著者
渡辺 尚 坂本 裕二 友永 淑美 犬山 正仁 笹山 初代 原 耕平 今村 由起夫 浅井 貞宏
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.39, no.11, pp.1523-1528, 1990
被引用文献数
6

エビを原因とする食餌依存性運動誘発アナフィラキシーの1例を経験した.症例は15歳の男性で, 昼食にエビフライを食べ, 4時間後にランニングをしたところ2000mの地点で全身の掻痒感を伴う発赤疹と呼吸困難が出現した.病歴上, 過去にもエビ摂取後の運動で同様のエピソードを経験していた.検査ではエビに対する特異IgE抗体が証明され, さらにエビ摂取後の運動負荷試験で血中ヒスタミンの上昇も認められ, 本症と診断した.本邦には本症例を含め25症例の報告があるが, 13症例は小麦製品, 10例がエビを原因としていた.また14例は過去にも運動後, 蕁麻疹やアナフィラキシー様症状を経験していた.現在運動中の突然死が問題となっているが, 本症もその原因の一つと考えられ, 医療従事者のみならず, スポーツの指導や教育に携わる人も本性の正しい認識を持つ必要がある.
著者
中野 泰至 下条 直樹 森田 慶紀 有馬 孝恭 冨板 美奈子 河野 陽一
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.59, no.2, pp.117-122, 2010
参考文献数
12

【目的・方法】今回小児牛乳アレルギー患者における主要アレルゲンを明らかにすることを目的として後方視的な解析を行った.牛乳特異IgE値陽性で牛乳摂取により何らかの即時型症状を呈した115名の患者を対象としてBLG,カゼインに対する感作率を解析した.特異IgEがクラス2以上を陽性とした.また牛乳アレルギーの主要抗原と他の食物アレルゲン,吸入抗原への感作の違い,寛解との関連についても解析を行った.【結果】牛乳特異IgE値がもっとも高値であった血清でのカゼイン特異IgE値は,BLG特異IgE値よりも有意に高値であった.カゼイン特異IgE陽性者は107人(97.3%),BLG特異IgE陽性者は51人(46.4%),両方とも陽性だった者は48人(43.6%)であり,カゼイン単独感作群(C群)とカゼイン,BLG両方感作群(C/B群)に大別された.C群とC/B群での鶏卵への感作率を比較すると,C群とC/B群では差がなかったが,特異IgE値はC/B群の方が有意に高かった.吸入抗原に関しては両群で感作率,特異IgE値ともに差は認められなかった.C群に比べてC/B群は,3歳の時点での牛乳アレルギーの寛解が有意に少なかった.【結語】今回の解析から,本邦の牛乳アレルギーにおいても主要アレルゲンはBLGよりもむしろカゼインであると考えられた.複数の牛乳アレルゲン感作は,経消化管感作の起こりやすさを反映する可能性が考えられた.また複数の牛乳アレルゲンへの感作は牛乳アレルギーの寛解のしづらさとも関与していると考えられた.
著者
光井 庄太郎 鹿内 喜佐男
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.18, no.3, pp.198-212,241, 1969-03-30 (Released:2017-02-10)

According to the histories of the patients with bronchial asthma the factors involved in the occurrence of asthmatic attack were investigated and the following results were obtained. 1. Analysis of the season and occurrence of asthematic attack studied on 237 cases revealed that 55 had the attack in autumn, 52 regardless of the season, 31 in winter and 25 in both spring and autumn. 2. Of 685 asthmatics, the causes of the first asthmatic attack were presumed in 464 cases. They were common cold occurred in 245 cases, revealing the highest incidence, inhalation of sea-squirt substances in 80, pneumonia in 22, acute bronchitis in 17, fatigue in 14, cold and pregnancy in 11 each. Of 673 asthmatics, the causes or the inducing factors of asthmatic attack after the onset of bronchial asthma were presumed in 567 cases. They were related to: 1) physical conditions in 352 (common cold and influenza in 229, fatigue in 126, overeating in 34, psychic tension in 24, bathing in 19, etc.);. 2) weather in 222 (cold in 84, rainy day in 63, cloudy day in 33, sudden change in weather in 29, humid day in 21, etc.); 3) dust in 173 (sea-squirt substances in 83, house dust in 78, cotton wool in 9, etc.); 4) smoke and offensive odor in 91 (cigarette smoke in 38, smoke of mosquito stick and smoke of broiling fish in 9 each.) 5) food and drink in 79 (wine in 30, vegetable foods in 26, animal foods in 20, fatty foods in 9, etc.) ; 6) drugs in 9 (ACTH in 3, aspirin in 2, etc.) ; 7) animals in 6 (contact with domestic. animals in 4, furs and feathers in 2) ; 8) plants in 5 (newly-bult house in 3, pollen in 2); 9) molds in 5 (aspergillus in 2, other molds in 3). 3. The causes or the inducing factors of asthmatic attack above mentioned were studied as follows: l) those relating to the psychic and physical conditions were investigated from the view-point of the autonomic nervous function and the endocrine glands; 2) those relating to the infection of the upper respiratory tract were investigated from the view-point of bacterial allergy; 3) those relating to the inhalants and ingestants were investigated by the skin test with these substances; and the significant results were obtained from each of them. 4. The incidence rate of positive reaction in the intradermal test was 51.2% with house dust antigen, 41.8% with Paspat, 21.6% with ragweed pollen antigen, 15.5% with the mixed antigen of crab, lobster and oyster, 15.5% with sea-squirt antigen (except sea-squirt asthma patients), 11.8% with mixed antigen of cat hair and dog hair, 11.2% with yam antigen.
著者
北林 耐 佐藤 佐由里 足立 満
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.62, no.5, pp.574-578, 2013

バラのソフトクリームによりアナフィラキシーを呈した10歳男児例を経験した.リンゴ,モモ,ビワ,ナシ,キウイを食べると咽頭に違和感を生じるため,ImmunoCAP ISACでアレルゲンコンポーネントに対する特異的IgEを調べたところ,シラカンバ,ハンノキ,ハシバミ,リンゴ,モモ,ピーナッツ,ヘーゼルナッツ,大豆の各PR-10タンパクが陽性を示し,カバノキ科の花粉とバラ科の果物の交差反応によるPollen Food Allergy Syndrome (PFAS)と診断した.アナフィラキシーの原因がバラのソフトクリーム中に含まれるバラの成分にあると考え,赤バラシロップについてas isでプリックテストを行ったところ強陽性を示したが,含有されているバラ香油,食用赤色2号については陰性であった.その後赤バラシロップ中にリンゴ果汁が含まれていることが判明したため,リンゴについてprick-prick testを施行したところ強陽性が確認され,これが原因と考えられた.食品を製造,加工して一般消費者に直接販売する場合には特定原材料の表示をする義務がないため,アレルギー物質が入っているとは知らずに誤って摂取する可能性があり,今後表示方法を改善していく必要があるように思われた.
著者
木嶋 晶子 西野 洋 梅田 二郎 片岡 葉子
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.56, no.11, pp.1397-1402, 2007-11-30 (Released:2017-02-10)
参考文献数
36
被引用文献数
1

第1例:24歳女性.歯科治療8時間後,全身に膨疹出現.第2例:23歳女性.歯科治療30分後,全身に膨疹出現.2例ともホルムアルデヒドのプリックテストは陰性であったがホルムアルデヒド特異的IgE RASTが高値でありホルムアルデヒドによる即時型アレルギーと診断した.ホルムアルデヒドは歯根管治療に広く用いられているが,即時型アレルギーの原因物質としての認知度は低い.その特徴として,アナフィラキシー等の重篤な症状が多いこと,通常の即時型反応より発症が遅いこと,また,プリックテストの陽性率が一定せず,診断に苦慮する場合があるなどが挙げられる.過去の報告例を検討した結果,本症の診断において,ホルムアルデヒド特異的IgE RASTが,プリックテストと比較して,感度,特異度ともに優れた検査法であり,自験例の如くプリックテスト陰性例でも簡便に的確で迅速な診断が可能であると考えられたため報告する.
著者
田中 裕 杉原 麻理恵 津曲 俊太郎 高松 伸枝 栗原 和幸
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.66, no.8, pp.1011-1015, 2017

<p>症例は12歳の女児.食物摂取後の運動負荷によるアナフィラキシー症状を繰り返したため, 食物依存性運動誘発アナフィラキシー(food-dependent exercise-induced anaphylaxis, FDEIAn)を疑い原因食物の精査を行った.症状誘発時に摂取頻度の高かった卵・乳・大豆と, FDEIAnの原因食物として頻度の高い小麦について, それぞれの食物摂取後の運動負荷試験を施行したが全て陰性であった.詳細な問診から4回のエピソードで温州みかんを摂取していたことや, 同じ柑橘類であるオレンジ・グレープフルーツの特異的IgEが陽性であったこと, スキンプリックテスト(skin prick test, SPT)が陽性であったことから温州みかんを原因食物として疑い, アスピリンを併用した温州みかん摂取後の運動負荷試験を行ったところアナフィラキシー症状が誘発されたため, 温州みかんによるFDEIAnと診断した.多数の柑橘類でSPT陽性を示したため柑橘類の完全除去を指示したところ, それ以後アナフィラキシー症状は認めていない.FDEIAnの原因食物として柑橘類も認識しておく必要がある.</p>
著者
林 大輔 青木 健 柴田 瑠美子 市川 邦男
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.59, no.12, pp.1628-1633, 2010

症例は6歳男児.現在までにアサリ以外は貝類を含む食物のアレルギーはない.2歳よりアサリ摂取後に嘔吐を繰り返しているため近医を受診したが,アサリ特異的IgEが陰性であり,精査のため当院に紹介された.アサリ特異的IgEは1.04UA/mlでスキンプリックテストは膨疹径4mmであった.生アサリによるパッチテストは陽性,リンパ球刺激試験も陽性(5305cpm,SI=1211%)であった.ゆでたアサリによる経口負荷試験では摂取2時間後に腹痛と嘔吐が出現,末梢血好中球数も負荷前の2924/μlから負荷6時間後に16082/μlまで増加した.これらの検査所見よりアサリによるFood protein enterocolitis syndrome(FPEIS)と診断した.現在まで貝類によるFPIESの報告はなく,本報告が初となる.
著者
山口 由衣 内田 敏久 大鈴 博之 池澤 善郎
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.53, no.1, pp.34-37, 2004

30歳女性.平成14年9月19日,発作性上室性頻拍に対する電気生理学的検査,カテーテルアブレーションを施行開始30分後より,呼吸困難,全身に〓痒を伴う皮疹が出現した。収縮期血圧62mm Hgとなりアナフィラキシーショックと診断され,加療により1時同程度で全身状態は回復した。術中使用した局所麻酔薬や抗生物質の薬剤アレルギーを疑い皮膚テスト・再投与を施行したが症状は誘発されず否定的であった.次いでラテックスアレルギ一を疑った.スキンプリックテストで強陽性,ラテックスのCAP-RASTは10.8 UA/ml を示し,結果として術者手袋に含まれるラテックスが原因のアナフィラキシーショックであることが示唆された.近年,ラテックスアレルギーについて少しずつ認識が高まり,麻酔科医による詳細な術前問診などの対応がみられている.しかし,自験例のように手術室で行われないような処置において対策のとられていないことが多い.また,原因不明のアナフィラキシーで薬剤アレルギーが疑われている症例において,ラテックスアレルギーの可能性があり注意が必要である.
著者
角谷 千恵子 荻野 敏 池田 浩己 榎本 雅夫
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.55, no.5, pp.554-565, 2006

【目的】第2世代抗ヒスタミン薬7剤について,スギ花粉症に対する初期療法の有効性ならびにcost qualityの比較を行った.【方法】2003年のスギ花粉飛散期に大阪・和歌山地区の耳鼻咽喉科外来において初期療法に関するアンケート調査を行った.【結果】単剤療法を受けていた症例は,アゼラスチン15例,セチリジン15例,エバスチン36例,エピナスチン16例,フェキソフェナジン16例,ロラタジン群60例,オキサトミド群17例であった.無治療群510例を対照群とし,比較を行ったところ,全般症状改善度,くしゃみ,鼻汁および眼の痒みの程度に8群間で有意差が認められた.一方,7薬剤間に有意な有効性の差は認められなかった.各薬剤について「有効例1例を得るために必要な薬剤費」を算出したところ,cost qualityに優れる上位3剤は,アゼラスチン,ロラタジン,フェキソフェナジンであった.【結語】第2世代抗ヒスタミン薬7剤の有効性に明らかな差はなく,そのcost qualityには薬価が大きく関連していた.
著者
丹羽 靱負 前田 正人
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.32, no.2, pp.61-71, 1983-02-28 (Released:2017-02-10)
被引用文献数
1

BCG, picibanil, levamisoleなどの免疫賦活剤は, 腫瘍や自己免疫疾患の治療に広く使用されている.これらの薬剤の薬理作用は, リンパ球の面からしばしば研究結果が報告されている.丸山ワクチンも, その薬理作用は不明であるが, 制癌剤として臨床家に使用されている.近年食細胞の産生する活性酸素(OI)が, 強力な抗菌作用を有し, 自己防衛上重要な役割を演じていることが明らかにされてきた.更に, 制癌剤Bleomycinなどの制癌作用も, OI中最も強力な作用を有するといわれているOH・の産生を増強させ, OH・が癌細胞内の核を破壊させることにより癌治療に有効であると報告されている.一方, OIの過度な増加は, SLEやリュウマチ(関節液)などにおけるリンパ球障害や異常なリンパ球の反応性の何らかの原因となっていることも証明されている.以上の事実より, われわれは, これら4剤のヒト好中球の貪食能, ライソゾーム酵素(β-glucuronidase, Lysozyme)分泌能および, OI(O^-_2, H_2O_2, OH・) およびchemiluminescence産生能に与える影響を中心に検索した.結果, BCGの使用全濃度と低濃度丸山ワクチンは著明にOIを増強させ, 一方, levamisole全濃度と高濃度丸山ワクチンは高度にOIを減産させた.
著者
原田 晋 松永 亜紀子 宮地 里江子 正木 太朗 森山 達哉
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.56, no.12, pp.1515-1521, 2007-12-30 (Released:2017-02-10)
参考文献数
20

【目的】スパイスアレルギーは特に北欧諸国からは多数の報告が認められるが,本邦での報告は稀である.今回,当科で経験した2症例に対して諸検査を施行し,本症の発症機序に関する考察を加えた.【方法と対象】臨床経過からセリ科スパイスアレルギーと考えられた2症例に対して,花粉類・食物類の特異的IgEの測定,スパイス類・セリ科野菜類のプリックテスト・Immunoblotを施行した.但し,症例1 32歳男性では花粉症の既往はなく,症例2 46歳女性は春夏秋を通して花粉症症状を有していた.【結果】症例1では花粉類の特異的IgEは弱陽性のみ.Immunoblotは10〜12kDaおよび60kDaの部位で陽性.症例2では多数の花粉類の特異的IgEが陽性.Immunoblotは14kDaおよび60kDaの部位で陽性.プリックテストは2症例共にセリ科のスパイス類で強陽性を示し,セリ科のスパイスアレルギーと診断した.【結論】以上の結果より,症例1はスパイス自体の感作によるクラス1アレルギーを,症例2は花粉類との交叉反応により発症したクラス2アレルギーを疑った.本症には,このように複数の発症機序が存在するのではないかと推測される.本邦においても,今後スパイスアレルギーの発症が増加する可能性も考えられ,注目すべきアレルゲンである.
著者
阪口 雅弘 井上 栄 吉沢 晋 菅原 文子 入江 建久 安枝 浩 信太 隆夫 今井 智子
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.40, no.4, pp.439-443, 1991-04-30 (Released:2017-02-10)
被引用文献数
4

布団内のダニアレルゲンの除去方法として, 1) 真空掃除機による吸引, 2) 布団たたきと真空掃除機の組み合わせ, 3) 機械式丸洗い, の3法を比較した. 布団内ダニアレルゲン量は, 布団内15箇所から綿を取り出し, アレルゲンを水に抽出して, 主要アレルゲン (Der f I, II; Der p I, II) の絶対量を免疫化学的に測定した. また, 布団をたたいてアレルゲンを空気中に放出させ, それをエアサンプラーを用いて集め, 定量した. 真空掃除機およびそれに布団たたきを併用した場合には, 布団内アレルゲン量の減少は40%前後であった. 機械丸洗いでは業者によるアレルゲン除去率の違いがあったが, ある業者では除去率は90%以上であった. また空気中に発生するアレルゲン量も, その業者では90%以上減少した. したがって, 布団から発生するダニアレルゲンによる暴露を減らすためには,布団の機械式丸洗いは, 布団たたきや掃除機法に比較して有効な方法である. ただし, 丸洗いによるアレルゲン除去率は, 業者によって違いがあった.