著者
横山 彰仁
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.93, no.12, pp.2656-2661, 2004-12-10 (Released:2008-06-12)
参考文献数
10

約25年前に強力な平滑筋攣縮を促す生体内分子としてLTC4, LTD4, LTE4が同定され,現在本邦ではこれらの受容体拮抗薬(LTRA)が3種類使用可能となっている.気管支拡張作用と抗炎症作用を併せ持ち,臨床的に有効な抗喘息薬として,欧米をはじめ多くの国で使用されている.現段階では吸入ステロイドが第一選択の抗炎症薬であることは疑いがないが,そのようななかでもLTRAは重要な治療選択肢としての役割が確立されている.本薬剤は,効果のバラつきが大きく,高価であるといった欠点があるが,経口薬であるためコンプライアンスの上昇や吸入薬がカバーしきれない末梢気道への効果も期待でき,また合併しやすい鼻炎などにも有益である点が優れている.気管支喘息に対し単剤での治療も可能であり,ステロイドとは相補的に作用することから吸入ステロイドの併用薬としても有用であり,すべての治療ステップでの適応がある.
著者
荒井 邦明 山下 竜也 金子 周一
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.103, no.1, pp.37-43, 2014-01-10 (Released:2015-01-10)
参考文献数
4

肝細胞癌サーベイランスを行う高危険群はB型慢性肝炎,C型慢性肝炎,肝硬変症例である.6カ月毎の超音波検査と複数の腫瘍マーカー(AFP/PIVKA-II/AFP-L3分画)測定にてサーベイランスを行うが,超高危険群であるB型肝硬変,C型肝硬変症例においては3~4カ月毎に間隔を短縮することや,危険因子の数,超音波検査での視認性に応じてCTやMRIの併用も考慮される.近年増加している脂肪肝など生活習慣病を背景とした肝発がんに対する効率的なサーベイランス方法の確立が今後求められる.
著者
木村 琢磨
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.107, no.12, pp.2420-2429, 2018-12-10 (Released:2019-12-10)
参考文献数
8
被引用文献数
2

老年症候群(geriatric syndrome)とは,高齢者にありふれた,非常に多岐に亘る心身の諸症状・兆候の総称である.日常生活の自立を妨げることが多く,医学的介入と同時に介護・ケアが必要となることが多い.高齢者総合的機能評価(comprehensive geriatric assessment:CGA)とは,高齢者,特に虚弱高齢者を身体面,精神・心理面,社会・環境面等から多面的に評価するためのツールである.評価によって高齢者の問題点を整理し,治療・ケア計画や生活機能の改善に活かす.
著者
日下 博文
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.93, no.8, pp.1563-1566, 2004-08-10 (Released:2008-06-12)
参考文献数
18

糖尿病性筋萎縮症は糖尿病でみられる末梢神経障害としては比較的まれなものである.典型的には一側下肢近位部の疼痛,筋力抵下,筋萎縮を呈する.突然疼痛で発症し,遷延性の経過をとり,強い痛みと麻痺が持続する.特異な臨床像からひとつの疾患単位であると考えられているが,その病因や病変の局在についてはいまだ意見の一致をみない.しかし,最近免疫療法(γグロブリン療法,副腎皮質ホルモン,免疫抑制薬,血漿交換)の有効性が指摘されている.

3 0 0 0 OA ショック

著者
鈴木 昌
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.100, no.4, pp.1084-1088, 2011 (Released:2013-04-10)
被引用文献数
1
著者
忽那 賢志
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.107, no.11, pp.2276-2281, 2018-11-10 (Released:2019-11-10)
参考文献数
14

近年,エボラウイルス病や中東呼吸器症候群(middle east respiratory syndrome:MERS)等の新興・再興感染症が次々と現れている.医療従事者は感染のハイリスク群であり,疾患の特徴や感染経路について十分な知識を持ち,適切な感染対策を行うことが自身を守ることにつながる.
著者
今井 圓裕
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.88, no.8, pp.1454-1458, 1999-08-10 (Released:2008-06-12)
参考文献数
6
被引用文献数
1

電解質異常に起因する間質性腎障害は低K血症と高Ca血症が重要である.低K血症は尿細管でアンモニア産生が増加し,尿細管間質で補体が活性化されることおよび嚢胞形成が促進されることにより腎障害が進展する.高Ca血症ではCaにより細動脈収縮がおこり糸球体濾過量が減少する.また,高Ca血症による多尿は尿細管のCaセンサーを介したシグナルによるNaCl再吸収低下とADH作用抑制により浸透圧勾配が不全になるためにおこる.
著者
溝渕 雅広 濵内 朗子 佐光 一也
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.105, no.8, pp.1388-1394, 2016-08-10 (Released:2017-08-10)
参考文献数
15

妊娠適齢期の女性に対する抗てんかん薬治療で注意することは,1)結婚以前から催奇性を含めた情報を伝える,2)挙児希望するときは早期から投薬の調整を行う,3)安全な妊娠の継続・出産ができるよう発作の抑制に留意し,産科医と連携する,4)母乳の授乳は可能である,5)催奇性,低IQ(intelligence quotient)児・自閉症スペクトラム障害の頻度が増加するため,できる限りバルプロ酸は避ける,6)産後うつに注意し,周囲の協力を助言する.
著者
田中 廣壽 吉川 賢忠 山崎 広貴 上原 昌晃 小田 彩
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.107, no.7, pp.1373-1384, 2018-07-10 (Released:2019-07-10)
参考文献数
24
被引用文献数
1

骨格筋は,運動や姿勢保持のみならず,全身のエネルギー代謝調節においても基幹的役割を担っている.近年,骨格筋によるエネルギー代謝調節は,栄養状態のみならず,筋が受ける機械的刺激(張力等),酸素濃度,性ホルモン,時計遺伝子産物等の多彩な因子によって精緻な調節を受けることが明らかになってきた.また,骨格筋由来の代謝産物やサイトカイン様物質が他臓器機能を異所性に制御することも注目されている.今回,筆者らは,ステロイドによって誘発される筋萎縮(ステロイド筋症)の克服に向けて,骨格筋量制御におけるステロイドとその受容体の役割とともに,骨格筋―肝臓―脂肪シグナル軸を発見し,骨格筋による遠隔臓器の代謝,特に脂肪組織制御の分子機構の一端を解明した.本研究は,骨格筋と個体レベルのエネルギー代謝との連関―メカノ―メタボ カップリング―を医療に応用・展開する新しいパラダイムの構築に貢献するのみならず,多数の臓器システムの連関から生体を理解することの重要性を示している.

3 0 0 0 OA 5.診断病理学

著者
真鍋 俊明
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.91, no.11, pp.3185-3189, 2002-11-10 (Released:2008-06-12)
参考文献数
5
著者
大門 雅夫
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.105, no.2, pp.245-252, 2016-02-10 (Released:2017-02-10)
参考文献数
9

感染性心内膜炎は,高齢化社会や心臓デバイス治療などの発展に伴い,高齢者での罹患例が増えている.罹患例では死亡率も高く,迅速な診断と適切な抗菌薬治療が重要である.また,引き続く心不全や塞栓症は重要な死因であり,リスクの高い例では早急な外科手術が必要になる.治療方針決定には,血液培養による原因菌の同定が最重要である.また,ハイリスク患者には,あらかじめ予防の重要性を説明しておく必要がある.
著者
近藤 光子 玉置 淳
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.101, no.12, pp.3525-3532, 2012 (Released:2013-12-10)
参考文献数
11
被引用文献数
1 2

気道分泌は,粘液線毛輸送系の構成成分として肺における生体防御機構の維持に重要である反面,気道分泌の増加や喀出困難は日常生活の障害,気道感染の助長,換気障害をもたらす.気管支喘息ではムチン分泌亢進,アルブミンの漏出,好酸球による気道上皮障害から粘調な痰となり喘息死とも関連する.COPDでは過分泌はその増悪に関わり予後に影響を与える.近年,ムチン分泌の亢進や杯細胞化生の制御には上皮増殖因子受容体やインターロイキン13が関わっていることが明らかになった.気道分泌の治療には粘液産生の低下,分泌反応の抑制,分泌物の排除の促進の3つの方法がある.病態に応じた治療法の選択を行うことが基本であり,好酸球性炎症による過分泌には吸入ステロイド,抗ロイコトリエン薬などが,好中球性炎症による過分泌にはマクロライド,抗コリン薬などが用いられる.分泌物の排除の促進にはβ刺激薬や去痰薬,理学療法が用いられる.
著者
照屋 勝治
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.102, no.12, pp.3244-3252, 2013-12-10 (Released:2014-12-10)
参考文献数
16
被引用文献数
1

HIV(human immunodeficiency virus)感染症は単なる「細胞性免疫不全を来す疾患」ではなく,慢性ウイルス血症による「全身性炎症性疾患」であり,それに伴い虚血性心疾患のリスク増加を含む,多様な病原性を示すことが明らかになってきている.治療開始時期は次第に早期化へ向かっており,米国では2011年にHIV感染者全員を治療の適応とする推奨がなされた.二次感染者を減少させるという予防戦略としての“treatment as prevention”という概念や,非HIV感染者に曝露前予防として抗HIV薬を用いることにより二次感染を予防しようとする試み(PrEP)も始まっている.かつては致死的疾患であったHIV感染症は,治療薬の進歩により患者の生命予後は著明に改善した.しかしながら,長期服薬に関連する既知および未知の副作用の懸念や,薬剤耐性ウイルスの蔓延リスクなどの懸念もあり,決して予断を許す状況ではない.一方,予後の改善に伴う患者の高年齢化により,これまでにはなかったさまざまな問題に対する対策の必要性も出てきている.
著者
高平 好美 安川 貢 門名 嘉則
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.92, no.12, pp.2446-2452, 2003-12-10 (Released:2008-06-12)
参考文献数
12

平成12年からインフルエンザ流行の観測定点として浜松市保健所予防課および市保健環境研究所と連携し,インフルエンザ対策の診療所として診断および治療についての検討を分担してきた.平成12年には,迅速診断キットによるA型インフルエンザの診断が可能となり,抗インフルエンザ薬による治療として, A型インフルエンザに対するアマンタジンの著明な解熱効果と全身症状の改善が印象的であった.平成13年の秋から, A, B両型の診断可能な迅速キットが登場,更に抗インフルエンザ薬もアマンタジンについでノイラミニダーゼ阻害薬も登場したが, A型インフルエンザに対するアマンタジンと,オセルタミビルとの間に臨床効果に差を認めなかった.平成14年はインフルエンザに対する抗ウイルス薬とマクロライド併用の臨床効果を検討したが,その結果,平熱に至るまでの時間に対する併用効果は認められなかったが,咳には減少効果を認めた.アマンタジンおよびオセルタミビルの併用では著明な臨床症状の改善を認めたが,罹患者でのウイルスの消長とは一致しなかった.平成15年, A香港, B型インフルエンザの抗インフルエンザ薬の効果と抗体産生に及ぼす影響を検討したが,抗体上昇の程度は低い傾向にあると考えられた.典型的なインフルエンザと抗インフルエンザ薬の症例を提示した.
著者
加藤 淳
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.98, no.7, pp.1562-1568, 2009 (Released:2012-08-02)
参考文献数
4
被引用文献数
4

出血傾向は血小板・血管壁,凝固・線溶系,または両方の異常により生じるが,迅速な診断,対応が必要である.スクリーニング検査としては,血小板数,プロトロンビン時間,活性化部分トロンボプラスチン時間でほぼ十分であるが,これらに異常がない場合は出血時間,XIII因子,α2-プラスミンインヒビター,プラスミノゲンアクチベーターインヒビター-1活性,またDICが疑われる場合はフィブリノゲン,FDPを測定する.
著者
頼高 朝子
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.103, no.8, pp.1854-1860, 2014-08-10 (Released:2015-08-10)
参考文献数
10

Parkinson病は運動症状発症前より睡眠障害,うつ,嗅覚障害,痛み,便秘等の自律神経障害が伴っていることが多くのコホート研究から判明し,早期診断の助けになっている.一方で非専門医への受診につながり,より診断が遅れやすい.便秘は約18年前から,REM睡眠行動異常症は約10年前から,嗅覚障害は2~7年前から,過眠は数年前から3大運動症状である振戦,歯車様固縮,無動に先行する.