- 著者
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堀内 俊晴
- 出版者
- 一般社団法人 日本アレルギー学会
- 雑誌
- アレルギー (ISSN:00214884)
- 巻号頁・発行日
- vol.21, no.4, pp.336-345,365-36, 1972
- 被引用文献数
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Mycoplasma pneumoniaeに起因する上気道および肺の感染症の頻度の高いことは知られている.私はMycoplasma pneumoniaeが気管支喘息の起因抗原となりえるかどうかを検索するために, Mycoplasma pneumoniaeのMac株より作製した3種の抽出液を用いて, 気管支喘息患者に皮内反応, PK反応, ヒスタミン遊離試験, 吸入試験を行ない, またウサギおよびモルモットについて, 本抽出液の抗原性について検討し, 以下の結果をえた.1)気管支喘息患者に対する皮内反応即時型陽性者は, 粗抽出液では322例中31例(9.3%), G-75 fractionでは103例中10例(9.7%), 膜浮遊液では23例中1例(4.3%)であった.健常者では, 粗抽出液による皮内反応即時型陽性者は34例中1例(2.9%)であった.粗抽出液にて即時型陽性の喘息患者にPK反応を施行すると17例中9例(52.9%)が陽性であった.この9例につき吸入試験をおこなうと2例が陽性であった.G-75 fractionにて皮内反応即時型陽性を示した3例にPK反応を行ない, 2例が陽性であった.粗抽出液による皮内反応遅延型陽性者は, 気管支喘息患者32例中4例(12.5%), 健常者22例中2例(9.0%)であった.しかし遅延型陽性者のなかには, PK反応ならびに吸入試験陽性者はなかつた.すなわちMycoplasma pneumoniae抽出液による皮内反応では, 即時型に意義があると考えられた.2)吸入試験陽性, PK反応陽性ならびに皮内反応即時型陽性者1例に滅感作療法を実施し, 3ヵ月目に発作の寛解ついで消失がみられた.3)皮内反応即時型反応陽性, 同時にPK反応陽性でしかも減感作療法未施行の喘息患者4例にヒスタミン遊離試験をおこなうと, 1例に陽性であった.4)Mycop1asma pneumoniae抽出液は, ウサギならびにモルモットに対して感作可能であるが, 感作モルモットに対する吸入性抗原としての意義は明らかでなかった.以上よりMycop1asma pneumoniaeは気管支喘息患者の原因抗原となりえる場合があり, そのアレルギー学的検索は意義あるものと考える.