著者
執行 秀彌 大原 貴裕 岩山 忠輝 舟田 晃 長谷川 拓也 神﨑 秀明 安斉 俊久
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.47, no.2, pp.187-190, 2015 (Released:2016-02-15)
参考文献数
14

症例は70歳, 女性. 主訴は意識消失. 大動脈弁閉鎖不全症, 感染性心内膜炎に対してBentall手術 (Prima Plus 21mm, Intergrad 20mm), 右室形成術を施行した. 術後完全房室ブロックと低心機能を認め心臓再同期療法ペースメーカー (Medtronic Consulta CRT-P C3TR01) を留置した. 3カ月に及ぶ長期入院を要した. 退院後, 立位にて調理中に突然の意識消失をきたし, 精査のために入院. 心電図では失神をきたすような不整脈を認めず, 心筋逸脱酵素上昇等異常所見を認めなかった. 経胸壁心エコー図では, 局所壁運動異常や大動脈弁置換弁の異常所見を認めなかった. 頭部単純CT, 脳波検査でも異常所見は認めなかった. 神経調節性失神を疑いヘッドアップチルト試験を施行. ニトロール負荷にて急激な血圧低下, 失神症状を認めた. カルベジロールのα1遮断作用が失神の誘因となった可能性を考慮し, カルベジロールからビソプロロールへ変更した. 変更後ヘッドアップチルト試験を再施行したが, 血圧低下, 失神症状を認めなかった. 以降症状再発なく経過している. 低心機能例に対してβ遮断薬を投与する際には神経調節性失神の副作用も考慮に入れて薬剤選択する必要があると考えられた.
著者
中屋 豊
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.48, no.11, pp.1251-1255, 2016-11-15 (Released:2017-11-15)
参考文献数
13
著者
墨岡 亮 桑原 博道 小林 弘幸
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.43, no.9, pp.1183-1195, 2011 (Released:2013-01-19)
参考文献数
6
被引用文献数
1

肺血栓塞栓症は, 近年, 認知度が上昇し, 急死の転帰をたどることも多く, 訴訟リスクが高まっているものと考えられる. そこで, 肺血栓塞栓症が裁判上どのような点で問題となっているのか, 検索し得た40例の裁判例(36事例)を検証した.請求棄却判決は22例で, 一部認容判決が18例. 主な診療科は, 循環器科(7事例), 産婦人科(7事例9裁判例), 整形外科(6事例)で, 3診療科で約半数を占めた. 循環器科は, 2004年の判決以降に問題となっていた. 産婦人科では, 5事例6裁判例で, 医療機関側から, 急変した原因が肺血栓塞栓症であるとの主張がなされていた. 整形外科では, いずれの事例も下肢受傷例であった. 争点となったのは, 死因·原因(17事例20裁判例), 予防措置(16事例17裁判例), 診断の遅れ(16事例17裁判例), 救命措置(9事例10裁判例)であった. 2004年以降, 予防, 診断の遅れ, 救命措置に過失があったことを理由とした請求認容判決が7例存在した. また, 2004年以降の判決ではガイドラインに触れられているものがあった. 死因·原因などに関して, 8事例10裁判例で, 医療機関側から, 原因が肺血栓塞栓症であったことを, 過失や救命可能性を否定する根拠として主張していることが特徴であった.医療トラブル防止には, 個々の医師の対応だけでは限界があり, 肺血栓塞栓症の特質について, 患者および社会一般の理解を得る必要がある.
著者
森田 久樹 水重 克文 平林 浩一 中島 茂 林 英宰 深田 英利 千田 彰一 高光 義博 松尾 裕英
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.19, no.12, pp.1435-1440, 1987-12-15 (Released:2013-05-24)
参考文献数
10

マイコプラズマ感染により,心膜心筋炎と肺炎を合併した症例を報告する.症例は59歳,男性.主訴は発熱,筋肉痛.入院時心電図では完全房室ブロック,完全右脚ブuック,広範囲のST上昇を認めた.胸部X線写真では,心胸郭比63%で,右肺野には炎症像を疑わせる異常陰影が認められた.CPKの上昇はなく,白血球数は正常であった.入院4日目,高度の咳漱,高熱が出現し,右肺野には明らかな炎症像が広範囲に出現した.ドキシサイクリンの投与で,肺炎は約10日で治癒した.心臓の調律は,入院3日目に心房細動に移行したが完全房室ブロックは続いた.入院16日目カウンターショックにて心房細動を洞調律にもどし,この時点ではII度房室ブロックがみられたが,発症約!カ月で正常洞調律に復した.各種ウイルス抗体価の有意な上昇はなく,マイコプラズマ抗体価はペア血清にて8倍の上昇がみられ,臨床所見とも併せて,本例はマイコプラズマ感染にまれな心膜心筋炎が,多彩な不整脈を呈し肺炎に合併して出現したものと考えられた.
著者
松沢 佑次
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.27, no.7, pp.662-669, 1995-07-15 (Released:2013-05-24)
参考文献数
9

高比重リポ蛋白(HDL)が動脈硬化を予防するリポ蛋白であることが疫学的に証明されて既に20年になるが,必ずしもその分子機構は明らかにされていない.最近の研究によりHDLは,コレステロール逆転送系(本来コレステロールは肝臓で作られ末梢細胞へ運ばれるので,その逆の末梢から肝臓へ運びもどす系)の中で主役をなしていることが明らかになっており,その逆転送系が組織におけるコレステロールの畜積を防御するものと考えられるようになってきた.従って,HDLが欠損するとコレステロール逆転送系が作動しなくなるため,atherogeniclipoproteinが少なくても動脈硬化が伸展するのである.しかし,私達は,HDLの血中レベルが増加しながらこのコレステロール逆転送系が障害されている病態として,コレステロール転送蛋白欠損症を見出した.この異常が動脈硬化と直接結びつくかどうかは,未だ結論は出ていないが,少なくとも日常診療で測定されているHDL-コレステロールの血中レベルのみで,動脈硬化との関連を考察することは不十分であり,HDLの機能的評価が重要であることを示す病態である.
著者
木下 訓光
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.52, no.4, pp.360-365, 2020-04-15 (Released:2021-04-24)
参考文献数
16
著者
笠間 周
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.40, no.1, pp.89-92, 2008-01-15 (Released:2013-05-24)
参考文献数
6

心不全患者は心臓交感神経終末におけるノルェピネフリン(NE)の放出が充進している.同時にアルドステロンの影響でNEの再取込機構uptake-1が障害されており,心臓交感神経活性が亢進すると考えられている.その指標となる123I-MIBGシンチグラフィによる心縦隔比(H/M比)の低下,洗い出し率(WR:washout rate)の上昇は予後不良を示すため,心臓交感神経活性の改善が重要となる.われわれはこれまでに,ヒト心房性ナトリウム利尿ペプチド(hANP:カルペリチド)がレニンーアンジオテンシンーアルドステロン(RAA)系の抑制を介して,心不全患者における心臓交感神経活性を抑制することを報告した.しかし,急性心筋梗塞(AMI)患者の心臓交感神経活性に対するカルペリチドの効果は明らかでない.今回,初回前壁AMI症例においてdirect PCI前からカルペリチドまたは硝酸イソソルビド(ISDN)を投与し,心臓交感神経活性と左室リモデリングに対する効果を比較検討した.また,再灌流障害,心筋サルベージ,左室リモデリングについても検討した.その結果,カルペリチド群はISDN群と比較してH/M比は高く,WRは低値であった.また.心筋サルベージ率もISDNと比較して高かった.さらに,慢性期左室拡張末期容積の増加を抑制し,左室駆出率を改善した.以上から,カルペリチドはISDNと比較し心臓交感神経活性および左室リモデリングの抑制に有効であることが示された.
著者
赤澤 宏
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.51, no.4, pp.394-399, 2019-04-15 (Released:2020-04-24)
参考文献数
16
著者
川島 康生
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.50, no.7, pp.713-718, 2018-07-15 (Released:2019-08-22)
参考文献数
31
著者
佐藤 直樹
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.47, no.5, pp.542-545, 2015 (Released:2016-05-16)
参考文献数
6
著者
馬渡 耕史 春田 弘昭 大野 朗 中野 治
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.44, no.3, pp.304-312, 2012 (Released:2013-09-30)
参考文献数
37

1995年より2005年までに経験した急性大動脈解離92例を対象に, 臨床像と予後を検討した. 男性41例, 女性51例, 平均年齢72±37歳(35~93歳)で, Stanford A型(以下A型)49例, Stanford B型(以下B型)43例, DeBakey I型33例, DeBakey II型16例, DeBakey IIIa型10例, IIIb型32例, 腹部限局1例であった. A型49例のうち少なくとも2例がDeBakey IIIの経過中に逆行性解離をきたした症例であった. 偽腔開存型45例(A型32例, B型13例), 血栓閉塞型47例(A型17例, B型30例)で, A型に偽腔開存型が多かった. 発症後, 来院までは平均1.2±9.0時間(0.5~10.2時間)で, 8例は来院時心肺停止の心タンポナーデ例であった.心タンポナーデ例は全体25例で, 偽腔開存型18例, 血栓閉塞型7例であった. 25例中5例(偽腔開存型1例, 血栓閉塞型4例)で心嚢ドレナージ後の手術で救命できた. 心タンポナーデを呈さなかったが血性心嚢液を認めたのは4例で全例生存している. 1週間以降の合併症として血管径の拡大2例, 瘤破裂5例, 再解離1例, 再交通2例, 脳梗塞1例, 急性心筋梗塞1例, 腹部臓器虚血1例, 下肢虚血1例であった. 手術例は偽腔開存型15例, 血栓閉塞型7例であった. 死亡率は偽腔開存型が血栓閉塞型と比べて高かった(40% vs 0% p=0.049). 急性期の死亡は31例でA型が28例を占めていた. 生存例61例中の慢性期死亡は15例(24.6%)で大動脈解離関連の死亡は再解離と破裂の2例(3.3%)のみであった. 急性大動脈解離は心タンポナーデの危機を乗り越えられれば, その後の予後は比較的良好である.
著者
吉田 賢大 村井 亮介 佐野 新 多田 毅 門田 一繁
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.50, no.12, pp.1302-1307, 2018-12-15 (Released:2020-01-17)
参考文献数
9

症例は64歳女性.来院1カ月前に感冒症状を自覚した.来院2週間前に発熱と吸気時胸痛に対して,近医にて解熱鎮痛薬の処方を受けたが,症状の消失は得られず,精査加療目的に当院を紹介受診した.経胸壁心臓超音波検査で心嚢水貯留を認め,急性心膜炎と診断した.入院後も解熱鎮痛薬とコルヒチンの投与を行うも,炎症反応の再上昇や吸気時胸痛の再増悪が認められた.入院2週間後に抗核抗体陽性,抗DNA抗体陽性,直接クームス試験陽性が判明し,全身性エリテマトーデス(SLE)の診断基準を満たした.プレドニゾロン30 mg/日の投与を開始し,炎症反応の低下と自覚症状の寛解を認めた.比較的高齢発症(50歳以上)のSLEでは典型的でない初発症状(胸膜炎,心膜炎,間質性肺炎など)が多いとされており診断に難渋する.今回,漿膜炎症状のみを呈した高齢発症SLEの1例を診断し得た.急性心膜炎の治療においては原疾患の有無を詳細に精査し,原因の特定に努めることが重要と考えられた.
著者
加地 修一郎
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.45, no.9, pp.1085-1089, 2013-09-15 (Released:2014-09-17)
参考文献数
19
著者
油谷 伊佐央 中村 翔大 中田 明夫 廣田 悟志
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.52, no.7, pp.722-726, 2020-07-15 (Released:2021-07-16)
参考文献数
7

症例1は70歳代後半男性.僧帽弁閉鎖不全症に対して僧帽弁置換術を施行された.約3カ月後に心膜摩擦音を伴う胸痛あり.心エコーにて心嚢水の増悪を認めた.心嚢穿刺にて血性心嚢水を認め,ADA高値であった.細胞診では悪性細胞は検出されず.結核性心膜炎として抗結核薬による加療を開始し,速やかに心嚢水は改善した. 症例2は70歳代前半男性.虚血性心疾患,心房細動に対して冠動脈バイパス術・肺静脈隔離術・左心耳切除術を施行された.約5カ月後に左胸水の増悪あり,心不全増悪として入院加療を行った.左胸水は漸減したが,経過で右胸水の増悪を認めた.右胸膜生検にて抗酸菌が検出され,結核性胸膜炎と診断した. 開心術後の肺外結核発症は稀であるが,人工心肺使用は細胞性免疫低下を生じ,結核の発症要因になり得る.術後慢性期に増悪する心嚢水・胸水貯留を認めた場合,結核を念頭に置いて精査することが望ましい.
著者
姫野 泰雄 稲垣 雅男 後藤 剛 阿波 純二 土井 修 松永 和夫 藤野 俊夫 光藤 和明 福田 博司
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.17, no.4, pp.408-415, 1985-04-15 (Released:2013-05-24)
参考文献数
20

左冠動脈主幹部に完全閉塞をきたした急性心筋梗塞は非常に重篤であり,発症早期の診断と適切な治療が必須である.われわれが急性心筋梗塞発症早期に冠動脈造影を施行した72症例中,5例に左主幹部完全閉塞を認め,それらの心電図所見に共通した特徴ある所見を認めたため,臨床症状,経過をも含め報告する.いずれもショック状態を呈する著明な心機能の低下をきたし来院したが,心電図上は,I,aVLのST上昇を認めるのみで広範な心筋梗塞を疑わせる所見を欠いていた.全例にintraaortic balloon counterpulsation(IABP)を施行し,5例中4例にpercutaneous transluminal coronary recanalization(PTCR)を,1例にpercutaneous transluminal coronary angioplasty(PTCA)を,そして3例に緊急A-Cバイパス術(coronary arterybypass graft(CABG)を施行したが,4例は心原性ショックなどで死亡した.また,陳旧性心筋梗塞の冠動脈造影では左冠動脈主幹部を責任冠動脈とする例は1例も見られなかった.このように重篤な左主幹部閉塞による急性心筋梗塞に対し早期診断は非常に重要である. 心電図上I, aVLのみのST上昇が高度に認められ,胸部誘導のST上昇があまり高度でなく,特に心機能の低下している場合は左冠動脈主幹部閉塞による急性心筋梗塞を疑い,直ちに積極的な治療が必要と考えられた.