著者
西尾 祐吾
出版者
一般社団法人 日本社会福祉学会
雑誌
社会福祉学 (ISSN:09110232)
巻号頁・発行日
vol.29, no.2, pp.1-23, 1988

Firstly, I tried to describe to the implications of discussing "stigma" in Japan, today explicating the meaning of the term "stigma". Then I outlined tke contents of "Stigma and Social Welfore" by P. Spicker, 1984, Croom Helm, in which the relation between stigma and social welfare has been dealt with systematically and preponderantly for the first time. Lastly, focusing on public assistance, I discussed the various phenomena of stigma seen in the present practices of social welfare in our country.
著者
金子 充
出版者
一般社団法人 日本社会福祉学会
雑誌
社会福祉学 (ISSN:09110232)
巻号頁・発行日
vol.43, no.1, pp.33-43, 2002-08-31 (Released:2018-07-20)

産業構造の転換に伴って,人びとの働き方,家族のあり方,ライフコースが大きく変化してきている。そのことは,社会福祉の「対象」が変化していることを表している。こうした社会福祉の現代的な「対象」の問題は,ジェンダー論,人種/エスニシティ論,そしてアンダークラス論から提示されている。「批判的社会政策論」(Critical Social Policy)はこれらの議論のエッセンスを凝縮し,階級,ジェンダー,人種/エスニシティなどの観点から,人びとが「社会的に分裂した」(social division)状態にあることに注目しつつ,そのような、人びとの差異やアイデンティティに配慮した福祉国家を構築することに関心をもつアプローチである。こうした視点をもとに,現代の社会変化と「社会的分裂」に関する議論を踏まえた社会福祉対象論を再構成するための展望について論じる。
著者
三島 亜紀子
出版者
一般社団法人 日本社会福祉学会
雑誌
社会福祉学 (ISSN:09110232)
巻号頁・発行日
vol.61, no.3, pp.115-127, 2020-11-30 (Released:2021-02-09)
参考文献数
44
著者
春木 裕美
出版者
一般社団法人 日本社会福祉学会
雑誌
社会福祉学 (ISSN:09110232)
巻号頁・発行日
vol.61, no.2, pp.16-30, 2020-08-31 (Released:2020-10-03)
参考文献数
38

本研究は,障害児を育てる母親の就業に影響を及ぼす要因を明らかにし,障害児家族への援助の在り方を検討することを目的とした.特別支援学校在籍児の母親を対象とした質問紙調査を行い,266通の回答を有効とした.従属変数は,就業の有無,仕事の制限感とし,階層的重回帰分析,階層的2項ロジスティック回帰分析を行った.分析の結果,母親の就業に最も影響を与えていたのは子どもの医療的ケアだった.医療的ケアが必要な場合,母親は無職であることや仕事の制限感が高かった.有職の母親は,福祉サービス利用度が高いことや福祉サービスの量的充足度が高いほど仕事の制限感を低めていた.一方,対象児の介助度が高いほど,また,母親の役割拘束の認識が高いほど仕事の制限感を高めていた.これより,障害児相談支援の役割として,母親が就業を希望する場合には,子どもと家族の双方を考慮した福祉サービスのコーディネートの重要性について言及した.
著者
神林 ミユキ
出版者
一般社団法人 日本社会福祉学会
雑誌
社会福祉学 (ISSN:09110232)
巻号頁・発行日
vol.58, no.1, pp.71-85, 2017-05-31 (Released:2017-09-22)
参考文献数
3
被引用文献数
1

スーパービジョンはソーシャルワーカーに身近になったが,スーパーバイザーからはスーパービジョンに対する不安の声が聞かれる.不安軽減のためには,具体的なスーパービジョンのイメージや,終了後の自己評価指標が有用だと考えた.そこで,1セッションごとの展開と,スーパービジョンで用いられるスキルを明確にすることを,研究目的とした.実務経験10年以上のスーパーバイザーによる,12のスーパービジョンセッションを調査したところ,634のスキルが抽出された.それらは,提出事例を対象としたスキルとスーパーバイジーを対象としたスキル,スーパーバイジーの語りや内省を促すスキルに分類された.1セッションの展開は,開始段階からスーパーバイジー自身の成長課題への気づきを促すことを志向した介入が行われ,特に展開段階では成長課題に気づかないスーパーバイジーに対し,段階的にスキルが活用され,根気強く気づきを促していた.
著者
今井 小の実
出版者
一般社団法人 日本社会福祉学会
雑誌
社会福祉学 (ISSN:09110232)
巻号頁・発行日
vol.43, no.1, pp.1-11, 2002

1934年母性保護法制定促進婦人連盟として誕生した母性保護連盟は,母性保護運動を展開し,1937年の母子保護法制定に貢献した。その連盟誕生の産婆役をつとめたのは,婦選獲得同盟であった。婦人の参政権獲得を目的として結成された女性団体が,母性保護連盟を生み出し,母性保護運動に積極的にかかわっていくのは,戦時体制へと突入し,婦選運動が閉ざされていく状況にあったからだといわれている。しかし同盟が母性保護運動に取り組んでいく方向性は,1928年にはすでに示されていた。同盟には従来の研究では説明されてこなかった母性保護運動を開始する別のモチベーションも存在したのではないだろうか。本稿の目的は,同盟の母性保護運動に対する従来の評価に,新たに大正時代の母性保護論争から続く"継承性"という視点を加えることによって,その揺籃期のモチベーションを明らかにしようとするものである。
著者
伊藤 嘉余子
出版者
一般社団法人 日本社会福祉学会
雑誌
社会福祉学 (ISSN:09110232)
巻号頁・発行日
vol.50, no.4, pp.82-95, 2010-02-28 (Released:2018-07-20)

本研究の目的は,児童養護施設入所児童を対象に行った,施設生活に関するインタビューの結果から,子どもたちが児童養護施設や職員に求めている生活の質,支援,役割について明らかにすることである.C児童養護施設(A県B市)の入所児童10人を対象に1対1の半構造化面接によってインタビューを行い,データを分析した.その結果,多くの子どもが,実家庭とは異質な施設生活に満足や喜びを感じており,物的環境の充実が子どもに与える影響の大きさが明らかになった.しかし,その一方で,施設生活の質の高さに満足すると同時に,多くの子どもが「できれば実家に帰りたい」という葛藤を持ち続けている実態も明らかとなった.また,子どもの感じる施設生活への満足度の高低には,子ども自身が施設内の人間関係をどうとらえているかが影響していることが明らかとなり,人間関係構築やコミュニケーションにおける職員の資質や力量が重要となることが分かった.さらに,多くの子どもが施設入所前/入所時の不安について語っており,アドミッション・ケアの充実の必要性が示唆された.
著者
中山 忠政
出版者
一般社団法人 日本社会福祉学会
雑誌
社会福祉学 (ISSN:09110232)
巻号頁・発行日
vol.40, no.1, pp.271-286, 1999-06-30 (Released:2018-07-20)

The facilities for children with autism are the only welfare service peculiar to persons with autism in our country. This research aimed to clarify the development of the welfare for persons with autism by analyzing process of installation and institutionalization of the facilities for children with autism. At first, the facilities for children with autism were set up as facilities specific to autism in 1969. Later, it was reexamined what the facilities for children with autism should be like on ground of various problems in management of the facilities for children with autism. The discussion to emphasize "Realistic countermeasure" which is that an intellectual handicaps accompanied autism was performed there. Thus, the facilities for children with autism were turned over in legal facilities, and assumed to be a kind of the facilities for children with intellectual handicaps. The principle of the treatment in the intellectual handicaps frame to persons with autism which ran here now established.
著者
三原 博光 松本 耕二
出版者
一般社団法人 日本社会福祉学会
雑誌
社会福祉学 (ISSN:09110232)
巻号頁・発行日
vol.53, no.2, pp.108-118, 2012-08-31 (Released:2018-07-20)

本研究は障害児の年齢(18歳以下・19歳以上),出生順位,妻の仕事の有無に着目して障害者の父親の生活意識の検証を目的とする.方法は質問紙調査が採用され,341人(34〜81歳)の父親から回答が得られた.その結果,18歳以下の障害児の父親が学校・施設行事に積極的に参加し,妻と会話をよくしていたが,障害児をもったことでつらい経験をし,その理由として,子どものしつけを挙げていた.また,これらの父親は,障害者の働く場所の確保を行政に期待していた.出生順位は,障害児が第1子(長男・長女)の場合,その父親は社会的問題をよく考えていた.障害児が第2子(次男・次女)以降の場合,その父親は社会が障害者に対して親切であると感じていた.妻が仕事をしていない場合,父親は子どもの障害について妻とよく話をしていた.一方,妻が仕事をしている場合,父親は母親の働く場所のさらなる確保を行政に期待していた.全体として障害者の父親は,わが子の障害にショックを受けながら,母親の育児に協力をし,仕事に励んでいた.
著者
中村 剛
出版者
一般社団法人 日本社会福祉学会
雑誌
社会福祉学 (ISSN:09110232)
巻号頁・発行日
vol.51, no.3, pp.5-17, 2010-11-30 (Released:2018-07-20)

「貧困は自己責任」といった自己責任論が広がっている.そして,このような考えが,社会的排除を助長している.本稿の目的は,「新たな公的責任」という概念を提起し,それが「自己責任論」を超克する福祉思想であることを論証することにある.まず,先行研究から「新たな公的責任」を形成していくうえで必要不可欠な観点を学ぶ.次に,「公」と「責任」概念の意味を確認し,分析したうえで,両者を止揚する概念として「新たな公的責任」という概念を提起する.続いて,責任の有無を区別する基準,自己責任論の問題点,自己責任論を超克する思想について確認する.そのうえで,「新たな公的責任」が責任の有無にかかわらず,支援が必要な人に支援すべき根拠となる理由を述べる.最後に,「新たな公的責任」の構造を明らかにするとともに,「新たな公的責任」は福祉思想の水準でなければ成り立たないことを説明する.
著者
小山 聡子
出版者
一般社団法人 日本社会福祉学会
雑誌
社会福祉学 (ISSN:09110232)
巻号頁・発行日
vol.61, no.2, pp.104-117, 2020-08-31 (Released:2020-10-03)
参考文献数
34

ソーシャルワーク教育では,実習前後の演習教育においてロールプレイの導入が称揚されているが,具体的な方法提示は不十分である.そこで,演劇/ドラマの手法を適用したコミュニケーション集中授業の授業研究結果を踏まえて,ソーシャルワーク演習教育に示唆するものと留意点に関する考察をした.分析対象は,2015年と2016年に受講した学生の事後リポートである.分析を通して,①演劇/ドラマの手法が提供する「身体への回帰」とセットになった即興性の体験が,「いまここ」の感覚を呼び覚ますこと,②「評価の解体」によって各自が十分に認められる体感が,社会変革につながる価値の増殖を可能にすることがわかった.これらはクリティカル・ソーシャルワークが提唱するクリティカル・リフレクションへの第一歩を助けると考えられる.一方,こうした授業はその要素が演習教育全体に適切に配置されてこそ活かされる.演習教育の今後に向けた課題がクリアになった.
著者
金子 絵里乃
出版者
一般社団法人 日本社会福祉学会
雑誌
社会福祉学 (ISSN:09110232)
巻号頁・発行日
vol.56, no.4, pp.68-81, 2016-02-29 (Released:2018-07-20)

本研究の目的は,患者との死別体験が日常的にある緩和ケアにおいて,援助者(ソーシャルワーカー,看護師,医師)がどのようなグリーフを抱え,グリーフにどのように対応しているかを明らかにすることである.インタビューの結果,援助者は「申し訳なさ」,「無力感」,「喪失の類似体験」,「不安感」というグリーフを抱え,「患者と心理的な距離感を保つ」,「同僚と語り合い肯定的に受けとめ合う」,「患者からの学びを仕事に活かす」,「自覚して揺れ動く」,「他の援助者に託す」ことを通してグリーフに対応していることが明らかとなった.これらの研究結果をもとに,援助者のグリーフとその対応にはどのような共通性があるか,また,ソーシャルワーカーが抱えるグリーフとその対応にはどのような特有性があるかを考察した.