著者
鳥羽 剛 西牟田 敏之 斎藤 裕康 矢野 靖子 山口 正敏 船橋 茂 久保 政次 吉田 亮
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.21, no.9, pp.608-613,633, 1972

臍帯血清から成人まで健康者血清 207検体につき, immuno-plate^[○!R]を用いてIgG, IgA, IgM を測定し, 測定値の分布が対数正規分布であることを検定して後, 次のような平均値, およびその上下2標準偏差の範囲を得た.1) IgG は, 臍帯血清で 1126 (504-2513) mg/dlを示し, 4-6ヵ月に 511 (236-1104) mg/dlを最低になり, 以後漸増して3-4才で成人値の70-80%に達する.成人値は, 1312 (821-2099) mg/dlであつた.2) IgA は, 臍帯血清では大部分の検体で検出されず, その後の上昇速度もこれら3者の中で最も遅く, 7-9才に至り成人値の70-80%に達する.成人値は 251 (133-475) mg/dlであつた.3) IgM は, 臍帯血清では16 (8-30) mg/dlで成人値の14%程度に存在し, その後の上昇は非常に早く, 1才-1才半で成人値の70-80%に達する.成人値は, 108 (44-264) mg/dlであつた.これらの値は, 本邦小児の正常値および範囲として臨床応用できると考えられる.
著者
米山 宏 鈴木 まゆみ 藤井 浩一 小田島 安平
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.49, no.7, pp.585-592, 2000
被引用文献数
3

三種混合ワクチン(DPT)接種とBCG接種によるアトピー性疾患発現効果と抑制効果について検討するために, 東京都神津島村在住の0歳から3歳の全小児82名, 小学1年生全生徒31名および中学1年生全生徒30名, 合計143名を対象として調査を行った.0歳から3歳児では, DPT接種群におけるアトピー性疾患(22/39人, 56.4%), 気管支喘息(10/39人, 25.6%)の各頻度は非接種群におけるそれぞれの頻度(4/43人, 9.3%, 1/43人, 2.3%)に比して有意に高率であった(p<0.01).またアトピー性皮膚炎の頻度(7/39人, 18.0%)も非接種群(1/43人、2.3%)に比して有意に高率であった(p<0.05).小学1年生では, ツベルクリン反応陽性者にアトピー性疾患を有するものはなかった.しかし, 中学1年生では関連はみられなかった.以上より, DPT接種はアトピー性疾患の発現に促進的に作用する可能性を持ち, BCG接種はアトピー性疾患の発現を抑制するが, その抑制効果はかならずしも持続的なものではない可能性があると考えられる.
著者
横田 聡 御舩 尚志 光延 文裕 保崎 泰弘 芦田 耕三 柘野 浩史 谷崎 勝朗 斎藤 勝剛 多田 慎也 原田 実根
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.46, no.6, pp.511-519, 1997
被引用文献数
4

気管支喘息患者25例 (男性10例, 女性15例, 年齢平均60歳) に対して, 当院に入院のうえ複合温泉療法 (温泉プール水泳訓練または歩行訓練, 鉱泥湿布療法, ヨードゾル吸入療法) を行い, 温泉療法の心理的・精神的要素に対する効果の評価を目的として, 入院時と退院時に心理学的検査 (CMI, SDS, およびCAI) を実施し, 比較検討を加えた。(1) CMIでは, 呼吸器系およびCIJ症状に改善がみられたが, 精神的自覚症では有意差はなかった。(2) 温泉療法後, SDSの平均値は38.7から34.2へ有意に改善し, SDS値≧40の症例も12例から3例に減少した。(3) CAIの各心理項目でスコアの有意な低下が観察され, 特に予後悲観と治療意欲の減退の項目でその割合が大きく, 各項目の平均値であるCAIスコアでも, 37.9から28.4へ有意な低下を認めた。複合温泉療法により, 気管支喘息の心理的・精神的要素の関与する症状, および, うつ的, 神経症的状態が改善されることが示唆された。
著者
平井 聖子 山本 貴和子 樺島 重憲 福家 辰樹 庄司 健介 小澤 克典 左合 治彦 大矢 幸弘
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.72, no.10, pp.1223-1229, 2023 (Released:2023-12-13)
参考文献数
25

【背景】抗菌薬アレルギー(Antimicrobial allergy:AA)の申告の多くは,真のアレルギーでないといわれている.近年,妊婦においても,AA評価は安全に実施できるという報告が増えている.【目的】AA疑いの妊婦に対する分娩前のAA評価の有用性について,検討することを目的とした.【方法】対象は,AAを申告しアレルギーセンターに紹介された妊婦とした.問診・皮膚テストを行い,分娩時に使用できる薬剤を選定した.【結果】合計25症例(のべ24妊婦)が対象となり,最多の被疑薬はセフェム系で13例(52.0%),次いでペニシリン系で9例(36.0%)であった.問診のみでAAを否定された妊婦は5例で,即時型10例,非即時型6例,不明4例であった.分娩時に抗菌薬が必要と判断された21名全員が当センターが定める第一選択薬(βラクタム系)を使用し,手術部位感染を認めなかった.抗菌薬使用によるアレルギー反応は,認めなかった.【結論】AAを申告した妊婦に対して,分娩前にAA評価を行い,分娩時に安全に第一選択抗菌薬を使用できた.
著者
小林 知子 伊藤 友章 瀬下 治孝 江草 智津 原田 和俊 大久保 ゆかり 新妻 知行
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.72, no.8, pp.1046-1050, 2023 (Released:2023-09-20)
参考文献数
8

症例1は10代女性.6歳から緑豆もやしを食べると口唇の腫脹と口腔内違和感が出現.症例2は20代男性.もやしラーメンを食べたあとにアナフィラキシーショックで当院救命救急センターへ搬送された.2症例ともprick-to-prick testで緑豆もやしに陽性をしめした.さらに症例2は大豆もやしにも陽性となった.また2症例で,バラ科果実でprick-to-prick test施行したところ陽性をしめし,シラカンバ,Gly m4,Bet v1に対する特異的IgEが陽性であった.緑豆もやしは,Vig r1のアレルゲンコンポーネントをもつため,PR-10ファミリーに属す.本邦では緑豆もやしを常食しているが,アレルギーの報告が少ない.しかし,シラカンバアレルギー患者で交差の可能性がある場合は,適切に検査したうえで緑豆もやしアレルギーと診断し,アレルギー専門医はpollen-food allergy syndrome(PFAS)について詳細な食事指導する必要がある.
著者
河本 正次
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.69, no.2, pp.105-109, 2020 (Released:2020-03-17)
参考文献数
20
著者
中川 武正 吉野谷 定美 高橋 孝喜 宮本 昭正 西村 浩 早川 哲夫 信太 隆夫
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.36, no.4, pp.184-189, 1987-04-30 (Released:2017-02-10)

卵が原因食物と推定された成人気管支喘息症例において経口摂取誘発試験を実施した結果, 5例中3例が喘鳴を呈して誘発陽性と判断された.誘発試験前後での血清中ovalbumin特異的IgGサブクラス抗体およびC1q結合性免疫複合体の変動をあわせて検索したが, 5例中1例において卵摂取15分後に血中IgG 1抗体の低下, 免疫複合体の増加を認めた.本例では摂取8時間後に1秒量の低下をともなう喘息症状を認めており, あたかもIII型アレルギー反応が症状発現に関与している印象をうけた.なお, 卵アレルギーにおけるIgG 4抗体の役割に関してもあわせて言及した.
著者
鳥羽 聡史 石井 寛 山形 英司 泥谷 純子 門田 淳一
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.62, no.8, pp.980-985, 2013-08-30 (Released:2017-02-10)

胸痛をともなう難治性喘息に対して非侵襲的陽圧換気(noninvasive positive pressure ventilation; NPPV)を使用し,改善を認めた2例を経験した.2例はいずれも女性で,治療ステップ4でも喘息コントロールに乏しく,胸痛によるQOL低下もきたしていた.外来で30分程度のNPPVを試行したところ症状の改善を認めたため,間欠的な在宅NPPVを導入した.NPPVは3〜5カ月間使用したが,いずれの症例も喘息コントロールの改善とともに胸痛も消失したため,NPPVを離脱した.呼吸機能については,肺活量や一秒量の変化は認めなかったものの,末梢気道狭窄の指標となるV^^・50やV^^・25が改善した.胸痛をともなう難治性喘息では,非薬物療法であるNPPVが末梢気道の気流制限を改善することで,QOL向上の一助になる可能性が示唆された.
著者
森川 みき 金光 祥臣 塚本 宏樹 森川 昭正 富岡 佳久
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.65, no.3, pp.200-205, 2016 (Released:2016-05-19)
参考文献数
8
被引用文献数
1

症例は,牛乳アレルギーおよび気管支喘息既往歴を有する6歳女児.インフルエンザB型に罹患し,ラニナミビルオクタン酸エステル水和物吸入粉末剤(イナビル®)を使用後にアナフィラキシーを起こした.プリックテスト並びに薬剤刺激好塩基球活性化試験を実施したところ,イナビル®と添加剤の乳糖水和物に陽性を示し,ラニナミビルオクタン酸エステル水和物は陰性を示した.本症例では,添加剤の乳糖に夾雑する乳タンパク質がアレルゲンとなった可能性が考えられ,その同定を試みた.ウェスタンブロット(WB)により,添加剤の乳糖水和物中からβ-ラクトグロブリン(β-LG)が検出され,その分子量およびin vitro実験の結果から糖鎖付加体であると推定した.さらに患者血清を用いたWBの結果から,本症例のアレルゲンが,糖鎖付加されたβ-LGである可能性が高いと判断した.本研究は,吸入粉末製剤の添加剤乳糖が乳アレルギーを起こす危険性を示す結果となった.本症例のようなインフルエンザ患者は,気道過敏性が亢進しているため特に注意が必要である.