著者
外川 昌彦
出版者
日本文化人類学会
雑誌
民族學研究 (ISSN:00215023)
巻号頁・発行日
vol.57, no.2, pp.174-196, 1992-09-30

本稿は, ベンガル・ヒンドゥの最大の年中行事であるドゥルガ・プジャの祭祀組織の分析を行っている。今日のドゥルガ・プジャの拡大は, 祭主と崇拝者とが一元化したコミュニティ・プジャの確立によって, もたらされたと考えられる。そのことは, イギリス植民地統治の前後にわたる, ヒンドゥ王権の祭祀, 英領期の富裕層の祭祀, 独立運動下の民衆の祭祀組織を通して検討され, 祭主と崇拝者の差異化とその一元化という祭祀構造の変化が指摘される。更に今日のコミュニティ・プジャにおける, 人々の主体的な参加と自立的な祭祀組織の形成を, カルカッタ市街地の調査事例を踏まえて検証する。歴史的事例と調査事例とは対照され, そこに階層化と平等化の構造的ベクトルが作用していることが指摘される。王権の解体と人々の自立的な祭祀の解釈が, この祭祀組織の構造変化をもたらし, 今日のドゥルガ・プジャの拡大を可能にしたことが示されるであろう。
著者
江上 波夫
出版者
日本文化人類学会
雑誌
民族學研究 (ISSN:00215023)
巻号頁・発行日
vol.13, no.3, pp.278-284, 1949

Many prehistoric forts (the so-called gorodishches) have been found in Russia, particularly in the Volga-Kama area and in Western Siberia, which some date as far back as 800 B. C., most are from the turn of the Christian era, that is, Bronze and Iron Age. They are believed to have been built by ancient Finno-Ugric peoples. These forts resemble the Aino chash or chashkot very closely, both in ground plan and construction of the forts, and in the abundant bone implements which they contain. The author is therefore inclined to conclude that ancient Finno-Ugric culture elements may have been transmitted to the Aino, or conserved by them with other Continental culture elements from the West.
著者
陳 荊和
出版者
日本文化人類学会
雑誌
季刊民族學研究 (ISSN:00215023)
巻号頁・発行日
vol.17, no.3, pp.203-221, 1953-10
著者
浜口 尚
出版者
日本文化人類学会
雑誌
民族學研究 (ISSN:00215023)
巻号頁・発行日
vol.51, no.3, pp.289-295, 1986-12-30
著者
高宮 広土
出版者
日本文化人類学会
雑誌
民族學研究 (ISSN:00215023)
巻号頁・発行日
vol.63, no.3, pp.283-301, 1998-12-30

日本列島における稲作に関するテーマのなかで, 最も関心を持たれているテーマのひとつは「水稲稲作のルート」であろう。今日, 日本列島への水稲稲作のルートとして, 大別して, 北方説, 江南説, および南方説の三仮説が提唱されている。現時点において, 江南説が最有力視されているが, 他の二仮説も100%否定はされていない。本論では, そのうち, 「海上の道」説としても知られている南方説の検証を試みる。柳田国男による「海上の道」説提唱以後, この説は多くの研究者を惹きつけてきた。その大きな要因は, おそらく柳田国男という民俗学者が提唱したことおよびこの説が研究者に大きなロマンを抱かせるからであろう。本論では, まず, 柳田説を含む南方説の可能性を考古学的および民族・民俗学的・植物学的資料等をもとに概観した。その結果, 考古学的資料からは「海上の道」説を強く支持するという資料は得られなかったが, ここ十数年ほどで蓄積した他の分野による資料は南方からイネが本土へ導入された可能性を示唆するものであった。次に, 沖縄先史時代における植物遺体分析をもとに柳田の「海上の道」説を検討した。弥生∿平安並行期前半の遺跡である高知口原貝塚(弥生期)および同期後半の遺跡である那崎原遺跡(8∿10世紀)においてフローテーションを実施し, 回収された炭化植物遺体の同定を試みた。結果は, 考古学的資料と同様に「海上の道」説を否定するものであった。
著者
三瀬 利之
出版者
日本文化人類学会
雑誌
民族學研究 (ISSN:00215023)
巻号頁・発行日
vol.64, no.4, pp.474-491, 2000-03-30

19世紀西欧の物質文化の大きな変化, それは膨大な数の統計表が作成され, 「印刷された数字の氾濫」が起きたことであった。様々な領域で革命的波紋をもたらすことになるこの変化は, 「国家の構成要素を数量的に把握することが合理的統治の基礎」とする新たな国家統治の思想と技術誕生の産物でもあった。これまでの人類学史では19世紀の一大事件であったこの統計の熱狂的な作成と人類学の積極的な関係が議論されることはなかった。しかし植民地期インドでは, 例えば, 人類学者として名をなしていた人物の多くがインド帝国センサスの長官職の経験がある行政官であるなど, 両者の間に緊密な関係があった時期があった。本稿では, その陰の立て役者ともいうべき一人の行政官ハーバート・リズレイ(1851-1911)に注目し, なかでも彼の「ベンガル民族誌調査」(1885-7)を, センサスという<統治技術>から<人類学>への重要な結節点にあるものとして詳細に検討する。本稿は, そこでのリズレイの活動およびその後の彼の軌跡を紹介することを通じて, 19世紀の一大事件「印刷された数字の氾濫」がインド亜大陸の人類学に何をもたらしたのかを明らかにする。具体的には, 「ベンガル民族誌調査」の開始と帝国センサスの関係, パリ人類学会の「身体測定技法」のインド人類学における導入過程, 人口センサスと植民地人類学の調査システムの共有といった事例が扱われる。
著者
岩井 大慧
出版者
日本文化人類学会
雑誌
季刊民族學研究 (ISSN:00215023)
巻号頁・発行日
vol.21, no.3, pp.134-140, 1957-08-25
著者
棚瀬 慈郎
出版者
日本文化人類学会
雑誌
民族學研究 (ISSN:00215023)
巻号頁・発行日
vol.56, no.2, pp.159-180, 1991-09-30

本論はインドのヒマーチャル・ブラデッシュ州,ラホール地方のチベット社会における家(キュム)と家族(ジンマ)の問題をとりあつかったものである。キュムは日本のイエに似て,現実の家屋を意味するものと同時にその永続性が前提された一種の法人的な存在であり,社会関係の結節点として固有の文化的価値を有する。一方ジンマは,一つのキュムに所属する,親族関係によって結ばれた人々を指す。キュムとジンマを巡る諸観念や慣習法の中には二つの潜在的に対立的な傾向,すなわちキュムを分割することなく維持しようとする傾向と,ジンマを構成する男性メンバーにキュムの範囲を逸脱した活動を許容する傾向が存在する。この潜在的対立関係は,典型的にはキュムの分裂といったディレンマ状況をもたらすこともあるが,同時にラホール社会の持つ適応性にもつながている。
著者
猪俣 健 青山 和夫
出版者
日本文化人類学会
雑誌
民族学研究 (ISSN:00215023)
巻号頁・発行日
vol.61, no.3, pp.370-392, 1996-12

本稿の目的は,古典期マヤ社会に中心地論を適用し,市場経済の未発達な先産業社会においても,経費の極小化という経済合理性が,集落等の空間配置に大きな影響を与え得ることを示すことである。そのため,ホンジュラス,ラ・エントラーダ地域における調査から得られた古典期マヤ・センターに関するデータの分析を通し,中心地論の理論的モデルに近い経済空間構造が存在したことを論ずる。食料のような嵩張る生活必需品を政治組織の財政基盤としながら,効率的な輸送手段を持たなかった古典期マヤ社会では,移動と輸送におけるコストを極小化することが非常に重要であり,規則的な中心地分布は,その点で最も合理的であったと考えられる。また,人口密度やセンターの規模の違いにもかかわらず,各地のマヤ・センターの間隔がほぼ一貫していることは,各センターの領域が人力による食料等の移動距離により強く規定されていた可能性を示唆する。
著者
服部 四郎
出版者
日本文化人類学会
雑誌
民族學研究 (ISSN:00215023)
巻号頁・発行日
vol.5, no.2, pp.133-141, 1939-03-30
著者
細川 弘明
出版者
日本文化人類学会
雑誌
民族學研究 (ISSN:00215023)
巻号頁・発行日
vol.56, no.1, pp.118-119, 1991-06-30
著者
沼沢 喜市
出版者
日本文化人類学会
雑誌
季刊民族學研究 (ISSN:00215023)
巻号頁・発行日
vol.21, no.1, pp.24-32, 1957-05-30
著者
波多野 完治
出版者
日本文化人類学会
雑誌
民族學研究 (ISSN:00215023)
巻号頁・発行日
vol.1, no.3, pp.555-564, 1935-07-01