3 0 0 0 OA 1.脳動脈解離

著者
後藤 淳
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.98, no.6, pp.1311-1318, 2009 (Released:2012-08-02)
参考文献数
20
被引用文献数
1

脳動脈解離は,脳梗塞や解離性動脈瘤破綻によるくも膜下出血など,虚血性・出血性脳卒中のいずれの原因にもなる注意すべき脳血管障害である.画像診断の進歩や認識の高まりから診断される機会が増えている.近年,本邦では複数の多施設共同研究で,頭蓋内椎骨動脈解離が多い実態が明らかにされつつある.頭痛や頸部痛を伴う虚血性脳卒中では必ず本疾患を疑い,慎重な問診,診察とともに血管壁を経時的に評価する画像検査が重要である.
著者
鷲田 和夫 加藤 有希子 川又 純 高橋 良輔
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.98, no.1, pp.147-149, 2009 (Released:2012-08-02)
参考文献数
7

症例は58歳,男性.パーキンソン病発症14年目に寡動が増悪したため,非麦角系ドーパミンアゴニストであるプラミペキソールの投与を開始したところ深刻な病的賭博症状が出現した.薬剤変更により病的賭博行為は可逆的かつ速やかに消失したが,社会経済的に不可逆的な損害が生じた.病的賭博の発症理由として大脳辺縁系に位置するドーパミンD3受容体へのドーパミンアゴニストによる特異的刺激が関与していると考えられている.
著者
川辺 美穂 前川 理沙 土屋 一洋 日出山 拓人 椎尾 康
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.104, no.10, pp.2193-2200, 2015-10-10 (Released:2016-10-10)
参考文献数
10

症例は19歳,男性.聴力障害,左下肢失調および両下肢痙縮による歩行障害で発症した.頭部造影MRIでは脳幹を中心に増強効果を伴う点状の異常信号域が散在性にみられた.ステロイドパルス療法の効果は乏しく,CLIPPERS(chronic lymphocytic inflammation with pontine perivascular enhancement responsive to steroids)症候群を疑い,経口ステロイド内服を開始したところ,下肢痙縮・画像所見ともに改善を認めた.特徴的な画像所見から本疾患を疑い,他疾患を除外したうえで早期に治療を行うことが重要と考えられた.
著者
寺田 清人
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.105, no.8, pp.1375-1380, 2016-08-10 (Released:2017-08-10)
参考文献数
8

てんかん診療における薬剤選択の基本は各種ガイドラインに示されており,まず部分発作にはカルバマゼピン,全般発作にはバルプロ酸を十分量,単剤で用いる.これらの薬剤を使用できない,もしくはこれらの薬剤が無効の場合に第二選択薬を用いる.第二選択薬も無効な場合はてんかんの専門医の受診が推奨される.てんかん診療は包括診療であり,副作用や合併症,治療目標,社会的背景など様々な要因に配慮する必要がある.
著者
谷口 正実
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.95, no.1, pp.148-157, 2006-01-10 (Released:2008-12-12)
参考文献数
33
被引用文献数
3 4 2

NSAID不耐症は, 気道型と皮膚型に分かれる. 前者は, いわゆるアスピリン喘息 (NSAID過敏喘息) であり, プロスタグランディン合成酵素であるシクロオキシゲナーゼ (COX) 阻害作用を持つNSAIDsにより, 強い喘息発作と鼻症状をきたし, 成人喘息の約10%を占める. 一方, 皮膚型は, 慢性蕁麻疹患者に合併しやすい. NSAID過敏喘息の典型的臨床像は, 成人後に発症する非アトピー型重症喘息で, 好酸球性鼻茸副鼻腔炎を合併し, 嗅覚低下を伴うことである. また好酸球浸潤性の中耳炎や胃腸炎を合併することもある. その特徴的病態として, システイニルロイコトリエンの過剰産生があり, 鼻茸副鼻腔がその産生源として重要である. またCOX2阻害薬は安全に使用できることが多くの報告で確認され, 本症の本態は, COX1阻害薬過敏と考えられつつある. 臨床上注意すべき点として, 問診にてもNSAIDs誘発歴の無い症例が少なくないこと, 発作増悪しうるNSAIDsは, あらゆる剤型 (内服や坐薬だけでなく, 貼付, 塗布薬など) が含まれること, 静注用ステロイドの急速静注で発作が増悪しやすいこと, などが挙げられる.
著者
西村 理明
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.107, no.3, pp.586-592, 2018-03-10 (Released:2019-03-10)
参考文献数
10

2009年,血糖値を連続して測定するCGM(continuous glucose monitoring)機器が我が国において承認された.現在,測定したデータをダウンロードして結果を閲覧するCGM機器については,2機種が承認されている.一方,直近の測定値が画面に表示されるリアルタイムCGM機器に関しても,2017年9月に保険点数が確定した.持続皮下インスリン注入療法(continuous subcutaneous insulin infusion:CSII,通称:インスリンポンプ)機器に,リアルタイムCGM機能を追加したsensor augmented pump(SAP)については,2014年から国内での使用が可能となった.さらに,人工知能を活用し,両者を連動させる機器の開発も進行しており,アメリカでは実用化されている.これらの機器の導入により,糖尿病患者における療養指導及び血糖コントロールは,新時代に突入することになるであろう.我が国の糖尿病患者におけるさまざまな負担を少しでも軽減してくれるように,本稿で触れた機器がそのポテンシャルを十分に発揮できる環境が整えられることを強く望む.
著者
荒川 哲男 藤原 靖弘 富永 和作 渡辺 俊雄 谷川 徹也
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.100, no.12, pp.3655-3663, 2011 (Released:2013-04-11)
参考文献数
48

消化管傷害を来たす薬物として,もっとも頻度の高いものは非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)とアスピリンである.これらの薬剤は,整形外科領域やリウマチ内科で消炎鎮痛を目的とし,あるいは循環器や脳神経領域,ならびに代謝内分泌領域で血管イベントの一次,二次予防の目的で頻用されている.しかし,これらの薬剤による有害事象でもっとも多いのが,消化管イベント(出血,穿孔など)であり,消化器内科医とのクロストークがますます重要になってきた.胃酸分泌領域である上部消化管が病変発生の首座を占めるが,最近,小腸が可視化できるようになり,NSAIDs/アスピリンによる小腸粘膜傷害・出血がトピックスになっている.予防・治療に関しては,消化管全体を視野に入れた新しい考え方が必要になってきた.COX-2選択的阻害薬など,NSAIDs側の工夫も重要である.消化管傷害をきたす他の薬剤としては,抗生物質などがあるが,それらについても少し触れたい.
著者
稲垣 豊 住吉 秀明
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.103, no.9, pp.2171-2175, 2014-09-10 (Released:2015-09-10)
参考文献数
19
著者
赤沢 学
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.104, no.11, pp.2343-2350, 2015-11-10 (Released:2016-11-10)
参考文献数
10
被引用文献数
1 1

肺炎球菌ワクチンの接種率向上は,高齢者の医療費を抑制するためにも重要な政策目標である.そのため,65歳以上の高齢者を対象にした定期接種化が実現された.これは,臨床的,医療経済的検討からワクチンによる肺炎球菌感染症の費用削減効果が明らかとなった影響が大きい.一方,新しいワクチンの登場で,その使い分けが新たな問題となっている.費用対効果の実証研究に基づき,肺炎球菌ワクチンの効果をどう考えるべきか概説する.
著者
桑名 正隆
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.98, no.10, pp.2446-2452, 2009 (Released:2012-08-02)
参考文献数
5

膠原病・リウマチ性疾患の診療において,自己抗体検査は診断,病型分類,症状出現や予後の予測,活動性評価にきわめて有用なツールである.ただし,数多くある自己抗体検査を一括して測定するのではなく,それぞれの特性や測定原理を理解し,必要な項目を効率よくオーダーする.また,結果の解釈についても,臨床所見や経過を勘案しつつ判断することが求められる.
著者
藤井 輝久
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.98, no.11, pp.2762-2766, 2009 (Released:2012-08-02)
参考文献数
14

HIVの感染経路として,血液,精液・腟分泌液(性行為による感染),母子感染,の3つが挙げられる.感染が成立するために重要な因子の一つは,血液・体液中のウイルス量であり,感染者の血液・精液あるいは母乳中のウイルス量を抗HIV療法などで0にすることができたら,次の感染は成立しない.今後HIV感染症を診る医療者はただ診療するだけではなく,感染経路を正しく理解した上で,目の前の患者に対し二次感染の予防のために積極的に介入する必要がある.
著者
松山 州徳
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.106, no.3, pp.409-414, 2017-03-10 (Released:2018-03-10)
参考文献数
9

3 0 0 0 OA 3.悪性貧血

著者
廣川 誠
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.103, no.7, pp.1609-1612, 2014-07-10 (Released:2015-07-10)
参考文献数
10
被引用文献数
2 4

悪性貧血は自己免疫化生性萎縮性胃炎による壁細胞の減少が病因であり,内因子の分泌減少によるビタミンB12の吸収障害によって巨赤芽球性貧血が発生する.胃壁細胞および内因子に対する自己抗体が検出され,壁細胞が発現するH-K-ATPaseが抗壁細胞抗体の標的抗原である.ビタミンB12欠乏による非造血系の障害として末梢神経障害,亜急性連合性脊髄変性症,Hunter舌炎がみられる.自己免疫化生性萎縮性胃炎は胃がんおよび胃カルチノイド腫瘍の高リスクである.悪性貧血の治療はビタミンB12の非経口投与である.
著者
小野田 教高 須田 俊宏 木野 紀
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.107, no.12, pp.2513-2517, 2018-12-10 (Released:2019-12-10)
参考文献数
8

72歳,男性.軽微な打撲で上肢に皮下出血を来たし,赤ら顔,満月様顔貌を認め,Cushing症候群が疑われた.3年前より,ベタメタゾン含有製剤を点鼻で継続使用していたことから,外因性ステロイドが原因であることが判明した.被疑薬剤を中止,ヒドロコルチゾンの補充漸減療法にて症状は軽快した.副腎皮質ホルモン製剤は,投与経路にかかわらず,内因性の視床下部―下垂体―副腎系を抑制し得ることを認識する必要がある.
著者
土屋 輝一郎
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.102, no.1, pp.25-31, 2013 (Released:2014-01-10)
参考文献数
10

FGIDは器質的異常を伴わない疾患と定義されてきたが,急性胃腸症などの細菌感染,ウイルス感染症後に消化管の機能障害を慢性的にきたすことが指摘され,上皮細胞構成,免疫担当細胞,炎症性サイトカインなどの器質的変化が明らかにされた.またFGIDにおける腸内細菌叢の変化が近年の解析手法の向上により見いだされ,腸内環境への影響とFGIDの病態,症状との関連が注目されている.
著者
白須 和裕
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.103, no.12, pp.3071-3073, 2014-12-10 (Released:2015-12-10)

内科系学会社会保険連合(内保連)に加盟する学会の中で,女性に特有な疾患を診療する機会のある9学会で女性診療科関連委員会を設立している.この分野における診療報酬上の適切な評価を目指して活動している.2年ごとの診療報酬改定に向けて要望事項を取りまとめ,医療技術評価提案書の作成に際しては委員会内の関連する複数学会が一致して提出することで,その有用性を強調している.女性に特有な疾患に対する医学管理の必要性,有用性についても評価を求めている.
著者
池田 昭夫
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.105, no.8, pp.1348-1357, 2016-08-10 (Released:2017-08-10)
参考文献数
10

「てんかん」(epilepsy)とは,慢性の脳の疾患で,大脳の神経細胞が過剰に興奮するために,てんかん発作が反復性に起こる.発作は突然に起こり,普通とは異なる身体症状や意識,運動および感覚の変化が生じる.反復性の発作(てんかん発作)を唯一の症状あるいは主徴とし,これに種々の臨床症状および検査所見を伴う状態である.病歴上,発作,例えば全身けいれん発作,意識減損発作,意識はあるが身体部位の突発的な症状(=視覚,触覚,聴覚,嗅覚,情動,失語,自律神経症状など),脱力転倒が,1~2分間(短いと数秒間)出現し,いつも同じ症状である.意識減損時は数分間程度のもうろう状態などから回復し,ほぼ元に戻る.
著者
竹内 靖博
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.105, no.4, pp.658-666, 2016-04-10 (Released:2017-04-10)
参考文献数
10
被引用文献数
1

高カルシウム血症と低カルシウム血症は,いずれも症候性であれば適切な緊急対応が必要な病態である.意識障害と急性腎障害の場合は高カルシウム血症を,テタニーと痙攣の場合は低カルシウム血症の可能性を想起することが大切である.また,低カルシウム血症の原因として低マグネシウム血症が潜在する可能性にも配慮する.