著者
吉田 正平 海野 信也 香川 秀之 篠塚 憲男 上妻 志郎 武谷 雄二
出版者
社団法人日本産科婦人科学会
雑誌
日本産科婦人科學會雜誌 (ISSN:03009165)
巻号頁・発行日
vol.53, no.11, 2001-11-01

正期産妊娠における妊娠中の胎児超音波計測による推定体重と出生体重の関係を知る目的で548例の児奇形のない妊娠をretrospectiveに検討した.対象症例は正期産時の出生体重の偏差値によって6群に分類した.推定体重偏差値と出生体重偏差値の関係とその変化を, 推定時期を妊娠20週以降4週間ごとに分けて検討した.推定体重偏差値によって判定した胎児発育パターンは正常発育児とIUGR児では明らかに異なっていた.その差は妊娠20〜23週には既に存在していた.妊娠20〜23週以降満期に至るまで推定体重偏差値は出生体重偏差値と有意に相関していた.本研究によって, 超音波測定によって検出しうる胎児発育の差は既に妊娠20〜23週で存在していることが明らかとなった.
著者
岡村 均 原田 攻 森川 博史 大島 正義 西村 敏雄
出版者
社団法人日本産科婦人科学会
雑誌
日本産科婦人科學會雜誌 (ISSN:03009165)
巻号頁・発行日
vol.29, no.7, pp.811-816, 1977-07-01

ヒトにおいて,排卵時に卵胞腔内から放出された卵が卵管内に移行する機構については,一般的に卵管采によるpick-up mechanismがいわれているが,いまだ詳細に検討されていない点が多い.この問題解明のため,われわれは卵巣と卵管采の間に存在する卵管間膜,mesotubarium ovarica (MTO)を超微形態学的に検索し、このMTOに微細構造上典型的な平滑筋細胞が束状に存在し,しかも卵巣と卵管采を機能的に連絡しているかのごとき配列を呈していることを観察した.MTOの構成成分はこの平滑筋の他に血管とcollagen fibersでありmast cellのような遊走細胞も観察された.卵管間膜表面被覆上皮細胞にはciliaは全く観察されない.従つて排卵時に卵胞壁の収縮により卵胞腔から排出される卵は卵管間膜表面構造によつて移送されるのではなく,この卵胞の運動と同調したMTOの収縮により卵巣に近接する卵管采によつて直接pick-upされるものと考えられる.
著者
大蔵 健義 一瀬 邦弘 渡部 秀樹 瀬川 裕史 三ツ矢 和弘 榎本 英夫 林 雅敏 矢追 良正 Takeyoshi OHKURA Kunihiro ISSE Hideki WATABE Yushi SEGAWA Kazuhiro MITSUYA Hideo ENOMOTO Masatoshi HAYASHI Yoshimasa YAOI 獨協医科大学越谷病院産婦人科 東京都多摩老人医療センター精神科 獨協医科大学越谷病院産婦人科 獨協医科大学越谷病院産婦人科 獨協医科大学越谷病院産婦人科 獨協医科大学越谷病院産婦人科 獨協医科大学越谷病院産婦人科 獨協医科大学越谷病院産婦人科 Department of Obstetrics and Gynecology Koshigaya Hospital Dokkyo University School of Medicine Department of Psychiatry Tokyo Metropolitan Tama Geriatric Hospital Department of Obstetrics and Gynecology Koshigaya Hospital Dokkyo University School of Medicine Department of Obstetrics and Gynecology Koshigaya Hospital Dokkyo University School of Medicine Department of Obstetrics and Gynecology Koshigaya Hospital Dokkyo University School of Medicine Department of Obstetrics and Gynecology Koshigaya Hospital Dokkyo University School of Medicine Department of Obstetrics and Gynecology Koshigaya Hospital Dokkyo University School of Medicine Department of Obstetrics and Gynecology Koshigaya Hospital Dokkyo University School of Medicine
雑誌
日本産科婦人科學會雜誌 = Acta obstetrica et gynaecologica Japonica (ISSN:03009165)
巻号頁・発行日
vol.46, no.3, pp.271-276, 1994-03-01
被引用文献数
4

更年期以後の婦人は, 種々な程度の物忘れを訴える。エストロゲンが女性の記憶機能に影響を与えるという報告がある。しかし, 女性の更年期に関連して年齢層別に記憶検査を行って, 記憶力低下があるかどうかを報告した文献はない。本研究は, 次の二つを主な目的とした。更年期及びその周辺婦人に関して, 1) 記憶力低下があるかどうか。2) もし記憶力低下があるとすると, それは, 卵巣からのエストロゲン分泌が減少する更年期開始の年齢層やエストロゲン分泌が消失する閉経期の年齢層と関係があるかどうか。1), 2) を明らかにするために, 獨協医科大学越谷病院産婦人科外来受診中でかつ通常の日常生活を送っている, 31~65歳の婦人200名について三宅式記銘力検査を行って検討した。200名を5歳ごとに年齢層で区分して, A~G群に分けた。A~F群は各群30名で, G群は20名であった。各群の記憶力は, 無関係対語3回目の正答数を代表値として, 分散分析後多重比較した。A群 (31~35歳) とB群 (36~40歳) の正答数 (平均±SD) は, それぞれ8.0±2.0, 8.2±1.7で, 有意差は認められなかった。この両群は, 残りのいずれの群よりも高値であった (p<0.01)。C群 (41~45歳) とD群 (46~50歳) の正答数は, それぞれ5.9±2.1, 5.6±2.4で, 両群間に有意差はなかった。E (51~55歳), F (56~60歳), G (61~65歳) の各群の正答数は,それぞれ4.5±2.4, 4.2±2.2, 3.3±1.6であった。C群は, E~Gの各群より有意に高かった (p<0.05)。D群は, F, Gの両群より有意に高かった (p<0.05)。E群はG群より有意に高かった (p<0.01)。以上をまとめると次のようになる。B群からC群に移行するところで記憶力低下は最大であった。更年期には, C群とE群で記憶力低下が認められた。前者は, 血中エストロゲンの周期的変化が減少ないし停止して, 更年期が開始する年齢層に一致していた。後者は, 閉経期の年齢層に一致していた。更年期以後も緩徐に記憶力低下が進行した。This study was designed to investigate memory function in climacteric and periclimacteric women who lived a normal, ordinary life. Two hundred women treated at the gynecological outpatient clinic of Koshigaya Hospital were divided into 7 groups: groups A (31~35yr), B (36~40yr), C (41~45yr), D (46~50yr), E (51~55yr), F (56~60yr) and G (61~65yr). Each group consisted of 30 women except group G (n=20). The memory function of each group was determined and the mean scores for 10 paired hard-associates after three trials of presentation were compared. The mean scores (±SD) for groups A and B were 8.0±2.0 and 8.2±1.7, respectively, which were not statistically different. The scores for both groups were significantly higher than those for the other groups (p<0.01). The mean scores for groups C and D were 5.9±2.1 and 5.6±2.4, respectively, which were not statistically different. The score for group C was significantly higher than those for groups E (4.5±2.4), F (4.2±2.2), and G (3.3±1.6) (p<0.05). The score for group D was significantly higher than those for groups F and G (p<0.05). The score for group E was significantly higher than that for group G (p<0.01). The decrease in memory function was the greatest in group C. In the climacterium, memory impairment was also observdd in group E. The former corresponds to the climacteric commencement age group where cyclic changes in serum estrogen levels decrease or cease, and the latter corresponds to the age group for menopause. Memory impairment progressed gradually in postclimacteric women.
著者
松本 寛
出版者
社団法人日本産科婦人科学会
雑誌
日本産科婦人科學會雜誌 (ISSN:03009165)
巻号頁・発行日
vol.31, no.6, pp.717-726, 1979-06-01

胎児・胎盤機能あるいはその病態を早期に知るためそれらの予備能を判定する方法の一つとして,母体にdehyroepiandrosterone sulfate(DHAS)を負荷しその後の血中尿中ステロイド推移を検討し以下の成績を得た。DHAS 50mgを母体に経静脈的に投与L,妊娠末期の正常妊婦における各種steroidの血中%増加率を求めると,DHAS 60分1,000%,120分800%,DHA60分560%,120分290%,androstenedione 60分230%,120分130%となり,またestrogen4分画のうちE_2は60分380%,120分350%,E_4は60分135%,120分330%となり,E_1,E_3にはこれを認めることができなかった.一方尿中total E_3,E_4の濃度推移は特異的で,最初の6時間尿でそれぞれ180%,240%の増加となり,その後24時間で減少し,48〜54時間後再び160%,210%の増加となる2峰性パターンを認めた.よって血中E_2,とE_4,尿中E_3とE_4とをそれぞれ指標とする場合,前者の60分あるいは120分の最大増加率と120分あるいは240分での減衰率,後者のそれの2峰性パターンの有無より各種の異常妊娠例にみる胎児と胎盤との態様あるいは機能を検討すると,低体重児出産例については,1) 血中E_2,E_4増加が正常であり,2) E_2のみ急増と急減,3) E_4の増加率のみが低下し,尿中E_3,E_4に2峰性パターンを認めがたいもの,4) 血中E_3,E_4増加が低いが尿中E_3,E_4に2峰性パターンをみるそれとがあり,これらの症例ではsteroidの生成代謝の面よりそれぞれ,1) 胎児における予備能の低下,2) 胎盤におけるそれと胎児のwell beingの低下,3) 胎児における予備能及びwell beingの低下,4) 胎盤機能の低下にかかわらず胎児の予備能の健存,との各型に区分されるため,本法は胎児・胎盤系機能における予備能,ひいては胎児のwell beingないし予後の判定方法となり,予後を知るための臨床応用が可能となるものと思われる.
著者
永田 一郎 加藤 宏一
出版者
社団法人日本産科婦人科学会
雑誌
日本産科婦人科學會雜誌 (ISSN:03009165)
巻号頁・発行日
vol.38, no.1, pp.29-38, 1986-01-01
被引用文献数
2

子宮脱の修復にあたり,十分な長さの腟を保存し,しかもつねに確実な修復効果を得ることはなかなか難しい.この目的のために,腟上端を仙棘靱帯に固定する手法を従来の腟式手術に組み合わせてみた.対象は1983年4月から1984年4月までの間に,当科で行つた手術例11例(腟式子宮全摘術+前後腟壁整形術9例,Manchester手術1例,前後腟壁整形術のみ1例)であつた.仙棘靱帯固定術は前方操作,子宮操作終了後に行う.後腟壁を逆丁字切開し,通常右の直腸側腔を展開し,坐骨棘を指標として仙棘靱帯を露出する.2本の糸をこれに通し,後腟壁右上端に結合させて腟を挙上固定する.ついで肛門挙筋縫合などを含む後腟壁整形術をかるく行う.術前術後の腟の脱垂状況の評価に部位別の腟scoreを用いた.すなわち尿道脱,膀胱脱,子宮または腟上端の脱,小腸脱,直腸脱の5部位について,脱垂の程度を0〜4点で表し,この順に並べて記載する.術前すべての部位で4点を示した高度子宮脱も本法施行後のscoreは全て良好で,とくに腟上方から後方にかけての修復状況は全例0点を示していた.また術後の腟の変位と移動方向をみるために,subtraction腟重複造影法を試みた.腟に造影剤をつめ,腹圧の前後で側面像を2枚撮り,1枚のフィルムの白黒を逆転し2枚重ね合わせてプリントする方法である.仙棘靱帯固定術を行つた例では腟が背足方に変位しており,腹圧にて腟はその長軸に平行に足方に移動した.一方仙棘靱帯固定術を行わない例では,腟の位置は正常例と同じであつたが,腹圧にて腟は長軸に沿つて前足方に移動した.
著者
安部 徹良 山谷 義博 鈴木 雅洲 森塚 威次郎
出版者
社団法人日本産科婦人科学会
雑誌
日本産科婦人科學會雜誌 (ISSN:03009165)
巻号頁・発行日
vol.31, no.5, pp.607-614, 1979-05-01
被引用文献数
15

更年期不定愁訴症候群の病態生理および病因は未だ仮説の域を脱していない.著者らはこれらを解明するための1つの接近法として症候による本症候群の型分類を試みた.まず,更年期障害婦人194名を対象として,17種類の症状の重症度を調査し,これに因子分析法を適用し,本症候群の状態像について検討した。すなわち,内在する因子数を,Akaikeの最小情報量基準により6個とし,その時の因子負荷行列を推定し,さらに,これをVarimax法により直交回転し,求められた因子負荷行列に基づいて内在因子の医学的解釈を行なった.その結果,第1因子を心機能障害様因子,第2因子を神経症様因子,第3因子を血管運動神経障害様因子,第5因子を知覚障害様因子,第6因子を自立神経失調様因子と命名した.次に個々の対象婦人について,上述の因子評点を算出し,因子評定上で対象婦人のクラスターを求め,本症候群を7型類別した.これらの各型の特徴および類別された人数は以下の如くである.すなわち第1型は睡眠障害を伴う神経症型(30名),第2型は心機能障害様症状と睡眠障害を伴う神経症型(19名),第3型は血管運動神経障害様症状,心機能障害様症状および自立神経失調症様症状を伴う神経症型(23名),第4型は血管運動神経障害型(17名),第5型は比較的単純な神経症型(51名),第6型は知覚障害様症状および欝症状を伴う神経症型(19名),第7型は重傷度の高い特徴的症状を持たない軽症型(35名)である.これらの型の中で第4,5,6型は,それぞれ,単独の高因子評点を持つ代表的因子,血管運動神経障害様因子,神経症様因子および知覚障害様因子を所有し,症候論的に比較的単純な型であると考えられたが,その他の型は複数の代表的因子を包含し,今後,さらに単純な型に分類できる可能性が否定できない.
著者
山脇 孝晴 手島 英雄 竹島 信宏 山内 一弘 荷見 勝彦
出版者
社団法人日本産科婦人科学会
雑誌
日本産科婦人科學會雜誌 (ISSN:03009165)
巻号頁・発行日
vol.48, no.5, pp.328-334, 1996-05-01
被引用文献数
6

子宮体部明細胞腺癌 (以下明癌) 症例および一部に明細胞腺癌成分を含む内膜型腺癌 (以下一部明癌) 症例の臨床病理学的検討を行い, 以下の成績を得た。1. 癌研究会附属病院婦人科にて, 1950〜1994年に初回治療を行った子宮体癌1,152例中, 明癌は16例 (1.4%), 一部明癌は21例 (1.8%) であった。2. 累積生存率の算定にKaplan-Meier法を用いると, 明癌, 一部明癌は, それぞれ, 子宮体癌全体に比し, 有意に予後不良であった (p<0.001) 。3. 明癌のsubtypeは, papillary 5例 (31%), solid 9例 (56%), tubulocystic 2例 (13%) であった。4. 明癌において, hyaline body 8例 (50%), bizzare nucleus 7例 (44%), psammoma body 5例 (31%), 壊死6例 (38%), リンパ球を主体とした細胞浸潤8例 (50%), リンパ管侵襲5例 (36%), 血管侵襲4例 (29%) および異型内膜増殖症1例 (7%) に認められた。5. 明癌において, 病理組織学所見と予後とを比較すると, 癌病巣周囲のリンパ球を主体とした細胞浸潤の有無が最も予後と関係した。すなわち, 細胞浸潤がみられなかった8症例では, 癌が粘膜に限局していた1例を除けば, 7例中6例 (86%) が1カ月から1年7カ月で癌死したのに対し, 浸潤がみられた8症例では, 6例が無病生存, 1例が坦癌生存, 1例は2年7カ月で癌死であった。6. 一部明癌の中で, 転移, 再発を来した6症例中5例 (83%) は, 原発巣では明癌成分がわずかであったにもかかわらず, 化学療法, 放射線治療前の転移, 再発巣では, 明癌成分が著明に増加していた。以上, 子宮体部明癌の予後には, リンパ球を主体とした反応性細胞浸潤が関係している可能性が示され, その欠如は危険因子の一つになりうると考えられた。また, 一部明癌では, 転移, 再発巣において, 明癌成分が優位に増殖する傾向が明らかになり, 今後, 明癌のみならず, 一部明癌症例に対しても, 新たな積極的な治療が必要と考えられた。
著者
印出 秀二
出版者
社団法人日本産科婦人科学会
雑誌
日本産科婦人科學會雜誌 (ISSN:03009165)
巻号頁・発行日
vol.30, no.3, pp.261-269, 1978-03-01

初期流産,黄体機能不全,排卵誘発例等の内分泌動態を分析するための正常対照を得るべく,正常月経周期16例,正常初期妊娠14例につき,排卵前より可及的経日的に血中LH (HCG), FSH, P, E_2, HCG (RIA法,RRA法,及びβ-subunitのRIA法)値を測定し,正常域(M±SD)を設定した. 1) 正常月経周期においては,LHは排卵期に鋭いLHピークを示し,卵胞期では後半の方が前半よりも高く,黄体期では前半の方が後半よりも高値を示し,LHピークを中心とする山型のカーブを示した.卵胞期の平均は黄体期の平均とほぼ同等の値であつた. FSHはLHピークに一致して小さなピークをつくり,卵胞期の方が黄体期より高値を示した.PはLHピーク後,増加し始め,+6日〜+9日に6ng/ml〜18ng/mlの正常域を待つピークを示し,この間5ng/ml以下の値を示す例は存在しなかつた.E_2は,-5日より増加し始め,-1日にピークを示し,次いで0日が高く,+1日に極小,+6〜+9日にかけ再び小さなピークを形づくる. 2) 初期妊娠においては,LH (HCG)は+11日に正常月経周期の値を有意に越し,+20日にはLHピークを有意に越し,+21日以降急増する.FSHはLHと一致した小さなピーク後,妊娠が成立しても卵胞期より低値の黄体期レベルを持続する.Pは+12日より正常月経周期の値を有意に越し,以後漸増して+42日頃,一時低下し,その後再び増加する.E_2は+13日より正常月経周期の値を有意に越し,+28日より急増する.HCGのβ-subunitは,早いもので+9日より検出され,RIA, RRA値ともに+49日頃ピークを示す.
著者
加藤 友康 清水 敬生 梅澤 聡 荷見 勝彦
出版者
社団法人日本産科婦人科学会
雑誌
日本産科婦人科學會雜誌 (ISSN:03009165)
巻号頁・発行日
vol.46, no.12, pp.1337-1342, 1994-12-01
被引用文献数
2

直腸に直接浸潤もしくは播種巣を形成した卵巣癌症例に対する, neoadjuvant 化学療法(NA化療)後の直腸合併切除の意義について検討した. 1988年7月から1992年12月までに当科でNA化療後に直腸合併切除を行ったIIIc期7例, IV期4例(漿液性腺癌10例, 類内膜腺癌1例)を対象とした. IIIc期例は試験開腹後にNA化療を開始した. IV期例ではPerformance status (PS)が悪いため試験開腹は施行せず, まず癌性胸腹水に対して免疫療法を施しPSの改善を図った後, ただちにNA化療を開始した. 化療のレジメンはCP (cyclophosphamide: 500mg/m^2, day 1; cisplatin: 10mg/m^2, day 1〜7)であり, 4〜6コース投与した. 効果はPartial Response 9例, Minor Response 1例, No Change 1例であった. NA化療後, 子宮・卵巣・直腸をen blocに摘出した. 人工肛門が造設されたのは計画的に骨盤内臓全摘術を行った1例のみであった. 上腹部臓器に転移巣が残存した5例は, 可及的に摘出した. 術後の残存腫瘍径は, 残存腫瘍なしが5例, 0.5cm未満が2例, 2cm未満が3例, 2cm以上が1例であった. 術後合併症例はみられず, 術後治療によるPSの改善が効を奏したと思われる. 11例の全生存期間(5例死亡)は平均26.8ヵ月であった. なお, 残存腫瘍径が0.5cm未満の症例7例(2例死亡)中, 2年未満の死亡例はなかった. 直腸合併切除及び播種巣の可及的切除により残存腫瘍径を0.5cm未満にすることが可能な症例では, NA化療後の直腸合併切除はQuality of Lifeを損ねることなく, 予後に大きなimpactを与えると期待できる.
著者
麻生 武志 TATSUMI Kenichi YOSHIDA Hisahiro YOSHIDA Yataro
出版者
社団法人日本産科婦人科学会
雑誌
日本産科婦人科學會雜誌 (ISSN:03009165)
巻号頁・発行日
vol.35, no.1, pp.88-96, 1983-01-01
被引用文献数
1

MN血液型不適合のために過去4回妊娠29-36週にて子宮内胎児死亡を来した症例に対して新しく開発した母体血中抗体除去法を施行し生児をうることができたので報告する.本妊婦の血液型はO,NNss,CcDeeで夫はO,MMss,CcDEeであり,今回の妊娠18週における抗M抗体は×512に上昇したため再度の胎内死亡を防ぐために先ず抗体を含まない新鮮凍結血漿を用いてplasmapheresis(1回の交換量2,500ml)を6回実施したところ重症の輸血後肝炎を発症した.肝炎の急性期が過ぎた後抗体除去法を開始したが本法は成分採血装置により患者血漿を採取し,バッグ内で4℃,10分間,1/2.5量のMM血球と反応させ抗M抗体を吸着除去した後に血漿を再輸注するもので,血漿量3.0-7.0L/週の割合で妊娠23-32週にわたり計22回行った.これにより母体血中抗体の上昇は×512に留まり,羊水中ODD-450値はLiley graphのupper mid zoneの範囲を維持し,母体肝機能は正常化して児頭大横径の変化も標準的であったが,妊娠33週に入り胎動の減弱とNST上sinusoidal patternがみられ胎児切迫仮死の診断の下に緊急布切を行い1,960gの女児をApgar score 2で娩出,児は強度の貧血を呈したため交換輸血,血小板輸濫等を要したが生後の身体的知能的発育は正常である.本法の原理は他の抗体除去にも応用可能で,血液型不適合による胎児貧血の進行を抑え胎外生活が可能となるまで子宮内生存を延長させる方法として副作用も少なく有用であると考えられる.
著者
野末 悦子
出版者
社団法人日本産科婦人科学会
雑誌
日本産科婦人科學會雜誌 (ISSN:03009165)
巻号頁・発行日
vol.18, no.3, pp.146-154, 1966-03-01

わが国に於ける妊産婦死亡率は, 今尚文明諸外国に比し高率である. この原因を探求し死亡を減少させるには, 個々の例が如何なる条件のもとに死亡したかを分析しない限り充分ではない. そこで人口動態死亡票をもとにして死亡例を求め, 1957年1月から1959年12月迄の3年間に於ける神奈川県妊産婦死亡に関し実地調査を行ない, 諸条件を分析する事により, 如何にすれば死亡が予防可能であるかを考察した. 1. 妊産婦死亡数は分娩の多い25〜29才, 30〜34才に多いが, 死亡率は35才以上に高い. 2. 調査後, 死因を訂正すべきものが27.2%認められ, 妊娠中毒症は多く, 出血は少なく届出られている. 3. 死亡の時期で最も多いのは, 分娩後24時間以内で, 39.5%を占めている. 4. 医師を受診した回数の少ないものが多く, 特に生活程度下の群では, 死亡迄0〜2回しか受診しないものが85%を占めている. 初診が遅れるため, 妊娠中毒症の発見が遅れている. 5. 施設の利用は年々増加の傾向にあるが, 生活程度下の群では35%が自宅で死亡しており, 異常発生時初診者も, 専門医30%, 助産婦35%で医師受診率は低い. 6. 施設内死亡の中60.9%が入院後24時間以内の死亡であり, 79%が勤務時間外の死亡である. 7. 大量出血の55.3%は輸血が行われていない. 8. 子宮外妊娠死亡の初診者の73%が一般医で, 55%は手術前に死亡している. 9. 諸条件を分析した結果, 保健指導強化により14.8%が, 診療の充実により48.2%が, その両者により21%が, 経済状態その他の環境の改善により11.1%がそれぞれ予防可能である.