- 著者
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亀本 喬司
- 出版者
- The Iron and Steel Institute of Japan
- 雑誌
- 鉄と鋼 (ISSN:00211575)
- 巻号頁・発行日
- vol.76, no.3, pp.320-328, 1990-03-01 (Released:2009-06-30)
- 参考文献数
- 26
- 被引用文献数
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流れの中に渦が発生するメカニズムは,流れの初期条件や境界条件によってかなり相違があるが,本質的には渦度がどのように供給され,それらがどのように流れるかによっていることは本文に説明したとおりである. 自然界における空気や水の流れを見ても,渦を伴わないものはほとんど無いと言っても過言ではない.技術の粋を集めて作られた航空機でもひとたび設計条件からはずれると,Fig.7に示したような流れの剥離により失速状態に陥ることもあり,渦とはこれほど発生しやすいものと考えたほうが良さそうである.流れにおける渦の生成を,さまざまな条件下で意のままにコントロールできたとすれば,それは正に人間にとって夢の実現に値するものである.鳥や魚のように,渦無しの流れと渦放出を巧みに使い分けることもできるし,台風やたつ巻の,発生や進路を自由に制御することもできるようになる.流れにおける渦の生成に関する研究を行っていると,流体が時として生き物のように感じられ,「流れは, 自身の姿を自由に変え,常に流れやすいように流れている」ように見えてくる.要は,「流れの気持ち」が理解できるようになることであろうか.溶けた鉄の流れがどのような性質を持つ生き物なのかについては,ご専門の技術者や研究者の方々が解き明かしてくださるものと楽しみにしている.この分野の方々にとって,本文が多少なりともご参考になれば幸いである.