著者
蔵本 博行 上坊 敏子 新井 正夫
出版者
社団法人日本産科婦人科学会
雑誌
日本産科婦人科學會雜誌 (ISSN:03009165)
巻号頁・発行日
vol.29, no.2, pp.191-200, 1977-02-01

当院腫瘍外来では,昭和46年7月26日の開院以来,満3年にて登録数1,000名となつたので,これを集計し統計的考察を加えた. 1) 実登録患者977名中,30〜50歳が69.5%を占めた. 2) 悪性腫瘍患者は147名,15%と高率である.子宮頚癌は128例で,悪性腫瘍の86.4%を占めたが,C.I.S.とIa期はわずか1/3であつた.一方異形成上皮は全登録者中10.8%であつた.その他転移性癌が9例発見されている. 3) 癌患者の年代別罹患率は26〜40歳で10%以下,40〜55歳で約15%,61歳以上では50%を越える.疾患別平均年令は高度異形成上皮38.6歳,C.I.S.39.8歳,Ia期44.5歳,Ib期以上57.0歳であつた. 4) 癌患者の主訴は不正出血と血性帯下が55.9%と最多で,逆に無症状で癌検診希望は19.5%と低い. 5) 細胞診結果は陰性76.9%,疑陽性10.6%,陽性12.5%である.頚癌中偽陰性はなく,偽陽性は0.2%であつた.胃癌からの転移3例を診断している. 6) コルポ診異常を呈した頻度は正常上皮の10%(偽陽性),扁平上皮化生の50%,各異形成上皮の70%強,CISの90.9%,Ia期の89.5%,Ib期以上では97.5%である.L, F, G,の関与する頻度は異形成上皮では,軽度67.6%,中等度68.0%,高度75.0%で,またCIS 78.4%,Ia期84.2%となる.AUは単独の時40%は真ビラン,L, F, G,と合併する場合は約70%は悪性であつた. 7) CIS, Ia期とも各90%はコルポ診と細胞診との併用で診断し得ており,異形成上皮ではコルポ診の重要度が高い. 8) 狙い組織診の結果,L, F, GとAUの悪性率はそれぞれ30.9%,24.2%,26.9%,43.6%である. 9) 術前診断の正診率では,高度異形成の33.3%,CISの22.2%,Ia期の20%はそれぞれ1ランク低く診断され,初期浸潤疑性は75%がIa期であつた.
著者
森山 郁子 平岡 克忠 藤田 正之 飯岡 秀晃 一條 元彦 加納 晴三郎
出版者
社団法人日本産科婦人科学会
雑誌
日本産科婦人科學會雜誌 (ISSN:03009165)
巻号頁・発行日
vol.34, no.12, pp.2149-2154, 1982-12-01

現在,食品添加物は335種におよび,当然妊婦の摂取も不可避であるため次世代への安全性が調査されている.今回はその一環として,過酸化水素について,一般に食品の脱色剤または殺菌保存に汎用されているために,妊娠時摂取による胎児.新生児発育に与える影響及び,混合食品中の栄養素の変性をもたらす可能性を明らかにした.実験方法はwistar系妊娠ラットを用い膣栓確認を妊娠0日とした.急性毒性試験は非妊ラットに経口的に10,1,0.1%各濃度を2ml/kg,連続5日間投与した.臨界期投与は,粉末飼料に10,2,0.1,0.02%の割合で混合し摂取させた.胎児・新生児の影響は,妊娠20日目胎児摘出後体重と各臓器重量,外表所見を検討した.骨格所見はWilson法,内臓所見はDawson法により判定した.混合飼料中の残存過酸化水素量は,0.1NのKMnO_4の消費量から測定した.1)急性毒性試験は3濃度とも死亡例はないが,10%群の体重減少が著明であった.2)胎児発育は,10%投与群が3.73g±0.39(対照群4.07g±0.25)に低体重の傾向が著明であり,生存率は85%(対照群98%)であった.内臓所見は出血が高濃度群に20%,骨格所見は高濃度群に20%の形成不全を認めた.3)新生児の影響は,生後4週間の生存率でみると10%,2%,0.1%,0.02%群はそれぞれ0%,81.2%,84.3%,87.1%(対照群93.4%)であり,影響は生後にまで及んだ.4)混合試料の残存H_2O_2は24時間後に1/10に低下し,72時間後は,分解され消失した.急性毒性試験で死亡を認めないのは体内カタラーゼによる急速な分解作用によるが,胎児・新生児発育の影響は,過酸化水素が飼料中の栄養素を破壊し蛋白質,含水炭素,脂肪の変性と被酸化性ビタミンの不括化の結果,摂取栄養素の不均衡によると考えられる.
著者
柳沼 〓 泉 陸一 長阪 恒樹 安井 洋 新居 隆 川端 正清 細川 仁 八木 義仁 藤盛 亮寿 須藤 裕悦
出版者
社団法人日本産科婦人科学会
雑誌
日本産科婦人科學會雜誌 (ISSN:03009165)
巻号頁・発行日
vol.33, no.2, pp.207-214, 1981-02-01

正常妊娠を経過した71例の妊婦の妊娠38週から42週の間の分娩時に, 膀帯静脈血を採取し, その血清中の成長ホルモンとプロラクチンを夫々に特異的なRIAにより測定して, 次の諾結果を得た.この期間中その成長ホルモンおよびプロラクチンレベルはほぼ一定である.これらのホルモンレベルは分娩時間の長短に関係なくほぼ一定である.成長ホルモンレベルは, 分娩時刻に関係なく, 一日を通してほぼ一定である.プロラクチンレベルには, (2〜4)時に最高値を示し, (6〜8)時に最低値となり, (14〜16)時から(22〜24)時の間はほぼ一定であるという目内周期性が認められる.これらの事実は, 妊娠末期においては, 胎児血中成長ホルモンレベルは, ほぼ一定であり, 陣痛, 分娩のようなストレスに影響されないことを示唆する. 一方妊娠末期において, 胎児プロラクチンレベルはまた, ほぼ一定であるが, 目内周期性変動があり, これは陣痛・分娩というストレスにより影響されないことが示唆される.そして膀帯血中ブロラクチンレベルを比較する時には, この周期性を考慮することが重要であることを示す.
著者
本山 悌一
出版者
社団法人日本産科婦人科学会
雑誌
日本産科婦人科學會雜誌 (ISSN:03009165)
巻号頁・発行日
vol.33, no.8, pp.1197-1204, 1981-08-01

ヒト卵巣癌由来の培養細胞, KuramochiとCKSの2株のin vitroにおける形態学的および生化学的待性を明らかにし, 次いでMitomycin Cに対する感受性の定量的な解析を試みた.2株は, いずれも典型的な上皮様配列を示した.未分化癌由来のKuramochi株は, 細胞表面に微絨毛を持ち, 比較的発達した接着装置を有するが, 分泌穎粒や分泌空胞は認められなかつた.染色体は50にモードを有する高2倍体であつた.集団倍加時間は約26時間であつた.漿液性撃胞康癌由来のCKS株は, 分泌空胞を有し, 徴絨毛も認められるが, 発達した接着装置は認められなかつた.染色体は37にモードを有する低2倍体であつた.集団倍加持問は約34時間であつた.2株ともAFP, HCG, CEAなどの生化学的マーカーは有しなかつた.Mitomycin C2時間処理の90%致死量値は, Kuramochi株では0.42μg/ml, CKS株では1.13μg/mlであり, Kuramchi株の方がMitomycin Cに対して感受性が高かつた.しかし, 対照として用いた胃印環細胞癌由来のKATO-III株に比べると2株ともはるかに感受性が低く, 卵巣癌がMitomycin Cに対して低抗性であることが示唆された.
著者
星 和彦 星合 昊 斉藤 晃 桃野 耕太郎 京野 広一 対木 章 鈴木 雅洲
出版者
社団法人日本産科婦人科学会
雑誌
日本産科婦人科學會雜誌 (ISSN:03009165)
巻号頁・発行日
vol.35, no.12, pp.2300-2304, 1983-12-01
被引用文献数
2

体外受精・胚移植時に採取されたヒト卵子を成熱度の高いと思われる順に卵子の外観と付着している卵丘細胞の状態から5型に分類した(GradeI〜V)。この卵子のGradeと体外受精における受精蜆初期発生状態との関連性を検討して以下のような成績を得た.胚移植時2〜8細胞期と正常に発育した卵子の割合は,GradeI〜IIの卵子では76%で,III〜Vの場合の22%に比べ明らかに高率であり,われわれの作成した分類法は成熟度をよく反映していた.GradeI〜II卵子の採取率は自然LHサージ後約26時間で64%,HCG注射後約36時間では88%であり,採卵時期として上記の設定時問は適切と思われた。また得られた卵子のGradeと卵胞直径・卵胞液量との間に相関はなかった。
著者
安田 泰久
出版者
社団法人日本産科婦人科学会
雑誌
日本産科婦人科学会雑誌 (ISSN:03009165)
巻号頁・発行日
vol.16, no.12, 1964-12

妊馬血清性ゴナドトロピン (PMSG) と絨毛性ゴナドトロピン (CG) をヤギに連続投与して, アンチホルモン (Anti-H) の産生, 血清タンパク質含量, タンパク各分屑値の変動と沈降反応混合法による沈降素抗体価の変動を追求した. その後, 殺処分して病理学的考察を加えた. 又, Anti-Hの本態を明らかにする目的で, ウサギに大量のCGを投与して, 沈降反応重層法による抗体価の変動と沈降反応重層法による「反応の場の形」を求め, 寒天内沈降反応 (Ouchterlony法) を行い, 更に, この抗CG血清から得たγ-glのAnti-H作用を生物学的測定法で追求した. その結果, 次の成績が得られた. 1) PMSG及びCG両注射群ヤギにAnti-H産生を認めた. 血清タンパク質及びγ-gl値は初め増加するが, その後減少する. これとは反対にAl及びA/G比は注射開始後減少し, 末期に回復する. 又, 沈降素抗体価は注射の反復に伴って上昇が認められた. 病理学的所見では, 肝臓と甲状腺の重量増加が認められたが, 卵巣には変性濾胞が多く血胞及び成熟濾胞の発育は認められない. 肝臓及び腎臓の著変から, 解毒及び排泄機能の亢進が考えられる. 2) ウサギ血清の沈降素抗体価の変動で, 抗体産生に対する個体差の影響が大きいと認められた. 又「反応の場の形」で, CGと抗CG血清とは3種以上の反応系を有することが推定され, CGは複雑な抗原より成り立つものと考えられる. 寒天内沈降反応による抗原抗体分析でもCGと抗CG血清は2本以上の沈降線が認められたが, PMSGと抗CG血清との間に反応系はみられない. 又, 同一のCGでも Lot.の差によって, その中から検出出来る抗原成分数が異なることがみうけられた, 抗CG血清及び抗CG血清より抽出されたγ-gl液は, 生物学的測定で, 同時に注射したCGを抑制 (Anti-H) する作用をもつことが認められた. 以上の諸点から, Anti-Hの本態は抗体と考えられる.
著者
八田 賢明
出版者
社団法人日本産科婦人科学会
雑誌
日本産科婦人科學會雜誌 (ISSN:03009165)
巻号頁・発行日
vol.24, no.2, pp.83-91, 1972-02-01

従来, 子宮内膜の病変の診断に細胞診の行なわれる機会は子宮頚部に比して少なかつた. しかし簡単で確実かつ反復採取可能な内膜細胞診の確立がのぞまれていた. 近年, 内膜細胞採取法が種々考案され内膜細胞診による体癌の検出はもとより, 内分泌環境の変化に基づく各種内膜像についての細胞学的知見にも関心が注がれている. しかし内膜細胞診における判定も統一されておらず, 正常周期における内膜細胞の特徴的所見でさえ判然としない現状である. 本研究は子宮内膜腺細胞の正常周期像を細胞レベルでとらえ, 不正子宮出血例 (主に機能性子宮出血) に対し改良を加えた内膜採取法を試み, 得られた内膜細胞の塗抹標本上の特徴的所見を系統的に分析し, さらに子宮体癌と非癌内膜との細胞学的鑑別法について検討し, 次のような結果をえた. (1) 正常周期像では増殖期初期および分泌期後期ではそれぞれ比較的特徴ある所見がみられ, 特に細胞集塊の形態, 細胞質量の多寡に明らかな差異を見出しうるが, 増殖期後期と分泌期初期との間には剥離細胞所見は近似し, 両者間の区別は容易でない. (2) 不正出血例について病理組織分類別に内膜細胞を検討すると, 標本全体, 細胞質, 核各々に特徴的所見がみられ, その分析により背景となる組織像をほぼ推定することができる. (3) 各種内膜について核の長径と短径を測定し分布図をつくり比較すると, 特有な核群分布がみられるものがあり, 子宮体癌例では長径7.5μ〜17μ, 短径3.5μ〜13μの大小不同の強い核群と比較的均一な核径分布を示す2群が認められる. (4) 体癌細胞と非癌細胞との鑑別は核多形性, 核過染性, 核径不整, クロマチン像の他に内膜腺細胞の散乱傾向, 核小体肥大, 核内空胞に求めるべきである. (5) 機能性子宮出血例においては出血持続日数の増加につれ各種内膜に共通して細胞集塊性減弱, 遊走細胞増多, クロマチン像の変化がおこり, 固有の塗抹標本所見から離脱した結果がえられ, 出血開始直後での内膜細胞診の実施がのぞまれる. (6) 不正子宮出血例において腟プールスメア中に内膜細胞が出現する頻度は年令およびその背景の内膜像に関与する場合が多く, 出血持続日数の長短によつても差異を認めうる.
著者
立花 仁史
出版者
社団法人日本産科婦人科学会
雑誌
日本産科婦人科學會雜誌 (ISSN:03009165)
巻号頁・発行日
vol.29, no.9, pp.1097-1105, 1977-09-01

超音波照射による胎仔着床数,胎仔流死産数,胎仔体重,胎仔の外表奇形,胎仔の骨格異常の惹起作用を得るために,東北大学医学部マウスセンター飼育によるdd-I系,C_3H/He系マウスを用いた.超音波出力は0.5, 1, 2 W/cm^2を用い,周波数は2MHzで,超音波照射時間は2, 5, 10分の3群で実験を行い,超音波照射時期は器官形成期の妊娠7日目〜13日目の間毎日一回午前10時から12時の間連日計7回照射を行い,次の結果を得た. 1. 500mW/cm^2超音波連続照射でdd-Iマウスを用いての実験群では,着床数,流死産数,胎仔体重,外表奇形発現率及び種類,骨格異常において,照射群の各群と非照射群の各群の間に有意差は全く認めなかつた. 2. 1W/cm^2, 2W/cm^2超音波連続波照射で胎仔着床数,胎仔生存数,胎仔流死産,胎仔体重,外表奇形発現率,骨格異常において,照射群の各群と非照射群の各群の間に有意差は認めなかつた. 3. 1W/cm^2, 2W/cm^2超音波連続波照射で,dd-I系マウスを用いての実験群で,胎仔外表奇形の種類に非照射群の自然コントロール群と固定コントロール群にみられない,腹壁破裂,脊椎破裂の特異的な奇形を認めた. 4. 1W/cm^2, C_3H/He系マウスに超音波連続波照射で,外表奇形においてdd-I系マウスの実験と同様に非照射群の各群にみられない脱脳症,腹壁破裂が照射群の各群に出現した.