著者
網井 秀樹
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.50, no.1, pp.19-23, 2014 (Released:2016-02-01)
参考文献数
24

有機フッ素化合物は,医薬,農薬,液晶材料,高分子材料など様々な産業分野で利用されている.特に,医薬開発において有機フッ素化合物が果たす役割は大きい.現在販売されている医薬品化合物のうちフッ素を含むものは約150種類に上り,全体の2割を占める.中でも,芳香族トリフルオロメチル化合物の利用は顕著である(図1).トリフルオロメチル基を有機分子に導入することにより,1)疎水性の向上,2)強い電子求引性,3)置換基としての特徴的な大きさ,4)酸化的代謝の抑制(強固なC-F結合)などが賦与できる.その結果,薬理効果の発現,生体内での吸収/輸送の改善,作用選択性の向上が期待できる.高度に官能基化された芳香族母核に対し,トリフルオロメチル基を直接導入する手法は,ドラッグ・スクリーニングや新規材料化合物開発等の観点から非常に有用である.本稿では,国内外で活発に研究が行われている芳香族トリフルオロメチル化反応についての研究動向を紹介する.
著者
三宅 貴子
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.50, no.2, pp.154-155, 2014 (Released:2016-04-05)

効能効果:便秘成分分量:100g中,日局グリセリン50.0g,添加剤 ベンザルコニウム塩化物,溶液 精製水用法用量:12歳以上1回1個30gまたは40g,6歳以上12歳未満1回1個20g,1歳以上6歳未満1回1個10g,1歳未満1回10gの半量5gを直腸内に注入する.効果のみられない場合は,さらに同量をもう一度注入する.

2 0 0 0 OA 女性のうつ病

著者
松島 英介 市倉 加奈子
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.53, no.10, pp.984-988, 2017 (Released:2017-10-01)
参考文献数
24

うつ病は男性に比べ女性に多い精神疾患であるが、これには生物学的、心理社会的、人為的要因が関係しているといわれている。また、女性のうつ病の臨床的特徴としては、非定型的症状が多かったり、疼痛などの身体症状や不安を多く訴えたり、精神運動制止や社会的役割における機能障害が目立つ。こうした女性のうつ病患者の薬物治療に際しては、体重増加、高プロラクチン血症、性機能障害などに注意し、Quality of Life(QOL)を念頭においた対応が必要である。
著者
井川 和宣 友岡 克彦
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.56, no.5, pp.411-415, 2020 (Released:2020-05-13)
参考文献数
13

ケイ素は地球上に潤沢に存在し,かつ,炭素と同様に四面体構造を形成する.しかしながら,科学が進歩,多様化した現代においてもなお,ケイ素を含む医薬品(以下,ケイ素医薬品と称する)の開発研究はごく限られている.本稿では,これまでケイ素医薬品の開発が困難であった理由について論じるとともに,その問題の一つの解として我々が着目している「キラルケイ素分子の利用」を提唱し,また,不斉合成の実際と生物活性について紹介する.
著者
飯田 理文
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.54, no.5, pp.425-429, 2018 (Released:2018-05-01)
参考文献数
12

高分子医薬品の中でも抗体医薬品は特徴的な薬物動態を示し、抗体と抗原の量的関係を考慮した薬物動態モデルが用いられる。両者の関係性は薬効にも関連しており、投与量の設定にも応用されている。これらについて理論的な背景と実例をもとに解説した。
著者
方 凌艶 國屋 敬章
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.55, no.10, pp.949-953, 2019 (Released:2019-10-01)
参考文献数
18

ニューロンおよびグリア細胞を生み出す前駆細胞を神経幹細胞と呼ぶ.神経幹細胞は胎生中期に増殖・分化してニューロン新生を行い,胎生後期までに脳のほとんどのニューロンを生み終え,その後グリア細胞を生み出し始める.成体期の脳にも神経幹細胞が存在し,新たにニューロンを生み出している.胎生期の神経幹細胞が盛んに分裂するのに対して,成体期の神経幹細胞は稀にしか分裂しない.本稿では,この「分裂頻度の違い」に着目して両者の関係を解き明かした,最新の研究を紹介する.
著者
玉井 郁巳
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.50, no.7, pp.674-678, 2014 (Released:2016-09-17)
参考文献数
20

医薬品の消化管吸収は血漿中濃度推移に直接的に影響するため,その変動は医薬品の作用・副作用を左右する.飲食物の作用を考えると,肝臓や腎臓など薬物動態を左右する他の組織に比べ,飲食物中成分が管腔内から直接作用し,しかも高濃度に存在する消化管が最も影響を受けやすい状態にある.小腸上皮細胞は薬物動態を決める薬物トランスポーター(輸送体)や薬物代謝酵素の発現が肝細胞と類似しており,相互作用の重大性が指摘されている肝臓と同様に小腸における相互作用を考慮しなければならない.消化管での医薬品と飲食物との相互作用はグレープフルーツジュース(以下,GFJ)の影響の大きさから注目を浴びている.すなわち,GFJは小腸上皮細胞内に存在する薬物代謝酵素CYP3A活性を低下させ,その基質薬物(被害を受けるという意味で以下victimと呼ぶ)となるカルシウムチャネルブロッカーなどの血漿中濃度が増大し,毒性が生じることが20年以上前に見いだされた.本相互作用の原因となるGFJ成分はフラノクマリン類であり,CYP3Aを不可逆的に阻害し,併用されたvictimの血漿中濃度を顕著に上昇させる.一方,相互作用の原因として薬物輸送体の関与も明確になった現在,医薬品の臨床開発における相互作用試験の必要性が指摘される消化管輸送体は,P-糖タンパク質(P-gp,ABCB1)とBreast Cancer Resistance Protein(BCRP,ABCG2)である.いずれも小腸上皮細胞管腔側膜に発現し,相互作用による活性低下はvictimの血漿中濃度増大につながる.したがって,相互作用を惹起する薬物(被害を与えるという意味で以下perpetratorと呼ぶ)の管腔中濃度Ciと阻害定数(KiあるいはIC50)に基づく相互作用評価が必要とされるに至っている.上述のような消化管の特徴を考慮すれば,フルーツジュース(以下,FJ)などの飲食物成分が小腸輸送体に対するperpetratorとなる可能性も十分考えられる.
著者
佐々木 均
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.51, no.9, pp.835-840, 2015 (Released:2018-08-26)
参考文献数
5

フィジカルアセスメントとは,問診・視診・聴診・触診などを通して,患者の症状の把握や異常の早期発見を行うことである.チーム医療のなかで薬剤師は「薬の専門家」として医薬品適正使用や副作用の早期発見に貢献することが望まれている.そのための技能の1つがフィジカルアセスメントである.長崎大学病院では,早くから体系的なフィジカルアセスメント研修体制を構築し,施設や他職種による承認を受け,薬剤師によるフィジカルアセスメントを展開している.その概略と意義を本稿で紹介したい.
著者
天ヶ瀬 紀久子
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.57, no.8, pp.775, 2021 (Released:2021-08-01)
参考文献数
5

自己免疫疾患の1つである多発性硬化症(multiple sclerosis: MS)は,脳および脊髄における散在性の脱髄斑を特徴とし,脱髄による神経伝達障害が視力障害,運動障害,感覚障害,認知症,排尿障害などさまざまな神経症状を引き起こすが,その発症原因は明らかでない.近年,腸内細菌叢の宿主に対する生理学および病理学的役割が注目されており,炎症性腸疾患,精神・神経疾患,免疫および代謝内分泌疾患などさまざまな疾患での研究が進められている.MSにおいても,2011年に健常人の糞便微生物移植によりMS患者の症状改善が報告され,患者の腸内細菌叢とMS発症および増悪との関係性が明らかになりつつある.現在,腸内細菌によるMSの増悪にはヘルパーT細胞のサブセットTh17細胞の分化誘導が関与すると考えられているが,その詳細は明らかでない.今回紹介する論文では,MSモデルであるマウス実験的自己免疫性脳脊髄炎(experimental autoimmune encephalomyelitis: EAE)を用い,2種の腸内細菌が協調して疾患の発症と増悪を促進することを報告している.なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.1) Borody T. J. et al., Am. J. Gastroenterol., 106, S352(2011).2) Cosorich I. et al., Sci. Adv., 3, e1700492(2017).3) Miyauchi E. et al., Nature, 585, 102-106(2020).4) Jangi S. et al., Nat. Commun., 7, 12015 (2016).5) Mangalam A. et al., Cell Rep., 20, 1269-1277(2017).
著者
小埜 栄一郎 村田 純 堀川 学
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.57, no.8, pp.715-720, 2021 (Released:2021-08-01)
参考文献数
25

ゴマ(シソ目ゴマ科ゴマ属 Sesamum spp.)は種子にフェニルプロパノイドの二量体のリグナンと呼ばれる植物特化代謝物を蓄積している。セサミンに代表されるリグナンは多様な生物活性を有しているものの、同じフェニルプロパノイドから生合成されるフラボノイド類に比べると医薬や食品分野では認知度は低い。それらの多岐に渡る薬理活性については優れた先行文献に譲り、本稿ではリグナン代謝物の多様性がどのようにして生じているか、つまり特化代謝の進化をゴマの栽培種と野生種の酵素活性の比較を通じて論じたい。
著者
矢﨑 一史
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.57, no.8, pp.705-709, 2021 (Released:2021-08-01)
参考文献数
19

脂溶性のナフトキノン系赤色色素であるシコニンは、ムラサキ科の6属内の限られた種だけが生産する化合物である。その化学構造は比較的単純であるが、特殊な化学特性を持つため、供給はもっぱら天然資源に依存している。その代表が絶滅危惧植物に指定されている薬用草本のムラサキで、新たな薬理活性が次々と報告される一方、供給には潜在リスクがある。今、世界的に新たな潮流を生み出しているこのシコニンをめぐる研究を紹介する。
著者
山下 哲也
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.53, no.12, pp.1171-1176, 2017 (Released:2017-12-01)

・僅かなメンバーで起業し、加速するIT進化を駆使して未知の製品やサービスを生み出し、猛烈な速度で成長して世界を変えてゆく企業をスタートアップと呼ぶ。一見あり得ないと思えるアイデアを実現し、未来の当たり前を生み出すイノベーターである彼らについて、そのあらましを紹介する