著者
川元 克秀
出版者
一般社団法人日本社会福祉学会
雑誌
社会福祉学 (ISSN:09110232)
巻号頁・発行日
vol.39, no.2, pp.62-82, 1999-01

The purpose of this study is to examine a cross-validity and a reliability of a measurement of "SEKENTEI" for factor analysis of social welfare services. "SEKENTEI" is the level of a person's self-consciousness of others observing one's behavior and endeavoring to meet the perceived norms of behavior. Data used in this study were obtained from 3 types of the populations, the first one was elderly people who participate in educational services, the second one was person attending a class of home-helper, the third one was primary family caregiver. The "SEKENTEI" Index was examined on an immutability of the factor structure and a test-retest reliability. A factor analysis, coefficient Al fa and correlation coefficient was used in this analysis. The results were as follows : 1) On this study, there were 3 cases of the factor structure in the "SEKENTEI" Index. That was 3 factor structure, 4 factor structure and 5 factor structure (eigin value>1.0). 2) The "SEKENTEI" Index of This study was similar to previous studies on the character concerning factor loading of the 12 items. 3) The coefficient Al fa of the "SEKENTEI" Index were approving level (.71〜.77) on this study. 4) On test-retest reliability, the reliability coefficient of the "SEKENTEI" Index were not high level one. By these result, it was suggested that the "SEKENTEI" Index did not have a high level cross-validity and a high level a reliability. Based on these results, it appears that the "SEKENTEI" Index will be a sound measurement of "SEKENTEI", if it is partly revised.
著者
呉 世雄
出版者
一般社団法人 日本社会福祉学会
雑誌
社会福祉学 (ISSN:09110232)
巻号頁・発行日
vol.58, no.2, pp.80-93, 2017-08-31 (Released:2017-09-27)
参考文献数
28

本研究は,韓国の「社会的企業育成法」の成果と課題を明らかにし,日本の社会的企業支援策に示唆を与えることを目的とする.研究方法としては,韓国の社会的企業にかかる経営実態調査および関連資料の再検討を通して現状を把握したうえで,社会的企業経営者へのインタビュー調査を行った.分析結果,育成法の成果としては,①社会的企業への関心の高まり,②自治体による支援策の活性化,③社会的弱者の雇用創出の効果,④民間企業からの協力・支援拡大の四つの大カテゴリーが挙げられた.課題としては,①社会的企業の概念の混同,②雇用の質の問題,③経営の持続可能性の弱さ,④公的支援による自律性の侵害,⑤市場秩序の混乱,⑥制度運用上の管理・監督の問題の六つの大カテゴリーが導き出された.以上の結果を踏まえ,考察では日本の社会的企業支援策への提案を行った.
著者
中尾 竜二 杉山 京 竹本 与志人
出版者
一般社団法人 日本社会福祉学会
雑誌
社会福祉学 (ISSN:09110232)
巻号頁・発行日
vol.58, no.1, pp.99-111, 2017

<p>民生委員における認知症が疑われる高齢者を発見した場合の地域包括支援センターへの援助要請意向とその関連要因を明らかにすることとした.</p><p>A県民生委員児童委員協議会に属する民生委員2,751名を対象に,属性,認知症進行遅延薬に関する知識,認知症の人に対する肯定的態度,地域包括支援センターへの援助要請意向について回答を求めた.統計解析として,まず地域包括支援センターへの援助要請意向について潜在クラス分析を用いて類型化を行った.次いで,各潜在クラスと属性等との関連性について,多項ロジットモデルを用いて検討した.</p><p>潜在クラス分析の結果,四つのクラスが抽出された.また多項ロジットモデルの結果,すべての潜在クラスに「認知症の人に対する肯定的態度」が有意な関連を示していた.</p><p>民生委員における地域包括支援センターへの援助要請意向の特徴は四つに類型化されることが明らかになった.また,地域包括支援センターへの援助要請意向を高めるためには,認知症の人に対する肯定的態度を高めることが重要である可能性が示唆された.</p>
著者
廣野 俊輔
出版者
一般社団法人日本社会福祉学会
雑誌
社会福祉学 = Japanese journal of social welfare (ISSN:09110232)
巻号頁・発行日
vol.55, no.4, pp.43-55, 2015-02

本稿の目的は,川崎バス闘争の背景を先行研究よりも幅広い社会的文脈から検討したうえで,障害者が直面した困難はいかなる価値の対立によって生起したかを明らかにすることである.川崎バス闘争とは,1976〜1978年,川崎市と周辺で生起した車いすのままバスに乗ろうとする障害者とそれを制限しようとする関係者の闘争である.本稿では闘争をもたらした価値の相克を,障害者の立場から検討する.検討の結果は以下のとおりである.第1に,当時の地域社会においては,障害者の世話=在宅か施設で行うものという認識が強く,そもそも障害者の主張が受け止められるまでに至らなかった.第2に,障害者による「あらゆる人が障害者を介護すべき」という主張は特に理解されず,単なる「わがまま」として対立が鋭くなった.第3に,労働環境の悪化を懸念する労働者やそもそも市民や労働者に不信感をもっていた障害者の立場が,闘争をより複雑で困難なものにした.
著者
池田 敬正
出版者
一般社団法人日本社会福祉学会
雑誌
社会福祉学 (ISSN:09110232)
巻号頁・発行日
vol.24, no.1, pp.117-143, 1983-06-30

Social welfare means that every people are equal in the society, which shows that it is realized in the modern society We can prove this because the premodern society, which didn't have social welfare, is characterized by the control of the community and the distinction of the social position. But if we insist on the universal idea of social welfare, we can't help realizing the existence of social welfare in premodern society. It is the first purpose of this writing to clear up this contradiction theoretically and historically through the analysis of political relief and religeous charity in premodern period The second purpose is to clear up the quality of the political relief and religeous charity in Japan The most remarkable fact is that in Europe charity and relief are based on the principle of mutural aid, while in Japan they are not. For example, the word "cantas" in Latin which is the origin of the word "chanty" means "love of one's neighbors" And that shows the religeous practice of mutural aid. While in Japan charity of Buddhism means chanty given by from a person of high position to the common people. Thus in Japan the political relief and religious chanty had nothing to do with and opposed to the mutural aid. This is based on the Asiatic character of the Japanese society, and became the cause of disturbing of the mutural aid to have developped into the public system. Therefore in Japan the system of relieving the distressed in modern period has come to the charity grvin by a ruler, not the mutural aid.
著者
加瀬 裕子 久松 信夫 横山 順一
出版者
一般社団法人 日本社会福祉学会
雑誌
社会福祉学 (ISSN:09110232)
巻号頁・発行日
vol.53, no.1, pp.3-15, 2012

認知症の行動・心理症状(Behavioural and Psychological Symptoms of Dementia ;以下,BPSD)が改善した204事例を収集し,行われた介入・対応についての記述データをカテゴリー化することで,BPSDへの効果的アプローチの構造を探索的にモデル化することを試みた.[介護側のコミュニケーションの改善][健康面への介入・対応][環境面への介入・対応][能力を維持するための課題への介入・対応][家族・介護者状況への介入・対応][事業マネジメントの改善]の6つのカテゴリーが生成された.効果が認められたBPSDの心理社会的要因へのアプローチでは,利用者の役割や社会性を強化するための「場」を調整することの重要性が示唆された.
著者
三谷 謙一
出版者
一般社団法人日本社会福祉学会
雑誌
社会福祉学 (ISSN:09110232)
巻号頁・発行日
vol.32, no.1, pp.147-169, 1991-06-01

This is a study of social welfare services in the age of Occupied Japan. As it is known, those studies were mainly focused on the connection between the Welfare Department and the Public Health and Welfare Department. It is, however, the author's opinion that those studies did not point out the issue of people in need. So, I have used this approach to make up the lack. The approach is a reading of pettions for GHQ, by the Japanese people. Using this approach, I have described the state of some people who fuel into poverty.
著者
岩永 理恵
出版者
一般社団法人日本社会福祉学会
雑誌
社会福祉学 (ISSN:09110232)
巻号頁・発行日
vol.46, no.1, pp.29-39, 2005-07-31

生活保護制度は,「生活困窮者」救済を実現する施策のひとつである.ただし制度の実質的な対象と方法は,行政運営によって決められる.たとえば実際の対象は,ある範囲の保護基準から算出した最低生活費と収入認定額の差から判断されることになっている.本稿は,この安否判定の方法がつくられる経過をたどり,「生活困窮者」選別のしくみを検討するものである.分析では,厚生省が実務担当者に与える「指針」に焦点があてられ,その「指針」をたどる主な資料として雑誌『生活と福祉』が用いられる.結果として,「生活困窮者」を選別するしくみが徐々につくられ,修正が施されつつ維持されてきたようすが実証的に明らかにされた.さらに制度運用上の矛盾を踏まえると,今後,法の運用方法の決定のみでなく,その立案,形成,実施の各場面を含む政策過程を分析する必要が考えられた.
著者
木下 麗子
出版者
一般社団法人日本社会福祉学会
雑誌
社会福祉学 (ISSN:09110232)
巻号頁・発行日
vol.56, no.4, pp.37-51, 2016-02-29

本研究の目的は,地域包括ケアシステムの構築に向けて潜在化が懸念される外国籍住民の福祉的課題を検討し実践課題を明らかにすることである.また,当事者と協働するCBPR (Community Based Participatory Research)を用いてリサーチと実践の循環過程によるコミュニティ・エンパワメントの可能性を考察する.調査は,大阪市生野区A地域において実施し社会福祉サービスの認知状況等に関して,在日コリアン高齢者126人,日本人高齢者104人より回答を得た.分析は文化的背景の相違による変数について把握するために「在日コリアン高齢者」と「日本人高齢者」の集団を目的変数とし,質問項目を説明変数としてロジスティック回帰分析を行った.分析の結果「集い場への関心」「社会福祉サービスの認知度」「介護保険サービス利用不安度」「地域包括支援センター認知度」「生計」「年齢」について関連がみられた.本調査を通じて集い場を活用した福祉アクセシビリティ向上への取り組みが展開されることになった.
著者
米倉 裕希子 山口 創生
出版者
一般社団法人日本社会福祉学会
雑誌
社会福祉学 (ISSN:09110232)
巻号頁・発行日
vol.56, no.4, pp.26-36, 2016-02-29

本研究は,知的障害者のスティグマの特徴および今後の研究動向を明らかにするため,海外の研究をレビューした.PubMedで,「intellectual disability」および「stigma」をキーワードとし,2014年12月までの研究で検索された82研究のうち,関連のない研究を省いた25研究をレビューした.対象研究には,尺度研究,横断研究,介入研究が含まれており,横断研究の対象は知的障害者本人,家族,学生や市民だった.知的障害者の大半がスティグマを経験し,自尊感情や社会的比較と関連していた.家族も周囲からの差別を経験しており,被差別の経験はQOLや抑うつに影響する可能性があった,一般市民における大規模調査では短文事例と障害の認識がスティグマと関連し,介入研究では間接的な接触でも態度の改善に貢献できる可能性が示された.今後は,より効果的な介入プログラムの開発とその効果測定が望まれる.
著者
米倉 裕希子 山口 創生
出版者
一般社団法人 日本社会福祉学会
雑誌
社会福祉学 (ISSN:09110232)
巻号頁・発行日
vol.56, no.4, pp.26-36, 2016

本研究は,知的障害者のスティグマの特徴および今後の研究動向を明らかにするため,海外の研究をレビューした.PubMedで,「intellectual disability」および「stigma」をキーワードとし,2014年12月までの研究で検索された82研究のうち,関連のない研究を省いた25研究をレビューした.対象研究には,尺度研究,横断研究,介入研究が含まれており,横断研究の対象は知的障害者本人,家族,学生や市民だった.知的障害者の大半がスティグマを経験し,自尊感情や社会的比較と関連していた.家族も周囲からの差別を経験しており,被差別の経験はQOLや抑うつに影響する可能性があった,一般市民における大規模調査では短文事例と障害の認識がスティグマと関連し,介入研究では間接的な接触でも態度の改善に貢献できる可能性が示された.今後は,より効果的な介入プログラムの開発とその効果測定が望まれる.
著者
岡本 栄一
出版者
一般社団法人日本社会福祉学会
雑誌
社会福祉学 (ISSN:09110232)
巻号頁・発行日
vol.26, no.2, pp.35-48, 1985-11-25

The concepts of "public" and "private" can be stated respectively (1) statutory social services carried by public agencies, and (2) voluntary social services carried by voluntary citizens, groups, private agencies and organizations. We can also say that, statutory services are "the welfare of public guarantee" while the voluntary ones are "welfare of participation". We need both of them if we want to attain a highly developed stage of welfare society. Volunteer activities today, however, is finding itself in the situation far from the above mentioned dual-poles structure of "public" and "private". Rather, "the administrative logic of centralistic delegation" is governing the whole social service scene. The "public" seems to be controlling not only the contents of voluntary services, but also the training and organization of the volunteers. As a result, many difficulties are arising. I would like to mention following three points as essential to overcome those difficulties. (1) To distinguish what the public sector can do from what cannot do. Then to make citizen's volunteer activities more effective to widen and strengthen the autonomy of the local governments. (2) To clarify the basic characteristics of voluntary activities in welfare services. (3) To emphasize the importance to follow "the principles of independence and cooperation" as well as "the principle of support without control".
著者
越田 明子
出版者
一般社団法人日本社会福祉学会
雑誌
社会福祉学 (ISSN:09110232)
巻号頁・発行日
vol.55, no.3, pp.12-28, 2014-11-30

自治体独自の高齢者福祉政策について理解するために,小規模自治体が運営してきた生活支援ハウスの設置に関する国の政策的意図と自治体による設置判断の関係を明らかにした.国の意図は,生活支援ハウスに関する地域振興・過疎対策関係,老人福祉関係,介護保険関係の公文書から確認した.次にA県の生活支援ハウスを運営している30自治体計41施設の設置状況について継続的調査を行った.国の政策段階には,第I期のゴールドプランによる過疎地域における介護サービスの整備期,第II期の介護保険制度の受け皿期,第III期の地域の実情に応じた調整期の三つがあった.これに対する設置過程の検証から,以下が明らかになった.小規模自治体は,地域固有のニーズから施設を整備し,国の意図に沿わなかった.国が全国を対象とする一般的な政策意図によって制度を運営するのに対して,生活支援ハウスのような個別性の高い施策は,自治体特有の政策判断が働いていた.
著者
菱沼 幹男
出版者
一般社団法人日本社会福祉学会
雑誌
社会福祉学 (ISSN:09110232)
巻号頁・発行日
vol.53, no.2, pp.32-44, 2012-08-31
被引用文献数
1

福祉専門職による地域生活支援において,先行研究では地域支援スキルの弱さが示されているがその影響要因の解明には至っていない.そこで本研究は福祉専門職による地域支援スキルの促進要因を実証的に明らかにしようとするものである.研究方法として,全国500か所の地域で福祉専門職を対象にアンケート調査を行い,地域生活支援スキルに対する意識の実態や影響要因について分析した.その結果,先行研究と同様に地域アセスメントや地域住民との連携に関するスキルの弱さが意識されており,これらを促進する要因として地域担当制の有効性や担当地域人口規模として2万人が参考値となることが明らかとなった.しかし一方で地域担当制はサービス開発の支障要因となることも明らかとなり,今後コミュニティソーシャルワークを展開していくシステムを構築するためには,地域担当制と広域運営管理体制の二層構造とする必要性があることを提言した.