著者
栗原 和幸 鈴木 剛 吽野 篤 波多野 道弘
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.62, no.11, pp.1534-1540, 2013-11-30 (Released:2017-02-10)
被引用文献数
2

エリスリトールを主成分とするダイエット用ゼリー製品摂取後にアナフィラキシー症状を呈した5歳男児を経験した.ゼリー製品そのもののプリックテストは陰性であったが,家庭での少量再摂取により軽度のアレルギー症状を呈した.エリスリトールのプリックテストでは,溶解限界の300mg/mlまで濃度を上げても陰性であった.皮内テストでは0.1m/mlで弱陽性,1mg/ml以上で明らかな陽性となった.好塩基球活性化試験では40-4000μg/mlの濃度で,24時間培養後にわずかな用量依存性の反応が認められた.エリスリトール経口負荷試験では3g摂取後に著明な咳嗽,蕁麻疹,浮腫,喘鳴,低酸素血症などのアナフィラキシー症状が誘発された.エリスリトールは分子量122.12の天然糖アルコールで,力ロリーがほぼゼロで味が良く使いやすい物理特性のために,ダイエット用食品の他に医薬品も含め,甘味料として近年広く使用されている.エリスリトールは食物アレルゲンになり得ることを認識し,プリックテストが陰性の場合があることに注意が必要である.
著者
山田 佳之
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.69, no.4, pp.260-266, 2020 (Released:2020-06-12)
参考文献数
57
著者
梅木 茂宣 橋口 浩二 沖本 二郎 副島 林造
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.40, no.2, pp.126-131, 1991-02-28 (Released:2017-02-10)

過去9年間に当科に入院した気管支喘息患者249例のうち, 原発性肺癌を合併した8例(扁平上皮癌5例, 腺癌2例, 小細胞癌1例, 3.2%;同期間の原発性肺癌例465例の1.7%) (A群) と肺外悪性腫瘍合併例8例 (胃癌3例, 悪性リンパ腫2例, 膀胱癌1例, 喉頭癌1例, 前立腺癌1例) (B群) について, それぞれの臨床像を比較検討した. A群では, 平均喘息罹患年数が19年で, 全例が感染関与型であり, 3例が軽症型喘息, 他の5例が中等症型喘息であった. B群では, 平均喘息罹患年数が20年で, 全例が感染関与型であり, 5例が軽症型喘息, 他の3例が中等症型喘息であった. 喫煙については, A群の平均BI値1194は, 肺癌非合併例 (241例) の同166およびB群の同169に対して有意に高かった. A群の平均生存期間26ヵ月以上はB群の同77ヵ月に対して有意に低かった. 以上の結果より, 肺癌合併気管支喘息では成人発症の感染型が多く, 原発性肺癌の発症には喫煙と加齢による影響の大きいことが示唆された.
著者
小川 博久 中村 陽一 時永 賢治 阪倉 直樹 山下 元幸
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.54, no.7, pp.641-645, 2005-07-30 (Released:2017-02-10)

症例は62歳の女性.頻尿および膀胱緊満時の疼痛で近医を受診した.膀胱炎の診断で抗生剤を投与するも改善しなかったが, 塩酸セチリジンで症状が一部改善し, 特定の食物摂取などで再び症状が増悪するようになることから当院紹介となった.当院ではトシル酸スプラタストを併用し, 特異IgE抗体や皮膚反応が陽性の食物を制限し症状の改善傾向がみられた.膀胱鏡検査で, 膀胱容積の低下, 粘膜の発赤, 小血管増生等を認め, 膀胱水圧拡張により点状出血班や亀裂像の出現が認められた.以上の膀胱鏡所見, また組織所見をあわせて本症例を間質性膀胱炎と診断した.水圧拡張術後症状は改善し, Th2阻害剤であるトシル酸スプラタストと前述の薬剤の併用により症状は安定している.間質性膀胱炎は, 尿所見が正常の膀胱炎様症状を呈し, また抗生剤に反応しない非常にまれな疾患である.病因は現在不明であるが, アレルギー性炎症が病態形成に関与していると考えられる.今回食物アレルギーを合併した間質性膀胱炎の症例を報告する.
著者
澄川 靖之 上木 裕理子 三好 彰 程 雷 殷 敏 時 海波 澄川 真珠子 幸野 健 青木 敏之 片山 一朗
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.56, no.10, pp.1270-1275, 2007-10-30 (Released:2017-02-10)
参考文献数
19
被引用文献数
2

【目的】日本,中国におけるアトピー性皮膚炎の有症率と皮膚のバリア機能について調査を行い比較検討を行った.【方法】中国チベット自治区ラサ市68名,江蘇省宜興市67名,兵庫県西宮市99名の小学1年生を対象に皮膚科検診を行い,その際に経皮水分蒸散量(TEWL : transepidermal water loss),角質水分量(capacitance)を測定した.またラサ市,宜興市,大阪府大阪市の中学1年生を対象に入浴回数についてのアンケート調査を行った.【結果】アトピー性皮膚炎の有症率は,ラサ0%,宜興2.63%,西宮4.26%であった.TEWLは西宮が宜興・ラサに比し有意に高く,capacitanceはラサが西宮・宜興に比し有意に低かった.また入浴回数はラサで月2.2回と西宮・宜興に比べ少なかった.【結論】TEWLの増加に従いアトピー有症率が増加する傾向がみられた.生活習慣・環境の変化によりアトピー性皮膚炎の有症率や皮膚のバリア機能がどう影響を受けるか今後も調査を行っていく必要があると考えられた.
著者
髙岡 有理 亀田 誠 矢島 裕子 辻 泰輔 錦戸 知喜 吉田 之範 土居 悟
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.65, no.8, pp.1009-1017, 2016 (Released:2016-09-09)
参考文献数
18

【目的】小麦アレルギーの経口免疫療法の有効性の報告はみられるが,その方法について比較した報告はない.今回筆者らは小麦の経口免疫療法の効果を摂取間隔の異なる2つの方法で前向きに検討し,その摂取頻度が与える影響を評価した.【対象】うどんの経口負荷試験陽性例で最終負荷量と最大誘発症状より乾麺重量で0.5~5gから摂取開始可能と判断した49名から同意を得て,摂取頻度により週6回以上(頻回群)と週2回(間歇群)の2群に年齢を層別化して無作為に割り付けた.摂取頻度を遵守しかつ経口免疫療法を遂行できた各群16名合計32名を今検討の対象とした.【方法】頻回群と間歇群に経口免疫療法を行い6カ月目の摂取量を評価した.【結果】6カ月後に目標量(3歳以下乾麺重量20g,4歳以上乾麺50g)以上に摂取あるいは負荷試験陰性だった割合は両群ともに75%だった.【結論】小麦アレルギーの経口免疫療法での6カ月後の目標到達率は,1週間当たりの摂取頻度を2回まで落としても毎日の摂取と比較して摂取頻度による明らかな違いがみられないことが示唆された.
著者
林 直史 中川 朋子 松井 照明 杉浦 至郎 漢人 直之 伊藤 浩明
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.67, no.1, pp.37-45, 2018 (Released:2018-02-20)
参考文献数
29
被引用文献数
2

【目的】ピーナッツアレルギー(PA)の診断におけるAra h 2特異的IgE抗体(sIgE)検査の有用性と,PA患者における他のナッツ類アレルギー合併について検討した.【方法】2014年4月~2015年3月に,ピーナッツsIgE陽性者にAra h 2-sIgE検査を行った.ピーナッツ経口負荷試験(OFC)又は明らかな摂取歴・誘発歴からPAの有無が確定できた217人(そのうちPA群90人)に関して,臨床像を後方視的に検討した.【結果】Ara h 2-sIgE≧0.35UA/mLにおけるPA診断の感度85.6%,陽性基準である≧4.0UA/mLであれば陽性的中率93.1%,特異度96.9%であった.Ara h 2-sIgEは,OFC(n=42)における誘発閾値量や症状の重症度と有意な関連を示さなかった.PA群における他のナッツ類アレルギー合併者は9人(10.0%)であった.【結語】Ara h 2-sIgE陽性基準の妥当性が再評価された.PA患者に対しても,他のナッツアレルギーの有無を適切に鑑別診断する必要性が再確認された.