著者
藤本 美子
出版者
一般社団法人日本社会福祉学会
雑誌
社会福祉学 (ISSN:09110232)
巻号頁・発行日
vol.35, no.1, pp.77-91, 1994-06-15

The europian gild of the medieval age has tended to stress the exclusionary aspects of geselschaft, but once the full dynamic range of social-religious activities of the gild in medieval society is considered, the significance of gemeinschaft will become apparent. Namely, gemeinschaft imbues the gild with ethical characteristics and provides for historical expansion, while at the same time giving it tremendous, chameleon-like adaptability enabling it to fulfill the new subsidiary roles brought about by the circumstances of the times. Moreover, the gild's dynamism as seen in its social flexibility endows it with a vivid, almost life like quality. By retaining some aspects of geselschaft, but including more toward gemeinschaft it is able to better orient itself for the possibility of effecting social change in the face of genossenschaft. This thesis examines the distinctiveness in historical research of the unifying aspects of the social-religious gild, which assisted in the prevention of the decline, and fostered a sense of community in the city of Coventry, and which additionally moved to revolutionize the parish gild in London from the late medieval age to the early period of the modern age. In further explores the possibility of adaptation of the gild to contemporary intermediate organizations to create subsidiary networks for promotion of social welfare within the nation, the market and various intermediate organizations.
著者
増井 香名子
出版者
一般社団法人日本社会福祉学会
雑誌
社会福祉学 (ISSN:09110232)
巻号頁・発行日
vol.53, no.3, pp.57-69, 2012-11-30

本研究は,DV被害者が「暴力のある生活」から「暴力のない生活」へ自らの状況をどのように変化させるのか,被害者が加害者から「逃れる」「離れる」という行動のプロセスに焦点づけ,そのプロセスと実現に導く諸要素を明らかにし,支援のあり方を検討することを目的とし,元DV被害者へのインタビューを基に,M-GTAを用いて分析を行った.分析の結果,被害者は「決定的底打ち実感」をエネルギーとし<行動する主体としての自分の取り戻し>を行うなかで<決意行動をつなぐ他者存在の獲得>をし,<脱却の不可欠資源の確保>に至る.それらは一方向のプロセス的側面をもつが,一方で相互作用し<「パワー」転回へのスパイラル>を生み出していた.さらに,行動のプロセスのなかで被害者は<超自己の感得>をし,<自己のよみがえり>を経験していた.暴力関係から「脱却」する行動のプロセスは「パワー」転回のプロセスである.被害者の決意と行動をつなぐための支援が重要であると示唆された.
著者
一瀬 早百合
出版者
一般社団法人日本社会福祉学会
雑誌
社会福祉学 (ISSN:09110232)
巻号頁・発行日
vol.52, no.2, pp.67-79, 2011-08-31

地域療育システムが整備され,20年余り経過している.その前提には「障害の早期発見・早期療育」が望ましいものであるという認識がある.本稿では,乳児期に発見される障害に限定し,早期の段階に特定した母親の変容プロセスを明らかにした.研究方法としては,わが子が障害であるという経験をした母親の感情や認識,他者との相互作用に焦点をあてるため質的研究法を採用した.早期の段階の母親の経験とは,《自己のポジショニング》の揺らぎをめぐる物語であった.母親の《自己のポジショニング》とは,自己のイメージという<自己>そのものと,自己と他者,広くとらえれば自己と環境との接点である<関係>の2つを包含するものであった.この変容プロセスには「再生」「逃避」「獲得」「境界」という4つのストーリーが見いだされた.
著者
小山 聡子
出版者
一般社団法人日本社会福祉学会
雑誌
社会福祉学 (ISSN:09110232)
巻号頁・発行日
vol.52, no.2, pp.17-31, 2011-08-31

ミクロレベルのソーシャルワークや心理臨床アプローチに寄せられる各種の批判を踏まえて,社会福祉教育における相談援助演習がそのカリキュラム冒頭で強調する「自己理解と他者理解」「他者とのコミュニケーション能力」等の涵養につき,今後のあり方を探るため,(1)各接批判動向を整理し,(2)ソーシャルワーク教育に果たす演劇的手法の意味を確認したうえで,(3)A女子大学社会福祉学科人間関係コース導入授業で演劇的手法を取り入れたグループワーク実践の結果を分析した.社会構成主義,障害理解の社会モデル,臨床心理批判等を踏まえるなら,導入の授業場面で起こった,(1)認知と体感の統合,(2)評価なしの空間における自由な振る舞いの発見を,単に個々人の気づきや変容志向のみに還元しないことが重要である.演劇的手法を取り入れたグループワークが,大局ではソフトな集団管理と価値の押しつけにならないよう,変わるべき制度のあり方とセットで論じることをはじめとする教育実践への示唆を得ることができた.
著者
三輪 清子
出版者
一般社団法人日本社会福祉学会
雑誌
社会福祉学 (ISSN:09110232)
巻号頁・発行日
vol.53, no.2, pp.45-56, 2012-08-31

わが国では,低迷を続けてきた里親委託が近年徐々に増加し始めている.なぜ里親委託に変化が生じたのか.本稿では,この変化を児童虐待の増加の直接的な効果,間接的な効果(児童福祉司の増員が図られ,児童福祉司の役割過重が軽減された効果)と考える2つの仮説を設定し,2000〜2009年の都道府県政令指定都市を単位としたパネルデータを用いて検証を行う.分析の結果,2つの仮説が支持された.特に児童福祉司増員の効果は,児童虐待の直接的な増加より大きな効果をもつことが示された.ただし,そのすべての効果が役割過重の軽減化によって説明されたわけではなかった.児童福祉司の増員は,増加する児童虐待への対応を図ったものであるが,これによって児童福祉司1人当たりの相談対応件数の減少のみならず里親担当児童福祉司の配置などが実現し,それがその後の里親委託の増加という意図せざる効果をもたらした可能性がある.
著者
三輪 清子
出版者
一般社団法人日本社会福祉学会
雑誌
社会福祉学 (ISSN:09110232)
巻号頁・発行日
vol.52, no.2, pp.43-53, 2011-08-31

日本で社会的養護を受ける子どもは,その9割が施設に委託され,里親に委託される者は1割にすぎない.この傾向は戦後から現在に至るまでほぼ一貫して示されている.なぜ里親委託はこれほどまでに低調なのだろうか.本稿の目的は,里親委託と施設委託の関係の推移をマクロデータを用いて計量的に検討し,この問題について考察することにある.まず時系列データから里親委託と施設委託の長期的動態を確認後,先行研究による「施設委託が優先された結果として,里親委託は伸展しなかった」という仮説の検証を試みる.時系列回帰分析の結果,施設の定員充足率は里親委託率に有意な負の効果を有しており,仮説を支持する結果が得られた.同時に,残差分析の結果から,1994〜2000年ごろの時期は他の時期以上に里親委託が抑止された時期であり,逆に2003年前後の時期は予測以上に里親委託が伸展した特殊な時期であることが示された.
著者
津久井 康明
出版者
一般社団法人日本社会福祉学会
雑誌
社会福祉学 (ISSN:09110232)
巻号頁・発行日
vol.55, no.3, pp.66-77, 2014-11-30

本研究では,1999年に設立されたセルフヘルプ・グループ(以下,SHG)ユニークフェイスの機能の変遷を明らかにし,SHGの機能をめぐる研究に新たな枠組みを提示することを目的とした.その際,「内へのセルフヘルプ」と「外へのセルフヘルプ」という分析枠組みを用いて,SHGユニークフェイスの活動の分析を行った.その結果,SHGユニークフェイスが,参加者の普遍的なニーズに対応する機能を前提としつつ,個別的なニーズの間のバランスを保ちながら,SHGの機能を調整していったことが明らかになった.また,SHGユニークフェイスに見られたような機能の変遷は,ほかのSHGへも適用できる可能性があることが示唆された.
著者
津久井 康明
出版者
一般社団法人 日本社会福祉学会
雑誌
社会福祉学 (ISSN:09110232)
巻号頁・発行日
vol.55, no.3, pp.66-77, 2014

本研究では,1999年に設立されたセルフヘルプ・グループ(以下,SHG)ユニークフェイスの機能の変遷を明らかにし,SHGの機能をめぐる研究に新たな枠組みを提示することを目的とした.その際,「内へのセルフヘルプ」と「外へのセルフヘルプ」という分析枠組みを用いて,SHGユニークフェイスの活動の分析を行った.その結果,SHGユニークフェイスが,参加者の普遍的なニーズに対応する機能を前提としつつ,個別的なニーズの間のバランスを保ちながら,SHGの機能を調整していったことが明らかになった.また,SHGユニークフェイスに見られたような機能の変遷は,ほかのSHGへも適用できる可能性があることが示唆された.
著者
下西 さや子
出版者
日本社会福祉学会
雑誌
社会福祉学 (ISSN:09110232)
巻号頁・発行日
vol.46, no.1, pp.3-15, 2005
被引用文献数
2

児童虐待防止運動が始まったのは「最近のこと」とされているが,わが国では,すでに明治末期に初めての取り組みが開始されている.「家」制度が存在し,親子が支配と服従の関係にあった当時において,「子どもの権利思想」の台頭は,児童虐待を許されないこととして認識させることに大きく貢献したと考えられる.「子どもの権利思想」では,子育てを親の義務・子どもの権利とする一方,親に優先するものとして「国家」を位置づけ,イノセントな存在である子どもを保護し,適切な家庭教育をすることが,社会防衛上も重要と主張した.本稿では,児童虐待がこのような文脈の延長で語られたことによって人々の関心を集めることができたこと,また,家族国家観とも折り合うことができたことを指摘し,当時の児童虐待防止,および,子どもの権利思想が有していた歴史的意義と限界について論じている.Although it is generally assumed that the start of the child abuse prevention movement in our country is "recent", the first approach had already begun before the end of the Meiji Era. It is thought that the rise of "the concept of rights of the child" greatly contributed to the recognition that child abuse could not be permitted even when, under the "Ie" system, the relationship between parent and child was that of ruler and ruled. Under "the concept of rights of the child" the upbringing of the child was the parents' duty and the child's right, but the "Nation" was located over the parents for the protection of social order, protecting the innocent child and defining appropriate family education. In this paper it is pointed out that discussions of this topic resulted in the subject of child abuse gaining considerable attention, and the historical meaning and limits of the "concept of rights of the child" are discussed, as it found a place of importance within the concept of the patriarchal state.
著者
赤沼 麻矢
出版者
一般社団法人日本社会福祉学会
雑誌
社会福祉学 (ISSN:09110232)
巻号頁・発行日
vol.48, no.3, pp.42-54, 2007-11-30

精神障害者の社会的入院解消が叫ばれるなか,わが国では近年,精神障害者退院促進支援事業が全国に広がっている.本論文の目的は,退院促進支援を受けた精神障害者29人の個別事例を,ブール代数アプローチを用いて分析し,退院に至った事例と退院に至らなかった事例それぞれの,退院に関連する要因を探索的に明らかにすることである.従属変数に「退院」,独立変数に「年齢」「性別」「総入院期間」「退院までの訓練期間」を設定し,退院促進支援事業において「退院」という結果が生じるには,4つの独立変数がどのように組み合わさっているのかを分析した.その結果,退院には約6か月以上の訓練期間が必要条件であること,年齢や入院期間は必要条件あるいは十分条件ではないこと,が明らかとなった.また一方で,性別によっては退院への条件組み合わせに差異が示された.
著者
三原 博光
出版者
一般社団法人日本社会福祉学会
雑誌
社会福祉学 (ISSN:09110232)
巻号頁・発行日
vol.51, no.4, pp.153-162, 2011-02-28

本研究の目的は,学生による障害者およびその家族の余暇支援の実践例を紹介することである.方法として,県立広島大学でのビーチバレーボール・食事交流会の取り組みが取り上げられた.2009年,学生,障害者とその家族,施設職員など約100人がこの交流会に参加した.ビーチバレーボールは大学の体育館,食事交流会のカレーの調理は調理実習室で行われた.ビーチバレーボール終了後,参加者全員でいっしょに食事を行った.アンケート調査が学生,障害者家族,施設職員に対して実施された.障害者には,聞き取り調査が行われた.これらの調査から,参加者のほとんどが交流会に満足をしていたことが示された.満足した理由として,参加者同士の交流や知り合いになれたことが挙げられていた.福祉行政関係者もこの交流会へのボランティアとしての参加の希望を示し,大学,障害者家族,行政が一体となって,今後も交流会の継続が期待された.
著者
新保 祐光
出版者
一般社団法人日本社会福祉学会
雑誌
社会福祉学 (ISSN:09110232)
巻号頁・発行日
vol.51, no.4, pp.43-56, 2011-02-28

本稿は,利用者と専門職の協働による合意形成について検討した.具体的には,退院支援における「状況的価値」形成を目的とした合意形成の事例検討を行った.「状況的価値」形成は,(1)状況の定義のすりあわせ,(2)価値の媒介,(3)根拠の精度にとらわれない選択,(4)そのつど性の保証,という4つの過程を重視する.研究方法は,「状況的価値」形成を行った自験例を,シングル・システム・デザインを用いて検討した.協働については「ネットワーキングの総合性及び包括性」(福山2009)の枠組みを用いて検討した.その結果,「状況的価値」形成は,相互理解に関わる新たな気づき,価値と行動の変容,目的の共有,相互協力,連帯感の強化をもたらした.これらは,利用者支援システムのリスクや個別の機能の限界を軽減するだけでなく,その機能を高める良循環をもたらし,多様な価値を包含する利用者と専門職の協働を促進することが示された.
著者
永野 咲 有村 大士
出版者
一般社団法人日本社会福祉学会
雑誌
社会福祉学 (ISSN:09110232)
巻号頁・発行日
vol.54, no.4, pp.28-40, 2014-02-28

本研究では,社会的養護措置解除後の若者(以下,退所者)の生活実態とその困難さの数量的かつ正確な把握を目指し,4つの退所後実態調査の二次分析を行った.またこれらの調査の実態把握率の課題を克服するため,施設代表者に記入を依頼するアンケート調査を実施し一次データの収集・分析を行った.その結果,退所者は同年齢層(15〜24歳)の18〜19倍の生活保護受給率であり,司法や医療,福祉制度の介入を必要とする退所者も少なくないことが明らかとなった.この状況から,退所者はデプリベーションともいえる生活困難に陥っている可能性が示唆された.進学状況の格差,高い正規雇用率と高い生活保護受給率等相反する状況もみられ,困難が集積する層があると推測された.特に18歳未満での退所は住居・職業ともに不安定になる傾向が示唆された.社会的養護は退所後の生活実態を把握し,入・退所者のライフチャンス保障の方策を講じるべきである.
著者
池埜 聡
出版者
一般社団法人日本社会福祉学会
雑誌
社会福祉学 (ISSN:09110232)
巻号頁・発行日
vol.42, no.2, pp.54-66, 2002-03-31

1980年代以降,外傷体験に起因する心的外傷後ストレス障害(PTSD)に関する研究が数多く報告されるようになった。しかし,トラウマの影響はPTSDの枠組みだけではとらえきれず,とくに長期的影響に関する研究は初期段階にあるといえる。本研究は,トラウマの長期的影響のひとつとして「生存者罪悪感」の問題を取り上げる。そして筆者の臨床および調査経験を踏まえ,生存者罪悪感の概念的枠組みとソーシャルワーク実践のあり方について提言することを目的とする。具体的には,1)生存者罪悪感の概念的枠組みを形成する実存的罪悪感と実体的罪悪感の内容と分類,2)理論,実証,臨床の各側面における先行研究の整理,3)生存者罪悪感への援助方法論,そして4)考察といった項目にまとめて報告する。とくに,援助方法論では,認知療法の枠組みに加えて,1)援助関係構築,2)アセスメント法,3)援助目標の原則,4)セルフヘルプグループの形成と活用,4)ソーシャルワーカーの自己覚知,そして5)その他の留意点といったソーシャルワーク機関における実践的示唆を示す。また,考察では今後の研究課題とソーシャルワークの役割について提言をまとめる。
著者
今井 小の実
出版者
一般社団法人日本社会福祉学会
雑誌
社会福祉学 (ISSN:09110232)
巻号頁・発行日
vol.40, no.1, pp.77-95, 1999-06-30

In 1926, "Boshi Fujyo Hou Seitei Sokusinkai" was established by Sirou Fukushima who was the chairman of "Fujyo Shinbun". It was the first movement body in Japan which aimed at enacting a public assistance law for mothers and children. The paper is a part of a study which will clarify the process of enacting "Boshihogo hou" (1937) from the view point of the movement. That is, I assume that the starting point of the movement was the controversy known as "Bosei Hogo Ronsou" (1918-1919). In this controversy, Raityou Hiratsuka and Waka Yamada, influenced by Ellen Key, feminist thinker in Sweden, insisted on thoughts of maternal protection. I assume the thoughts developed into the movement, and as the result, the law was enacted even though it had a phase which was utilized for the purpose of securing human resourses during the war. Therefore, this paper intends to demonstrate "Inherent Relevancy" between "Bosei Hogo Ronsou", following the genealogy of thoughts of the maternal protection and "Boshi Fujyo Hou Seitei Sokusinkai".
著者
平野 寛弥
出版者
一般社団法人日本社会福祉学会
雑誌
社会福祉学 (ISSN:09110232)
巻号頁・発行日
vol.48, no.4, pp.5-16, 2008-02-29

本稿では,T.H.マーシャルの論文「福祉資本主義の諸価値問題」およびその「追論」(以下,「ハイフン連結社会」論と総称)を再検討し,その現代的意義について考察した.具体的には,「ハイフン連結社会」論を社会システム論の観点から再解釈し,通説の妥当性を検証したのち,そこで採用されている分析枠組みを用いて,現代の経済一福祉間の関係について検討した.その結果,「ハイフン連結社会」論は価値選択を通じての構造問題の許容化を論じた社会体制論として理解される.したがって,価値問題のみを扱っているとする通説は妥当性を欠いている.また,経済-福祉間の関係が構造的に変容した現代では,構造のあり方までもが価値問題の盤上に上げられる点で,以前に比べ価値問題が先鋭化し,その重要性も増大している.その意味で,マーシャルの議論は現代においてもなお大きな意義を有している.
著者
西原 尚之
出版者
一般社団法人日本社会福祉学会
雑誌
社会福祉学 (ISSN:09110232)
巻号頁・発行日
vol.46, no.3, pp.87-97, 2006-03-31

本論は経済的不利を伴う家庭で生活する不登校児の実態を明確にし,支援の方向性を示唆した研究である.そのため最初に福岡県筑豊地域の民間フリースクールに通級する子どもたちの現状を紹介した.この地域の生活保護率は全国の10倍以上に上り,通級児たちの家庭もその過半数が生活保護世帯である.また彼らの多くは学力が大幅に低下しており,たとえ学校に復帰してもこのうち7割が通常の授業についていけない状況にある.またひとり親家庭(42%),親が精神または知的障害を伴っている家庭(25%)も多い.本論ではこうした社会的不利をかかえる家庭で生活する不登校児たちの中心課題を教育デプリベーションと位置づける.そのうえで必要な支援として,多層な補償教育システムの配備を提言した.また補償教育システムが有効に機能するためには親との協働が欠かせないという視点から,家族に対するアプローチについても検討している.
著者
渡部 克哉
出版者
一般社団法人日本社会福祉学会
雑誌
社会福祉学 (ISSN:09110232)
巻号頁・発行日
vol.51, no.1, pp.18-28, 2010-05-31

本論文では,国会会議録や官庁の資料を中心に新聞記事や雑誌記事などで補いながら,寡婦(寡夫)控除の変遷をたどり,寡婦と寡夫の要件の差異および寡夫控除の是非に関する議論におけるジェンダー観を考察した.寡婦(寡夫)控除は寡婦については1951年,寡夫についても要望が高まるなかで1981年に創設された.要件の差異は,寡夫は寡婦に比べ,配偶者との死別や離別によって経済的な影響を被ることは少なく,収入も多いという想定から設けられたと推測された.つまり,寡婦(寡夫)控除の要件の差異,さらには寡夫控除の是非に関する議論も,「男は仕事,女は家庭」というジェンダー観を反映していたといえる.最後に,寡婦(寡夫)控除が廃止されたとしても,ひとり親家庭に対する所得保障は依然として必要であり.また「男女の役割の平等」を促進することも重要であると論じた.