著者
古賀 俊彦 中村 昌弘
出版者
特定非営利活動法人 日本呼吸器内視鏡学会
雑誌
気管支学 (ISSN:02872137)
巻号頁・発行日
vol.22, no.4, pp.251-255, 2000
参考文献数
6

気管支ファイバースコープ自動洗浄器系統より分離されたグルタールアルデヒド高度耐性のMycobacterium abscessusに対する消毒用アルコール(エタノール)の殺菌作用をsuspension testとcarrier testとで検討した。その結果, グルタールアルデヒドで殺菌されなかった分離株のM.abscessusも80%エタノールで1分間以内, 40%エタノールで5分間, 32%エタノールで15分間の処置で完全に不活化された。26%以下のエタノール濃度では長時間の作用でも不活化されなかった。この結果はsuspension testでもcarrier testでも同一の結果であることが確認された。この不活化の機序は恐らくエタノールによる細胞壁の破壊である可能性が電顕写真で示唆された。これらのevidenceは消毒剤としてのエタノールの強力な消毒効果を再認識すると共に日常の臨床の現場においてその有効濃度に常に留意しつつ院内感染の予防のためにエタノールの使用をより広く薦めるものである。
著者
古賀 俊彦 野田 哲寛 中村 昌弘
出版者
特定非営利活動法人 日本呼吸器内視鏡学会
雑誌
気管支学 (ISSN:02872137)
巻号頁・発行日
vol.23, no.4, pp.386-392, 2001
参考文献数
11
被引用文献数
1

我々は使用中の特定の気管支鏡から, ある時期に頻回に抗酸菌が検出されることに気付き, 気管支鏡を介する, 或は由来する抗酸菌のfalse positiveに関心をもち, 10年以上もその原因の探索に努力してきた。今回の報告では前半にその実体の詳細を述べ, 次にその抗酸菌の性状, 最後にその除去対策について検討したので記述する。まず, 多くの材料と年月から, 検出される抗酸菌が気管支鏡そのものに由来することがわかり, 更に自動洗浄器内の消毒液より抗酸菌が分離された予想外の事実に遭遇して, その分離抗酸菌が消毒液, 即ち, 3%グルタルアルデヒドに耐性である事を実験的に証明した。そして, 分離抗酸菌は患者からではなく, 外界よりの汚染と考えたほうが妥当であろうと推察した。このグルタルアルデヒド高度耐性抗酸菌は両性界面活性剤にはやや感受性はあるものの, これを用いても完全な殺菌効果が得られない抗酸菌菌株も分離された。換言すれば, 自動洗浄器で使用する消毒液グルタルアルデヒドは殆ど無意味であることが証明された。そこで, グルタルアルデヒドに代わる強力な消毒液を模索中, 消毒用アルコールが強力な殺菌力をもつことを見出した。即ちグルタルアルデヒド高度耐性抗酸菌の全てが, 例外なく日常使用する消毒用アルコール(原液)で瞬間的に不活化されることを実験的に確認した。この殺菌効果は等量に希釈した40%アルコールを用いた場合は5分間の処置で, さらに1/3に薄めた30%アルコールでさえ15分間の処置で殺菌効果が認められた。今後はグルタルアルデヒドの代わりにアルコールを使用すべきであり, アルコールをルーチン検査に使用する方法について若干の考察を試みた。
著者
伊藤 宏之 中山 治彦 藤田 敦 石和 直樹 池原 瑞樹 田中 学 山田 耕三 野村 郁男 野田 和正 亀田 陽一 密田 亜希
出版者
特定非営利活動法人 日本呼吸器内視鏡学会
雑誌
気管支学 (ISSN:02872137)
巻号頁・発行日
vol.22, no.2, pp.132-135, 2000
参考文献数
6

症例は34歳男性。5年前に近医で右肺野の腫瘤陰影を指摘され, mucoid impactionを伴ったcystic brochiectasisと診断された。1999年3月, 健康診断で胸部異常陰影を再度指摘され, 4月26日に当院を紹介受診した。胸部CTでは, 右B^6bを中心に経約4cmの気管支に沿って拡がる樹枝状の, 内部に一部空洞を伴った充実性腫瘤陰影を認めた。この空洞にcystic brochiectasisに特徴的所見とされるair fluid levelがないことから, 気管支鏡検査を行ったところ, B^6内腔を閉鎖する赤紅色の易出血性のポリープ状腫瘤を認め, 生検によりatypical carcinoidと診断された。6月10日, 右下葉切除およびR2a郭清を施行した。摘出標本の病理組織所見においても, B^6より出現した腫瘍が気管支を拡張しつつ, 長軸方向への気管支内発育をし, 樹枝状の形態をとっていたことが確認された。また画像上腫瘍内部に認められた空洞は, 腫瘍末梢の嚢状の拡張気管支であることが判明した。
著者
須甲 憲明 山本 宏司 藤田 雅章 鈴木 章彦 井上 幹朗
出版者
日本呼吸器内視鏡学会
雑誌
気管支学 : 日本気管支研究会雑誌 (ISSN:02872137)
巻号頁・発行日
vol.18, no.4, pp.372-374, 1996-05-25
参考文献数
8
被引用文献数
5

症例は55歳, 男性。小児期および30歳頃に肺炎の既往あり。平成7年6月20日頃より微熱, 咳嗽, 全身倦怠感が続き, 6月26日咳嗽とともに血痰が出現したため当科を受診。胸部レ線および胸部CT上, 左下肺野に炎症後変化を認めた。気管支鏡にて左B^<10>入口部を横断する橋様構造物を認め, 気管支mucosal bridgeと診断した。既往歴及び画像所見から, 過去の気管支炎, 肺炎に由来する気管支mucosal bridgeと考えられた。
著者
岡野 義夫 日野 弘之 中村 陽一 大串 文隆 辰巳 明利
出版者
特定非営利活動法人 日本呼吸器内視鏡学会
雑誌
気管支学 (ISSN:02872137)
巻号頁・発行日
vol.24, no.6, pp.457-461, 2002

肺癌は転移病巣形成能が極めて旺盛な特徴を有している.今回我々は,画像的には異常を認めず,非連続多発性に気管支表層に転移をきたした症例を経験した.稀な症例と思われるため報告する.症例.症例は69歳,男性,主訴は血痰.1999年6月に肺腺癌に対して右上葉切除術を施行され,pT2N0M0 stage IBと診断された.2000年10月下旬より血痰を自覚し喀痰細胞診でclass IVを指摘された.胸部X線,胸部CT上,再発を疑う所見は認めなかった.2000年12月21日入院となり,入院時の気管支鏡所見では気管左下葉支入口部に発赤,軽度の腫脹を認め,組織診および細胞診より腺癌の病変が確認された.肺腺癌の再発と考えられたため,2001年1月15日よりCisplatin 80mg/m^2+Vinorelbine 25mg/m^2の投与を開始し,2クール施行した.2001年3月15日気管支鏡を施行し,内視鏡所見でも隆起性病変を認めず,組織診でも癌病変を認めず,著効を示している.CEAのデータより2001年3月から5月までの約3カ月間著効を示していたと考えられる.結論.画像検査では転移を疑わせる所見はなく,多発性および散在性の転移病巣を気管支鏡的に確認し得た.肺癌の転移経路について熟考させられた貴重な症例と考えられた.
著者
朝倉 奈都 沖津 宏 武知 浩和 清家 純一 田渕 寛 佐尾山 信夫
出版者
特定非営利活動法人 日本呼吸器内視鏡学会
雑誌
気管支学 (ISSN:02872137)
巻号頁・発行日
vol.22, no.4, pp.284-290, 2000
参考文献数
15

症例1は48歳, 女性。1998年3月末より嗄声, 喘鳴が出現し4月に当科受診。頚部CTにて右葉を中心に甲状腺全体の腫大を認め, 吸引針生検では悪性リンパ腫(B-cell type)との診断が得られた。気管支鏡検査では右反回神経麻痺, 声門及び上部気管の右側からの圧排狭窄を認めた。入院後5月11日よりCHOP5クールと放射線照射を計40Gy施行し, CRが得られた。症例2は58歳女性。1998年10月頃より嗄声, 労作時呼吸困難に気づき11月来院。造影CTでは甲状腺全体の腫大による気管狭窄を認めた。吸引針生検ではclass IIであったが, 気管支鏡所見では左反回神経麻痺, 著明な気管狭窄, 粘膜下浸潤を疑わせる発赤を認め, 超音波所見でも強く悪性リンパ腫を疑い12月7日よりCHOP5クールと放射線照射計40Gyを行った。治療開始とともに約1週間で嗄声, 呼吸困難等の症状は劇的に改善し, さらにCRが得られた。2症例ともに1999年12月の現在, 再発の徴候はない。
著者
長坂 不二夫 大森 一光 北村 一雄 並木 義夫 村松 高 西村 理 羽賀 直樹 古賀 守 四万村 三恵 瀬在 幸安 楠美 嘉晃
出版者
日本呼吸器内視鏡学会
雑誌
気管支学 : 日本気管支研究会雑誌 (ISSN:02872137)
巻号頁・発行日
vol.19, no.5, pp.400-404, 1997-07-25
被引用文献数
5

症例は79歳男性で, 30年前に左膿胸で手術を受け, 1994年6月肺癌で右下葉切除術後, 50Gyの放射線療法を施行された。右膿胸, 慢性呼吸不全で2度入院し, 以後, 在宅酸素療法を受けていた。1996年8月17日, 心肺停止の状態で当院に搬送され, 心拍動は再開したが脳死状態で人工呼吸器管理となり, 8月26日第2-3気管軟骨輪で気管切開を施行した。気管切開後第87日の11月18日, 口腔内より突然大量出血した。気管カニューレのカフ内圧を上げることにより一時的に止血できたが, 21日再び大量出血して死亡した。剖検所見では気管切開孔より1.8cm末梢で気管と腕頭動脈との間に瘻を形成していた。自験例を含めて検索しえた文献的報告例は29例で, 出血機序による検討では"extratracheal type"が5例, "endotracheal type"が21例であった。従来, 予後不良であったが最近では救命例の報告が増加している。
著者
小林 英夫 中野 実 河村 文夫 須藤 至
出版者
日本呼吸器内視鏡学会
雑誌
気管支学 : 日本気管支研究会雑誌 (ISSN:02872137)
巻号頁・発行日
vol.15, no.5, pp.423-429, 1993-07-25

急性呼吸不全症例に対して, 標準的治療にサーファクタント(PSF)注入を併用することの有用性を, prospectiveに検討した。人工呼吸開始より平均27時間後に, 気管支鏡を用いてPSF 600mg/bodyを, 8例に注入した。同時に, TBLBとBALを施行し, 診断の確定に努めた。施行症例は, IIPの急性増悪2例, acute interstitial pneumonia 2例, 細菌性肺炎2例, RA肺1例, Goodpasture症候群1例であった。注入72時間後のPaO_2/F_IO_2とX線所見は有意な改善を認めた。予後は3例が死亡, 5例が生存退院した。PSF注入に関連する副作用は認めなかった。PSF注入による呼吸不全の改善は顕著ではなかったが, 満足すべき治療法の確立していない現況では, 救命率向上に寄与する可能性について, 今後の症例の蓄積が望まれる。
著者
河西 達夫
出版者
特定非営利活動法人 日本呼吸器内視鏡学会
雑誌
気管支学 (ISSN:02872137)
巻号頁・発行日
vol.11, no.6, pp.530-540, 1989
被引用文献数
2

成人遺体100体について, 気管支動脈の起始から肺門にいたる走行を肉眼解剖学的に剖出した。気管支動脈は右2本, 左2本のケースが最も多い。その起始は, 1)大動脈より出る最上位の右肋間動脈, 2)右鎖骨下動脈, 3)左鎖骨下動脈, 4)大動脈弓, 5)下行大動脈, の5部位に分類できる。左右の肺門における気管支動脈の走行は, 右上枝, 右下枝, 左上枝, 左下枝の4枝を区別できる。上記5つの起始と肺門における4枝との間には, 一定の規則性が認められる。右上枝は起始1)から出ることが多く(85%), ときに2)からの枝を有する。左下枝は97%で起始5)から出る。左上枝は起始4)または5)から出るが, ときに3)からの枝を併有する。起始3)と4)からの枝は, 2分して右下枝と左上枝となることが多い。右下枝は最も変異が多く, 起始4)または5)から出るが, 大動脈の上位で出る枝は気管の前を通り, 下位で出る枝は気管と食道の間を経て, ともに気管分岐部の下方にでる。これらの所見をもとに, 気管支動脈の一般走行をFig.3に模式的に示した。肺外および肺内気管支静脈についても実体顕微鏡のもとに剖出した。肺静脈の1枝が腕頭静脈に注ぐ例, また気管支静脈が左心房に注ぐ例が観察され, 形態学的には, 肺静脈と気管支静脈が明瞭に区別できないことが判明した。以上の結果を総合して, 肺の循環動態を考察した。
著者
藤永 卓司 里田 直樹 福瀬 達郎
出版者
特定非営利活動法人 日本呼吸器内視鏡学会
雑誌
気管支学 (ISSN:02872137)
巻号頁・発行日
vol.25, no.4, pp.284-289, 2003
被引用文献数
7

背景.気管・気管支狭窄に対するステント留置術は標準的な治療となってきている.狭窄が高度で距離が長い場合には経気道的操作自体による気道閉塞をきたす可能性がある.目的.気管及び気管分岐部に対するステント留置時に経皮的心肺補助装置(PCPS)を併用し低酸素血症を回避する.方法.局所麻酔下にPCPSを導入し,全身麻酔とし経口的に気管・気管支ステントを留置する.結果.3症例に施行し,十分な酸素化の下,安全かつ確実にステント留置術が行えた.
著者
新津 望 中田 正幸
出版者
日本呼吸器内視鏡学会
雑誌
気管支学 : 日本気管支研究会雑誌 (ISSN:02872137)
巻号頁・発行日
vol.16, no.6, pp.545-550, 1994-09-25
被引用文献数
3

胸部X線写真上異常を認めた造血器悪性腫瘍30例に対し気管支鏡検査を施行し, その原因検索を行った。胸部異常陰影に対する原因の検出率は30例中26例(86.7%)で, びまん性間質性陰影, 限局性肺胞充実性陰影および結節性陰影で診断率が高かった。疾患別では急性白血病では出血が多く, 白血病細胞, 真菌および細菌がそれぞれ12例中2例であった。慢性骨髄性白血病では結核菌が66.7%と多くみられ, 悪性リンパ腫では真菌が46.2%(6/13), 結核菌15.4%(2/13), 細菌15.4%(2/13)であった。造血器悪性疾患は免疫不全を伴っており, 肺合併症を多く認め致死的なものも少なくない。そのため, 早期診断治療が予後を左右するが, 高度の血小板減少やDICの合併により気管支鏡検査が行いにくい症例もある。よって, 症例を選んで気管支鏡検査を行えば早期診断及び治療に有用であると考えられた。
著者
谷尾 昇 門倉 光隆 野中 誠 山本 滋 片岡 大輔 高場 利博
出版者
日本呼吸器内視鏡学会
雑誌
気管支学 : 日本気管支研究会雑誌 (ISSN:02872137)
巻号頁・発行日
vol.19, no.3, pp.215-218, 1997-05-25
参考文献数
10

症例は66歳の女性。昭和48年より慢性関節リウマチで薬物療法を受けており, プレドニゾロン3mg/日の内服をしていた。平成6年7月6日, 整形外科で全身麻酔下に左人工股関節置換術を受けた。術後上半身に著明な皮下気腫と呼吸苦が出現し, 7月8日ICU管理となった。気管支鏡検査を施行し気管上部膜様部に裂創を認めた。16Gエラスターを前胸部皮下に留置して間欠的に低圧吸引し, 保存的に経過を観たが, 皮下気腫は改善しないため, 7月11日気管裂傷部直接縫合閉鎖, 肋間筋弁縫着術を行った。
著者
荻原 正雄
出版者
特定非営利活動法人 日本呼吸器内視鏡学会
雑誌
気管支学 (ISSN:02872137)
巻号頁・発行日
vol.27, no.1, pp.3-4, 2005

私の論文を書く前に, 今は過去の人となった気管支学の創始者で気管支ファイバースコープを開発された名誉教授の池田茂人先生を始め, 山口豊先生, 武野良仁先生など立派な業績を残していかれた. 数多くの立派な先輩たちが気管支学の基礎を作られ, 最近気管支学会が一歩大きく発展し, 日本呼吸器内視鏡学会となり喜ばしいことである. 慢性気管支感染症は現在では, 高年齢の男性にみられる数少ない疾患となった. 病理学的に慢性分泌腺の肥大と上皮化成を伴っている. すなわち, 長期(6ヶ月以上にわたり)多量の喀痰と咳の症状を訴え, 初診時の諸検査で炎症がみられ, 連続して喀痰の中に多数の非特異的細菌がみられる. 胸部X線像で肺炎様所見はない. 病因:高年齢の男性に多い, 大気汚染, 喫煙, 細菌, ウイルス感染, 粉塵, 化学物質に従事する職業に多く, 副鼻腔炎が誘因となる. 慢性気管支感染症, 分類 1)浮腫型 浮腫を示し, 寛解時には消退する. 喀痰と咳嗽が続き(6ヶ月前後), 非特異性細菌が多数検出される. 組織像:慢性カタール性気管支像を示す. 2)肥厚型 長期間に及ぶ炎症のため, 粘脹な分泌液が多量にみられ, 発赤腫脹を示し, 分泌腺は開大する. 組織像:混合性, 浮腫, 軽い円型細胞浸潤.
著者
長瀬 啓介 長谷川 鎭雄
出版者
日本呼吸器内視鏡学会
雑誌
気管支学 : 日本気管支研究会雑誌 (ISSN:02872137)
巻号頁・発行日
vol.17, no.4, pp.321-326, 1995-05-25

目的;病歴上に記録された, 気管支鏡検査前に行われた説明の現状を明らかにする。方法;筑波大学付属病院呼吸器内科診療グループで1991年4月1日より1992年3月31日に施行された気管支鏡検査例の病歴119例を調査の対象とした。病歴上の, 気管支鏡検査前に行われた検査に関する説明の記録の存否と, 目的, 手技, リスク, 代替方法に関する記録の内容を調査した。結果;説明に関する記録は全検査例の63.0%にあたる75例にみられた。目的・手技・リスクの3領域について説明が記録されていた例は, 35例であった。記録された説明項目は一定ではなかった。考察;説明の質を維持する目的では, 説明の記録率は必ずしも十分とはいえないと考えられた。記録内容の不均質を改善し説明の質を向上するために, 説明内容と記録の標準化が必要であると考えられた。
著者
三戸 克彦 山形 英司 山上 由理子 一宮 朋来 山崎 透 平松 和史 永井 寛之 那須 勝
出版者
特定非営利活動法人 日本呼吸器内視鏡学会
雑誌
気管支学 (ISSN:02872137)
巻号頁・発行日
vol.22, no.7, pp.547-552, 2000
参考文献数
20

近年, 血清KL-6, SP-A, SP-D値は間質性肺炎の活動性の有用な指標として報告されている。今回全肺洗浄前後のモニタリングに血清KL-6, SP-A, SP-D値を用いた肺胞蛋白症の1例を報告する。症例は労作時息切れで入院した67歳の女性で, 胸部X線写真上両中下肺野に非区域性の浸潤影が認められた。胸部CTでは非区域性に広がるスリガラス様陰影と小葉間隔壁の肥厚が見られ, peripheral clear zoneが認められた。気管支肺胞洗浄と経気管支肺生検により肺胞蛋白症と診断し, 全肺洗浄が施行された。全肺洗浄後, 症状, 血液ガス, 胸部X線写真の改善とともに血清KL-6値は減少したが, SP-A, SP-D値は一過性に上昇し, その後低下した。血清KL-6, SP-A, SP-D値は病勢と一致しており, 肺胞蛋白症において有用な活動性のマーカーになりうると考えられた。
著者
竹元 伸之 小檜山 律 松浦 克彦 岡野 良 倉富 雄四郎
出版者
日本呼吸器内視鏡学会
雑誌
気管支学 : 日本気管支研究会雑誌 (ISSN:02872137)
巻号頁・発行日
vol.18, no.1, pp.79-83, 1996-01-25

肺癌の気管支形成術後の吻合部狭窄に対し, バルーン拡張とNd-YAGレーザーを併用し良好な結果を得た。症例は57歳, 男性。左上大区入口部の扁平上皮癌に対し, ほぼ4/5周にわたる気管支楔状切除を伴う左上葉切除術を施行。術後46日目に吻合部が屈曲と肉芽増生および分泌物貯留によるほぼ完全な閉塞を来たし, それによる肺膿瘍・無気肺のため緊急入院となった。理学療法・抗生剤治療後, 高耐圧の血管拡張用バルーンを用いた拡張術を2回, その後Nd-YAGレーザーによる肉芽焼灼を3回(計3669J)施行し気道の開存をはかった。1ヵ月で肺膿瘍・無気肺は軽快し現在(術後18ヵ月)に至っており, 両者の併用は非常に有効であった。
著者
森川 洋匡 平井 隆 山中 晃 中村 保清 山口 将史 赤井 雅也
出版者
特定非営利活動法人 日本呼吸器内視鏡学会
雑誌
気管支学 (ISSN:02872137)
巻号頁・発行日
vol.26, no.6, pp.505-510, 2004
被引用文献数
7

背景. 気管支異物は小児や脳に障害がある成人に多いとされている. 早期診断には詳細な問診に加えて積極的な検査が必要であり, 早期除去することが重要である. 目的. 気管支異物症例について症例の特徴, 検査所見, 除去方法について検討した. 対象. 1992年6月から2004年2月までの12年間に当科で経験した13例の気管支異物症例を対象とした. 結果. 年齢は1歳から86歳で12歳以下5例, 60歳以上7例と2峰性を示した. 男性12例, 女性1例と大半が男性であった. 症状は咳嗽, 喘鳴, 呼吸困難等がみられたが, 2例では自覚症状がなかった. 異物嵌頓部位は右7例, 左6例だった. 異物の種類としてはX線透過性の異物が9例, X線非透過性の異物が5例であり, 画像所見においては異常なし3例, 異物が確認できた症例が5例, 肺炎像1例, 無気肺像2例, 対側の肺野透過性亢進2例であった. 異物の除去に用いた鉗子はバスケット鉗子4例, ワニ口鉗子3例, ラリンジアルマスク+フォガティカテーテル2例, 生検鉗子2例だった. 結論. 気管支異物の診断には詳細な問診が重要である. 咳嗽, 呼吸困難があり胸部X線上片側過膨脹, 無気肺, 閉塞性肺炎などがみられる症例では気管支異物の可能性を考えて気管支鏡等を含めた積極的な検査が必要であると考えられた.
著者
星 永進 青山 克彦 村井 克己 池谷 朋彦 金沢 実 杉田 裕 高柳 昇 生方 幹夫 倉島 一喜 松島 秀和 佐藤 長人
出版者
特定非営利活動法人 日本呼吸器内視鏡学会
雑誌
気管支学 (ISSN:02872137)
巻号頁・発行日
vol.24, no.5, pp.391-393, 2002
被引用文献数
2

目的.良性気道狭窄病変に対する気管・気管支形成術の成績について検討する.方法.過去11年間に当センターで手術を施行した良性気道狭窄8例を対象として,外科治療成績について検討した.自覚症状を有し,気管支鏡所見でpinhole状の狭窄あるいは閉塞を示す場合に手術適応とした.性別は女性7例,男性1例.年齢は23歳から58歳(平均40歳)であった.原因疾患別では結核性4例,necrotizing sarcoid granulomatosis(NSG)1例,気管内挿管後3例,病変部位は結核性では左主気管支3例,左上幹1例.NSGでは右主気管支ならびに中間気管支幹1例.挿管後では頸部気管3例.手術アプローチは結核性とNSGは側方開胸,.挿管後では頸部襟状切開.術式は結核性では左上葉管状切除1例,左上幹管状切除1例,左主気管支管状切除2例.NSGは右中下葉管状切除,挿管後では気管管状切除3例.吻合は吸収性モノフィラメント糸を用いて端々吻合した.手術時間は結核性は244〜328分(平均288分),NSG252分,挿管後97〜150分(平均124分).術中出血量は結核性150〜833ml(平均416ml),NSG385ml,挿管後40〜200ml(平均97ml).結果.吻合部狭窄,縫合不全などの術後合併症を認めなかった.狭窄病変の再発はなく,全例元気に社会復帰している.結論.良性気道狭窄病変に対する気管・気管支形成術は,安全で有用な術式である.
著者
坂東 琢麿 西 耕一 大家 他喜雄 安井 正英 藤村 政樹 松田 保
出版者
日本呼吸器内視鏡学会
雑誌
気管支学 : 日本気管支研究会雑誌 (ISSN:02872137)
巻号頁・発行日
vol.14, no.6, pp.569-574, 1992-09-25

症例は57歳, 男性で, 主訴は胸部異常陰影であった。1990年7月3日, 急性心筋梗塞と診断され, 7月7日当院受診, 胸部X線像にて右上肺野に浸潤影が認められたが, 7月26日には自然消退した。外来にて経過観察中の9月27日に, 左中下肺野に斑状影が出現した。気道症状はなかったが, 軽度の炎症反応があり, 呼吸機能検査で軽度の拘束性障害が認められたため, 間質性肺炎を疑い, 気管支鏡検査を行った。気管支肺胞洗浄中の細胞は増加し, リンパ球が増加していた。病理組織学的には器質化肺炎と診断された。こうした所見は, アレルギー反応によって生ずる間質性肺炎に類似しており, 本症例では血清抗心筋抗体が陽性であることなどから, 心筋梗塞後症候群の一亜型と思われた。