著者
中野 円佳
出版者
一般社団法人 日本教育学会
雑誌
教育学研究 (ISSN:03873161)
巻号頁・発行日
vol.89, no.4, pp.716-728, 2022 (Released:2023-04-25)
参考文献数
31

本稿では、シンガポールにおける1990年代後半以降の学力競争緩和のための教育改革が、ミドルクラスの親子に新たなストレスをもたらしていることをインタビュー調査から明らかにした。親たちが他の親の動向を気にして塾に通わせ、将来の選抜や就労で有利になるとの解釈から習い事で実績作りを目指す背景には、より価値のある人的資本になるための教育投資を求める社会の在り方がある。
著者
今井 重孝
出版者
一般社団法人 日本教育学会
雑誌
教育学研究 (ISSN:03873161)
巻号頁・発行日
vol.58, no.2, pp.152-155, 1991-06-30 (Released:2009-01-13)
参考文献数
8
著者
猪股 大輝
出版者
一般社団法人 日本教育学会
雑誌
教育学研究 (ISSN:03873161)
巻号頁・発行日
vol.90, no.2, pp.248-261, 2023 (Released:2023-09-02)

19世紀末から20世紀前半のアメリカにおいて、学校外の施設や街頭など様々な場所における遊びや仲間関係の中で普遍的に行われてきた生徒の自治活動を「学校内化」した課外活動が取り組まれるようになった。本稿は、この「学校内化」を実現したロジックを分析することで、課外活動成立過程を通貫する歴史的性格を考察し、これらの取り組みの影響下において今日も取り組まれる特別活動のあり方に対する示唆を提起した。
著者
梶川 萌
出版者
一般社団法人 日本教育学会
雑誌
教育学研究 (ISSN:03873161)
巻号頁・発行日
vol.90, no.1, pp.1-12, 2023 (Released:2023-06-20)
参考文献数
21

本稿の目的は、測定の技術をめぐるジョン・デューイの洞察を手がかりに、そこで個性概念がどのようにとらえられているのかを明らかにすることである。デューイにおいて、個性と測定の技術とのかかわりは、知能テスト批判を契機として1920年代に問われ、産業化社会や物理学の発展等の社会状況を背景に1930年代を通じて考察が深められた。その際、個性概念の内実が多元性を有するものから予測されえなさの源へと変化したことが明らかとなった。
著者
西平 直
出版者
一般社団法人 日本教育学会
雑誌
教育学研究 (ISSN:03873161)
巻号頁・発行日
vol.86, no.4, pp.473-484, 2019 (Released:2020-06-12)
参考文献数
41

「修養」は翻訳語ではない。しかし江戸期から一貫して使われてきた言葉でもない。明治期の修養論だけ見ているとその「厚み」が見えない。本稿は江戸期と明治期を共時的に構造化する。加えて、欧米語の翻訳、とりわけcultivationに注目し、その周辺領域を検討する。論点は、1)政治との関連、2)道徳との関連、3)養生との差異、4)修行との差異、5)稽古との差異。「非」近代の営みを近代教育のカテゴリーに回収しないための手掛かりを翻訳の「ズレ」に見る。翻訳の中で理解される日本特有の教育的伝統を見る試みである。
著者
吉田 翔太郎
出版者
一般社団法人 日本教育学会
雑誌
教育学研究 (ISSN:03873161)
巻号頁・発行日
vol.89, no.4, pp.683-691, 2022 (Released:2023-04-25)
参考文献数
18

本稿は、アメリカ女子高等教育の拡大及びジェンダー・バランシングに関する議論を概観し、それが抱える「障壁」を考察した。1980年代には「逆ジェンダーギャップ」現象が起きたが、2000年代初頭に女子の割合が頭打ちとなったため、新たな「女性差別」として女子学生数の調整が行われているという議論が起きた。しかし、能力・業績のみに基づく選考という代替案には、反人種アファーマティブ・アクション派の主張と軌を一にするという「障壁」が存在する。
著者
佐藤 晴雄
出版者
一般社団法人 日本教育学会
雑誌
教育学研究 (ISSN:03873161)
巻号頁・発行日
vol.87, no.4, pp.468-481, 2020 (Released:2021-10-19)
参考文献数
21

2017年の地教行法改正を契機に、学校運営協議会による教職員の任用意見規程に校長への事前意見聴取を条件付ける規則が増加した。もともと任用意見申出権限はコミュニティ・スクール導入の足枷になっていたが、法改正による導入の努力義務化は制度に対する「不要感」や任用意見に伴う「不安感」をある程度解消させることになり、その導入を促す役割を果たした。また、新規導入教委は他の教育施策にも積極的であり、教委職員等の制度への関心が高い傾向にあった。
著者
影山 奈々美
出版者
一般社団法人 日本教育学会
雑誌
教育学研究 (ISSN:03873161)
巻号頁・発行日
vol.89, no.3, pp.435-446, 2022 (Released:2022-11-11)
参考文献数
31

本稿では、Michael Fieldingが提起した「ラディカルな同僚性(radical collegiality)」概念について、その形成文脈と思想的背景を辿ることでFieldingの議論の特徴を検討する。その際、教師と生徒の対等な関係性の主張に着目し、実践研究「研究者としての生徒(Students as Researchers)」との結びつき、Judith Littleの「同僚性」概念との民主性を軸にした新たな連関、そしてJohn Macmurrayの哲学に依拠したFieldingの議論の特徴を明らかにする。教師と生徒の権力問題への着手からは、学校や教育の意味に転換をもたらすことが示唆される。
著者
高木 加奈絵
出版者
一般社団法人 日本教育学会
雑誌
教育学研究 (ISSN:03873161)
巻号頁・発行日
vol.85, no.3, pp.296-308, 2018 (Released:2019-10-12)

本稿は、日本教職員組合(以下、日教組)が、教育公務員特例法の作成過程で存在した教員身分法案作成に関する闘争をどのように行ったのかを、日教組の内部史料を用いて明らかにした。文部省の「秘密主義」の壁の厚さは、教員の身分保障の重要な場面で日教組が有効な運動を組織できなかったことを示している。つまり、労働三権を持ち、戦後最も有利に諸闘争を行いえた時期でさえ、日教組の運動は大きな制約を受けていたといえる。
著者
山口 泰史
出版者
一般社団法人 日本教育学会
雑誌
教育学研究 (ISSN:03873161)
巻号頁・発行日
vol.89, no.3, pp.409-421, 2022 (Released:2022-11-11)
参考文献数
26

本稿では、大学進学者が同年代の過半数を占めるようになった今日の日本社会において、大学進学希望の形成時期が教育達成における階層差の形成メカニズムにどのように寄与しているのかを、高校生のパネル調査データを用いて検討した。分析から大学進学希望形成時期が出身階層と教育達成の関連を媒介していることが示唆されたことを踏まえて、高校による生徒の進路に対する「枠づけ」と教育達成の階層差形成の関連を議論した。