著者
山本 荘毅
出版者
公益社団法人地盤工学会
雑誌
土質工学会論文報告集 (ISSN:03851621)
巻号頁・発行日
vol.20, no.3, 1980-09-15

地下水の人工かん養に関する諸問題を, 人工かん養の歴史, 人工かん養の目的, 人工かん養の方法, 人工かん養における検討事項, ヨーロッパの人工かん養の実情などの項目から論じたものである。土質力学的視点からすれば, 地表流下水を人為的に地下に貯留して再利用しようとする地下水人工かん養の問題は, 地下水の地盤浸透現象との関連から論じられる。人工かん養の方法には直接法と間接法があること, 人工かん養を実施する場合には, かん養技術, 地下水管理, 経済性, 環境に対する影響などを検討すべきであると指摘している。また, ヨーロッパの人工かん養に関しては, 水温0〜15℃, 濁度の大きい河水を揚水して氷河堆積物であるエスカーの上まで圧送, このエスカー斜面に池を掘って浸透を行っているスウェーデン・ウプサラの例, オランダ・ハーグの人工かん養池, ドイツ・ルール河畔アルテンドルフの施設, フランス東南部シャトルナールとサン・アンジオールでの人工かん養, ソビエト連邦での例などについて説明している。
著者
岡部 達郎 山本 博之
出版者
公益社団法人地盤工学会
雑誌
土質工学会論文報告集 (ISSN:03851621)
巻号頁・発行日
vol.20, no.3, 1980-09-15

国鉄武蔵野線武蔵野ヤードの建設に際して実施した, 地盤中に打設される杭に作用するネガティブフリクションの低減に関する現地実物実験の結果を報告したものである。報告の内容は, 単杭に作用するネガティブフリクションの測定, ネガティブフリクション低減のための対策工法と施工結果, ネガティブフリクションの算定と対策工法に対する考察とからなっている。武蔵野ヤード建設位置の沖積粘性土層は40mと厚く, 年間10cmもの地盤沈下が観測されている。高さ4mの盛土下の粘性土地盤中に打設した鋼管杭(打設深度47m, 直径600mm)には, 最大10tf/m^2と非常に大きなネガティブフリクションが作用した。実際の杭基礎は, 群杭工法, 二重管工法, バランスドフリクションパイル工法によってネガティブフリクションの低減を計りながら施工している。これら杭工法のネガティブフリクション低減効果を原位置測定によって確かめ, 工法としての適用性を表にまとめている。また, ネガティブフリクションの算定手順についても考察を加えており, 実用性に富んだ内容となっている。
著者
上田 治 川島 一彦 和田 克哉 西村 昭彦
出版者
公益社団法人地盤工学会
雑誌
土質工学会論文報告集 (ISSN:03851621)
巻号頁・発行日
vol.24, no.2, 1984-06-15

基礎の静的および動的耐震設計法を紹介したものである。まず静的耐震設計において考慮すべき諸因子について述べ, 更に, 地盤の流動化や支持力の低減の危険性がある場合の地盤の設計上での取扱い方について説明している。特に橋梁の耐震性には地盤条件が強く関係しているため, 設計上地盤を4種に分類する方法が述べられている。また, 震度法および修正震度法に用いる設計水平震度の求め方が紹介されている。次に, 静的設計法による安全性の検定だけでは不十分な場合には, 動的解析による耐震性の検討の必要性を指摘している。しかし現在のところ, 荷重の選定から応力度および安全性の検討に至るまでの手順を一貫して明確にした設計法は確立されていないので, ここでは, 動的解析の必要性と解析に考慮すべき事項を述べ, 動的解析手順の例を紹介するだけにとどめている。また, 流動化の判定がなされた後の基礎構造物の設計について説明をし, 更に国鉄における地震時の軟弱地盤の変形を考慮した基礎の設計法が紹介されている。
著者
中尾 健児 飯星 茂
出版者
公益社団法人地盤工学会
雑誌
土質工学会論文報告集 (ISSN:03851621)
巻号頁・発行日
vol.14, no.2, 1974-06-15

従来, 口径60〜110 mm程度の岩盤ボーリングを行なう場合, 硬岩の短い孔では削岩機が用いられ孔壁が不安定な砂レキや土砂を掘る場合, あるいは硬岩でも長孔の場合にはロータリー式のボーリング機が用いられてきた。O.D.工法(Overburden Drilling Method)はこれらの機械の二つの働きを同時, または別々に一台で行なうローテーションドリフターと呼ばれる改良削岩機に, ケーシング掘進機能を持たせたものである。O.D.工法による海底岩盤の削孔発破の手順は1)海上作業船もしくは作業台からの削孔, 2)内管の回収, 3)ケーシングパイプを通して爆薬の投入, 4)ケーシングパイプの回収・脚線の引き上げ, 5)削孔位置を変え同様の削孔・装薬を行なう, 6)結線作業, 7)起爆, という手順である。結線作業をダイバーで行なう場合種々のトラブルがあるため, 起爆素子と爆薬・雷管とを接続し, 削孔内に設置後指令装置から発信された超音波信号により, 雷管に電流を流して起爆する遠隔起爆装置を開発し, その実験結果について述べられている。
著者
山口 柏樹
出版者
公益社団法人地盤工学会
雑誌
土質工学会論文報告集 (ISSN:03851621)
巻号頁・発行日
vol.23, no.4, 1983-12-15

筆者は地下構造物の耐震性についての総論を述べている。地震と地盤災害の一般に関して, 地下構造物は地上構造物に比べて地震時に加わる加速度がほぼ1/2程度で, 耐震上安全であるとされているが, 実際には亀裂, 液状化, 地すべりといった被害が生じていることを述べている。また液状化に関しては, 設計指針のばらつきや地震波の取扱いに問題はあるけれども地盤の耐震指針としては今日最も確立したものである。むしろ問題なのは地中構造物の設計上の問題であると述べている。また地中構造物に対する地震の影響, 地震時の土圧, 横型トンネル式地下タンクの耐震設計, 掘削による地山のゆるみについて述べられており最後に結論として, 地下タンク建設用地としてできるだけ均一性に富む地点を選定すること, 大地震の起こりやすい地域では, 耐震時考慮を十分に行うことが望ましいがいたずらに丈夫なものを作るのは不経済である。地下躯体にき裂等の多少の損傷が生じても, 大きな破壊に至らないだけの靭性を確保し, 別途に漏雨を防ぐシステムを設けることが重要であると述べている。
著者
杉村 義広
出版者
公益社団法人地盤工学会
雑誌
土質工学会論文報告集 (ISSN:03851621)
巻号頁・発行日
vol.15, no.3, 1975-09-15

わが国の地震応答解析の問題点について述べた。●わが国の強震記録は極めて少なく, 同一地盤でも地震の種類によって地震波が異なることもあると考えられる。●応答解析法にはA)周波数応答解析(モーダルアナリシス), B)直接数値積分法がある。●モデル想定法には次の方法がある。(1)重複反射型, 地震基盤の地震波形を推定するのに利用できるが, 地盤は弾性体とする。(2)半無限弾性体モデル, 逸散減衰の等価バネを想定するのに用いるが地盤は弾性体とする。(3)質点系振動モデル, 地盤も質点に置き換え, 非線型化も可能である。(4)FEMモデル, (3)を発展させたものであるが, 電算機の容量が大型になる。●軟弱地盤上の建物の場合に地下階があれば, (2)または(2)と(4)の組合せモデルを, クイ基礎であれば, (3)または(3)と(4)の組合せモデルを用いると便利である。いずれのモデルにおいても地盤またはクイをどのような数値で表わすかが, 最大の問題点である。
著者
福住 隆二 檜垣 陽一 本間 勝 篠崎 亘
出版者
公益社団法人地盤工学会
雑誌
土質工学会論文報告集 (ISSN:03851621)
巻号頁・発行日
vol.17, no.4, 1977-12-15

リビア国, トリポリから地中海に沿って東へ150km, 内陸へ20km入ったところで行われているアースダム築造を中心としたかんがい事業の現地報告である。プロジェクトの中心は, 9月から翌年4月までの雨期に降るわずか190mmの降雨量の雨によってもたらされる地表流下水をせきとめて, 農業用水に用いようとするものである。3つのダムのうち最大のものの堤体高さは50m, 長さは629mで, コアとランダム材として風積土のレスを用いるのが特徴である。細粒含有率70%, 日本統一土質分類で(ML)に分類されるレス土の土工特性はすぐれたもので, JIS A 1210 1.1(b)の締固め方法による最大乾燥密度は1.90t/m^3以上, 最適含水比は10〜12%, 最小透水係数は最適含水比より2%湿潤側で1×10^<-7>cm/sec以下である。また, プロジェクトにおける著者らの役割に関する記述は, アラブ諸国内で土木工事の施工およびコンサルタンツ活動を志すものにとって, 有用な情報を提供している。
著者
中川 鮮 島 通保
出版者
公益社団法人地盤工学会
雑誌
土質工学会論文報告集 (ISSN:03851621)
巻号頁・発行日
vol.22, no.3, 1982-09-15

徳島県上嵯峨地すべり地の地下帯水域に形成する地下水塊の挙動について, 1977年に発表した前報に引き続き, 1977年から1978年にかけての新しい資料を加えて検討した。地下水塊の増大現象には本地すべり地の地形的集水域に降る雨の約3分の1の量にあたる分が関与していることが分かった。地表排水の対策により浸透量を減らし, 帯水域への涵養を緩和することが効果的な手法であると考えられた。地下水塊の体積増加を予測する方法として, 地すべり地の観測孔(ボーリング孔)の水位変動の記録を使用した。前報と同じく7日間雨量による水位上昇値を用いている。地すべり防止対策で実施している地下水排水孔の観測結果より, 排水量が20/min以上の時の減水半減期は約2週間である。半減期が2週間位の挙動の激しい地下水を対象として防止対策を立案することが必要であると考えられた。
著者
清水 勇 伝田 篤
出版者
公益社団法人地盤工学会
雑誌
土質工学会論文報告集 (ISSN:03851621)
巻号頁・発行日
vol.20, no.4, 1980-12-15

鉄道路盤には, 路盤特有の「噴泥現象」がある。この現象は比較的浅い部分に生じることが多く, 沈下等によって軌道の健全な機能を阻害している。本報告は, これらの防止対策として「高圧ジェットグラウト工法」を採用し, 実施計画したものである。本工法は比較的新しい試みであり, 現状では実験工事を経て本工事への適用性を考える必要があるとされている。実験は東京都町田市の東急電鉄の田園都市線延長工事区間において実施された。敷地の周辺地盤構成は, GL-5 mまでは立川ローム層で覆われ, GL-15 mまでは武蔵野ロームとなっており, これ以深は相模礫層と続いている。路盤はGL-8 mに位置している。実験は次の3項目に着目し行われた。1)セメントペーストの適性配合, 2)最適打設方法, 3)施工性および杭打設配置。本回の実験結果により, 今後の適用に関して十分に可能性のあるものにするため, 更に追加実験が必要であることを示している。
著者
時松 孝次 吉見 吉昭
出版者
公益社団法人地盤工学会
雑誌
土質工学会論文報告集 (ISSN:03851621)
巻号頁・発行日
vol.23, no.4, pp.56-74, 1983-12-15
被引用文献数
32

A critical review of field performance of sandy soil deposits during past earthquakes is conducted with special emphasis being placed on Standard Penetration Test N-values and fines content. The field relationship between adjusted dynamic shear stress ratio and normalized SPT N-values together with laboratory tests on undisturbed sands indicate that (1) sands containing more than 10 percent fines has much greater resistance to liquefaction than clean sands having the same SPT N-values, (2) extensive damage would not occur for clean sands with SPT N_1-values (N-values normalized for effective overburden stress of 1 kgf/cm^2) greater than 25,silty sands containing more than 10 percent fines with SPT N_1-values greater than 20,or sandy silts with more than 20 percent clay, and (3) sands containing gravel particles seem to have less resistance to liquefaction than clean sands without gravel having the same SPT N-values.On the basis of the above findings, an improved empirical chart separating liquefiable and non-liquefiable conditions is presented in terms of dynamic shear stress ratio, SPT N-values, fines content, and shear strain amplitude.
著者
李 相一 北村 仁
出版者
公益社団法人地盤工学会
雑誌
土質工学会論文報告集 (ISSN:03851621)
巻号頁・発行日
vol.18, no.1, 1978-03-15

粒状体の流出というテーマに関して, 前報では円筒形の貯蔵ビン(内径6cm, 高さ90cm)に詰めた豊浦標準砂が底部の円形流出口から流出した際の試料高さと流出量の関係, 流出口径と流量の関係を求め, いくらかの検討を加えたが, 今回は実験をさらに精度よく行なうために内径15cm, 高さ180cmの貯蔵ビンを製作して前回と同様な実験を行なうとともに, 試料内に埋設した土圧計により土圧を測定した。実験の結果, 流出口径が10mm〜50mmの範囲では流出量は流出口径の2.55乗に比例し, 流出状態から静止状態に移行した際に流出口に作用する圧力は流出口径の1.1乗に比例するという結果が得られ, これらの値は前回の実験結果の値よりも確度が高いと判断した。土圧測定結果では, 試料を詰めた際の土圧分布は試料面からある深さまでは深さに比例した土圧分布となり, それよりも深くなるとほぼ一定値を示した。またいったん流出させて試料表面が5mm沈下したとき流出を止めた場合の土圧分布は, 上述の土圧分布に対し流出口に近い下部では著しい減少を示し, この結果から前報で演繹した諸結果の裏付けが得られた。
著者
李 相一
出版者
公益社団法人地盤工学会
雑誌
土質工学会論文報告集 (ISSN:03851621)
巻号頁・発行日
vol.18, no.1, 1978-03-15

サイロなどに貯蔵される粒状体の流出機構に関連して, 内径60mm, 高さ90cmの円筒形容器に豊浦標準砂を詰めて容器の底面に設けた円形の流出口から流出させ, 試料高さと流量の関係, 流出口径と流量の関係を求め, その結果に関して液体(連続体)と比較しながら考察を行なった。結果として, 流出時の試料高さは等速度で低下すること, 流出量は試料高さと無関係に一定であること, 流動部分はタイ積時の密度を維持したまま流動していること, 流出量は流出口径の3乗に比例すること, 各粒子の平均落下速度は流出口径に比例することなどの知見が得られた。さらに, これらの事実から動的摩擦係数が一定であるとすれば, 流動部分の拘束圧は試料の高さにかかわらず一定であること, 一度流動部を形成させてから静止させた場合に流出口に作用する圧力は流出口径の2乗に比例することなどを推論した。
著者
佐野 久 佐藤 昭二 金子 尚 谷本 泰
出版者
公益社団法人地盤工学会
雑誌
土質工学会論文報告集 (ISSN:03851621)
巻号頁・発行日
vol.18, no.2, 1978-06-15

河口湖大橋における鋼製フローチングケーソン工法は, 鋼製ケーソンの製作と進水方法, 20mもある軟弱シルトの掘削法, 岩盤が一様でなく部分的に傾いている点, 岩盤掘削法などに問題があった。これらの問題を解決するため, 沈設にはケーソン沈下地点に固定さん橋, およびステージングを設けてジャッキ方式を採用し, 軟弱地盤の掘削は, 土質調査資料を基に行なった。また。傾きおよび滑動を防ぐため, 岩盤に接している刃口部付近の掘削を重点的に行ない, 高気圧中における削岩機の能力を停滞させないように注意し, 発破の掘削順序も効果のあがるよう工夫している。そして, 鋼製ケーソンの部材計算, ケーソンの組立て, 製作をはじめ, 装置, 作動方法, コンクリートの打設, 沈下, 管理, その他設備にいたるまで詳しく述べている。
著者
平田 武弘 表 友宏
出版者
公益社団法人地盤工学会
雑誌
土質工学会論文報告集 (ISSN:03851621)
巻号頁・発行日
vol.17, no.4, 1977-12-15

大阪市交通局が, 都島〜守口間6.4kmに建設中の地下鉄2号線のうち, 旧淀川河床タイ積とみられる地下水の豊富な砂レキ層に, 直径7mのシールドを掘進した今市工区での工事報告である。土カブリは約10m, 地下水の滞水は, シールドの天端から上部4mに存在する厚さ2mの連続したシルト層によって, 2層に分けられる。シールドの通過する滞水砂レキ層の透水係数は2.5×10^<-1>cm/secと大きい。工事は, 滞水砂レキ層部分の施工長さ360mの両側に粘土モルタルによる止水壁をつくり, 坑内圧縮空気の漏気と周辺地盤からの地下水の流入を防ぎ, 止水壁内部においては揚水によって砂レキ層の地下水位を低下させる漏気防止圧気工法によって行なわれた。切羽の安定を確保するために, 薬液注入工法も実施している。これらの掘進方法によれば, 坑内空気圧を0.35〜0.40kg/cm^2に維持するために必要な逆風空気量は, 最大80m^3/min, 工事中の止水壁内外での地下水頭の差は約1mで, 止水壁は, 地下水処理や圧気効果を高めるうえで有効であったとしている。
著者
田中 満
出版者
公益社団法人地盤工学会
雑誌
土質工学会論文報告集 (ISSN:03851621)
巻号頁・発行日
vol.19, no.3, 1979-09-15

ある基礎地盤の地震時の耐震性を振動三軸試験により検討した。検討手順は次のようである。地盤のせん断弾性定数Gのひずみ依存性は振動三軸試験で求め, 減衰のひずみ依存性は既往の研究から引用した。これらのひずみ依存性を考慮した地盤モデルにより地震応答計算を行い地中の所定深部分に作用すると考えられるせん断応力波形を求めた。このとき入力波として八戸100gal, エルセントロ100galの2波を用いた。こうして求めた応力波形を入力として調査の対象となる深度の供試体の振動三軸試験を行った。その結果次のようなことがわかった。まず, ここで取り挙げた地盤については破壊は生じなかった。その原因として供試体のヤング率は小さなせん断応力に対して回復する傾向にあることが考えられる。次に残留変形については次のような特徴ある結果が得られた。八戸波によるほうがエルセントロ波によるものより大きく, 八戸の場合前半の主要動の部分で残留変形が始まり時間と共に増加する傾向があった。
著者
松田 豊治
出版者
公益社団法人地盤工学会
雑誌
土質工学会論文報告集 (ISSN:03851621)
巻号頁・発行日
vol.21, no.4, 1981-12-15

昭和52年8月7日から始まった度重なる有珠山の噴火は, 山地の荒廃や地盤変動をもたらした。特に, 二次的災害である泥流発生は有珠山周辺の町や村など各所に多大の被害を与え, 死者を出すに至った。本報では, まず有珠山の火山活動を概説し, 次に今回の噴火による泥流発生状況の記録を詳述している。軽石や火山灰などの噴出物の堆積状況は, 地域によってその粒度, 厚さ, 累積状況, 表層の固化状態などに著しく影響することを明らかにしている。また, 地形変動と地震の関連を述べ, 3つの重要な砂防渓流の状態を概述している。防災対策の立案に当たって, 降灰堆積層が侵食・拡大し泥流化するのを防止するための調節ダムと砂防ダムの新設, 下流部の流水をすみやかに湖水へ流下させる流路工が重点的に検討された。最後に, 採用された具体的工法である鋼製スリットダムおよび鋼製自在わくを説明し, 安定性, 構造機能, 施工性, 経済性などの特長を述べている。
著者
山田 剛二 小橋 澄治 草野 国重 久保村 圭助
出版者
公益社団法人地盤工学会
雑誌
土質工学会論文報告集 (ISSN:03851621)
巻号頁・発行日
vol.17, no.3, 1977-09-15

飯山線高場トンネルは昭和45年1月22日午前1時頃地スベリによってトンネル延長の半分が崩壊した。このトンネルは古くより地スベリによる変状があり調査や, 対策工が数多く行なわれてきた。特に崩壊近くなってからは地スベリ計を中心とした測定がほぼ完全な体制で行なわれ, それによって, 地スベリ規模, 崩壊時期の予知を的確に行なうことができた。高場山トンネルは信濃川に突出した個所を貫く167 mのトンネルで, 粘土質ケツ岩, 砂岩の互層で, 昭和2年の開業より変状が認められ、多数のトンネル補強工が行なわれている。44年4月の雪どけ期に坑門付近の変状が進み8月の大雨によりノリ面の強化工事を行なった。9月以降も地スベリは進行し, ボーリングなどの調査測定, 排土工, 排水工の作業にかかったが, 翌年1月22日崩壊した。地スベリ計, パイプヒズミ計, トンネルの変位測定, 擁壁, 構造物の変状, 移動などの調査観測, 安定の検討を行なった。地表面移動速度による崩壊時期の予知を行ない, 相等の精度で予知することができ, 地スベリ対策, 測定法, 予知法について多くのデータを得た。
著者
奥田 穣
出版者
公益社団法人地盤工学会
雑誌
土質工学会論文報告集 (ISSN:03851621)
巻号頁・発行日
vol.20, no.3, 1980-09-15

豊富な気象資料に基づいて, 地すべりと崩壊のうち, 特に崩壊に関係する降雨特性について論じている。11年間に及ぶ全国の山くずれ発生件数の年変化, 神奈川県と鹿児島市内における50年ないし3年間に及ぶ崩壊発生事例, 北陸地方での地すべりの発生などに関するこれまでの研究報告を参考として, 崩壊現象と降雨量との間に存在する巨視的な因果関係について述べている。同時に, 1時間雨量, 24時間雨量, 10分間降雨量との関係から, 崩壊と降雨量との関係を具体的に論じている。すなわち, 24時間雨量では200mm, 1時間雨量では20mm以上になると崩壊が激増すること, 崩壊は1時間最大雨量の出現直後から3時間までの間に多発すること, 10分間降雨強度で5mm以上の強い雨が長時間集中すればするほど崩壊発生数が増大すること, 降雨強度はパルス状に20分程度の小変動が繰返し継続するもので崩壊はその第2波ないし第3波の山で発生し, 特に, 第3波以降に多いとしている。以上のように, 崩壊に関する降雨の影響は時間とともに変化して動的であることが理解される。
著者
田村 〓 遠藤 健二
出版者
公益社団法人地盤工学会
雑誌
土質工学会論文報告集 (ISSN:03851621)
巻号頁・発行日
vol.19, no.1, 1979-03-15

青函トンネル工事は, 海底下でかつ長大という特殊な条件下にあり, 各種の調査, 技術開発により安定性の高い施工を行っている。この報告は, 昭和51年5月6日, 北海道側海底部作業坑での異常出水について, その経過と対策について述べたものである。出水地点は, 坑口より4,588mの所で, 切羽から700l/min程度の出水が見られ, 30分後には4t/minに増大, 瞬時には70t/minを記録し, 3,000m程度にわたって坑道が水没した。出水からほぼ1日経過した時点で排水ポンプを多数増設し, 排水作業を開始, 6月24日には切羽付近の崩壊土砂を確認した。異常出水の原因を考えるさい, 注入施工状況の良否が大きな問題となる。青函トンネルでは, 長尺水平ボーリングにより地質の先行確認を行い, この情報あるいは切羽の観察した状況に基づいて切羽から地盤の強化と止水の目的で注入をしている。そして, チェックボーリングにより注入効果の確認をし, 掘削を開始している。しかし, こうした入念な注入施工にもかかわらず, 出水事故を引き起こしたが, 今後, 細心の留意と徹底した施工管理が必要であると述べている。
著者
春山 元寿 下川 悦郎
出版者
公益社団法人地盤工学会
雑誌
土質工学会論文報告集 (ISSN:03851621)
巻号頁・発行日
vol.18, no.3, 1978-09-15

鹿児島県内では, 年々の梅雨期や台風時には必ず地盤災害が発生している。その原因は多くの場合, 素因としてのしらすと誘因としての異常豪雨に帰せられていたが, 崩壊形態から判断する限り, 第一義的にしらす自然斜面の崩壊といえるのは必ずしも多くないことが述べられている。山地を主とする斜面の崩壊発生と降雨量, 崩壊地の地質, 崩壊形態, および崩壊地の植生について検討している。雨量観測と崩壊時間の測定から, 先行降雨が比較的少なくて, 短時間の降雨の場合表層すべりが多く, 先行降雨が多い場合はパイピングの発生の可能性の大きいことを指摘している。さらに多雨期に集中豪雨が発生し, 雨量が200〜250 mmを越え, この間に時間降雨が50〜60 mm以上発生すれば, その後数時間以内に斜面崩壊の発生のおそれがあると述べている。また, 崩壊斜面の地盤・地質を調査した結果から地盤がしらすであっても, 崩壊物質はしらすをおおっている表土層やローム層が多いことを述べている。また森林の土地保全機能は樹木の生態的特性を考えて論ぜられるべきだとしている。