著者
若森 晋之介
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.59, no.6, pp.558, 2023 (Released:2023-06-01)
参考文献数
3

近年,酵素工学やゲノム解析・バイオインフォマティクスが大きく進展し,学術界や産業界では,目的に応じた酵素を開発できるようになっている.酵素は高い基質特異性を示し,温和な条件下で化学・立体選択的反応を促進するため,グリーンケミストリーの観点から望ましい触媒である.その一例としてシトクロムP450が注目されており,化学合成とシトクロムP450改変体を組み合わせた複雑な天然有機化合物の全合成も報告されている.最近,アリロマイシン類のコア骨格を構築可能なP450改変体の開発がMolinaroらによって報告されたので紹介する.なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.1) Heckmann C. M., Paradisi F., ChemCatChem, 12, 6082–6102(2020).2) Zhang X. et al., Science, 369, 799–806(2020).3) Molinaro C. et al., J. Am. Chem. Soc., 144, 14838–14845(2022).
著者
長田 裕臣
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.50, no.2, pp.108-111, 2014 (Released:2016-04-05)

薬学出身でありながら他分野で活躍されている方にインタビューするコラム「薬学がくれた私の道」,今回はロックバンドACIDMANを率いるミュージシャンの大木伸夫さんのご登場です.
著者
小西 恵地
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.59, no.4, pp.323_2, 2023 (Released:2023-04-01)

私は卒業研究を通して研究の楽しさに目覚め、人に道を志すきっかけを与えられる研究者になるという『夢』を持った。長井記念薬学研究奨励支援事業の採択は自身の夢を叶える大きな手助けになった。経済的な負担が軽減され、研究に専念できたおかげで良い成果が得られた。博士課程を修了することができ、大学教員になれたのは本支援の賜物である。これから進学を考えている皆様も、大きな夢を持って博士課程に臨んで頂きたいと思う。
著者
長谷川 秀樹
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.55, no.11, pp.1054-1057, 2019 (Released:2019-11-01)
参考文献数
19

インフルエンザは,我が国では毎年冬に流行する.ワクチンが導入され,毎年数千万人の国民が秋から冬にかけて接種しているが,その流行は止まらず毎年繰り返されている.それではなぜ,高いワクチン接種率にもかかわらず毎年のインフルエンザの流行が起こるのか.その解答は,ワクチン接種によって誘導されるヒトの免疫とその働き方にあると思われる.それは,ワクチン接種により誘導される血中の抗体がインフルエンザワクチンの感染防御にあまり有効でないため,起こると考えられる.そこで,インフルエンザの予防に関しては新しいアプローチが必要であり,より良く効き,流行曲線を下げる効果のある新しいワクチンが必要である.現行のワクチンは,インフルエンザウイルスの感染阻止には不十分であり,感染の場である上気道粘膜上に感染を阻止し得る粘膜免疫を誘導する必要がある.その際,経鼻インフルエンザワクチンは粘膜免疫を誘導する強力なツールになる.本稿では,新たなワクチンデリバリーシステムとして粘膜免疫を誘導する不活化経鼻インフルエンザワクチンについて概説する.
著者
本島 玲子
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.48, no.11, pp.1072-1076, 2012-11-01 (Released:2016-12-16)
被引用文献数
1
著者
伊藤 真二
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.52, no.9, pp.879, 2016 (Released:2016-09-02)
参考文献数
3

ハイスループットスクリーニング(high throughput screening:HTS)は合成展開の種となるヒット化合物を効率的に見いだす手法として確立されているが,タンパク質との共有結合や化合物の凝集,アッセイ系におけるシグナル検出への干渉等に起因する偽陽性が結果の解釈を難しいものとしている.本稿ではイーライリリーのGaoらによるメチルトランスフェラーゼ(methyltransferase:MTase)阻害剤探索の事例を紹介し,偽陽性に惑わされずに真のヒット化合物を取得するための方法論について議論したい.なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.1) McGovern S. L. et al., J. Med. Chem., 45, 1712-1722 (2002).2) Baell J. B. et al., J. Med. Chem., 53, 2719-2740 (2010).3) Gao C. et al., ACS Med. Chem. Lett., 7, 156-161 (2016).
著者
中島 健一
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.50, no.5, pp.445, 2014 (Released:2016-06-21)
参考文献数
4

ホップHumulus luplusはビール原料の1つとして,その雌株の毬花が風味付けや保存性向上のために利用されている.ビール特有の苦味は,主にフムロンや醸造中に変換されるイソフムロン等の苦味成分によるものである.本成分の存在は古くから知られていたが,昨年,遂に絶対構造の決定が成された.同様にホップの主成分であるキサントフモール(xanthohumol:XH,図1)に関する研究も興味深い.XH は,カルコン誘導体であり,がん予防効果について盛んに研究が行われてきた.Legetteらは,高脂肪食を与えた雄の肥満モデルラットにおいて,6週間XHを投与したところ,体重増加と空腹時血糖値上昇を有意に抑制することを報告したが,最近,その作用に関するさらなる研究が報告された.なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.1) Urban J. et al., Angew. Chem. Int. ed., 52, 1553-1555 (2013).2) Legette L. L. et al., Phytochemistry, 91, 236-241 (2013).3) Kirkwood S. J. et al., J. Biol. Chem., 288, 19000-19013 (2013).4) Krajka-Kuzniak V. et al., Toxicol. In Vitro, 27, 149-156 (2013).
著者
中村 慎吾
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.55, no.11, pp.1068-1070, 2019 (Released:2019-11-01)
参考文献数
1

Veritas In Silicoは、あらゆるmRNAに対し効率的に分子標的創薬を実現する機会をパートナー製薬会社へ提供する。この創薬事業の根幹の一つは、mRNAの部分構造を高速に予測・解析・評価するコンピュータ技術である。適切な作業仮説をおいた上で仮想的な測定器として用い、部分構造の存在確率を計算することで標的として利用可能な部分構造を特定する。これにより、標的が枯渇しつつある低分子創薬事業へ大量の新規な優良標的を供給でき、First in Classの創出に貢献する。
著者
深谷 知宏
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.52, no.6, pp.559, 2016 (Released:2016-06-01)
参考文献数
2

亜麻仁油はアマ科植物であるアマ(Linum usitatissimum)の種子から搾油・精製される油であり,ω-3脂肪酸の1つであるα-リノレン酸(ALA)を豊富に含むことが知られている.このALAは体内でエイコサペンタエン酸(EPA)やドコサヘキサエン酸(DHA)に代謝されるが,これらは抗アレルギー効果や抗炎症効果を持つことが明らかとなってきている.しかしながら,これらω-3脂肪酸代謝物の食物アレルギーにおける役割についてはあまり解析が進んでいない.今回,Kunisawaらは亜麻仁油の摂取で増加するCYP経路依存的EPA代謝物の17,18-エポキシエイコサテトラエン酸(17,18-EpETE)を食物アレルギー抑制物質として同定したので紹介する.なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.1) Buckley C. D. et al., Immunity, 40, 315-327 (2014).2) Kunisawa J. et al., Sci. Rep., 5, 9750 (2015).
著者
北岡 志保 古屋敷 智之
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.53, no.7, pp.681-685, 2017 (Released:2017-07-01)
参考文献数
23

うつ病患者の末梢血で炎症関連分子の上昇や好中球や単球など免疫細胞の増加が報告されている。また、社会ストレスはうつ病のリスク因子であり、ヒトや動物のストレスモデルでも、炎症関連分子が上昇し、免疫細胞が増加する。本稿では、ストレスによる炎症性サイトカインやプロスタグランジンといった炎症関連分子の誘導と免疫細胞の増加、それらのうつ症状への関与と働きについて、ヒトおよび動物のストレスモデルを用いた前臨床研究やうつ病患者を対象とした臨床研究から得られた知見を紹介する。
著者
高橋 圭太
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.50, no.10, pp.1029, 2014 (Released:2016-09-30)
参考文献数
3

女性の第二次性徴の発現を促す女性ホルモンとして知られるエストロゲンは,その他にも骨代謝や心臓血管系への作用等の幅広い生理活性を有している.臨床では,更年期障害の治療に用いられているが,乳がん誘発等の副作用があるため使用は制限される.なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.1) Acconcia F. et al., Mol. Biol. Cell., 16, 231-237 (2005).2) Adlanmerini M. et al., PNAS, 111, E283-290 (2014).3) Hammes S. R., Levin E. R., Endocrinology, 152, 4489-4495 (2011).
著者
米澤 龍
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.58, no.7, pp.729, 2022 (Released:2022-07-01)
参考文献数
2

糖尿病(DM)治療薬であるナトリウム依存性グルコース輸送体(sodium glucose co-transporter: SGLT)2阻害薬は,DMの有無にかかわらず,駆出率低下型の心不全(heart failure with reduced ejection fraction: HFrEF)の患者の心血管死亡または心不全悪化のリスクを低減させることが報告され,エンパグリフロジン,ダパグリフロジンの2剤に2021年心不全の適応が追加となった.例えば,DAPA-HF試験において,DM合併の有無にかかわらず心収縮能が低下した心不全患者に対してダパグリフロジンを追加することで有意に心血管死,心不全を抑制することが明らかとなっている.一方で,左室駆出率が保たれた心不全(heart failure with preserved ejection fraction: HFpEF)は,心不全患者のうち30~60%を占め,有病率は高齢化に伴い増加傾向にある.HFpEFの患者は身体的制限も大きくなり,症状や身体機能,QOLの維持・改善は重要な治療目標になるが,これらの治療目標に対するSGLT2阻害剤の効果は明らかではない.本稿では,2型DMの有無を問わず,HFpEFの患者に対して,ダパグリフロジンを投与することで症状,身体制限および運動機能が改善するかを検証したPRESERVED-HF試験の結果を紹介する.なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.1) McMurray J. J. V. et al., N. Engl. J. Med., 381, 1995-2008(2019).2) Nassif M. E. et al., Nat. Med., 11, 1954-1960(2021).
著者
栗本 慎一郎
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.52, no.2, pp.176, 2016 (Released:2016-02-23)
参考文献数
3

肥満は,がん,糖尿病,循環器疾患などの多くの生活習慣病のリスクファクターであることが知られている.しかしながら,世界規模で肥満人口は増加の一途をたどっており,肥満人口の最も多い米国では,成人の3人に1人が肥満(BMI≧30:国際基準)と言われている.我が国でも,成人男性の約3割,成人女性の約2割が肥満(BMI≧25:日本肥満学会基準)に該当し,健康寿命の延伸や生活習慣病の発症ならびに重症化の予防を目指す上で,肥満人口の減少は大きな課題の1つとなっている.肥満病態の形成に最も密接に関わるのが食習慣であり,それゆえ,食事を通じた肥満の予防・改善を目指した研究が盛んに行われている.ローズマリー(Rosmarinus officinalis L.)はシソ科の多年草であり,香辛料やハーブとして用いられているほか,抽出エキスは食品添加物や記憶力を高めるサプリメントとして利用されている.本稿では,Zhaoらによるローズマリーの抗肥満作用とその活性成分に関する研究を紹介する.なお、本稿は下記の文献に基づいて、その研究成果を紹介するものである。1) Zhao Y. et al., J. Agric. Food. Chem., 63, 4843-4852 (2015).2) Harach T. et al., Planta Med., 76, 566-571 (2010).3) Ibarra A. et al., Br. J. Nutr., 106, 1182-1189 (2011).
著者
五野 由佳理
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.56, no.3, pp.218-222, 2020 (Released:2020-03-01)
参考文献数
16

頭痛,めまいは日常診療においてよく遭遇する症状の1つである.2013年の「慢性頭痛診療ガイドライン」において5つの漢方薬が記載されているが,めまいのガイドラインにおいては,漢方薬の記載がないのが現状である.頭痛では,片頭痛や緊張型頭痛など慢性頭痛に漢方治療が適応となる場合が多く,鎮痛薬の乱用による頭痛(薬物乱用頭痛)に陥らないためにも,漢方薬の介入が必要となる場合も少なくない.めまいにおいても,難渋し反復する場合には漢方治療を試みる価値がある.
著者
佐藤 文彦
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.57, no.8, pp.721-725, 2021 (Released:2021-08-01)
参考文献数
26

生薬オウレンは、Coptis japonica Makinoおよび同属植物の根茎であり、局方では乾燥物当たりベルベリン [BBR]4.2%以上が要求されている。生薬以外にBBR生産を目的として細胞培養が活発に研究されてきた。また、ベンジルイソキノリンアルカロイド(BIA)生合成系とBBR生合成系は共通することから、精力的な研究により、多くの遺伝子が単離同定され、代謝工学や合成生物学に展開されている。あわせて、生薬由来の新規な薬理活性探索(創薬)についても紹介する。