著者
光畑 裕正
出版者
順天堂医学会
雑誌
順天堂医学 (ISSN:00226769)
巻号頁・発行日
vol.58, no.5, pp.403-408, 2012
被引用文献数
4

慢性疼痛は複雑な病態を呈し, 治療に難渋することがしばしば見受けられる. 西洋医学的治療で鎮痛が得られない症例で漢方薬が有効なことがある. 抑肝散は抗アロディニア作用があり, 神経障害性疼痛を含む慢性痛に効果がある. 抑肝散は絞扼性神経損傷ラットモデルで抗アロディニア作用を示し, その機序の一つはグルタミン酸トランスポーター活性化によりグルタミン酸濃度を低下させることを筆者らは明らかにした. また慢性痛は冷えを伴うことが多く, 当帰芍薬散, 苓姜朮甘湯, 当帰四逆加呉茱萸生姜湯, 真武湯, 八味地黄丸など冷えを改善する方剤が効果を示す. また慢性痛では気の異常 (気鬱, 気逆, 気虚) を伴うことが多く, 半夏厚朴湯や四逆散, 柴胡疏肝湯など気剤が著効することがある. 慢性疼痛治療の一つの選択肢として漢方は有用である.
著者
小川 鼎三
出版者
順天堂医学会
雑誌
順天堂医学 (ISSN:00226769)
巻号頁・発行日
vol.15, no.1, pp.29-33, 1969 (Released:2014-11-22)
著者
内藤 俊夫
出版者
順天堂医学会
雑誌
順天堂医学 (ISSN:00226769)
巻号頁・発行日
vol.58, no.5, pp.397-402, 2012-10-31 (Released:2014-11-11)
参考文献数
9

感冒は患者が外来を受診する理由で最も多く, その診療に要する医療資源は莫大な量である. インフルエンザは世界的な大流行を繰り返し, 多くの患者の命を奪っている. インフルエンザに対してはワクチンを用いた適切な予防が重要であるが, 本邦では必ずしも徹底されていない. 感冒・インフルエンザ患者に対する抗菌薬の乱用は, 耐性菌・副作用・医療費において大変な問題である. また, 世界規模でオセルタミビル (タミフル®) 耐性株が出現しているほか, オセルタミビルの治療効果を疑問視する発表も相次いでいる. これらのことから, 感冒・インフルエンザの治療における漢方薬の使用が注目されている. 西洋薬と違い漢方薬では, 急性期のみならず亜急性期・慢性期の症状改善にも有効であることが特徴である. 近年, 漢方薬を用いた臨床試験の報告も増えている. われわれはインフルエンザ患者に対する麻黄湯のランダム化比較試験を行ったが, これによると麻黄湯ではオセルタミビルなどの抗ウイルス薬と同等の効果が得られた. また, 漢方薬の中にはサイトカインの調節に役立つものがあり, インフルエンザ肺炎やインフルエンザ脳症の治療への活用が期待される.
著者
吉田 博
出版者
順天堂医学会
雑誌
順天堂医学 (ISSN:00226769)
巻号頁・発行日
vol.28, no.4, pp.529-537, 1982 (Released:2014-11-21)
参考文献数
16

人水晶体が蛍光をもち加齢とともに増強することは良く知られているが, その分布はほとんど報告がない. 今回は蛍光強度および吸収度分布とその特性を正常および老人性核白内障水晶体で検討した結果を報告する. 正常人水晶体と, 混濁と核硬化の程度により分類した老人性核白内障水晶体を0.5mmの薄切り切片として, アミンコ社自記分光光度計と日立社蛍光分光光度計で蛍光および吸収測定を, オリンパス社マルチ測光顕微鏡で蛍光強度分布と吸収度分布をおこなった. 紫外部吸収スペクトルでは正常人水晶体の280nmの吸収極大は, 核白内障進行とともに変化はないが, 340nm-390nmの長波長側に吸収極大が形成された. 励起光395nmにおける蛍光強度も正常人水晶体で示す465nmの極大は, 核白内障形成とともに減少していくと同時にやや長波長の500nmに新しい吸収極大が表われ, 495nmに等放射点を形成した. 励起光400nmにおける蛍光強度は正常水晶体核部から次第に核白内障の進行につれて核部周囲に強く分布した. 紫外部および可視部吸収度分布は核部中心に変化がみられた. 正常人水晶体で低い吸収を示す核部は, 核白内障の進行とともにその吸収度を増し逆に山を形成した.
著者
住吉 正孝
出版者
順天堂医学会
雑誌
順天堂医学 (ISSN:00226769)
巻号頁・発行日
vol.49, no.3, pp.321-326, 2003-09-30 (Released:2014-11-12)
参考文献数
5

本邦においてゴルフは大変人気の高いスポーツであるが, スポーツ中に発症した心筋梗塞はゴルフが最も多いと報告されている. その理由として, (1) 動脈硬化危険世代である中高年男性のプレーヤーが多い (心筋梗塞を発症し易い人がゴルフをしている!), (2) 普段運動しない現代人にとってはゴルフといえども楽なスポーツではない, (3) 仕事の延長線上で気を使いながらプレーすることが多い (接待ゴルフなど), (4) 飲酒してのプレーやプレー中の喫煙は当たり前といった娯楽的風潮がある, などが挙げられる. 実際にゴルフ中発症した急性心筋梗塞患者の検討では, 全例男性で, 50歳代から-0歳代がほとんどを占め, 喫煙率が高く, 冠動脈危険因子を複数持つものが多かった. また, 心筋梗塞は午前中, フェアウエーでの発症が多く, ショットの前後に心拍数がいちじるしく上昇するため危険な状況になると考えられた. 以上の検討より, 本稿ではゴルフで心筋梗塞を起こさないための10ヵ条を提言する.
著者
荒井 稔
出版者
順天堂医学会
雑誌
順天堂医学 (ISSN:00226769)
巻号頁・発行日
vol.51, no.3, pp.386-391, 2005-09-30 (Released:2014-11-12)
参考文献数
3

うつ病は, 有病率が3%から8%の一般的な病気であり, 適正な治療を受ければ半年で約80%が寛解する. しかし, 症状は, 心身領域に現れ, 思考の渋滞化, 行動の制止, さまざまな身体症状などがあり, 診断が適正に行われない場合には, 軽快するのに時間がかかることもあり, さらに, 症状のひとつの自殺念慮の結果として自殺が完遂されることもある. 現在, 日本の自殺は, およそ3万3千人におよび, うつ病の診断と治療は, 自殺予防といった観点からも重要である. うつ病の病態生理としては, 脳内のシナプス間隙におけるセロトニンやノルアドレナリンの枯渇と考えられており, これらの神経伝達物質の枯渇を抗うつ薬等で治療することによって, 軽快, 寛解, 完治することを述べた.
出版者
順天堂医学会
雑誌
順天堂医学 (ISSN:00226769)
巻号頁・発行日
vol.T5, no.520, pp.273-289, 1916-04-25 (Released:2015-06-13)
著者
鈴木 良雄
出版者
順天堂医学会
雑誌
順天堂医学 (ISSN:00226769)
巻号頁・発行日
vol.57, no.2, pp.95-99, 2011-04-30 (Released:2014-11-21)
参考文献数
39

スポーツにおいてサプリメントとして利用されているアミノ酸のうち, 分岐鎖アミノ酸 (Branched-chain amino acid;BCAA) とグルタミンについて, ヒトで観察されている効果とそのメカニズムについて最近の知見を紹介する. BCAAは, 比較的大量に摂取した場合に, 遅発性筋痛を軽減し, そのメカニズムとしてロイシンによるmTORを介したタンパク代謝の調節があると考えられている. グルタミンは, 術後感染性合併症低下させたり, 運動後の免疫抑制を軽減したりするが, そのメカニズムは当初考えられていた血漿グルタミン濃度の維持による免疫細胞の機能維持ではなく, HSPを介した身体ストレスの軽減であると考えられるようになってきている. グルタミンには, 運動後のグリコーゲンの回復を促進する作用も報告されているほか, 安定なグルタミン素材である小麦グルテン加水分解物 (Wheat Gluten Hydrolysate;WGH) により運動中の血漿グルタミン濃度を維持すると持久運動が可能になる可能性も示唆されている. またWGHには遅発性筋痛を軽減する効果のあることも報告されている.
著者
長岡 正範
出版者
順天堂医学会
雑誌
順天堂医学 (ISSN:00226769)
巻号頁・発行日
vol.50, no.2, pp.133-146, 2004-06-30 (Released:2014-11-12)
参考文献数
3

救急病院に入院した脳卒中患者を例に, リハビリテーションの進め方を説明した. リハビリテーションは, 個人に, 彼らの機能障害 (生理学的あるいは解剖学的な欠損や障害) および環境面の制約に対応して, 身体・精神・社会・職業・趣味・教育の諸側面の潜在能力 (可能性) を十分に発展させることと定義されている. 現在は, 工学や種々の新技術により失われたものを再獲得することも可能性として議論されるようになっている. しかし, 目の前の困難や不安をどのように解決するかという問題は, 今, 直ちに解決されなければならない事柄である. リハビリテーションでは, 種々の職種が広くかかわって, 困難を少しでも軽減するような集団的なアプローチが採られている. 医師・看護師・理学療法士・作業療法士・言語聴覚士・臨床心理士・医療ソーシャルワーカーなどは主に, 医療を中心に関与する. 一方, 病院から出た後の社会における専門家も多い. 特に, 高齢化社会に対応して, 医療と福祉の連携を図るべく創設された介護保険によってさらに多くの職種が関与するようになっている. このような現状の中で, 直接患者に接する医師に求められる知識は, 専門家としての医学的知識のほかに, 疾病や傷害が直接もたらす機能的障害, 一人の個人としての能力の障害, 社会の一員として役割を演ずる上での障害など, 社会における人間として患者にかかわる諸問題に眼を向ける必要がある. このようなリハビリテーション医学の知識は, 従来の肢体不自由だけでなく, 感覚器障害 (眼・耳など) ・精神障害, その他の内部障害など医学の広い分野で必要なものである. 特定機能病院の限られた条件の中では, 急性期 (順天堂医院) から慢性期 (社会) への〈連続した医療ネットワーク〉を構築することがリハビリテーションの観点から重要である.
著者
光畑 裕正
出版者
順天堂医学会
雑誌
順天堂医学 (ISSN:00226769)
巻号頁・発行日
vol.58, no.5, pp.403-408, 2012-10-31 (Released:2014-11-11)
参考文献数
10
被引用文献数
4

慢性疼痛は複雑な病態を呈し, 治療に難渋することがしばしば見受けられる. 西洋医学的治療で鎮痛が得られない症例で漢方薬が有効なことがある. 抑肝散は抗アロディニア作用があり, 神経障害性疼痛を含む慢性痛に効果がある. 抑肝散は絞扼性神経損傷ラットモデルで抗アロディニア作用を示し, その機序の一つはグルタミン酸トランスポーター活性化によりグルタミン酸濃度を低下させることを筆者らは明らかにした. また慢性痛は冷えを伴うことが多く, 当帰芍薬散, 苓姜朮甘湯, 当帰四逆加呉茱萸生姜湯, 真武湯, 八味地黄丸など冷えを改善する方剤が効果を示す. また慢性痛では気の異常 (気鬱, 気逆, 気虚) を伴うことが多く, 半夏厚朴湯や四逆散, 柴胡疏肝湯など気剤が著効することがある. 慢性疼痛治療の一つの選択肢として漢方は有用である.
著者
呉 友慕
出版者
順天堂医学会
雑誌
順天堂医学 (ISSN:00226769)
巻号頁・発行日
vol.S11, no.577, pp.577_33-577_37, 1936-12-31 (Released:2015-06-12)
参考文献数
17
著者
池田 黎太郎
出版者
順天堂大学
雑誌
順天堂医学 (ISSN:00226769)
巻号頁・発行日
vol.51, no.2, pp.104-113, 2005-06-30
参考文献数
22

医学校の標章としておなじみの「杖に絡みつく蛇」のデザインは何に由来し,何を意味するのだろうか?この疑問を解く鍵になると思われるのが,「サモスのヘルメース」と呼ばれる浮き彫りの蛇の像である.このヘルメースと呼ばれる巨大な蛇は岩の上に厳かに鎮座して人々の崇拝を受け,その足下に8の字形の頭部を持つ杖を置いている.古代ギリシアの神々はふつう人間の姿をしているが,神である徴しとしてそれぞれの神格を表す付属物と共に描かれる.ヘルメースの場合は神々の伝令使としての職分を示す杖を持ち旅人の服装をして,それらには天空を駈け巡るための翼が附けられている.本来この伝令使の杖には蛇が居ないはずであるが医学校の標章には2匹の蛇が絡みついている.じつはここにはヘルメースの別の職分である「死者の霊魂の導師」を表すための表象が混同されているのである.強い毒と強靭な生命力を持つ蛇は,地面の穴から地下へ自由に行き来して冥界の事情に通じ,生死の秘密を知る存在として古来畏怖と崇敬の対象となっていた.だから死者を蘇らせる能力がある神として崇拝されていたアスクレーピオスは神殿に蛇を住まわせ,蛇を侍らせた玉座に座り,巨大な蛇を巻き付かせた杖にもたれた姿で描かれている.むしろ神格化した蛇そのものがアスクレーピオスと呼ばれ崇拝されていると考える方が自然である.じっさい蛇とアスクレーピオスが同時に病人の治療にあたっている情景を描く奉納の浮き彫りがあるほどである.だから医学校の標章は蛇を軸にしてアスクレーピオスとヘルメースのイメージが混同され重ね合わされたものだろうと説明することができる.
著者
細田 誠弥
出版者
順天堂大学
雑誌
順天堂医学 (ISSN:00226769)
巻号頁・発行日
vol.50, no.4, pp.330-337, 2004-12-22
被引用文献数
3

食事を中心とした生活習慣の変化に伴い,様々な消化器症状が問題となっている.特にその摂取量において,食物繊維が減少する一方,脂肪食が増加したことによって,便秘と下痢などの便通異常を訴える人が増えている.排便の生理的仕組みとして,(1)胃・結腸反射,(2)結腸蠕動運動,(3)直腸の排便反射,が重要な役割を果たしている.この仕組みのいずれかが障害されると,便通異常がもたらされることになる.また,その原因によって便秘と下痢もいくつかに分類され対処の方法も異なるが,昨今注目を集めている代表的疾患が過敏性腸症候群である.その症状を改善させるには,便通異常が生活習慣病の一症状として表れていることを踏まえると,適切な生活指導が最も重要であると考えられる.

3 0 0 0 OA 便秘と胸やけ

著者
細田 誠弥
出版者
順天堂大学
雑誌
順天堂医学 (ISSN:00226769)
巻号頁・発行日
vol.51, no.2, 2005-06-30
著者
千葉 百子 篠原 厚子 稲葉 裕 中山 秀英 林野 久紀 小出 輝
出版者
順天堂医学会
雑誌
順天堂医学 (ISSN:00226769)
巻号頁・発行日
vol.36, no.3, pp.406-410, 1990-10-20 (Released:2014-11-20)
参考文献数
19
被引用文献数
1 1

体重減少, 全身倦怠感, 筋力低下を主訴として受診, ゲルマニウムを飲用していたことが判明した症例, および神経痛治療の目的でゲルマニウム含有粉末を摂取していたため精査を希望して受診した症例の2例について検査し, 次のような結果を得た. 1) 2症例ともに測定した組織, 臓器中に高濃度のゲルマニウムが検出された. この結果はゲルマニウム含有物質の服用歴を裏付けるものである. 2) ゲルマニウムの中毒作用として腎障害が知られているが, 症例1においては臨床的ならびに病理組織学的に横紋筋融解による明らかな急性尿細管壊死が認められた. 3) ゲルマニウムの中毒作用として筋力低下, 筋萎縮が知られているが, 今回の結果では筋肉内にゲルマニウムを検出し得なかったことから, 筋肉内蓄積性のものではないと考えられる. 4) 毛髪, 爪は経口的に摂取したゲルマニウムの排泄経路の一部である.
著者
笠原 剛敏
出版者
順天堂医学会
雑誌
順天堂医学 (ISSN:00226769)
巻号頁・発行日
vol.45, no.4, pp.550-553, 2000-03-22 (Released:2014-11-12)
参考文献数
3

1. 喘息の呼吸リハビリテーションを見ると, 本邦では未だ普及が遅れ, 標準的なプログラムの確立はされていない. しかし小児喘息における運動療法は治療の一貫として位置づけられ, 運動嫌いによる運動・体力低下を防ぐのに有益とされている. 今回, 小児および成人喘息で見られる呼吸障害・喘息発作に対処するため, 家庭でできるリハビリテーションについて報告する. 2. 家庭でできるリハビリテーションとして, 腹式呼吸は呼吸効率の改善を目的に, 排痰法は痰の累積を防ぐことを目的に, そして柔軟体操は呼吸運動に必要な柔軟性を目的に行い, それぞれの指導内容, 注意点を紹介する. 3. 喘息の呼吸リハビリテーションの重要なポイントは患者の自己管理能力の向上である. そのため患者および援助者が具体的な対処・援助法を理解し, 呼吸困難時・パニック時に対処可能な状態か, いなかを判断できる能力が必要となる.
著者
小友 進
出版者
順天堂医学会
雑誌
順天堂医学 (ISSN:00226769)
巻号頁・発行日
vol.37, no.4, pp.606-612, 1992-03-20 (Released:2014-11-18)
参考文献数
55
被引用文献数
1 1

ミノキシジルは血管拡張作用を有し, その作用は代謝物であるミノキシジルサルフェートのK+チャンネル開放作用にもとづくことが知られている. 一方, ミノキシジルは発毛効果も示し, その効果は臨床試験においても確認されているが, 作用メカニズムに関してはかならずしも完全に解明されているとはいい難い. ミノキシジルの動物実験での発毛効果は, サル・ラット・マウス等において発現し, この効果の一部には, 皮膚血管の拡張による血流増加が関与するものと考えられている. しかし, これ以外に毛包に対する直接作用があることが, in vitroの皮膚細胞や毛包の培養試験から明らかにされてきた. しかも, これにはミノキシジルから毛包スルホトランスフェラーゼによって変換されたミノキシジルサルフェートが関与し, さらに血管拡張作用と同じく, そのK+チャンネル開放作用が重要な役割を果たしていることが示唆されてきている.