著者
田沢 純一 鈴木 敬介 三宅 幸雄
出版者
The Geological Society of Japan
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.127, no.2, pp.79-90, 2021-02-15 (Released:2021-05-15)
参考文献数
81
被引用文献数
4

飛騨外縁帯本郷の荒城川層中部から産出した腕足類フォーナ(本郷フォーナ)を記載し,時代と古生物地理について考察した.本郷フォーナは以下の5属6種からなる:Pugilis sp., Marginatia sp., Fluctuaria undata, Fluctuaria sp., Actinoconchus sp., Imbrexia sp. このフォーナは前期石炭紀(ビゼー期後期)を示す.したがって荒城川層中部は上部ビゼー階に対比される.古生物地理学的に本郷フォーナは東北日本(南部北上帯)と中国西北部(新疆)の前期石炭紀腕足類フォーナに類縁がある.このことから,ビゼー期後期には北中国地塊とシベリア地塊の間の広大な地域を占める中国北方区(North China Province)に属していたと推定される.また,ビゼー期後期に本郷地域を含む飛騨外縁帯は中央アジア造山帯(CAOB)に含まれていたと推定される.岩相層序と化石相において荒城川層は南部北上帯の石炭系に似ているが,それは飛騨外縁帯と南部北上帯の構造的連続を支持する一つの証拠となる.
著者
鎌田 浩毅 千葉 達朗
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質學雜誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.101, no.12, pp.XXXXIII-XXXXVI, 1995-12-01
被引用文献数
2 1
著者
菊地 一輝 小竹 信宏
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.119, no.9, pp.613-629, 2013-09-15 (Released:2014-02-07)
参考文献数
36
被引用文献数
4 4

徳島県北部島田島に分布する上部白亜系和泉層群板東谷層において,層序,岩相の時空分布,地質構造,そして堆積環境を詳細に検討した.ここの板東谷層は厚さ10 m程度のチャネル充填堆積物とチャネル間堆積物が繰り返し累重することから,海底扇状地のフロンタルスプレーの堆積物であると解釈される.また,海底扇状地システムの西方への前進・移動を反映したと考えられる上方粗粒化の大傾向が,本層全体を通じて認められる.島田島に分布する板東谷層は生痕化石Archaeozosteraを多産するが,その産出層準は泥岩の占める割合が比較的高い最下部の層準に限られる.この事実は,Archaeozosteraの形成者が,混濁流による物理的撹乱の影響が少なく,安定した海底環境が相対的に長い期間持続する場所に限って生息したためと考えられる.
著者
浅田 美穂
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.126, no.1, pp.3-16, 2020-01-15 (Released:2020-04-22)
参考文献数
106
被引用文献数
3

「泥火山」は地下から流体と堆積物を地表に至らせ地形的特徴を形成する地質学的現象だが,地熱地帯,油田地帯,そして堆積物優勢地域など幅広い地質学的バックグラウンドをもって分布する泥火山の活動は未だ理解されたとは言えない.泥火山が地下から運ぶ流体と堆積物は地下の性状を反映すると考えられ,掘削では技術的に到達が困難な大深度の情報を持つと期待される.日本における泥火山は海洋で数が多く活動的である.泥火山群発海域に地震津波観測のために敷設された大規模観測網は海域泥火山活動モニタリング手法を拓きつつあるし,火星の泥火山はこれら研究が惑星科学にも寄与する可能性を示唆する.長く地質学者の関心を引きつけてきた泥火山は,いま日本で新しい研究局面を迎えつつある.
著者
細井 淳 天野 一男
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.119, no.9, pp.630-646, 2013-09-15 (Released:2014-02-07)
参考文献数
88
被引用文献数
4 5

グリーンタフの研究は1990年頃,層序に基づいて総括された.しかし近年,グリーンタフの模式地である男鹿半島の層序が大幅修正された.また,堆積学的研究があまり行われていないため,グリーンタフを形成した当時の具体的な火山活動や堆積環境は不明である.本研究は奥羽脊梁山脈に位置する岩手県西和賀町周辺のグリーンタフを対象とし,堆積相解析を行った.結果,具体的な堆積場とその変遷,古火山活動(非爆発的噴火を2タイプ,爆発的噴火を3タイプ)を解明した.これらの結果を総合して,本研究地域の堆積盆発達史を5つのステージに区分して議論した.本地域は約20 Ma頃にハーフグラーベンを形成し,堆積盆内では成層火山型の海底火山を形成した.その後泥岩が堆積する静穏な時期を挟み,約15~14 Ma頃にテクトニックな急激な沈降と連続的な爆発的噴火が起こり,最終的に溶岩ドームを形成した.
著者
鹿野 和彦
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.124, no.10, pp.781-803, 2018
被引用文献数
28

<p>グリーンタフは主に本州の日本海沿岸に沿って分布する火山岩主体の地層群で,最近明らかになってきた特徴的な岩相の時空分布に基づけば,下位から順に上部始新統~下部漸新統(44~28Ma),上部漸新統(28~23Ma),下部中新統下部(23~20Ma),下部中新統中部(20~18Ma),下部中新統上部(18~15.3Ma),中部中新統下部(15.3~12.3Ma)に区分できる.これらの層序単元は,1)陸弧内リフティング,2)リフティングと火山活動を伴う地殻のドーム状隆起,3)背弧盆の拡大とリフティングの周辺地域への伝播,4)背弧盆拡大とリフティングの急速な進展,背弧側への暖流の本格的流入,5)日本海東縁での急激なリフティングと日本海盆などにおける熱的沈降の始まり,6)フィリピン海プレートの衝突と沈みこみ,火山前線の太平洋岸への移動,短縮変形の始まりを反映している.</p>
著者
宮下 敦 堤 之恭 佐野 貴司
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.122, no.10, pp.511-522, 2016-10-15 (Released:2017-01-20)
参考文献数
39
被引用文献数
1

関東山地の木呂子角閃岩は,白亜系跡倉ナップと御荷鉾緑色岩類の境界に挟まれている小さいブロックで,角閃石K-Ar年代が約400Ma(竹内・牧本, 1995)という古生代前期を示すことで知られている.この角閃岩は,主にmagnesiohornblendeと曹長石からなり,他に高変成度を示す指標鉱物は含まない.また,角閃岩の全岩化学組成は,周囲のMORB組成を持つ御荷鉾緑色岩類とは異なっている.この角閃岩のジルコンU-Pb年代は約480Maを示し,これは火成年代を示していると考えられる.また,変成作用の時期を示す角閃石の40Ar/39Arプラトー年代は,約430Maが得られた.これらの年代値は,木呂子角閃岩が日本列島のカンブリア紀-オルドビス紀の火成岩-変成岩複合岩体に属することを示している.
著者
川幡 穂高 横山 祐典 黒田 潤一郎 井龍 康文 狩野 彰宏
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.124, no.1, pp.35-45, 2018-01-15 (Released:2018-05-30)
参考文献数
34

炭酸塩を主たるテーマとしてIODP(統合国際深海掘削計画)では4航海が実施された.310次航海でのタヒチ島の結果によると,融氷パルス(Melt water pulse=MWP)-1Aの海水準の上昇は12-22mだったが,融氷パルス-1Bは観察されなかった.325次航海では,グレートバリアリーフで更新世のサンゴ礁掘削が行なわれた.最終氷期最盛期(LGM:20,000年前)には,水温は5℃以上降温していた.307次航海は,北西太平洋の深海サンゴの内部を初めて掘削した.サンゴマウンドの発達の開始は,現代の海洋大循環が大西洋で確立した更新世の最初期に地球的規模で寒冷化した環境変動と相関していた.320/321次航海では,過去5300万年間の時間レンジをカバーする赤道太平洋の深海底より一連の堆積物が採取された.炭酸塩の沈積流量に基づき新生代の赤道域の炭酸塩補償深度(CCD)変化が復元された.
著者
高清水 康博 岡 孝雄
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.113, no.Supplement, pp.S65-S79, 2007 (Released:2009-01-27)
参考文献数
92

この見学旅行では,褐炭層を挟む地層で特徴づけられる十勝平野の下部更新統を観察する.とりわけ,芽登凝灰岩を鍵層としてその上下の堆積物の層相変化を観察する.ここで観察する地層は堆積学的解析から,後背湿地,潮汐干潟,内湾,バリアー,海浜-外浜環境で形成されたものである.露頭から不攪乱試料を採取し,室内透水試験を行った結果,堆積相と透水性に関連性があることが分かってきた.これらのことを合わせて十勝平野の下部更新統の堆積相と地下水帯水層として見た場合の評価を考える.
著者
工藤 崇 檀原 徹 岩野 英樹 山下 透 三輪 美智子 平松 力 柳沢 幸夫
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.117, no.5, pp.277-288, 2011
被引用文献数
1 2

新潟堆積盆加茂地域において,中部中新統の七谷層から黒雲母に富むテフラを発見し,駒出川バイオタイト(Kbi)テフラと命名した.本テフラは灰色を呈する層厚9 cmの結晶質中粒~粗粒砂サイズの凝灰岩で,七谷層上部の明灰色泥岩中に挟在する.本テフラの構成鉱物は石英,斜長石(オリゴクレース~ラブラドライト組成),サニディン,黒雲母を主体とし,微量のざくろ石,赤色および無色のジルコンを伴う.本テフラは浮遊性有孔虫化石帯区分のN.9帯,石灰質ナンノ化石帯区分のCN4帯に含まれ,堆積年代は14.2~14.7 Maと見積もられる.本テフラのジルコンFT年代は14.6±0.3 Maであり,微化石層序と良く調和する.記載岩石学的特徴,FT年代,微化石層序の一致から,Kbiテフラ,紀伊半島の室生火砕流堆積物,房総半島木の根層中のKn-1テフラの三者は対比可能であり,熊野酸性岩の形成に関連した広域テフラの可能性が高い.
著者
山下 透 檀原 徹 岩野 英樹 星 博幸 川上 裕 角井 朝昭 新正 裕尚 和田 穣隆
出版者
日本地質学会
雑誌
地質學雜誌 = THE JOURNAL OF THE GEOLOGICAL SOCIETY OF JAPAN (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.113, no.7, pp.340-352, 2007-07-15
参考文献数
49
被引用文献数
10 8

紀伊半島北部に分布する室生火砕流堆積物とその周辺の凝灰岩(石仏凝灰岩,古寺凝灰岩,玉手山凝灰岩)および外帯中新世珪長質岩類について,屈折率を用いた軽鉱物組合せモード分析を行った.その結果,紀伊半島北部の中期中新世珪長質火砕流堆積物の斜長石系列は,すべてオリゴクレース~ラブラドライトで特徴付けられることから,これら4者は対比された.加えて室生火砕流堆積物は外帯に分布する熊野酸性岩類の流紋岩質凝灰岩の一部と対比できた.これらのことから,室生火砕流堆積物と石仏凝灰岩,古寺凝灰岩,玉手山凝灰岩は15 Maの熊野地域のカルデラを給源とする同一の大規模火砕流堆積物であると推定される.また熊野酸性岩類の中のアルバイトで特徴付けられる流紋岩質凝灰岩は,同じ軽鉱物組合せをもつ中奥弧状岩脈を給源とする可能性がある.<br>
著者
後藤 和久 小松 吾郎 齋藤 仁
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.118, no.10, pp.683-688, 2012-10-15 (Released:2013-02-20)
参考文献数
4
被引用文献数
2 1

A large amount of satellite imagery is now available for the surface of Mars; this imagery has spatial resolutions up to 25 cm/pixel, and a Digital Terrain Model (DTM) has been constructed to allow the analysis of Martian topography. These data are important for studies of geological and geomorphological processes on Mars, and may form the basis of future Mars exploration plans. Nevertheless, the procedures used to obtain these data and to project them using Geographic Information Systems (GIS) is significantly complicated, and this prevents many researchers from initiating geological or geomorphological research on Mars. Here, we introduce the procedures required to obtain Martian satellite imagery and topographic data, the methods used to project these data into GIS systems, and a simple Google Mars-based image analysis methodology. After projection, GIS-based data analytical approaches are similar to those commonly used for Earth-based data; consequently, geologists and geomorphologists who usually focus on terrestrial problems could easily shift their research focus to Mars, significantly improving the state of satellite imagery and topographic data-based Martian research and potentially contributing to future Mars missions.