代,あるいはロボット科学の時代とも言われる.以上を踏まえて,50年後の薬学教育を考えてみたい.
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.52, no.5, pp.374-375, 2016

特集にあたって:原薬の物理化学的性質を把握し,得られた情報に基づき原薬形態と製剤の双方を適切に設計することは,優れた医薬品を創出するための極めて重要な課題の一つである.今回の特集号は,原薬の結晶形に注目した5年前の「クリスタルエンジニアリング」(47巻11号)の続編として企画した.共結晶や固体分散体といった低分子医薬品の結晶・粉体研究と製剤への応用など医薬品開発における最前線の研究とともに,製薬企業における製剤設計戦略について,本分野の第一線で活躍されている先生方に最新の情報を交えながら解説いただいた.本特集号が原薬から製剤設計に至る道筋を今一度考える機会となれば幸いである.表紙の説明:昨年,日本薬学会広報委員会がマスコットキャラクターを公募し,191作品の中から「長井博士」(ながいはかせ)と「ドリン君」(どりんくん)が選ばれた.今回が本誌デビューとなるご両名には,製剤中における有効成分の固体分散体化による溶解性改善メカニズムを解説いただいた.ゆるキャラグランプリ(ゆる-1)の頂点を目指し,彼らの今後の活躍に注目していきたい.
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.52, no.9, pp.818-819, 2016 (Released:2016-09-02)

特集にあたって:近年,様々な分野で「大麻・カンナビノイド」が注目を浴びつつある.大麻はもちろん大麻取締法で規制される依存性薬物であるが,医療用大麻は日本以外では鎮痛や食欲増進,吐き気の緩和などを目的に使われているのも事実である.そこで本特集号では大麻草や内因性カンナビノイドシステムの現況をより深く知り,米国での医療用大麻使用や社会問題化した危険ドラッグの実情に迫るとともに,創薬標的としてカンナビノイドCB1,CB2受容体に焦点を当て,化学系・生物系・医療系など多分野の先生方にご執筆いただき,分野横断的な特集とした.表紙の説明:近年,大麻草(右下)に注目(一筋の光り)が集まりつつある.医療用大麻は世界では欠かせない医薬品になりつつあり,大麻の主要成分であるΔ9-THC(左手上の化合物)が特異的に作用するカンナビノイドCB1,CB2受容体(イラスト)は新たな創薬標的として研究が進むが,カンナビノイド受容体は危険ドラッグ(右手)の作用点でもあり,影の部分があることも否めない.
著者
小泉 裕久
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.52, no.3, pp.246-247, 2016 (Released:2016-03-01)

キャベツ汁中から発見されたメチルメチオニンスルホニウムクロリド(MMSC)を配合した総合胃腸薬「キャベジンコーワ」は、1960年2月の発売から55年が経ち、現在では8代目となる「キャベジンコーワα」を販売するに至った。古くて新しい胃腸薬として、これからも生活者の皆さまの期待に応えていきたい。
著者
小尾 紀行
出版者
公益社団法人日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.46, no.9, 2010-09-01