著者
岩本 直樹 川上 純
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.103, no.7, pp.1564-1569, 2014-07-10 (Released:2015-07-10)
参考文献数
9
被引用文献数
1

生体は,正常では免疫寛容とよばれる機構により自己抗体の産生を回避しているが,何らかの要因によりその機構が破綻した場合,自己抗体が産生される.その破綻の機序についてはいまだ不明な点が多いが,AIRE遺伝子の異常や,アポトーシスの異常,制御性T細胞の異常,外来抗原との分子相同性機序などいくつかの機序が想定されている.自己抗体産生機序の解明は自己免疫疾患の制圧につながり,その解明が期待される.
著者
赤松 弘朗 山本 信之
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.106, no.6, pp.1096-1100, 2017-06-10 (Released:2018-06-10)
参考文献数
10

非小細胞肺癌における上皮成長因子受容体遺伝子変異の発見とその特異的阻害薬の開発によって,遺伝子変異陽性例の予後は著明に延長した.これまで使用されてきた第1,2世代の阻害薬に加え,2016年にはT790M変異陽性例に対して第3世代の薬剤が承認された.本稿では,新しい知見が続々と報告されているEGFR(epidermal growth factor receptor)遺伝子変異陽性肺癌の治療戦略について概説し,今後の課題を述べる.
著者
上野 卓教 吉澤 利弘 町野 毅 庄司 進一 阿武 泉
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.94, no.11, pp.2382-2384, 2005-11-10 (Released:2008-06-12)
参考文献数
6
被引用文献数
1 1

特発性低髄液圧(Spontaneous intracranial hypotesion: SIH)症候群とは誘因なく髄液圧の低下をきたすことにより起立性頭痛・悪心・嘔吐・めまいなどを呈する症候群である.症例は24歳女性.突然,座位・立位時の嘔気・頭痛が出現した.髄液検査にて圧が0mm水柱であり,ガドリニウム造影脳MRIでは硬膜の肥厚と著明なガドリニウム増強効果,さらに両大脳半球の下垂を認めたため,特発性低髄圧症候群と診断した. MRミエログラフィーにて上部胸椎レベルに髄液と同等の液体貯留を認め,同部位近傍からの髄液漏出が推定された.
著者
廣谷 真 佐々木 秀直
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.102, no.8, pp.1986-1993, 2013-08-10 (Released:2014-08-10)
参考文献数
8

ミオパチーは非常に多くの疾患を含んだ筋疾患の総称である.炎症性筋疾患では多発筋炎と皮膚筋炎が大半を占めるが,封入体筋炎との鑑別も重要である.多くが日常生活に支障を来すため,日常生活動作を意識した病歴聴取を行い,身体診察と併せて迅速に診断・治療を行う必要がある.治療の中心はステロイドであるが免疫抑制薬や免疫グロブリン大量静注療法も有効とされており,早期に正確な診断と適切な治療を行うことが重要である.

3 0 0 0 OA 神経学の伝統

著者
岩田 誠
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.91, no.8, pp.2245-2248, 2002-08-10 (Released:2008-06-12)
参考文献数
12
著者
森澤 紀彦 佐藤 博之 松山 桃子 林 直美 安達 章子 佐藤 順一 横尾 隆 雨宮 守正
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.105, no.12, pp.2432-2440, 2016-12-10 (Released:2017-12-10)
参考文献数
6
被引用文献数
1

TAFRO症候群は,血小板減少(thrombocytopenia),腔水症(anasarca),発熱(fever),骨髄線維症(myelofibrosis),腎機能障害(renal dysfunction),臓器腫大(organomegaly)を特徴とする.症例は66歳,男性.7カ月前に血小板数減少を指摘され,約1カ月前より腹痛,胸腹水貯留が生じた.前医入院後に腎機能障害が出現し,当院転院となり,TAFRO症候群と診断した.比較的急峻な経過を辿るもステロイドおよびシクロスポリンによる治療で改善した.血小板減少を伴う腎機能障害の鑑別にTAFRO症候群を挙げることが肝心である.
著者
堀口 高彦
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.102, no.6, pp.1404-1411, 2013-06-10 (Released:2014-06-10)
参考文献数
14
被引用文献数
1 1

気管支喘息の多様性をフェノタイプ(phenotypes:表現型)の概念から概説した.近年,病態の多様性を客観的に捉えたクラスター解析による分類が行われている.実臨床に有用な分類にアトピー素因,発症年齢による分類があるが,現時点では各フェノタイプごとに治療を選択するには至っていない.今後,実臨床を見据えた個々の症例に合わせた治療戦略の実現のためフェノタイプ分類の確立が望まれる.フェノタイプを考慮して個々の患者に最良の医療を提供する「オーダーメイド医療」の考え方について概説する.
著者
金子 祐子
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.104, no.10, pp.2149-2156, 2015-10-10 (Released:2016-10-10)
参考文献数
8

Sjögren症候群(Sjögren syndrome:SS)は唾液腺炎,涙腺炎を主体とする臓器非特異的全身性自己免疫疾患である.原発性である一次性と他の膠原病に合併する二次性に分類されるが,本邦での有病率は約0.05%と推定され,圧倒的に女性に多い.腺症状のみならず,間質性肺炎,間質性腎炎,末梢神経障害などの腺外症状の出現や,原発性胆汁性肝硬変との合併など,多彩な臓器障害を合併し得る.長らく対症療法のみで対応する疾患という認識が強かったが,近年新しい分類基準,ESSDAI(EULAR Sjögren's Syndrome Disease Activity Index)といった疾患活動性評価基準が作成され,さらに免疫抑制薬や生物学的製剤などの新しい治療薬による病態にアプローチした治療が試みられている.今後の発展が期待される疾患である.
著者
林 伸和
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.106, no.2, pp.279-282, 2017-02-10 (Released:2018-02-10)
参考文献数
3
著者
宮下 修行
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.100, no.12, pp.3490-3496, 2011 (Released:2013-04-11)
参考文献数
10
被引用文献数
1

従来,わが国では市中肺炎診療は主に入院治療が一般的であった.しかし新しい抗菌薬や診断試薬の開発はめざましく,医療費削減(医療費の適正化)の社会的要請から今後は欧米と同様に外来治療がさらに推進され,入院期間の短縮が求められる.さらに耐性菌の出現や蔓延を抑止するため適性抗菌薬使用を考慮しなければならない.その対策として医療の効率化と質の向上を目指したガイドラインは,貴重な参考資料となる.
著者
吉良 潤一
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.105, no.5, pp.894-904, 2016-05-10 (Released:2017-05-10)
参考文献数
40

多発性硬化症(multiple sclerosis:MS)は,若年成人を侵す神経難病では最も多く,中枢神経髄鞘を標的とする自己免疫疾患と考えられているが,証明はできていない.近年,再発や新規病巣の出現を抑制できる疾患修飾薬が次々と開発され,日本でも4種類が臨床応用されるようになった.最初の疾患修飾薬であるインターフェロンベータ(interferon beta:IFNβ)は多面的な作用機序を有し,再発抑制は30%程度に過ぎなかった.しかし,最近では切れ味のよい分子標的薬が開発され,顕著に再発は抑えられるようになった.それでもなお,障害の慢性的な進行を抑制できると証明された疾患修飾薬は開発されておらず,大きな課題として残されている.
著者
滝川 一
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.96, no.9, pp.1876-1882, 2007 (Released:2012-08-02)
参考文献数
8
被引用文献数
2 2
著者
河野 雄平
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.104, no.2, pp.260-267, 2015-02-10 (Released:2016-02-10)
参考文献数
10

高血圧患者の10%以上は二次性高血圧であり,診療においてはその可能性を念頭に置くべきである.特に重症高血圧や急な発症,若年発症の高血圧では可能性が高い.二次性高血圧の大部分は適切な診断と治療により良好な血圧コントロールが得られ,高血圧の治癒が期待できる場合も少なくない.治療抵抗性高血圧は降圧薬の3剤併用でもコントロール不良の高血圧で,服薬アドヒアランスや生活習慣,白衣現象,二次性高血圧,治療薬などの要因を考慮し,適切に対処することが重要である.薬物治療では,十分量の降圧薬を多剤併用し,利尿薬を含めることが原則となる.
著者
浜田 英里 岡本 憲省 奥田 文悟 中村 俊平 川尻 真和 小原 克彦 三木 哲郎 大塚 奈穂子
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.94, no.11, pp.2379-2381, 2005-11-10 (Released:2008-06-12)
参考文献数
10
被引用文献数
1 1

尿閉を呈した脳脊髄髄膜炎2症例の臨床的特徴を検討した.いずれも感冒症状後に意識障害や脊髄症・神経根症を伴って発症し,ステロイドが有効であった点,髄液の細胞蛋白の上昇がみられた点などからウイルス感染を契機とした急性散在性脳脊髄炎(ADEM)と診断した.ステロイドを中心とした治療により神経徴候と尿閉は比較的速やかに改善した.尿閉の成因として無菌性髄膜炎に伴う急性仙髄神経根障害とそれに随伴した一過性の括約筋障害(Elsberg症候群)が考えられた.

3 0 0 0 OA 4.悪性症候群

著者
日域 広昭 山下 英尚 小鶴 俊郎 山脇 成人
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.96, no.8, pp.1627-1633, 2007 (Released:2012-08-02)
参考文献数
5
被引用文献数
1

悪性症候群は統合失調症の治療薬である抗精神病薬の副作用として知られており,これまでは精神科治療における問題と認識されていた.ところが,医療制度の変化や薬物開発によるさまざまな診療科での向精神薬の処方の増加といった医療事情の変化などに伴い,悪性症候群やセロトニン症候群などの周辺疾患は精神科にとどまる問題ではなくなってきている.本稿では,悪性症候群を中心に,鑑別すべき疾患やその対処法について概説した.