著者
渡辺 健太郎 Watanabe Kentaro ワタナベ ケンタロウ
出版者
大阪大学大学院人間科学研究科 社会学・人間学・人類学研究室
雑誌
年報人間科学 (ISSN:02865149)
巻号頁・発行日
no.38, pp.139-157, 2017-03-31

社会学 : 論文本稿では、「なぜ若年層の権威主義化が生じたのか」を明らかにするため、「大学進学率」と「専攻分野」を用いた説明を試みた。先行研究では、若年・高学歴層の権威主義化が指摘されていたが、高学歴層のうち、どのような人たちが権威主義化しているのかについては明らかにされてこなかった。そこで、SSM1995データとSSP2015データの比較を行った結果、若年層における権威主義化は高学歴男性において生じていたことが確認された。そして、高学歴層の権威主義化についてより詳細に検討するために、SSP2015データを用いた構造方程式モデリングにより、「大学進学率」と「専攻分野」の交互作用効果を検討した。その結果、大学進学率の高まりにともなって、文系学部卒の男性が権威主義傾向を示すことが明らかとなった。大学進学率と権威主義的態度に関連が見られたのは、相対的権威主義層の高等教育への流入と学生同士の相互作用によると考えられる。以上より、高等教育の拡大に伴う文系学部卒男性の権威主義化によって、若年層の権威主義化がもたらされたことが示唆された。
著者
渡辺 健策
出版者
NHK放送文化研究所
雑誌
放送研究と調査 (ISSN:02880008)
巻号頁・発行日
vol.73, no.4, pp.2-24, 2023-04-01 (Released:2023-04-20)

SNSの普及など社会のデジタル化とともに深刻になっているインターネット上の誹謗(ひぼう)中傷の被害対策として、他人の権利を侵害する投稿をした者の氏名などを明らかにする「発信者情報開示」の手続きが、2022年10月から簡易・迅速化された。繰り返されるネット被害に対し、新たな制度はどこまで力を発揮できるのか、効果と課題を整理する。一方、匿名を前提に投稿した発信者の身元情報を強制的に明らかにすることは、表現の自由の保障の観点から、慎重な判断が求められ、双方の利益のバランスの確保が重要となる。また、誹謗中傷の原因にもなり得るネット上の膨大な誤情報・偽情報による、いわゆる「デジタル情報空間の汚染」に、マスメディアはどう向きあうべきなのか。誤情報・偽情報が拡散する程度は、情報の受け手にとっての「重要さ」と「あいまいさ」に左右されるという流言研究の分析手法を手がかりに、最近の誹謗中傷事例を詳しく見ていくと、マスメディア側の伝え方に工夫の余地があること、誤った情報をマスメディアが打ち消す報道を行うことで拡散を抑制できることがうかがえる。さらに、ネット上の情報が事実かどうか検証するファクトチェックをマスメディアがより積極的に行うことも、社会の急速なデジタル化に伴って期待されるようになっている。ネット社会の匿名表現の自由の“可能性”と“危険性”にどう向き合うかを考える。
著者
守屋 進 大澤 隆英 渡辺 健児 中野 正 永井 昌憲 多記 徹 金井 浩一
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集E (ISSN:18806066)
巻号頁・発行日
vol.62, no.4, pp.790-797, 2006 (Released:2006-11-20)
参考文献数
9
被引用文献数
1

本報告は,ISO/TC156に採択された国際共同暴露試験地の1つである駿河湾大井川沖に設置された海洋技術総合研究施設において実施された重防食塗装系の海上暴露試験結果である.下塗りに厚膜形ジンクリッチペイントを用い,上塗にふっ素樹脂塗料を用いた重防食塗装系は海上暴露という厳しい腐食環境下でも20年を経過しても良好な防錆性と耐侯性を有することが確認できた.一方,重防食塗装系でもエッジ部でさびが発生しているものがあり,エッジ部の防錆対策が重要であることが認識された.
著者
境野 眞善 山下 貴稔 土倉 則子 佐野 貴士 渡辺 健市 葉桐 宏厚 桜間 勇樹 廣島 理樹 眞鍋 陽一郎 鈴木 美樹 今義 潤
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.61, no.8, pp.346-352, 2014-08-15 (Released:2014-09-30)
参考文献数
15
被引用文献数
2

ドーナツの美味しさと泣きに重要な因子を特定し,ドーナツに適したフライ油の開発方法を示すために,様々な油脂の物性やドーナツの特性を評価した.その結果,フライ用油脂の上昇融点がドーナツの油染み量と,30°CにおけるSFCが官能評価での油っぽさやパサついた食感と関連することを見出した.また,上昇融点は高いほど望ましいが,概ね40°C以上,かつ30°CにおけるSFCが20%程度の油脂が物性,官能的に最もドーナツに適していた.これらの指標を基にして開発したドーナツオイルDは,上昇融点が46.3°Cと高いものの,30°CにおけるSFCが21.8%と低く,ドーナツのフライ用油脂として優れた特性を有することを確認した.また,ラットおよびヒトで吸収性を評価したところ,ドーナツオイルDは液体油よりも体に吸収されにくいことが分かり,ドーナツオイルDは物性,官能,および摂取カロリーの面でもドーナツに適した油脂であることを明らかにした.
著者
山口 真由美 宮之下 さとみ 原田 由美子 藤満 幸子 山田 クリス孝介 渡辺 健太郎 トム ホープ 小早川 真衣子 須永 剛司
出版者
日本デザイン学会
雑誌
日本デザイン学会研究発表大会概要集
巻号頁・発行日
vol.64, 2017

本研究の目的は電子カルテがもたらした看護への影響を探ることである。2回のワークショップを開催し、A大学病院で電子カルテと紙カルテの双方を利用したことがある看護師としての経験年数が14~30年の看護師7名と、電子カルテのみしか利用したことがない看護師としての経験年数が3~7年の看護師4名が参加した。ワークショップでは、入院から退院までの業務内容や扱われる情報を整理し、質的に分析することで紙カルテと電子カルテとを比較した。その結果、入院から退院までの業務は「入院時」、「入院後」、「退院時」の3つの段階に分けることができ、各段階における業務内容や扱われる情報について、紙カルテと電子カルテとで共通する内容と、電子カルテ導入後の変化が見出された。電子カルテの導入によって、必要な時に必要な情報を速やかに検索できることや正確で速い情報伝達、業務の標準化・テンプレート化等、業務の見方や内容など紙カルテと比べ多くの変化が起こっていたことが明らかになった。今後は患者や職員間の直接的なやり取りや振り返りの機会を補完しうる、情報共有と価値観の醸成を支援するような看護サービスシステムが必要である。
著者
川田 十三夫 佐藤 成美 山下 彦王 宅見 賢二 采見 憲男 渡辺 健二
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.9, no.5, pp.358-363, 1968
被引用文献数
1

Cells of <I>Clostridium botulinum</I> type A strain 190 grown in thioglycolate medium (GYPT medium) autolysed after having reached a maximum growth. This strain was dissociated into large and small colony-forming types in semisolid media. The cells obtained from the large colony type autolysed more rapidly than those from small one. Washed cells harvested at logarithmic growth phase lysed in phosphate buffer at 37&deg;C within 2-3 hours. Autolysis rose above pH 6.0 and was optimal near pH 7.0. The potential for autolysis reached a maximum toward the end of the logarithmic growth phase and thereafter the cells became resistant to autolysis. The autolytic activity was destreyed by heating the cells at 60&deg;C for 10 minutes and was slightly affected by cysteine (10<SUP>-2</SUP>M), N-ethylmaleimide (10<SUP>-2</SUP>M) and mercaptoethanol (10<SUP>-1</SUP>M).<BR>During autolysis nitrogen, protein, nucleic acids, reducing sugars, amino sugars and botulinum toxin were released from the cells as the reduction of the turbidity in cell suspension occurred. Electron microscopic observations on the process of autolysis revealed that the partial lysis of walls occurred first at the end of the organism and the cytoplasmic contents were lost through such lesions. The lysis of the wall centripetally spread and finally the morphological entity of the wall was completely lost. From these findings it is suggested that the autolysis may be proceded by auto-digestion of the cell wall at the end of the organism.
著者
野村 圭太 谷口 義明 井口 信和 渡辺 健次
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.58, no.3, pp.672-682, 2017-03-15

今後,企業や大学などの既存ネットワークにおいてOpenFlowネットワークへの移行が進められると予測される.しかし,OpenFlowネットワークへの移行には,コントローラの設定やテスト環境の構築にコストを要すると考えられる.そこで本稿では,従来型のネットワークから,OpenFlowネットワークへの移行を支援するシステムを提案,設計,実装,評価する.提案システムを用いることにより,従来型のネットワーク上のルータから自動的に設定情報を取得し,その設定情報をOpenFlowネットワークで適用可能な形式に変換,その後,変換した設定情報をOpenFlowネットワークへ反映させることができる.これにより,従来型のネットワークと同等のパケット制御を行うOpenFlowネットワークを半自動的に構築できる.本稿では,実ルータを用いた評価の結果,最大10台のルータから構成される従来型のネットワークを6分以内でOpenFlowネットワークに移行できることを確認した.
著者
石山 貴章 大和 靖 土田 正則 渡辺 健寛 橋本 毅久 林 純一 梅津 哉
出版者
特定非営利活動法人日本呼吸器外科学会
雑誌
日本呼吸器外科学会雑誌 (ISSN:09190945)
巻号頁・発行日
vol.15, no.2, pp.140-145, 2001-03-15
被引用文献数
1 1

症例は19歳男性.自覚症状は無く検診で左中肺野に異常影を指摘された.胸部CTで空洞内に可動性の球状物を認め, 血清沈降抗体反応陽性より肺アスペルギローマと診断した.抗菌剤治療で画像上の改善を認めないため, 左S^6区域切除およびS^<1+2>_C部分切除を施行した.病理学的に拡張した気管支からなる空洞とアスペルギルス菌によりなる菌塊を認めた.従来肺アスペルギローマは, アスペルギルス菌体が既存の肺内空洞病変に腐生的に定着, 増殖したものと言われてきた.しかし近年, 既存の肺病変を持たない'原発性肺アスペルギローマ'とも言うべき病態が報告されている.本症例は, 病理所見よりアスペルギルス感染が先行し, 二次的に気管支拡張による空洞を形成した原発性肺アスペルギローマであった可能性が示唆されたので報告する.
著者
森田 裕介 藤木 卓 全 炳徳 李 相秀 上薗 恒太郎 渡辺 健次 下川 俊彦 柳生 大輔 中村 千秋
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.28, pp.197-200, 2005

日韓間のギガビットネットワークを介して, 日本の長崎と福岡, 韓国光州の3地点を結び, DVTSを用いた遠隔交流および遠隔授業を実践した.本遠隔交流・授業が中学生の国際性に与える影響を明らかにするため, 「外国への意識」, 「愛国心」, 「他者理解の態度」, 「興味・関心・意欲」, 「韓国(日本)に対する認識」の5つの観点で質問紙による調査を行った.そして, 本遠隔交流・授業によって, 日韓両国の中学生の外国への意識や自国の建築物に対する愛着, 相手国に対する認識が向上したことを示した.また, 日本の中学生は, 韓国に対する興味・関心, 韓国語学習に対する意欲が向上したことを明らかにした.
著者
渡辺 健太郎
出版者
東京大学大学院情報理工学系研究科電子情報学専攻
巻号頁・発行日
2011-03-24

報告番号: ; 学位授与年月日: 2011-03-24 ; 学位の種別: 修士 ; 学位の種類: 修士(情報理工学) ; 学位記番号: ; 研究科・専攻: 情報理工学系研究科電子情報学専攻
著者
渡辺 健太郎
出版者
東京大学
雑誌
若手研究(A)
巻号頁・発行日
2017-04-01

化合物半導体からなる太陽電池は高効率が期待できる反面、高コストであることが課題であった。この問題に対して、結晶成長時にGaAs基板上に疑似格子整合するInGaAs/GaAsP体重量子井戸層を介して太陽電池を形成し、この多重量子井戸が選択的に赤外線を吸収する性質を利用して、波長1064nmのレーザー光照射によるドライプロセスによって太陽電池層と基板を剥離する赤外線レーザーリフトオフ(IR-LLO)技術を提案し、基礎研究を行った結果、数mmサイズの小規模ながら剥離工程が確認された。
著者
小八重 智史 吉原 和明 谷本 優太 藤木 卓 渡辺 健次
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 D (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.J106-D, no.11, pp.481-491, 2023-11-01

AI技術が急速に進歩する中にあって,我が国では将来的なAI人材の不足が指摘されている.本研究ではまず,中学生段階におけるAIに関する学習内容や学習方法が確立されていなかったことから,中学生を対象にAIに関する知識のつながりや概念の構造を明らかにして学習内容を整理するために,「中学生向けAI概念図」を開発し,それを基に題材指導計画を開発した.次に,中学生を対象にディープラーニングの仕組みを学習する授業の実現を意図し,顔認証セキュリティシステム教材を開発した.教材は,生徒が一人一台学習者用端末を用いて機械学習に用いる学習用データとなる顔写真を自分で用意し,各パラメータを設定することで機械学習モデルの性能に関与できること,自分の設定したパラメータによる成果を視覚的に確認し,それを基に試行錯誤することを可能としている.開発した題材指導計画に基づいた授業実践を行い,有用性を確認した.