著者
多田 隆治
出版者
日本地質学会
雑誌
地質學雜誌 = THE JOURNAL OF THE GEOLOGICAL SOCIETY OF JAPAN (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.111, no.11, pp.668-678, 2005-11-15
参考文献数
69
被引用文献数
2 3

ヒマラヤ-チベットの隆起がアジア・モンスーンを強化したとする考えは古くから存在したが,それらの開始時期や様式について十分な知見が得られていなかったため,検証されずに今日に至っている.近年,中国のレス堆積物や日本海堆積物を用いたモンスーン進化過程の復元が進み,ヒマラヤ-チベットの隆起時期や過程についても知見が蓄積されてきた.ヒマラヤ-チベットの隆起とモンスーンの成立,進化の関係の吟味に不可欠な気候モデルも,飛躍的に改善が進んだ.本総説では,アジア・モンスーンの開始,進化,変動に関する最新の古気候学的知見を基にその進化過程を復元し,気候モデルを基に推定された進化過程と比較して,ヒマラヤ-チベットがどのように隆起してきたと考えれば,モンスーン進化過程が最もうまく説明がつくかを検討した.こうして推定されたヒマラヤ-チベットの隆起過程は,構造地質学的に推定された隆起過程と概ね整合的と考えられる.<br>
著者
佐藤 時幸 佐藤 伸明 山崎 誠 小川 由梨子 金子 光好
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.118, no.2, pp.62-73, 2012
被引用文献数
1 8

新しく定義された新第三紀/第四紀境界を,石灰質ナンノ化石層序に基づいて秋田地域の大菅生沢および男鹿半島に詳細に追跡した.その結果,ピアセンジアン階/ジェラシアン階境界は大菅生沢ルートの笹岡層下部に,ジェラシアン階/カラブリアン階境界は,男鹿半島北浦層下部に位置することを明らかにした.石灰質ナンノ化石対比基準面に基づいて,日本海側地域の金沢,新潟,秋田地域の鮮新統-更新統を対比した上で,日本海側地域の代表的貝化石群の"大桑・万願寺動物群"産出層準の問題点を述べ,"Climate Crash"と呼ばれる2.75 Maに発生した北極域の大規模な寒冷化の日本海側地域への影響について整理した.さらに,地下断面に微化石年代層序を適用させ,北由利衝上断層群の活動が3.85 Maから1.71 Ma間であること,および秋田平野部の浅海化が北由利衝上断層群の活動と2.75 Maでの汎地球的な寒冷化(Climate Crash)の影響を強く受けていることを明らかにした.
著者
宮本 毅 蟹澤 聰史 石渡 明 根本 潤
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.119, no.Supplement, pp.S27-S46, 2013-08-15 (Released:2014-03-21)
参考文献数
45
被引用文献数
1 4

仙台市街を構成する大地は,新第三紀中新世以降,たび重なる変動を経験しながら海と陸の時代を繰り返し,現在の姿となった.現在の仙台市街から最も近い火山は約20 km離れた奥羽山脈上にあるため,火山とは無縁の地と感じるかもしれないが,数多くの火山活動が発生し,大地の形成と変貌に一役買っていたと考えられる.本巡検は地学教育とアウトリーチ用の巡検として,一般の方々を対象とし,仙台の大地の成り立ちとそこに介在した火山活動について理解していただくことを目的とする.見学は,仙台市を流れる広瀬川の周辺地域に分布する後期中新世以降の地層について行う.その中でも,特に現在の仙台市を中心とした地域を襲った火山噴火による噴出物に焦点をあてる.仙台市街で観察される火山噴出物は,それぞれ噴火のタイプが異なることから,火山噴火現象の多様性についても同時に解説を行う.
著者
宮田 隆夫 安 鉉善 猪川 千晶
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.118, pp.S37-S52, 2012

中央構造線(MTL)は,白亜紀中頃からアジア大陸東縁部の形成に大きく関連して活動した大規模な横ずれ断層であり,それに沿って和泉層群堆積盆地が発達した.本巡検は,和歌山市北部から大阪府岬町にかけた地域で,横ずれ成分をもつMTL断層系の破砕帯と白亜系和泉層群のタービダイト相,堆積構造(スランプ褶曲, 底痕),変形構造(背斜, 小断層, デュプレクス),コダイアマモの化石,大阪層群/和泉層群の不整合などを見学し,それらの形成及び和泉層群堆積盆地の形成について現地討論を行う.
著者
川上 源太郎 加瀬 善洋 卜部 厚志 髙清水 康博 仁科 健二
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.123, no.10, pp.857-877, 2017-10-15 (Released:2018-01-25)
参考文献数
90
被引用文献数
3 6

日本海東縁の沿岸域では,津波起源とされるイベント堆積物の報告が急増している.その時間-空間分布を整理し,地域間の対比と推定される波源を提示した.19~18世紀にはいくつかの歴史津波が知られ,地点数は多くないが対応するイベント堆積物が報告されている.18世紀以前は歴史記録に乏しいが,イベント堆積物から14~9世紀の間に次の4つの津波イベントの存在が示唆される-14世紀:青森~山形北部,12世紀:北海道南西部,11世紀(西暦1092年?):佐渡/新潟~山形南部,9世紀(西暦850年?):(佐渡~)山形~青森-.これらのイベントは日本海盆の地震性タービダイトにも記録されている.より古いイベント堆積物は,奥尻島や佐渡島などの離島で認められている.現時点では堆積物の起源の認定や正確な年代決定などに多くの問題が残っており,この総説が今後の問題点の解決と日本海東縁の古津波像解明の一助となることを期待する.
著者
Kenta Kawaguchi Kosuke Kimura Yasutaka Hayasaka Kenichi Hoshino Ikuo Okada Kensuke Kuroshima
出版者
The Geological Society of Japan
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.127, no.5, pp.293-304, 2021-05-15 (Released:2021-09-29)
参考文献数
52
被引用文献数
1

The Suo Metamorphic Complex is characterized as subduction-related Triassic high P/T type metamorphic rocks occurring in southwest Japan. Recently, we have discovered tonalite mylonite (“Otabara tonalite”) from the Tsuno Group, Suo Metamorphic Complex in the western Chugoku province. LA-ICP-MS zircon U-Pb dating of the “Otabara tonalite” in its type locality yields the magmatic age of 285.4±1.9 Ma (MSWD = 0.72) and 278.8±2.0 Ma (MSWD = 0.92). Whole-rock chemical compositions from the “Otabara tonalite” show a volcanic arc signature. LA-ICP-MS detrital zircon U-Pb dating of psammitic schist from the Tsuno Group yields the approximated maximum depositional age of 242 Ma with the single peak cluster at ca. 262 Ma and the conspicuous lack of Precambrian zircons. The depositional age of psammitic schist is younger than the crystallization age of the “Otabara tonalite.” Possible origins of the “Otabara tonalite” are considered as 1) an autochthonous body and a member of the Suo Metamorphic Complex, or 2) an exotic block derived from another geotectonic unit. In the case of the possibility 2), the arc-type granitoid in the Southern Maizuru Belt is the potential origin of the “Otabara tonalite” as they share similar ages and geochemical compositions.
著者
長谷川 健 中川 光弘 伊藤 順一 山元 孝広
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.117, no.12, pp.686-699, 2011-12-15 (Released:2012-03-26)
参考文献数
30
被引用文献数
7 6

テフラを用いて北海道東部の釧路地域に分布する第四系の編年を試みた.釧路地域の海成層(上位から,大楽毛層,釧路層)の各模式地において複数のテフラを記載・採取し,火山ガラスの主成分化学組成などの岩石学的特徴や層位関係から,阿寒・屈斜路火山地域のテフラと対比を行った(阿寒および屈斜路テフラはそれぞれ上位から,Ak1~17およびKpI~VIII).大楽毛層の上位にはKpVIが見いだされ,また大楽毛層上部と下部に挟まる2層の火山灰層は,それぞれAk5および給源不明の広域テフラ(LowK-1)に対比される.一方,釧路層中に含まれる軽石礫・溶結凝灰岩岩塊は,すべてAk13~Ak17由来である.以上の対比結果と既報のテフラ年代から,大楽毛層の堆積は,少なくとも,0.8 Maに開始し0.1 Maより前に終了したと推測できる.釧路層の堆積時期は,1.5 Ma以降,1.0 Maより前と考えられる.
著者
星 博幸 石渡 明
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.110, no.9, pp.536-544, 2004 (Released:2005-01-07)
参考文献数
28
被引用文献数
2 2

戸室火山の戸室山 (安山岩の溶岩ドーム) で岩石磁気・古地磁気学的研究を行った. 詳細な磁気測定により安山岩に含まれる磁性鉱物の種類, 量, 粒子サイズを推定した. マグネタイトとヘマタイトが残留磁化の担い手だが, 溶岩ドーム内部の大部分をなす淡青灰色の安山岩 (青戸室石) とドーム表層部をなす赤味を帯びた安山岩 (赤戸室石) の間で両鉱物の量とマグネタイトの粒子サイズが異なる. 赤戸室石では高温酸化によりマグネタイトの大部分がヘマタイトに変化し, それがマグネタイト量の減少と細粒化, 及びヘマタイト量の増加をもたらした. 戸室山では3地点で正帯磁の平均方位が決定されたが, それらは有意に異なっていた. 溶岩ドームの表面では熱残留磁化の獲得後に溶岩の変形が起こった可能性が高い.
著者
太田 亨 今井 智文 石田 直人 坂 幸恭
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.118, no.9, pp.588-593, 2012
被引用文献数
2

This study re-examines the depositional age, lithostratigraphy, and distribution of Mesozoic sedimentary formations in the section of the Kurosegawa Belt that outcrops in the Toba area, eastern Shima Peninsula, Mie Prefecture, Japan. In this area, Mesozoic successions are divided into the Jurassic Shiranezaki Formation and the Cretaceous Matsuo Group. We collected Bajocian and Callovian–Oxfordian age radiolarians from the Shiranezaki Formation and Valanginian–Barremian age radiolarians from the Matsuo Group. The lithology and age constraints provided by these collected radiolarians suggest that part of the previously defined Matsuo Group actually forms part of the Shiranezaki Formation, with this formation being stratigraphically overlain by the Matsuo Group across a disconformity.
著者
Yukihide Matsumoto Mototaka Saneyoshi
出版者
The Geological Society of Japan
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.116, no.1, pp.I-II, 2010-01-15 (Released:2013-02-23)
参考文献数
2
被引用文献数
1 1
著者
糸魚川 淳二
出版者
日本地質学会
雑誌
地質學雜誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.97, no.3, 1991-03-15