著者
中瀬 明男 小林 正樹
出版者
公益社団法人地盤工学会
雑誌
土質工学会論文報告集 (ISSN:03851621)
巻号頁・発行日
vol.19, no.1, 1979-03-15

錦江湾及び広島空港の軟弱粘性土地盤におけるサンドドレーン工事の2例について圧密現象とその解析について報告したものである。まず前者については, 間隙水圧の消散, 沈下〜時間曲線ともに標準圧密試験より求めた鉛直方向排水による圧密係数c_vを用いて計算するとよく観測値と一致し, c_vの6倍程度大きい。水平方向排水の圧密係数c_hを用いることはできない。また強度増加についても現地観測より求めたc_u/Pと室内実験で求めた値とがよく一致した。一方後者は地盤がc_vの異なる各層よりなっているが, 無処理区間においては各層の平均のc_vを用いたもの, 各層異なるc_vを用いたときも過少な沈下量の値が計算されるが, サンドドレーン区間においては, 水平及び鉛直方向の圧密度を合成すると, かなり観測値とよい一致を示す。以上のことからサンドドレーンにおいては標準圧密試験のc_vが実際上適用されること, 一次元圧密においては標準圧密によって地盤全体のc_vを過少評価することを指向し, それらの原因について検討している。
著者
田中 茂
出版者
公益社団法人地盤工学会
雑誌
土質工学会論文報告集 (ISSN:03851621)
巻号頁・発行日
vol.18, no.3, 1978-09-15

本報文では, まず降雨による鉛直浸透をいろいろな場合に分類し, 解析に必要な基本式を筆者の考えに基づき誘導し, 解説している。以下, 箇条書きにすると, 均等質土層への鉛直浸透として, (1)間隙空気圧の圧縮を伴う場合, (2)強雨が突然やんだ後の水の運動, (3)強雨が突然に弱雨に変わったときの浸透, (4)(3)の降雨が突然停止し, 小休止後再開した時の浸透, また透水係数を異にする互層への鉛直浸透として, (i)上部粗粒土, 下部粗粒土からなる地層への浸透, (ii)上部細粒土, 下部粗粒土からなる地層への浸透, である。次に表土層と基岩からなる自然斜面, および基岩が破砕されている斜面の浸透について定性的な解説が行なわれている。最後に自然斜面への浸透を鉛直浸透が進行して透水性の悪い層に達して消失するまでと, 透水性の悪い層の上に自由小面が発生し, 急速に上昇して流線方向が逆転する状態の2段階に分け, 第2段階の浸透について解説している。斜面の雨水による崩壊を解析する場合はこのようないろいろな浸透現象を十分把握したうえで解析する必要があるとしている。
著者
駒田 広也 林 正夫
出版者
公益社団法人地盤工学会
雑誌
土質工学会論文報告集 (ISSN:03851621)
巻号頁・発行日
vol.24, no.3, 1984-09-15

地下式原子力発電所の仮想的な原子炉の事故として, 冷却系の能力に支障が生じた場合, 放射性核種を含むガスが地下空洞に放出される。そして空洞内の温度, ガス濃度および気圧が上がり, ガスが空洞より地盤中を通って地表に漏えいしたり, ガス状および非ガス状の核分裂生成物の溶解した地下水によって放射性核種が移動することが想定される。以上のような移動経路を有限要素法を用いて, 地下空洞の土かぶり30mとし, 我が国の海岸山腹斜面によく見られる岩質を想定して, 仮想事故時における地下水面より上部の気相中におけるよう素, クリプトンの移動の解析を行っている。その結果, よう素は地盤中の固相への付着が期待できる核種であり, 地下式の場合に大気中に漏えいするよう素の量は地上式の約10^<-5>に減少する。希ガスは地盤中への固への付着が期待できない核種であるにもかかわらず, 地下式の場合に大気中に漏えいするクリプトンの量は地上式の約10^<-2>に減少することを見い出した。
著者
平澤 市郎 今村 一郎
出版者
公益社団法人地盤工学会
雑誌
土質工学会論文報告集 (ISSN:03851621)
巻号頁・発行日
vol.18, no.3, 1978-09-15

上越新幹線榛名・中山トンネルは, 一部を除いて, 火山活動により生成された火山性堆積層の中を通っていて, 地下水が多いために, 固結度の良くない地層では湧水により切羽が立たず工事が難行している。そのうちで, 榛名トンネルの下新井工区では, 特に切羽の自立性が悪い軽石層において, 注入工法により掘削を進めた。注入材料はLW-2と水ガラス系溶液型注入材を使用, 注入ステージ長は13.5 mとした。また中山トンネルの小野上(南)工区では, 湧水量が多くなった八木沢層群区間において, 本坑より18 m離れた位置に, 本坑と平行に水抜き坑を先進させながら, 極力水抜き坑に水をしぼり本坑の掘削を進めている。さらには一部注入工法を併用した区間, あるいは水抜き坑および本坑断面を二段ベンチカット工法で掘削した区間もある。
著者
篠木 嶺二 奥園 誠之
出版者
公益社団法人地盤工学会
雑誌
土質工学会論文報告集 (ISSN:03851621)
巻号頁・発行日
vol.18, no.4, 1978-12-15

本報告は高速道路の, ある切土のり面に起こった地すべり的崩壊事例について, その対策工法の検討を行う際問題になったことがらについて述べている。すなわち, (i)すべり面のせん断強度の考え方, (ii)強度低下の問題点などについての実例を紹介し, 今まで集積された資料をもとに, のり面安定の理論と実際のくい違いによる問題点を報告している。せん断強度を決定する際の問題として, 地すべり粘土が均一な土質ではなく, しかも実際は厚さも薄く岩片を含むことが多いことを挙げている。なお, 土の強度定数についても, 土質試験から求められた強度定数をそのまま用いず, 実際の地すべり断面から逆算した強度定数と対応して, 採用すべき強度定数の値を決定すべきであると述べている。さらに, あるのり面崩壊の例を挙げ, 実際の崩壊形状からすべり面のせん断強さを算定する私案を紹介している。強度低下の原因としては, 地盤が, 乾燥・湿潤繰返しや凍結融解繰返しなどの風化作用を受けてぜい弱化すること, 切土掘削によって応力解放を受けた岩の吸水膨張による急速な強度低下を挙げている。また, 強度低下によってすべりが起こることははっきりしているが, それを裏づけする理論がないため, 崩壊のり面の復旧対策を行う場合, 安定計算による検討は非常にむずかしくなると述べている。
著者
内田 一郎 鬼塚 克忠 平田 登基男
出版者
公益社団法人地盤工学会
雑誌
土質工学会論文報告集 (ISSN:03851621)
巻号頁・発行日
vol.17, no.1, 1977-03-15

マサ土地帯は山くずれ, 盛土ノリ面の侵食, 崩壊などが数多く発生し, 宅地造成や切土, 盛土斜面の形成工事において人身事故につながる危険性が大きく防災上からこの方面に関する研究の必要が高まっている。本文は, マサ土による盛土斜面の破壊機構を明らかにする目的でマサ土の物理的特性と共に, 圧縮沈下特性, 圧縮強度特性, セン断特性(間ゲキ圧・ダイレイタンシー・強度定数c, φ)を調べる基礎的実験と関連させて, 盛土斜面の模型実験から上部載荷, 繰返し荷重, 水の浸水による盛土斜面の崩壊機構について検討している。その結果, マサ土においても, 締固め密度が小さく含水比が大きくなると荷重による沈下量, 間ゲキ圧が増大し, 強度, 強度定数c, φダイレイタンシー指数が減少することを示し, さらに, ノリ肩近傍に載荷した場合の支持力算定式については, スベリ線の発生順序を考慮に入れるべきことを指摘し, マイヤーホッフの提案した支持力式の適用限界について論述している。
著者
半沢 秀郎 岸田 隆夫
出版者
公益社団法人地盤工学会
雑誌
土質工学会論文報告集 (ISSN:03851621)
巻号頁・発行日
vol.21, no.1, pp.39-50, 1981-03-15
被引用文献数
1

Naturally deposited marine clays are usually in overconsolidated state notwithstanding they have not been subjected to release of the overburden because of the additional strength developed by aging effect, such as by secondary compression and chemical bonding. These effects on undrained strength characteristics, such as 1) stress-strain characteristics, 2) overconsolidation ratio, 3) K_0 value and 4) anisotropy in undrained strength are discussed for alluvial marine clays found in the Arabian Gulf and in the Tokyo Bay.It is first shown that clay shows more brittle behaviour as the strength developed by secondary compression and chemical bonding becomes greater. It was found from the study that overconsolidation ratio of the clays investigated can be obtained from the strength ratio between in the field and in normaly consolidated state and that strain value at failure in strength tests shows almost a constant value independing on overconsolidation ratio. In addition, it was strongly suggested that K_0 value and anisotropy in undrained strength (which is a stress induced anisotropy that results from rotation of principal stress during shear) of the clays are independent on overconsolidation ratio and almost the same as the values in normally consolidated state.
著者
喜田 大三 川地 武
出版者
公益社団法人地盤工学会
雑誌
土質工学会論文報告集 (ISSN:03851621)
巻号頁・発行日
vol.19, no.3, 1979-09-15

従来, 泥水の調合・管理は主として泥水掘削時の逸泥を含む崩壊防止に重点がおかれていたが, 地中壁体の構造体への利用度が高まると共に, 良質な地中壁体の築造という見地から泥水管理を見直す必要性が生じてきた。特にスライム処理の問題は構造体の性能に重大な影響を与えるものであるので, その点を考慮して室内実験を行い, 各種泥水中のスライム粒子の沈降や堆積の挙動を調査し, 以下の知見を得た。スライム粒子の泥水中における沈降速度はストークスの沈降式に従い, 堆積後に自重圧密を受けて平衡状態に至るが, 自重圧密に要する時間は堆積厚や粘度の増大につれて長くなる。堆積後一夜経過したスライムの間隙比はファンネル粘度の低い泥水中では0.9前後であるのに対し, 粘度が高くなると1.0を越え流動化しやすくなって重錘が容易に沈下する。スライムの沈降促進, 堆積スライムの自重圧密促進や密度増加などを考慮すると, 泥水の粘度は低いことが好ましく, 特にベントナイト泥水の場合にはファンネル粘度の上限値を30秒前後とすることが望ましい。
著者
岡田 安弘 長谷川 良
出版者
公益社団法人地盤工学会
雑誌
土質工学会論文報告集 (ISSN:03851621)
巻号頁・発行日
vol.24, no.1, 1984-03-15

東北新幹線建設工事のうち二区B_iは, 栃木県西那須野町二区にて東北本線と約5°の角度で立体交差するので乗越し延長は250 mにも及んでいる。本稿では, 基礎の設計施工について述べ上部工については基本計画を報告している。基本計画として, 橋脚はSRC造, 上部工はPC桁として検討し, 全体平面図, 全体構造一般図を示している。SRC造橋脚として, 地質調査, 載荷試験から場所打ち杭方式とし, SRC橋脚として門型ラーメン構造とした。基礎の設計方針については, 上部桁の総幅に比較して, スパンが大きく, 独立フーチング形式の不静定ラーメンだから, 基礎の変位による不静定応力の変位を考慮すること, 基礎のばね係数に幅をもたせること, フーチングの前面抵抗を考慮することについて述べている。概略の設計結果を図に示している。次に場所打ち杭の設計について, 極限鉛直支持力, 安全鉛直支持力を計算している。また, 杭躯本の設計について述べている。最後に, 場所打ち杭(ベノト杭)の施工は, 予定した期間内に完了できたと述べている。
著者
植下 協 桑山 忠
出版者
公益社団法人地盤工学会
雑誌
土質工学会論文報告集 (ISSN:03851621)
巻号頁・発行日
vol.18, no.3, 1978-09-15

昭和47年7月愛知県西三河地方の花崗岩地帯を襲った集中豪雨による地盤災害については従来雨量の少なかった地方に発生したこと, 大部分が自然斜面の崩壊であったこと, その発生頻度が地域内の基盤岩質によって著しく異なっていたことなどが特徴として挙げられている。崩壊規模は小さいものが多く, ほとんどが表層すべりであり, 同じ花崗岩地帯であっても, 粗粒黒雲母花崗岩地帯と角せん石・黒雲母花崗せん緑岩地帯とで斜面崩壊の発生頻度に大きな差があることが報告されている。東海地方を襲った豪雨は愛知県半田市付近から北東に伸びる幅20km, 長さ80kmの狭い帯状地域に集中しており, 中心地区の愛知県西加茂郡藤岡村, 小原村では7月12日21時から13日2時までの5時間に200〜250 mmの降雨量があったことが述べられている。筆者らは災害発生直後に組織された調査研究班に土質工学分野から参加し, 災害直後の航空写真を解析するとともに, 崩壊現地の調査を行なっている。それとともに, 今回のような崩壊多発山間地域の中で, 豪雨時に安全な場所を探すことも目的の一つとし, 同じような斜面で崩壊をまぬがれたところについても調査が行なわれたことが述べられている。しかし, 崩壊しなかった斜面下部に小規模な崖錐とか人口の石積などが散見され, 崩壊防止にこれらが役立っていたのではないかと述べられている。
著者
兵動 正幸 谷水 秀行 安福 規之 村田 秀一
出版者
公益社団法人地盤工学会
雑誌
土質工学会論文報告集 (ISSN:03851621)
巻号頁・発行日
vol.34, no.1, pp.19-32, 1994-03-15
被引用文献数
17

The cyclic shear strength and deformation of a loose saturated sand whose shear behaviour is contractive were investigated in this study. A series of cyclic triaxial tests with various initial static and subsequent cyclic shear stresses was carried out on the saturated sand with a very low relative density. Additionally, monotonic triaxial compression and extension tests were also performed on the same sand with the similar initial conditions. Quite large residual strains were observed in cyclic triaxial tests on anisotropically consolidated specimens. Flow deformation appeared during cyclic loading and it often caused the specimen to rapidly deform to failure. The comparisons between the results of cyclic and monotonic triaxial tests indicate that the potential for the occurrence of flow deformation depends on the mutual situations between the initial consolidation and the phase transformation points in the p-q stress state diagram.
著者
谷口 敏雄 小田 孝治 寺井 達郎
出版者
公益社団法人地盤工学会
雑誌
土質工学会論文報告集 (ISSN:03851621)
巻号頁・発行日
vol.18, no.2, 1978-06-15

東南アジアにおいて, 日本の建設コンサルタント・建設会社が関係した施工中あるいは完成した工事例として, 韓国・マレーシア・タイ・インドネシアにおけるフィルダムを取り上げ, 土質工学的に興味深い次の話題について紹介しているものである。(1)マサ土によるコアの盛立て。マサ土の問題を上げ, 安東ダムにおける設計・施工の基準と試験盛土の結果を載せている。(2)火山灰質粘性土と細粒岩の混合材料をコアに使用した例。火山灰質性粘性土は含水比50%程度でトラフィカビリティーを失うため, これを確保する目的で細粒石灰岩を混合した効果を述べている。(3)スレーキングを起こす軟質砂岩とシルト岩による堤体盛立て例。スレーキングを起こす恐れのある掘削ズリを主堤体材料として用いる際の問題点, およびその施工管理基準と盛立ての実績を述べている。(4)冬期凍結期間中の堤体盛立て例。試験盛土の結果に基づいた施工基準, および施工実績を示している。このほかの話題として, (5)ラテライトによるコアの盛立て, (6)コファーダムの砂レキ基礎の浸透対策工事, (7)グリズリの使用例を紹介している。
著者
渡 正亮
出版者
公益社団法人地盤工学会
雑誌
土質工学会論文報告集 (ISSN:03851621)
巻号頁・発行日
vol.14, no.1, 1974-03-15

急傾斜地崩壊の全国的調査結果をもとに, 崩壊に関与する因子について説明し, その崩壊形態を論じるとともに, 崩壊予測と防止工計画の着眼点となるべき崩壊型を分類し, 各崩壊型についての説明を加えたものである。この報告においては, 急傾斜地の崩壊に関する因子として地形, 土質構成, 植生, 地表水, 地下水および地質を選び, 崩壊発生地におけるこれら因子の特徴を説明している。また崩壊の形態を崩落型と滑落型の二種類に大きく区分し, 滑落型をさらに静止形, 流動形, 分散形に再区分している。そして崩壊型の分類は, 表土, 崩積土, 火山砕屑物, 段丘タイ積物, 強風化岩(マサ, 温泉余土), 岩〔I〕および岩〔II〕について, それぞれ崩落型と滑落型があるとして典型化されており, 各崩壊型の特徴が説明図をつけて解説されている。
著者
立石 俊一 畑中 博文
出版者
公益社団法人地盤工学会
雑誌
土質工学会論文報告集 (ISSN:03851621)
巻号頁・発行日
vol.18, no.3, 1978-09-15

中部地方には急しゅんな山岳地形が存在し, 地質的にも大小の断層破砕帯が発達しているため, トンネル工事は難工事となることが多い。本文は, 中部山岳地域で最近施工された四つの国道トンネルにおいて遭遇した断層破砕帯の状況とその処理例について述べている。岡部トンネルは, 糸魚川-静岡構造線の影響圏内にあり, 地すべりを誘発し, 対策を講じている。下呂トンネルは, 阿寺断層破砕帯の中に位置しており, クローラドリルによる先進ボーリング, アーチ支持横坑, 上半側壁先進導坑, 土平囲い支保工などの特殊工法を実施している。平湯トンネルは, 粘板岩の破砕帯部で強大な地圧を受け, キーストンプレートによる仮巻きなどの補強工を行なっている。また, 石灰岩層では, 空洞と湧水の対策としてセメント注入を行なっている。新鳥居トンネルでは, 未固結の砂状あるいはシルト状に破砕されたチャート層が約1000 m続き, 鏡張り, 鋼矢板, 支保工の根固め, インバートスラット, 同コンクリート打ち, 側壁一次巻きの繰返し施工により側壁導坑を掘進している。
著者
武井 昌博
出版者
公益社団法人地盤工学会
雑誌
土質工学会論文報告集 (ISSN:03851621)
巻号頁・発行日
vol.17, no.3, 1977-09-15

集中豪雨による切取りノリ面の受ける災害は, 質・量ともに多く, 台風がもたらす, 災害に劣らないことを統計量は示している。災害に対しては, 台風よりも割合いに処置しやすいと目される集中豪雨の降雨特性を分析することにより線区ごとに, 災害発生の時点を予察する際の一資料を提供する。集中豪雨のうち, ノリ面の大災害もしくは大量災害を誘発させた32例152か所の観測値を主体にして, ノリ面災害件数の推移と豪雨の性質, 降雨特性を分析した。集中豪雨によるノリ面災害は, 台風によるものに劣らない。集中豪雨は, 定着性・長期性が強いため, 降雨量も含めて現場ごとに予測することは可能である。たとえば, 降雨の初期後期は弱く, 中間において強雨があり, その連続の状況は相対分布としては握することができた。総降雨量は地域, 降雨月, 最大日雨量, 全体降雨日数の4要因の因子分析により確率的に推測することができ, さらにマルコフ連鎖理論を応用しての降雨状態推定の可能性を検討した。これら降雨パターンと集中豪雨による路盤災害の関係の解析を行なった。
著者
渡辺 健 和田 一郎
出版者
公益社団法人地盤工学会
雑誌
土質工学会論文報告集 (ISSN:03851621)
巻号頁・発行日
vol.23, no.2, 1983-06-15

アースアンカーの利用が本格的に実用化され始めた当初から, アンカー体から地盤への力の伝達は引張り杭の力の伝達機構と同じものか・単位面積当りの周囲摩擦抵抗はどの程度か・経時的にアンカー周辺の土はクリープあるいはそれに近い状態が起こらないか, 等の問題点があった。本論では, アンカー導入当初および現在のアースアンカーに関する調査, 試験について述べている。まず, 代々木公園および市ケ谷濠における導入の実状すなわち, アースアンカーによる土留め支保工が最良であるとした経過を説明し, 引張り材の検査, 注入用モルタルの配合と注入量の検査, 外殻モルタルの加圧力の決定について述べられている。次に, 土質工学会の基準案による検査・試験方法のうち, グラウト材や引張り材の検査, 削孔・グラウトの注入等の施工管理, そして引抜き・引張り・確認・特殊の各試験で構成される耐力試験について詳述している。最後に, 現時点における検査・試験の状況について, 交通営団で行ったものを例にとって説明して, 今後の検討点に, 地震時のアンカー体の動的挙動の問題があると示唆して終えている。
著者
柏谷 健二 平野 昌繁 横山 康二 奥田 節夫
出版者
公益社団法人地盤工学会
雑誌
土質工学会論文報告集 (ISSN:03851621)
巻号頁・発行日
vol.18, no.1, 1978-03-15

昭和50年8月16,17日にわたる台風5号の豪雨による高知県下の山腹崩壊の資料を用いて, 崩壊地の分布と崩壊に関係する諸因子, たとえば, i)降水量, ii)地形的特徴, iii)地質的特徴, などの比較検討を行ない, 傾斜と降水量を考慮した崩壊予測式を作っている。崩壊地分布は, 災害直後の空中写真および現地調査で, 降雨量は32か所の雨量観測所のデータで, 傾斜は2万5千分の1の地形図を用い2km×2kmの方眼内の平均傾斜角をホートン法で求めている。その結果, 次のことが明らかにされている。(1)継続雨量が一定のとき, 崩壊数はある限界傾斜角まではコウ配に比例する。(2)傾斜が一様なとき, 崩壊数は日雨量から崩壊無効雨量を減じたものに比例する。(3)崩壊予測の一般式としては次式が推定できる。N(i, r)=k_<ir>・(i-i_0)^p(r-r_0)^q ただし, i=tanα ここで, N(i, r) : 単位面積当たり崩壊数, k_<ir> : 係数, i_0 : 限界傾斜角の正接, r : 継続雨量(mm), r_0 : 崩壊無効雨量(mm), α : 単位地域内の平均傾斜角
著者
中川 恭次 渡辺 清治 角田 智彦 瀬尾 和大 此上 典文
出版者
公益社団法人地盤工学会
雑誌
土質工学会論文報告集 (ISSN:03851621)
巻号頁・発行日
vol.14, no.2, 1974-06-15

ある場所で観測される地震動には波動の伝播過程におけるさまざまな要因による影響が含まれているが, 特に観測点直下の表層地盤の影響が大きいと考えられる。そこで表層地盤に関する資料は他の要因に比して比較的豊富であるので, 表層地盤の動特性を観測点ごとに求めることによって, 地表における地震観測記録から観測点直下の基盤における地震動を推定することはある程度可能である。この考え方から東松山地震(1968)の際, 都内13個所で得られたSMAC強震計の同時記録をもとに基盤入力波を逆算し, 表層地盤の動特性と基盤入力波の持つ性質についての考察を行なった。その結果, 基盤入力波の振幅レベル, 特性は推定可能であり, また他の場所で観測された地震記録から計算によって基盤入力波を求めることもある程度可能となった。
著者
吉岡 昭三 木賀 一美 小杉 紘平 前田 穂積
出版者
公益社団法人地盤工学会
雑誌
土質工学会論文報告集 (ISSN:03851621)
巻号頁・発行日
vol.18, no.4, 1978-12-15

稲城砂は, 三浦層群に属する細砂層で, 日本住宅公団が施工する多摩ニュータウンの宅地開発において遭遇する地層である。当公団が宅造法の主旨を守り, 補完し, 良質でかつ経済的な宅地造成を施工するという基本的観点から, 稲城砂の特性を解明するための各種の試験, 調査, 研究を実施し, その結果に基づく土工事設計基準を作成したものである。その内容としては, 締固めに関しては, 現場締固め試験結果と設計基準, 締固め仕事量が乾燥密度に与える影響, 細粒分含有量, 試料養生期間が乾燥密度に与える影響, 締め固めた土の透水性とせん断特性を考慮している。のり面に関しては, 模型盛土のり面の崩壊形式を実験より研究し, 勾配, 小段, 排水, のり面保護について基準が規定されている。造成面に関しては, その規模や勾配をいかにして土砂流出等の被害を少なくできるか把握する目的で浸食状況調査が行われた。その他, 調整池に関しても研究がなされている。