著者
池田 治生
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.55, no.7, pp.655-657, 2019 (Released:2019-07-01)
参考文献数
10

Avermectin生産菌のゲノム解析から当該生産菌のゲノムを改変し、異種由来の生合成遺伝子群の発現、生成機構および遺伝子発現調節機構などの解析に適切なモデル宿主を構築した。作製した異種発現系では多くの異種生合成遺伝子群の発現を確認するとともに休眠生合成遺伝子群の覚醒による新たな物質生産やポリケチドやペプチド化合物の生合成過程における重要な修飾系を評価することが可能となった。
著者
松田 研一 倉永 健史 脇本 敏幸
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.55, no.7, pp.650-654, 2019 (Released:2019-07-01)
参考文献数
9

環状ペプチドは生物活性天然物に数多く見られる骨格であり、大環状化によって消化酵素による分解を免れ、膜透過性や標的分子への特異性が向上する。環状ペプチド生合成における環化酵素はこの大環状化反応を極めて効率的に触媒する。我々が見出した非リボソーム型ペプチド生合成における新しい環化酵素は2つの異なる鎖状ペプチドを環化するため、広い基質特異性を有し、ペプチド大環状化生体触媒としての応用が期待できる。
著者
阿部 郁朗
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.55, no.7, pp.645-649, 2019 (Released:2019-07-01)
参考文献数
9

ゲノムマイニングにより様々な天然物の生合成遺伝子を取得し、その生合成系を再構築することで物質生産が可能となりつつある。次のブレークスルーは、この生合成マシナリーを如何に活用するかという点であり、生合成の「設計図を読み解く」から、さらに「新しい設計図を書く」方向に飛躍的な展開が求められている。合成生物学は、クリーンかつ経済的な新しい技術基盤として、広く有用物質の安定供給を可能にするため、資源が枯渇しつつある現代にあって、ますます重要になる。
著者
及川 英秋
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.55, no.7, pp.635, 2019 (Released:2019-07-01)

医薬品として注目を集めてきた天然物の生合成は、従来とは異なった天然物供給法として脚光を浴びている。設計図を用いた天然物の合成法の現況と今後の展望を紹介する。
著者
鈴木 嘉治
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.54, no.8, pp.817, 2018 (Released:2018-08-01)
参考文献数
4

抗がん薬誘発性の悪心嘔吐は,担癌患者に苦痛を伴わせ,患者のquality of lifeや治療への参加意志を損なうものである.多くの臨床試験により,コルチコステロイド,5-HT3受容体拮抗薬,NK1受容体拮抗薬およびオランザピンが抗がん薬誘発性の悪心嘔吐の制御に有用であることが示されてきたものの,その制御は完全には克服されておらず,現在でも多くの検証研究が進行中である.サリドマイド(thalidomide:THD)が多様な薬理効果を示すことは既知であるが,近年では抗がん薬誘発性の悪心嘔吐に対する制吐薬としての有用性が示されつつある.そこで本稿では,高度催吐性リスク抗がん薬の投与を受けた患者における遅発期(抗がん薬投与25〜120時間後)の悪心嘔吐の制御を目的として,THDを制吐薬として併用した場合の効果および安全性について第3相試験により検証したZhangらの研究を紹介する.なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.1) Sommariva S. et al., Crit. Rev. Oncol. Hematol., 99, 13-36(2016).2) Rojas C. et al., Eur. J. Pharmacol., 684, 1-7(2012).3) Navari R. M. et al., N. Engl. J. Med., 375, 134-142(2016).4) Zhang L. et al., J. Clin. Oncol., 35, 3558-3565(2017).
著者
中村 恵美子
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.54, no.7, pp.706-708, 2018

(株)リボミックはアプタマー医薬の研究開発を専門とする、東京大学発のバイオベンチャーである。一本鎖の核酸であるアプタマーは、それ自体で様々な形を作り、疾患の原因となっているたんぱく質などの分子に結合し、その働きを阻害することで疾患を治療する。本稿では、当社技術の概要をご説明するとともに、現在、加齢黄斑変性症等を適応症として治験の準備を進めているRBM-007についてご紹介する。
著者
三浦 恭子
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.53, no.3, pp.225-227, 2017

ハダカデバネズミ(naked mole-rat, <i>heterocephalusglaber</i>, デバ)は,その名の通り裸で出歯のげっ歯類である(実はよく見ると感覚毛と呼ばれる毛がまばらに生えている)(表紙写真).自然下ではエチオピア・ケニア・ソマリアの地下に,数十~数百匹の集団で生息する.ガス交換が乏しく気温が安定している地下トンネルで暮らしており,トンネル内の位置によってはかなりの低酸素(~7%)かつ高二酸化炭素(<10%)環境になる.デバは視覚が退化しており,ヘモグロビンの酸素親和性が高く,また電位依存性ナトリウムチャネル(Nav1.7 voltage-gated sodium channel)の変異により酸への非感受性を示すことが報告されている.また,体の恒温機能はほとんど失われており,外温性で低体温(約32℃)である.研究室ではアクリルボックスをパイプで複数連結したケージを用い,温度30℃・湿度60%に調節された通常大気下で飼育を行っている.自然下では根茎を食べているが,実験飼育下ではイモ・ニンジン・リンゴ・オートミールなどを与えている.<br>デバは「真社会性」と呼ばれる分業制の社会を形成することで知られている.真社会性とは,昆虫のアリ,ハチ,シロアリなどでみられる,2世代以上が共存し繁殖個体とその繁殖を手伝う不妊個体から成る社会形態を指す.現在確認されている真社会性ほ乳類は,デバと近縁のダマラランドデバネズミだけである.コロニー内で繁殖を行うのは1匹の女王と1~3匹の王のみで,その他の個体は,生殖機能が未発達なままワーカーやソルジャーとして巣内の仕事に携わる.女王化のメカニズムは,現在のところほとんど分かっていない.我々は,MRIを用いたデバ三次元脳アトラスの作製を行い,ワーカーが女王になる際の脳内変化について解析を進めている(関ら,未発表).
著者
池田 幸弘
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.53, no.3, pp.256-257, 2017

名鉄名古屋駅から犬山線,犬山駅からは広見線に乗り継いで新可児まで行き,そこからさらに御嵩行ワンマン列車に乗り込み,のどかな田園風景に見とれていると間もなく明智駅に到着した.無人駅のため運転手さんに切符を手渡して下車し,ちょうど駅前に停車しているバスに乗り込んだ.バスはこの先の名鉄八百津線が2001年に廃線となったため,代替として運行されている.ここまで来るとすっかり小旅行の気分になってしまっているが,弾む気持ちをおさえながら元役場前にて下車した.
著者
多胡 憲治
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.50, no.3, pp.249, 2014 (Released:2016-04-19)
参考文献数
2

1980年代初めから,悪性新生物であるがんは日本国民の死因の第1位になっており,その治療法や予防などの対策が非常に重要な問題になっている.そのため,発がん機構を理解し,その抑制機構を解明することを目指した研究が急速に進んでいる.なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.1) Seluanov A. et al., PNAS, 106, 19352-19357 (2009).2) Tian X. et al., Nature, 499, 346-349 (2013).
著者
玉川 雅之
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.54, no.5, pp.446-447, 2018 (Released:2018-05-01)

1954年に当社初のOTC医薬品として発売された殺菌消毒薬「リバガーゼ」。主成分アクリノールの優れた殺菌力によって傷口を殺菌、消毒する。本品は発売してから製品改良を重ねながら、ラインアップを拡げ今日に至っている。「リバガーゼ®F」は傷口につかない特殊フィルムを採用し利便性を高めている。2018年に創業119周年を迎えた当社の沿革や医薬品製造方針、アクリノールの生い立ちも併せながら、製品特徴や使用方法を紹介する。
著者
日髙 淳 花木 秀明
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.55, no.2, pp.121-125, 2019 (Released:2019-02-01)
参考文献数
21

抗菌薬に対する耐性菌の出現と蔓延は世界的な問題であり、WHOをはじめ各国が国主導の対策を講じつつあるが、様々な要因により薬剤耐性(AMR)菌感染症治療薬の開発は停滞している。本稿では、新薬開発の代表例としてβ-ラクタマーゼ阻害薬およびその合剤の開発状況について概説し、新規抗菌薬の創薬促進のための考えや課題などについて述べる。
著者
太田 美里
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.53, no.10, pp.1010-1011, 2017

2013年から2年間,中国北京大学薬学院に博士研究員として在籍した時の体験談である。中国では博士研究員修了は博士号取得後の一つの経歴として重要視されており,登録から修了までの過程を述べた。滞在時には苦労した点が多く,実体験をそのまま記した。一方,中国の実験室は様々な機器が揃っており,実験環境が素晴らしい。また,中国の病院の生薬を用いた処方の調剤の様子を見学できたのでその実情について紹介した。
著者
阿部 誠治
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.54, no.4, pp.346-347, 2018

2014年6月より2年間、米国ニューヨーク州に留学してきた。研究は統合失調症や自閉症に関する基礎研究でマウスを使った動物実験が主な内容であった。初めての海外生活、実験内容もほとんど初めてということもあり、なかなか上手くいかなかったが、徐々に慣れてきて何とかこなすことができた。留学を通して得られた物は多くあり、多くの方に海外での挑戦をして欲しいと思う。