著者
笠間 正文 日鼻 靖 清水 和彦 綱川 宏 真島 三郎 後藤 晃 春見 建一 岡田 了三
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.25, no.4, pp.425-429, 1993-04-15 (Released:2013-05-24)
参考文献数
12

26歳,女性.1988年9月,感冒症候群後に心不全を発症し,心電図でST上昇,血液検査で筋原性逸脱酵素の上昇,コクサッキーA16ウイルス抗体値1,024倍を呈した.11日後に心タンポナーデに対し心膜穿刺を施行し,700mlの血液を排除,一時小康を得たが,突然心肺停止に終わった.剖検所見では心重量430g,右室後面に破裂孔と,その周囲の凝血塊を認めた.組織学的に両心室筋に広範な単核細胞浸潤と心筋細胞壊死を伴う急性非特異性心筋炎所見と裂孔周囲に脂肪組織の進入を認め,ウイルス性心筋炎が心外膜下脂肪組織に波及して心破裂を生じたまれな例と診断された.
著者
山口 浩一 林 輝美 諸岡 成徳 高畠 豊
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.25, no.11, pp.1294-1300, 1993-11-15 (Released:2013-05-24)
参考文献数
12

心エコー図,心音図を施行した3,255例を対象とし楽音様雑音(M雑音)を呈した93例について,心障害の形態,雑音の性質,音源の検索を行い,心疾患別の頻度を求めた.出現時相は83%(77/93)が収縮期にあり,従来まれとされる拡張早期雑音は8例に認めた.音源は,大動脈弁由来43例のうち31例(72%)が弁石灰化で, その他疣贅, 術後変化, 弁逸脱であり,僧帽弁由来26例中17例(65%)が弁の逸脱, その他弁輪石灰化, 疣贅, 術後変化, 弁輪拡大であった.三尖弁由来10例中1例は弁石灰化で,2次性閉鎖不全5例,ペーシングリードによるもの4例で,肺動脈弁由来は1例のみであった.M雑音の持続の長い(>100msec) 群と短い群(<100sec)に分けると, 長い群の周波数は205.4±46.4H zで短い群の266.3±58.2Hzより低値であった.M雑音の頻度は,全体で2.9%(93/3255)で,主な心疾患では,大動脈弁狭窄症14.3%(6/42),大動脈弁閉鎖不全症8.7%(14/161),大動脈弁石灰化例5.0%(16/320),僧帽弁閉鎖不全症6.3%(19/301),連合弁膜症3.1%(3/97)で,僧帽弁狭窄症は1例も認めなかった.先天性心疾患は,心室中隔欠損症の4.7%(2/43)のみで,その他,肥大型心筋症5.1%(6/117),ペースメーカー植え込み例10.5% (4/38)であった.M雑音は症例頻度が少ないため,これまで臨床的,統計的な検討がほとんど行われていない.今回,多数例を対象としM雑音を認めた全症例にわたって詳細に検討し,上記の結果を得た.
著者
大槻 穣治
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.52, no.4, pp.354-359, 2020-04-15 (Released:2021-04-24)
参考文献数
16
著者
桑原 昌則 近藤 史明 濱田 知幸 高橋 純一 竹中 奈苗 吉本 光広 宮野 伊知郎 北岡 裕章 土居 義典
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.46, no.7, pp.893-899, 2014 (Released:2015-07-13)
参考文献数
7

症例は独居の80歳, 女性. 2012年10月下旬, 全身倦怠感, 食欲不振を主訴に近医を受診し経過観察入院となった. 入院後, 末梢静脈からの点滴による治療等で経過をみていたが, 前医入院第13病日より意思の疎通が困難となり, 第17病日には収縮期血圧が60mmHgまで低下したため当院救急搬送となった. 来院時, 血圧84/47, 脈拍数119/分で, 意識レベルはE3V4M5であり, 集中治療室にて治療管理となった. 心エコーでは左室収縮能はほぼ正常であり, 心原性ショックは否定的と思われた. 動脈血液ガスで, pH 7.311とアシドーシスを認め, 乳酸も130mg/dLと高値であったためビタミンB1欠乏の可能性を考慮し, フルスルチアミン150mgの静注後, フルスルチアミンの持続点滴を開始した. 入院翌日には血圧は安定し, 意識レベルも改善した. 後日, ビタミン投与前のビタミンB1値が8ng/mLと著明な低値であることが判明した. 第2病日から第6病日までフルスルチアミン50mg/日の持続点滴を行い, 第7病日よりフルスルチアミン100mg/日の内服投与により, 血圧, 意識レベルは安定して経過した. 今回, 独居の高齢女性で, ビタミンB1欠乏によるショック, 意識障害をきたした症例を経験したので報告する.
著者
前川 慶之 阿部 修一 内田 徹郎 浜崎 安純 黒田 吉則 水本 雅弘 中村 健 貞弘 光章 森兼 啓太
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.47, no.12, pp.1405-1410, 2015 (Released:2016-12-15)
参考文献数
6

背景 : 1999年に米国疾病管理センターが発表した手術部位感染予防のガイドラインにおいて, 手術時に留置されたドレーンは可及的速やかに抜去すべきとされている (カテゴリーⅠB) が, ドレーン留置期間と手術部位感染の関係を定量化した報告はない. 目的 : ドレーン留置期間と手術部位感染の罹患率を定量化すること. 対象と方法 : 当院で開心術を受けた連続457例 (男298 : 女159, 年齢67.5±11.7歳). ドレーン留置期間, 手術部位感染の罹患率, 抜去時のドレーン先端培養汚染を評価した. 結果 : ドレーン留置期間は中央値5日 (四分位範囲3-7日) であり, 457例中19例 (4.1%) が手術部位感染を発症, また13例 (2.8%) のドレーン先端が細菌汚染を起こしていた. ドレーン先端培養陽性と手術部位感染には統計学的相関を認めた (χ2検定, p<0.001, オッズ比12.7, 95%信頼区間3.5-45.9). ロジスティック回帰分析より, ドレーン留置期間と手術部位感染 (p<0.01, 寄与率6.1%), ドレーン留置期間とドレーン先端汚染 (p<0.01, 寄与率6.8%) と相関関係が認められた. 手術部位感染の起因菌は黄色ブドウ球菌が多数を占めた (14/19例) 一方, ドレーン先端汚染はコアグラーゼ陰性ブドウ球菌が半数を占めた (7/13例). 結論 : 開心術後において, ドレーン留置期間, 先端培養汚染, 手術部位感染はそれぞれ関連性があった.
著者
杉浦 昌也 大川 真一郎 平岡 啓佑 桑島 巌 上田 慶二
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.7, no.3, pp.309-314, 1975-03-01 (Released:2013-05-24)
参考文献数
29

左軸偏位の成因はGrant以来冠状動脈硬化(心筋線維症ないし心筋硬塞)に関係した伝導障害(左脚前枝ブロック)とされる.本報はその病理学的再検討である.56歳以上の老人1,000例の電気軸は正常58%,準左軸偏位(0~-29°)21.9%,左軸偏位(-30°~-180°)17.4%,右軸偏位2.7%であった.病理学的検討の結果,左軸偏位は心筋硬塞を20%,右脚プロックを16.1%に合併したが,他の軸群と比較して冠硬化,心筋線維症,心肥大のいずれとも特に有意な相関はない.また右軸偏位は右脚プロックを66.7%,右室肥大を22.2%に合併したが冠硬化,心筋線維症の合併頻度は他軸群と有意差を示さなかった.以上より左軸偏位の1部(20%)は心筋硬塞のごとく大きい壊死により説明されるが,その大部分は冠硬化,心筋線維症に無関係であり脚プロックに見られると同様の激伝導系(分岐部)の変性,線維症との関係を推定刺した.
著者
安岡 良文 栗田 隆志 小竹 康仁 赤岩 譲 野並 有紗 元木 康一郎 宮崎 俊一
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.44, no.SUPPL.3, pp.S3_69-S3_73, 2012 (Released:2013-09-25)
参考文献数
2

症例は動悸を主訴とする46歳,男性.発作時の心電図でnarrow QRS tachycardiaが記録されている.EPSではS1=600ms,S2=330msの心房期外刺激にて心室に2:1伝導する上室性頻拍が誘発された(心室の周期650ms,心房の周期320~350ms).房室伝導のブロック部位はHis束より近位で,心房興奮の最早期はCS入口部であった.2:1伝導の頻拍は連結期440~570msの範囲に限定されたPVCにより心房がリセットされずに1:1房室伝導に変化した.頻拍停止後の右室ペーシングにて頻拍中と同じsequenceで逆伝導を認めた.Para-Hisian pacingはAV nodal patternであった.頻拍はfast-slow型AVNRTであり,房室結節の下位共通路で2:1ブロックされていたものと診断した.PVCによる1:1伝導への変化は適度な連結期を有するPVCが下位共通路に侵入し,同伝導路内で順行性伝導とcollisionすることでERPの短縮が生じたため出現したと考えられた.
著者
牧野 睦 井上 紳 松山 高明 酒井 哲郎 小林 洋一 片桐 敬 太田 秀一
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.38, no.12, pp.1181-1186, 2006-12-15 (Released:2013-05-24)
参考文献数
16

目的:冠静脈洞周囲の解剖学的特徴を明らかにすること.方法:対象は剖検心26例.下大静脈から左心耳まで房室接合部を切り出し僧帽弁に垂直に5mm幅で包埋,ヘマトキシリンーエオジン,アザンーマロリー染色を施行して光学顕微鏡下で冠静脈洞を観察, 大心静脈との境界部(似下,境界部),中央部,開口部でその性状を検討した.結果:冠静脈洞の長さは29.9±96mm,それに対し冠静脈洞を覆う筋束(冠静脈洞筋束)は37.9±10.Ommあった.冠静脈洞は境界部で僧帽弁輪上方9.6±4.5mmに位置したが,中央部6.5±3.6mm,開口部3.6±26mmと接近した.冠静脈洞筋束は開口部でもっとも厚く,また肺静脈方向に広く分布していた.全例で冠静脈洞筋束と左心房筋との部分接合を肺静脈側,心内膜側,僧帽弁輪側いずれかに認めたが,その頻度は境界部18例(69%),中央部21例(81%),開口部25例(96%)で開口部に近いほど高かった.開口部近傍では冠静脈洞筋束と左心房筋間の脂肪組織が乏しく,両者が密着する症例が増加した.結論:冠静脈洞筋束の分布は個体差が著しいが,肺静脈側によく発達していた.全例で左心房筋との接合を認め,開口部に近いほどその頻度が高かった.冠静脈洞と僧帽弁輪間の距離は開口部に比し境界部で開大する傾向がみられた.
著者
矢崎 恭一郎 森 文章 網代 洋一 渡邉 真広 塚本 圭 齋藤 貴士 溝渕 景子 岩出 和徳
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.48, no.9, pp.1043-1048, 2016 (Released:2017-09-15)
参考文献数
13

症例は高血圧歴を有する64歳男性. 繰り返す運動後失神を認めたため精査加療入院となった. トレッドミル, ホルター心電図, 各種画像検査では失神をきたすような不整脈や器質的心疾患は認められなかった. 心エコー上S字状中隔を呈していたが左室内に加速血流は認めなかった. 心臓カテーテル検査にて左室-大動脈同時圧測定を行った. 安静時には同様に圧較差を認めなかったが, イソプロテレノール (ISP) 0.01μg/kg/分にて平均圧較差53.2mmHgが顕在化し, 同時に施行した左室造影では僧帽弁閉鎖不全がⅢ度に増悪した. その他の検査所見と併せ, 運動後失神としての原因はS字状中隔による流出路狭窄の顕在化と判断した. β遮断薬内服および生活指導を行い, 以後半年間失神や前失神は認めていない. ISPやドブタミン負荷で圧較差が顕在化するS字状中隔症例を経験するが, 本症例のように左室-大動脈同時圧測定により直接証明しえた症例は貴重であるため, ここに報告する.
著者
宮田 哲郎
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.41, no.5, pp.509-513, 2009 (Released:2013-05-27)
参考文献数
11
被引用文献数
2
著者
畔柳 三省
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.38, no.Supplement3, pp.53-60, 2006-08-30 (Released:2013-05-24)
参考文献数
24

スポーツ中の突然死は,人一倍健康・頑強と思われている者が,その活動中に多数の目撃者の前で発生することが多いため,関係者をはじめ周囲に及ぼす衝撃が大である.大規模な疫学調査が可能な東京都監察医務院(以下,当院)の資料を用い,スポーツ中の突然死の疫学的背景を,今までの調査結呆を基に概説するものである.当院開設以来54年聞のスポーツ中の突然死例において,調査した項目は,経年変化,年齢,性別,月別,発生時間,曜日別,死因,スポーッ種目,既往症,運動様態(運動中,運動直後など),発生時症状(突然昏倒,しゃがんだりふらついたり等の異常動作,悪心・胸痛などの訴え),発症から死亡(確認)までの時間,発生時の気象状態(天気・温度・湿度:気象庁の資料を用いた)などを,可能な例につき調査・集計し,運動様態以降の項目については死因(群)別にも集計し,傾向を分析・提示した.これらの調査結果が臨床・公衆衛生に還元され,突然死予防の糸口になることを切に願う.
著者
岸 拓弥
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.53, no.12, pp.1277-1279, 2021-12-15 (Released:2022-12-18)
参考文献数
4
著者
前嶋 康浩
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.52, no.12, pp.1324-1331, 2020-12-25 (Released:2021-12-31)
参考文献数
31
著者
河合 祥雄
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.36, no.4, pp.297-300, 2004-04-15 (Released:2013-05-24)
参考文献数
25
著者
塚田 啓二 神鳥 明彦 宮下 豪 山田 さつき 堀米 仁志 寺田 康 三井 利夫 山口 巖
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.33, no.5, pp.423-431, 2001-05-15 (Released:2013-05-24)
参考文献数
19

超伝導量子干渉素子SQUID(superconducting quantum interference device)を用いた心磁計を開発し,胎児から成人に至るまでの心臓の電気生理学的活動に伴って発生する磁場が多点同時計測できるようになった.ここで,磁場計測(心磁図)の特徴について,体表面での電位計測(心電図)と比較考察した.体内での導電率の不均一性および低導電率により心電図で困難であった背面側の情報や胎児の心電情報が,磁場では信号の減衰がなく計測できることがわかった.また,心磁計測により心臓内の電流を二次元投射された画像を得るために,従来の体表面に垂直な法線成分表示に加え,解析的に算出した接線成分の同時表示を行った.これにより,心筋での複数興奮部位の存在,不整脈における興奮過程や,早期興奮部位の推定が可能になった.また,虚血性心疾患による心筋各部位での再分極や脱分極における電流分布の異常性を,電流積分図により判定が容易になった.これら,胎児心磁,複数興奮部位の視覚化,不整脈起源の画像化,虚血性心筋における異常電流分布マッピング等について具体例を示し,心磁の特徴について報告する.