著者
吉成 浩一
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.50, no.7, pp.654-658, 2014 (Released:2016-09-17)
参考文献数
12
被引用文献数
1

薬物代謝は,化学物質(医薬品や食品成分,環境汚染物質等)の体内からの消失に主要な役割を果たしており,この過程には薬物代謝酵素と総称される多数の酵素が関与する.薬物代謝酵素の大きな特徴として,基質特異性の低さと化学物質の曝露に伴う酵素量の増加(酵素誘導)が挙げられる.ヒトが曝露され得る化学物質の種類は無限であり,それらを速やかに解毒する必要があることを考えると,このような性質は非常に都合がよい.一方で,このような性質は薬物代謝過程における薬物―薬物間および薬物―食品間の相互作用の原因となる.薬物相互作用は様々な機序で生じるが,本稿では,薬物代謝酵素がかかわる薬物相互作用について,発現機序を中心に概説する.
著者
中嶋 智史
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.53, no.3, pp.265, 2017 (Released:2017-03-01)
参考文献数
5

ケタミンは解離性麻酔薬として用いられている.近年,Bermanらは大うつ病患者らに麻酔に用いられる投与量よりも低用量を投与することにより,うつ症状が改善することを発見した.その後の研究により,単回投与後1時間以内に抗うつ効果が認められ,かつ1週間以上持続すること, 治療抵抗性のうつ病患者における希死念慮を速やかに低減させることが報告されており,有効な新規抗うつ薬として期待されている.ケタミンはグルタミン酸作動性のNMDA受容体拮抗薬であり,NMDA受容体拮抗作用によって抗うつ効果が生じていると考えられてきた.一方で,他のNMDA受容体拮抗薬では抗うつ効果が見られないことも報告されており,そのメカニズムは未だ明らかでない.本稿では,ケタミンの抗うつ効果がNMDA受容体の拮抗作用とは独立に生じている可能性について検証したZanosらの研究について紹介する.なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.1) Berman R. M. et al., Biol. Psychiatry, 47, 351-354(2000).2) Zarate C. A. et al., Arch. Gen. Psychiatry, 63, 856-864(2006).3) Price R. B. et al., Biol. Psychiatry, 66, 522-526(2009).4) Zanos P. et al., Nature, 533, 481-486(2016).5) Ebert B. et al., Eur. J. Pharmacol., 333, 99-104(1997).
著者
余越 萌 河原 行郎
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.51, no.1, pp.37-41, 2015 (Released:2018-08-26)
参考文献数
25

アルツハイマー病やパーキンソン病に代表される神経変性疾患は,いずれも病態機序が解明されておらず,根治療法も確立していない.今後,高齢化社会の到来に伴い,患者数が着実に増加することは確実であり,早急な治療法の確立が強く望まれている.一方,近年の次世代シーケンサーの実用化に伴い,比較的少数の家系サンプルでも,疾患の遺伝子座が同定できるようになった.この結果,神経変性疾患においても,新たな原因遺伝子変異の報告が相次いでいる.特に,筋萎縮性側索硬化症(amyotrophic lateral sclerosis:ALS)や前頭側頭葉変性症(frontotemporal lobar degeneration:FTLD)では,次々とRNA結合タンパク質遺伝子の変異が同定されるようになり,発症病態にRNA代謝異常が深く関与していることが明らかとなりつつある.ALSは,上位および下位の運動神経細胞が選択的に変性脱落し,全身の筋力が低下する神経難病である.主に中年期以降に発症し,9割以上が孤発性である特徴を持つ.一般的には,感覚系や認知機能は障害されないが,以前より一部に認知障害を呈するケースがあることが知られていた.一方FTLDは,アルツハイマー病,レビー小体型認知症に続いて,3番目に多い神経変性型認知症性疾患である.ALSとFTLDでは,障害される神経細胞が異なることからも別の疾患と考えられてきたが,遺伝子座が同定されるにつれて,その一部は同じ疾患スペクトラム上にあることが明らかとなった.すなわち,同じRNA結合タンパク質遺伝子変異でも,ALSから発症するケースとFTLDから発症するケースがあり,進行とともに互いの症状を合併する.これらの知見は,疾患の発症病態や変性する神経細胞の特異性を考える上で,大きなパラダイムシフトを起こした.さらに2011年になって,一部のALSおよびFTLDにC9orf72(Chromosome 9 open reading frame 72)遺伝子のイントロンにあるGGGGCCリピート配列の異常伸長がその原因として同定された.この発見は,RNA代謝の調節因子であるタンパク質の機能異常も,調節される側のRNAの異常でもALSやFTLDになることを示唆しており,RNA結合タンパク質とRNA間のバランスの破綻が発症の根底にあると考えられるようになった.これまでにも,リピート配列の異常伸長に起因する神経変性疾患は,ハンチントン病や一部の脊髄小脳変性症など数多く知られており,凝集タンパク質がもたらす細胞毒性が神経変性を誘導すると考えられてきた.しかし,ALSやFTLDにおける一連の発見は,神経変性疾患の発症病態におけるRNA代謝異常やRNA毒性の重要性を認識する契機となり,急速に研究が進展しつつある.本稿では,RNA代謝に焦点を当てながら,最新の神経変性疾患の発症病態に関する知見を概説したい.
著者
井黒 ひとみ 富樫 美津雄
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.51, no.4, pp.349-351, 2015 (Released:2018-08-26)
参考文献数
3

一般名:へパリン類似物質薬価収載日:2009年11月13日
著者
小暮 紀行
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.52, no.11, pp.1073, 2016 (Released:2016-11-01)
参考文献数
4

立方体構造を持つ炭素化合物キュバンは,そのひずみから合成は不可能と言われていたが,1964年にEatonらにより達成され,のちに最長の対角線の長さがベンゼンの直径とほぼ変わらないことから,生物学的等価体に成り得ると提唱された.今年,この仮説を検証する論文が報告されたので紹介する.なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.1) Eaton P. E., Core Jr. T. W., J. Am. Chem. Soc., 86, 3157-3158 (1964).2) Eaton P. E., Angew. Chem. Int. Ed., 107, 1421-1436 (1992).3) Chalmers B. A. et al., Angew. Chem. Int. Ed., 55, 3580-3585 (2016).4) Falkiner M. J. et al., Org. Process Res. Dev., 17, 1503-1509 (2013).
著者
北條 慎太郎
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.54, no.9, pp.902, 2018 (Released:2018-09-01)
参考文献数
3

体液性免疫は獲得免疫における主要な機構であり,ウイルス・細菌感染に対するB細胞の抗体産生を主軸とした免疫系を指す.体液性免疫応答の過程において,B細胞はヘルパーT細胞からサイトカインや補助刺激シグナルを受けて胚中心(germinal center:GC)とよばれる特殊な構造体を二次リンパ組織上に構築する.さらにGC B細胞は体細胞突然変異とクラススイッチを経て,抗原に対して高い親和性を有する記憶B細胞や長期的に生存可能な抗体産生細胞へと分化する(GC反応).GC B細胞の分化には濾胞ヘルパーT(t follicular helper:Tfh)細胞(転写因子Bcl6,ケモカイン受容体CXCR5,アポトーシス関連タンパクPD-1共陽性)との相互作用が必須であり,Tfh細胞の細胞数が厳密に制御されることにより自己寛容が誘導される.逆に,自己反応性のTfh細胞の増多は自己免疫疾患の発症と関連する.最近,胚中心に認められるTfh細胞集団の中に,免疫系を負に制御することで知られる制御性T細胞(転写因子Foxp3陽性)の特徴を有する濾胞制御性T(t follicular regulatory:Tfr)細胞とよばれる新規の細胞亜集団が発見され,脚光を浴びている.このTfr細胞は,in vivoにおいてGC反応を負に制御することが知られているが,これまでTfr細胞の病理学的な役割は不明であった.本稿では,Fuらによって報告されたTfr細胞による自己免疫疾患の制御に関わる知見を紹介する.なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.1) Chung Y. et al., Nat. Med., 17, 983-988(2011).2) Linterman M. A. et al., Nat. Med., 17, 975-982(2011).3) Fu W. et al., J. Exp. Med., 215, 815-825(2018).
著者
白川 賢宗
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.54, no.6, pp.550-554, 2018 (Released:2018-06-01)
参考文献数
4

2000年以降,数多くのオピオイド性鎮痛薬が使用できるようになった.その利益を痛みを抱えている患者が受けられているのは言うまでもない.また,がん治療の発展もあり,がん患者の長期生存率も増加している.言い換えるならば,長い期間「がん」と戦い,そして共存する苦しい時間が増えたとも言える.つまり長期間,オピオイド性鎮痛薬を使用することも多くなった.そのような背景を踏まえ,我々はがん患者のケミカルコーピング,それに付随する知識を知る必要性がある.
著者
原田 大 北村 正樹
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.50, no.7, pp.679-683, 2014 (Released:2016-09-17)
参考文献数
22

「朝起きて,コーヒーを片手に朝食をとり,いつもの薬を飲んで,タバコを一服…」.そんな何気ない日常の行動が,時として有害事象の原因となる場合がある.現在まで,食事や嗜好品と薬には,注意しなければならない組み合わせとして知られるものが幾つかある.それによって薬の効果が減弱してしまうこともあれば,逆に増強することもある.ここでは,主な食品や嗜好品と薬剤との相互作用について述べていきたい.
著者
佐々木 智基
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.57, no.5, pp.392-395, 2021 (Released:2021-05-01)
参考文献数
13

近年,虫が媒介する感染症がニュースとなる機会が増えている.2016年のリオデジャネイロオリンピックが開催されたブラジルで,ネッタイシマカが媒介するジカウイルス感染症と小頭症が大きな話題になった.WHOが2019年に発表したリポートによると,2018年の年間のマラリア患者数は2.28億人,死者は40.5万人であるが,このマラリアはハマダラカによって媒介されている.虫が媒介する感染症は熱帯地域で発生を続けており,これらの感染症対策は世界的に重要な課題である.日本でも,2013年に国内で初めて重症熱性血小板減少症候群(通称SFTS)での死者が報告され,マダニ刺咬被害に新しい疾病が加えられた.これ以前にも日本紅斑熱やライム病などがマダニによって媒介されることは知られていたが,SFTSは致死率が30%にも上ることから注目が集まった.2014年には海外渡航歴のない人がデング熱を発症し,162名の感染者が出たが,その際にデング熱を媒介したのはヒトスジシマカだと言われている.日本でも虫が媒介する感染症のリスクが高まってきているのは間違いない.人に害を与える虫は「害虫」と呼ばれ,殺虫剤での駆除,農薬での防除対象となっている.害虫と一括りにされる虫たちだが,どのような害を与えるかによって細かく分類される.例えば有用作物に害を与える害虫は農業害虫とされ,家屋を食害するものは家屋害虫,衣料を食べる虫は衣類害虫と,害の種類で様々な害虫に分類される.そのなかでも,上記のように感染症を媒介する害虫は衛生害虫と呼ばれ,最も注意すべき害虫であると言える.その対策としては,殺虫剤を用いた駆除やワクチン接種などが有効であるが,虫に刺されないようにすることは感染症対策として有効な手段となる.本稿では,虫に刺されないようにするために最も広く使われている「人体用忌避剤」について,その種類,有効性,安全性などについて解説したい.
著者
酒井 弘憲
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.50, no.6, pp.558-559, 2014 (Released:2016-07-02)
参考文献数
1

爽やかな春も終わり,梅雨が近づいてきた.6月と言えば,ジューンブライドで結婚式の季節というイメージがあるのではないだろうか? 2012年のぐるなびウエディングのアンケート調査結果を見てみよう.まず既婚者(男性700名,女性432名)に「どの時期に結婚したか」という質問に対して,春~初夏(4~6月)が1番多く28.7%,続いて秋(10~11月)が23.9%と続く.結婚の意思のある未婚者(男性161名,女性178名)に「どの時期に結婚したいか」を尋ねると,秋が1番多く,53.1%,続いて春~初夏の41.0%となる.親族や友人など式への出席者側(男性1029名,女性703名)の意識では,「いつ出席したいか」という質問に対して,こちらも秋が41.0%で,続いて春~初夏の27.0%という回答であった.つまり,6月に結婚式が1番多いというわけではないのである.もっと詳細に示せば,未婚者の結婚希望時期は10月が1位で6月は4位なのである.既婚者の結婚時期でも1位は11月で,6月は6~7位なのである.例外的に6月に挙式が増えた年があったが,それは,1990年と1993年である.それぞれ6月に秋篠宮,皇太子のご成婚があり,それにあやかっての挙式増加であった.現実的な話をすれば,梅雨時期で稼働率の下がるホテルや式場が欧米のロマンチックな言い伝えを利用し,ジューンブライドとぶち上げて6月の集客を回復しようと画策したのが始まりらしい.ヴァレンタイン・デーを利用してチョコレートの売り上げを伸ばそうとした製菓業界とまったく同じ構図なのである.こういうキャンペーンはそのまま鵜呑みにせず,数字の裏付けを確認することが大事である.ところで,この時期になると決まって懐かしくなるのがロンドンの清々しさである.この時期のロンドンは夜も21時過ぎまで明るく,空気もカラッとしていて実に過ごしやすい.著者がロンドンを訪問する際に必ず立ち寄る場所がある.根っからのシャーロキアン(英国ではホーメジアンと呼ばれるらしい)としては,チャリングクロスのパブ・シャーロック・ホームズと言いたいところだが,同じパブでもそれはジョン・スノウ・パブなのである.と言っても読者のなかでそれを知っている人がいれば奇跡に近い話であろう.有名なエロス像のあるピカデリーサーカスからリージェント・ストリートを北に進み,ブルックス・ブラザーズの店舗の角を右手に曲がって5分ほど進み,さらに左に折れて進んだ先のブロードウィック・ストリートの左角に目指すパブは佇んでいる.別に危険な場所ではないが,普通の観光客は絶対にこんな路地裏までには入ってこないだろう.ここが生物統計学の源流の一つである疫学の“聖地”なのである.

3 0 0 0 OA 第35回 敬震丹

著者
犬伏 壮一郎
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.54, no.3, pp.240-241, 2018 (Released:2018-03-01)
参考文献数
1

徳島の伝統薬「敬震丹(けいしんたん)」は、江戸時代文政年間(1818~1830)に誕生した気付け薬である。藍取引で財をなした犬伏家が、大阪道修町との繋がりを深め、鎖国当時としては貴重な生薬(麝香、牛黄、竜脳、人参、サフラン、香附子、沈香、甘松、桂皮、牛胆、丁子、木香、甘草、生姜)を配合した。1cm角の板状の錠剤で、芳香性の気剤により香りで気を巡らす処方内容であり、口中で香りを嗅いでから服用するとより効果的である。
著者
八幡 紋子
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.51, no.6, pp.582, 2015

「カロリーゼロ」「ノンシュガー」.これらは今日の生活で多く見掛ける言葉である.消費者の健康指向の高まりを背景に,様々な食品や飲料に低カロリー甘味料が選ばれている.なかでも人工甘味料は砂糖に比べ甘味度が数百倍高く,カロリーを抑えて使用できることから,今後も使用量が増加すると予測されている.一方で人工甘味料を含む飲料の摂取と,高血圧,高血糖,高トリグリセリドといったメタボリックシンドロームを示すパラメータとの高い相関が報告されている.本稿では,人工甘味料によって腸内細菌叢に変動が起こり,正常な血糖コントロールができない耐糖能異常が現われるという論文を紹介する.<br>なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.<br>1) Lutsey P. L. <i>et al</i>., <i>Circulation</i>, 117, 754-761 (2008).<br>2) Suez J. <i>et al</i>., <i>Nature</i>, 514, 181-186 (2014).<br>3) Soldavoni J. <i>et al</i>., <i>Dig. Dis. Sci</i>., 58, 2756-2766 (2013).<br>4) Schwiertz A. <i>et al</i>., <i>Obesity</i>, 18, 190-195 (2010).
著者
山田 佳太
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.52, no.4, pp.348-348, 2016 (Released:2016-04-01)
参考文献数
2

免疫グロブリンIgGとFc受容体(FcR;免疫グロブリンFc部位に対する受容体)の相互作用は,免疫応答を活性化あるいは抑制するシグナルを免疫担当細胞に伝える.IgG-FcRの相互作用の調節には,IgGのFc部におけるアスパラギン結合型糖鎖(N-結合型糖鎖)が関与している.したがって,同じ抗原を認識するIgGであっても,Fc部に存在するN-結合型糖鎖の構造により結合するFcRの分子種が変わるため,その後の免疫応答に与える影響が異なる.以上のことより,アレルギーや自己免疫疾患等の免疫異常や抗体医薬品等の作用機構を理解する上で,抗体Fc部のN-結合型糖鎖の構造が注目されている.今回,インフルエンザワクチンによって誘導される抗ヘマグルチン(HA)IgG抗体Fc部のN-結合型糖鎖が,ワクチンの効果発現に,重要な役割を担うことを明らかにしたWangらの論文を紹介する.なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.1) Pincetic A. et al., Nat. Immunol., 15, 707-716 (2014).2) Wang T. T. et al., Cell, 162, 160-169 (2015).
著者
髙橋 宏次
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.51, no.6, pp.541-545, 2015 (Released:2018-08-26)
参考文献数
6

情報技術が発展を遂げ,インターネットを通じての商取引が活発になってきた昨今,商品やサービス(役務)の目印である商標の重要性がますます高くなってきている.商標法が改正され音などの新しい商標の保護が開始されると,商標の利用形態も多様化してくる.グローバルで事業展開する医薬品メーカーでは,世界統一ブランドによる医薬品の販売が望まれるが,各国または各地域での商標登録および医薬品名称の審査などのハードルを乗り越えなければならないところ,米国においては医薬品名称の審査のガイドラインが整備されている状況であり,欧州においてもガイドラインの改正が行われ,これらの活動が活発に行われている.また,一般薬のインターネット販売が解禁になり偽造医薬品対策も急務となっているところ,水際規制としての商標の利用もますます望まれる.ここでは,医薬品販売名における商標,新製品名開発における商標,および,偽造医薬品対策における商標について紹介する.
著者
武田(森下) 真莉子
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.52, no.11, pp.1038-1042, 2016 (Released:2016-11-01)
参考文献数
20

近年,医療ニーズは従来の生活習慣病などから,難病やがんなどのアンメットメディカルニーズの高い領域に拡大しており,それに伴って創薬ターゲットが大きく変わりつつある.アルツハイマー型認知症やパーキンソン病などの難治性中枢神経系疾患も競争率の激しい創薬ターゲットの中の1つであり,世界的規模で治療薬の開発が精力的に進められている.その中でも脳内で作用する内因性ペプチド,病態の進展を抑制するワクチン,原因物質あるいは病変部位を標的とする抗体医薬等のバイオ医薬の治療薬としての開発に注目が集まっている.しかしながら,ヒト臨床試験における成功率は著しく低く,例えばアルツハイマー病を対象とした臨床試験は,直近5年間の間に5つ以上の臨床試験が第Ⅲ相で中止となった.開発成功率が低い原因としては,適切な精神疾患動物モデルがないために,中枢疾患の病理や病態が十分に解明されていない等の本質的なことが考えられるが,薬物の脳移行性の絶対的な低さも起因していると考えられる.脳には血液脳関門(blood-brain barrier:BBB)と血液脳脊髄液関門があることにより,循環血液と脳内の物質の輸送が厳密に制御されており,一般的な投与ルートである静脈内投与からBBBを透過できるバイオ医薬の物質量は極めて限られている.したがって,これを克服する革新的DDS技術の開発が急務とされている.水溶性低分子薬の脳移行性を高める方法としては,脂溶性を高めるプロドラッグ化,tight junction modulatorやP糖タンパク質等の排出トランスポーター阻害剤との併用投与,また受容体介在性トランスサイトーシスなどを利用した創薬が行われてきたが,バイオ医薬脳内移行性の改善にこれらの方法を適用することは難しい.一方,鼻腔内には,投与された物質が血液を経由せずに脳脊髄液(cerebrospinal fluid:CSF)あるいは脳に直接移行するルートがあることが古くから知られていた.そして近年,その実際の経路である鼻腔内の嗅上皮から嗅球にいたる嗅覚経路を脳への薬物輸送経路として積極的に利用する基礎および臨床研究が進展しつつある.現在,我々も生体膜透過性modulatorである細胞膜透過ペプチド(cell-penetrating peptides:CPPs)※を用いて,鼻腔経路からのバイオ医薬の効率的脳内移行を図る脳内デリバリー法の構築を目指して研究を進めている.本稿では,このNose-to-Brain Deliveryにおける最近の研究動向について,我々の知見を含めて紹介する.
著者
岡本 佳男
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.50, no.2, pp.105-107, 2014 (Released:2016-04-05)
参考文献数
15

生体が光学異性体に対して高い識別を示すために,キラルな医薬品については,より有効な片方の異性体からなる光学活性な医薬品の開発が非常に重要であることは,今日ではごく当たり前のこととして知られている.しかし,今から20年前はキラルな合成医薬品の多くは,光学異性体の等量混合物であるラセミ体として用いられていた.その理由の1つは,キラル化合物の純度(鏡像体過剰率,ee)を微量で正確に決める手段がなかったためである.本稿では,今日,光学異性体の分離,分析に最もよく利用されている高速液体クロマトグラフィー(high-performance liquid chromatography;HPLC)用のらせん高分子からなるキラル固定相(カラム)の開発について,筆者が行った研究を紹介したい.