著者
村川 裕二
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.26, no.4, pp.452-456, 1994-04-15 (Released:2013-05-24)
参考文献数
9

異所性自動能を機序とする副収縮において,洞調律によるelectrotonic tonic modulationのためにその周期が修飾され得ることが知られている.この考えに基づいて洞調律下に心室性のmodulated parasystoleが出現する数学モデルを作成した.構成要素として洞周期,副収縮周期,不応期,代償性休止期が生じる条件,およびmodulationの様式を規定するphase-response curveを取り入れた.このモデルより,副収縮と非副収縮それぞれに特異的な連結期対先行RR間隔の関係を求めた.ホルター心電図記録60例の結果とモデルの結果を比較すると,15例と17例がそれぞれ副収縮と非副収縮に特徴的な連続期対先行RR間隔の関係を持っており,他は判別できなかった.また,副収縮性心室期外収縮の発生頻度は一様な心拍数依存性を示さないこともモデルより示唆された.
著者
比江嶋 一昌
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.6, no.8, pp.1207-1212, 1974-07-01 (Released:2013-05-24)
参考文献数
14

人工ペースメーカの場合は別として,自然に発生したdoubl eventricular parasystoleの例の報告は,現在まできわめて少ない.著者の例は,高血圧+糖尿病患者の心不全時みられたもので,一方のventricular parasystoleは心不全の改善とともに消失した.両異所性中継はアトロピソ投与により影響を受けなかったが,リドカインの投与でともに著明な抑制を受けた.このようなdouble ventricular parasystoleの結果,起こり得る可能性のある電気生理学的現像として,(1)fusion beat,(2)supernormal conduction,(3)re-entryまたはWedensky facilitation,(4)exit block,(5)concealed conductionなどが考えられた.
著者
貴田岡 成憲 真宗 るり子 本良 いよ子 及川 仁元 渡辺 坦 小田島 秀夫
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.20, no.11, pp.1341-1346, 1988-11-15 (Released:2013-05-24)
参考文献数
30

WPW症候群に特発性肥大型心筋症(HCM)を合併し,ジソピラミドの投与により完全房室ブロックを生じた症例を経験した.症例は61歳の男子で,上室性期外収縮に対しジソピラミド200mg 2分服を投与したところ,9日目に完全房室ブロックによる高度の徐脈(毎分32拍)を生じた.電気生理学的検査により,James束とMahaim束の存在が強く示唆され,ブロック部位はHV問にあった.原因としてはHCMと加齢による冠状動脈硬化が考えられ,これらによるHis-Purkinje系の潜在性の伝導障害が,ジソピラミドにより顕在化したものと考えられた.WPW症候群に完全房室ブロックを併発したという報告は極めて稀である.この組み合わせにHCMや他の心筋変性疾患を合併した報告はさらに稀であるのでここに文献的考察を加えて報告する.
著者
野田 誠 鈴木 文男 藤波 竜也 山本 康人 吉川 俊治 田代 宏徳 薄井 宙男 市川 健一郎 瀬崎 和典 磯部 光章
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.40, no.Supplement4, pp.12-19, 2008-11-30 (Released:2013-05-24)
参考文献数
8

三尖弁輪自由壁のatrio-fascicular型Mahaim(M)線維は,左脚ブロック型wide QRS頻拍の原因となりうるが,発生学的には“遺残副房室結節”がその本体と考えられる.M線維伝導を,房室結節・His束伝導(A-H-V伝導)のごとくA-M-V伝導として考えた場合,M伝導ブロックはAM blockとMV blockに分類しうる.持続性MV blockのためにMahaim頻拍の出現を認めないと推察された“innocent bystander Mahaim”の1例を報告する.【症例】68歳,女性.電気生理検査よりslow-fast型AVNRTが診断された.いかなる電気刺激にても心室早期興奮波形は出現しなかったが,三尖弁輪においた20極カテーテルよりM電位と推察されるスパイク電位を記録しえた.AM伝導は減衰伝導を示し,ATPによりAM blockが誘発された(房室結節類似組織の診断).心房期外刺激法において,AH blockが出現しH波・V波がともに消失したがAM伝導は保たれ,MV blockが明らかとなった.検査中,左脚ブロック型QRS波形が全く出現しないことより持続性のMV blockと考えられた.【結語】電気生理学的・発生学的観点より『MVblockを合併するMahaim線維(遺残副房室結節)』が考えられた.持続性MV blockのためにMahaim型QRS波形・Mahaim頻拍が出現しないものと推察された.
著者
長谷川 浩一 沢山 俊民 鼠尾 祥三 忠岡 信一郎 覚前 哲 中村 節 井上 省三 河原 洋介
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.22, no.8, pp.903-907, 1990-08-15 (Released:2013-05-24)
参考文献数
14

陰性U波(NU)および「右側胸部誘導のT波減高を伴うU波増高(PU)」は,高度冠狭窄枝ないし心筋虚血領域と関連が深い心電図指標と考えられている。今回,発作時の12誘導心電図記録が得られ,かつ冠動脈造影で少なくとも1枝以上に75%以上の狭窄を有する狭心症84例を対象として,NUとPUの罹患枝別出現誘導部位・出現時相について調査した.LAD狭窄では,NUはV4(59%)>V5(56%)>V6(37%)>V3(33%)の順に前胸部誘導に出現したが,PUは1例にもみられなかった.LCX狭窄では,NUはV6(52%)>V5(48%)の左側胸部誘導に,PUはV2=V3(86%)>V5=V5(43%)に出現した.RCA狭窄では,NUはIII(29%)>aVF(24%)の下壁誘導に,PUはV2V3(63%)>V4(44%)>V51(26%)に出現した.発作時心電図上のQ-NaU時間とQ-PaU時間とQ-PaU時間が等しいことより,NUとPUは同一領域の心筋虚血に起因するものと考えられた.また右側胸部誘導と食道誘導心電図の同記により,PUは後壁虚血の表現と考えられた.したがって12誘導心電図上のNU出現誘導部位および右側胸部誘導のPUを検討することは,狭心症の罹患枝推定に有用と思われた。
著者
川村 比呂志 山地 博介 村上 充 日名 一誠 喜多 利正 津島 義正
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.41, no.5, pp.521-526, 2009 (Released:2013-05-27)
参考文献数
6

当院では心室再同期療法へのアップグレード手術を18例経験した. 18例のうち以前植え込まれていたペースメーカもしくは植込み型除細動器(implantable cardioverter defibrillator; ICD) 本体側の鎖骨下静脈が閉塞していたものが3例, 狭窄していたものが3例, そのうち狭窄のために冠静脈洞用シースの操作が困難であったものが1例あった. 鎖骨下静脈の閉塞があっても両室ペースメーカへのアップグレードの場合, 反対側への植え込みで対処可能であるが, その場合皮下トンネルを用いたリード延長を考慮する. また右側ペーシング機能付きICDへのアップグレード症例では除細動閾値の点でやや不利となる. 症例を呈示しそれぞれの手技上の問題点を検討する.
著者
賀来 文治 井ノ口 安紀 北川 直孝 勝田 省嗣 池田 真浩
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.50, no.8, pp.890-899, 2018-08-15 (Released:2019-08-23)
参考文献数
17

経胸壁心臓超音波検査にて,左心耳内血栓が確認できた心房細動6症例を検討.症例①48歳男性,血栓サイズ:30×18 mm,症例②68歳女性,血栓サイズ:23×17 mm,症例③80歳男性,血栓サイズ:20×15 mm,症例④69歳女性,血栓サイズ:12×10 mm,症例⑤68歳男性,血栓サイズ:15×11 mm,症例⑥53歳男性,血栓サイズ:12×11 mm.心房細動の発症時期は全例で不明であり,動悸等の心房細動に関連した自覚症状も全例で認めなかった.5例は心不全の増悪による呼吸困難を主訴に医療機関を受診.全例で左房は拡大し,5例で左室収縮能の低下を認めた.CHADS2 Score,CHA2DS2-VASc Scoreに関しては1点から5点とバラツキがあったが,CHADS2 Scoreに関連した危険因子のうち,心不全のみを有し,他の危険因子は存在しないCHADS2 Score 1点の症例が6例中4例と半数以上を占めた.さらに感染症の合併,抗癌剤の内服,肥大型心筋症などのCHADS2 Score以外の血栓形成に関連した危険因子の併発を4例に認めた.来院時に有効な抗凝固療法が実施されていた症例はいなかった.1例は来院時にすでに上肢の塞栓症を発症していた.残る症例においても,抗凝固療法を開始したものの,1例で両側の腎梗塞,2例で心原性脳塞栓症を発症した.また,可動性がある血栓を認めた1例では,入院8時間後に心原性塞栓症を発症した. 経胸壁心臓超音波検査で判別可能な比較的大きな左心耳内血栓をすでに認める心房細動症例の対処法は難しい.抗凝固療法を開始しても,不幸な転帰に陥る症例も少なくない.事の重大性を考えると,侵襲度は大きいものの患者の全身状態が許せば,必要に応じて外科的な血栓摘除術も考慮する必要がある.
著者
斉藤 宗靖 桜井 恒太郎 本原 征一郎 平川 顕名
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.7, no.4, pp.427-432, 1975-04-01 (Released:2013-05-24)
参考文献数
19

各種疾患における循環血液量の多少を論ずるためには,健常者におけるその正しい評価法がまず必要となる.この論文は.過去に報告された種々の循環血液量予測式をふまえ,幅広い年齢と体型に分布する日本人健常者の適切な循環血液量評価法を求めることを目的とした.5歳から74歳に及ぶ健常者男子129名,女子91名を対象に,131I標識ヒト血清アルブミンを用いた1点採血法により循環血液量を測定し,体重,身長,体表面積および年齢を説明変数として回帰分析し、いくつかの予測式を求めた.この中で,体表面積による単回帰式,身長と体重および身長の3乗と体重による重回帰式が,実測値の予測値からのばらつきが小さい(7.8~9.0%)点で優れていたが,この三者間における優劣は見られなかった.
著者
高橋 直人 岩原 信一郎 宜保 陽介 竹永 清人 網谷 賢一 山口 朋禎 内田 高浩 星野 公彦 宗像 一雄
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.36, no.3, pp.191-196, 2004-03-15 (Released:2013-05-24)
参考文献数
15

123I-BMIPP心筋SPECT検査(123I-BMIPP)では,心筋症において心筋集積に異常を呈することが知られている.今回我々は,心不全にて入院した拡張型心筋症(DCM)症例において,施行した123I-BMIPP上心筋無集積を認め,それを契機にI型CD36欠損症が診断された症例を経験したので報告する.症例は43歳,男性.平成14年4月に労作時呼吸苦が出現し近医にてうっ血性心不全と診断され,その後精査加療目的にて当科紹介入院となる.入院時血圧132/80mmHg,脈拍78/分,整.浮腫は認めず,心胸郭比は58.5%.利尿薬,血管拡張薬に加えβ遮断薬(carvedilol) の追加により心不全症状は消失.心臓カテーテル検査では冠動脈に有意狭窄はなく,左室造影でび漫性の壁運動低下を認めEF33%であった.左室心筋生検は炎症細胞浸潤は見られず,間質の線維化を認めた.T1-BMIPP心筋SPECT検査を施行したところT1にて不均一な血流損失を認め,123I-BMIPPでは心筋無集積となった.フローサイトメトリー検査にて単球,血小板の双方にCD36欠損を認めるI型CD36欠損症と診断された.肥大型心筋症とCD36欠損症の合併報告は散見されるがDCMとI型CD36欠損症の合併報告例は少なく,CD36と長鎖脂肪酸の心筋への取り込み機構や心筋細胞障害との関連が示唆されており,今後の研究が期待される.
著者
外村 洋一 小野 忠弘 辻 正彦 堀尾 豊 庄野 元 本田 義信 櫛山 三蔵 徳臣 晴比古
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.9, no.4, pp.309-317, 1977-04-01 (Released:2013-05-24)
参考文献数
23

Kent型WPW症候群3例について,副伝導路不応期の測定を試みた.3例共従来のRapid pacingによってはwide QRS のnormalizationはまったくみられず,ERPAPの測定は不可能でExtrastimulus法で以下のごとき種々の条件でのERPAPの測定を行った.Basic cyclelengthによる変化,およびOuabain ,Procainamide投与前後におけるERPAPの変化を検討した.ERPAPはBCLの短縮に伴い,短縮した.3例共,Ouabain投与後,ERPAPはBCLに関係なく減少を示した.その後,第1例,第3例にProcainamideの静注を行った所,ERPAPが延長した.3例共,心房細動によると思われる頻拍発作の既往を持ち,これに対するDigitalis使用はERPAPを短縮し,頻拍発作をさらに増悪する可能性があるので,注意を要する.
著者
石川 静香 椋本 泰生 西原 亜希子 清水 佳代子 船田 幸奈 岩部 彩加 毛利 洋久 広瀬 卓哉 綾井 健太 黒住 瑞紀 難波 経立 佐々木 英之 松元 一郎 高木 雄一郎
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.52, no.10, pp.1130-1136, 2020-10-15 (Released:2021-10-25)
参考文献数
1

目的:当院ではメディカルスタッフが中心となり,循環器科疾患診療に従事する,多職種でチーム医療を行うCardiovascular Care Team(CCT)を立ち上げ,さまざまな取り組みを行っている.CCTではワーキングチームの1つとして心電図チームを組織し,職員の心電図関連のスキルアップを目指した. 方法:新入職の看護師に対しては入職時に12誘導心電図講習を行った.入職後1年以上経過した職員に対しては,当院独自の基準によるモニター心電図ライセンス制度を導入し,講習を受講したのち,資格試験合格によりライセンス取得とした.各講習の受講前後にはアンケートにより知識や意識の変化を調査した.ライセンス取得者らで全病棟のモニター心電図記録の回診を行い実務に還元した.モニター心電図回診導入後に重症不整脈の指摘状況や誤認率が変化したか調査した. 結果:講習終了後には講習前と比較して心電図に対する苦手意識や嫌悪感が減少していた.ライセンス取得者は年々増加し,モニター心電図回診導入後,年々重症不整脈の見落としや誤認が減少していた. 考察:心電図チームによる講習,ライセンス制度により職員の心電図に対する関心が高まり,苦手意識も減少していた.結果として病棟での重症不整脈などの見落としが減少し,リスクマネジメントの向上に寄与できた.専門的にみられがちな12誘導心電図記録,モニター心電図判読を病院内の多くの職員に広めていくことができた.今後もさらなる質的向上を目指した取り組みを行う予定である.

2 0 0 0 OA 心臓悪液質

著者
小笹 寧子
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.48, no.11, pp.1232-1237, 2016-11-15 (Released:2017-11-15)
参考文献数
17
著者
長谷部 雄飛 福田 浩二 中野 誠 近藤 正輝 佐竹 洋之 平野 道基 下川 宏明
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.46, no.SUPPL.3, pp.S3_36-S3_42, 2014 (Released:2015-10-26)
参考文献数
7

症例1は, 15歳女性. 小学生の時にWPW症候群を指摘. 運動中に出現した心拍数300/分台の偽性心室頻拍で当科紹介. C型顕性WPW症候群, デルタ波はⅡ誘導で陰性であり, 心外膜側Kent束と予測された. 順伝導ERPは220msec, 心室早期刺激にて容易に房室回帰性頻拍が誘発された. 冠状静脈洞 (CS) 内の順伝導最早期部位における心室側への通電で離断に成功した.  症例2は, 22歳男性. 小学生の時にWPW症候群を指摘. 強い精神的ストレス下で, 心拍数280/分台の偽性心室頻拍を発症. ピルジカイニド内服後もデルタ波残存し, Ⅰ, Ⅱで陽性, V1, aVFで (±) であり, 後中隔Kent束と予測された. Kent束の順伝導ERPは240msec未満. CS入口部前面に順伝導最早期を認め, 入口部から内部に入った逆伝導最早期部位への通電と, さらに奥での追加通電にて離断に成功した. CS内通電を要した後中隔Kent束で, 心房細動合併時に速い心室応答を示したハイリスク偽性心室頻拍の若年2症例経験したので文献的考察を加えて報告する.
著者
荒川 規矩男 代田 浩之
出版者
Japan Heart Foundation
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.41, no.7, pp.831-841, 2009

荒川規矩男先生は世界で初めてヒトアンジオテンシンの単離に成功し, 構造決定を行いました. その後もヒトアンジオテンシン-II生成バイパス, キニン・テンシン系などを発見されました. また, 活躍の場所を福岡大学に移されると運動療法による降圧効果の研究, 食塩と血圧の研究をされてきました. 国際高血圧学会や高血圧治療ガイドラインにも関わられるなど国際的にも高血圧分野において多大なる功績を残されました.<BR>今回のMeet the Historyは, その荒川規矩男先生をゲストに, 本誌編集委員の代田浩之先生をホストとして, 逆境のなかで研究に邁進された荒川先生の半生をお伺いしました.
著者
渡邉 英一
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.46, no.6, pp.732-733, 2014 (Released:2015-07-12)
参考文献数
2
著者
藤原 雄太 佐々木 翔 岩倉 敏夫 松岡 直樹 小林 宏正 日野 恵 古川 裕 石原 隆
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.45, no.9, pp.1101-1109, 2013-09-15 (Released:2014-09-17)
参考文献数
20

背景:アミオダロンはヨードを大量に含有するため,甲状腺機能異常をしばしば起こす.さらに末梢および下垂体でサイロキシン(thyroxin;T4)の代謝と甲状腺刺激ホルモン(thyroid stimulating hormone;TSH)分泌に影響するため,甲状腺機能の正確な解釈が困難になる.対象:2009年6月から2010年6月までにアミオダロンを1カ月以上処方されていた341名を対象とした.方法:対象患者の2003年1月から2010年6月までの甲状腺機能検査結果を調査し,また診療録より臨床的特徴を検討した.結果:測定キットの正常域では血中FT4とTSHはともに高値となり解釈不可能な異常値を呈する症例が多数あったため,両者の分布に基づき基準域を1.0≦FT4<2.4 ng/dL,1.0≦TSH<20.0 µU/mLと設定した.機能低下症例は疑いを含めて34名(10.4%)認めた.中毒症例は17名(5.2%)認め,type 1(機能亢進)例はなく,ほとんどの例がtype 2(破壊性)であった.死亡例とバセドウ病合併例を認めた.考察:アミオダロン治療中には甲状腺機能低下症も破壊性中毒症も高頻度に発症するが,軽症例では通常の正常域を用いて正確な診断を行うことは非常に難しい.アミオダロンによるT4代謝とTSH分泌への影響が大きく,甲状腺機能解釈時には従来の正常域にとらわれず本病態を考慮した特別の基準域を用いたほうが甲状腺機能を正しく評価でき,適切な対応が可能になると考えられる.