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著者
高山 恵理子
出版者
一般社団法人 日本社会福祉学会
雑誌
社会福祉学 (ISSN:09110232)
巻号頁・発行日
vol.61, no.3, pp.221-230, 2020-11-30 (Released:2021-02-09)
参考文献数
60
著者
野口 啓示 高橋 順一 姜 民護 石田 賀奈子 千賀 則史 伊藤 嘉余子
出版者
一般社団法人 日本社会福祉学会
雑誌
社会福祉学 (ISSN:09110232)
巻号頁・発行日
vol.60, no.3, pp.28-38, 2019-11-30 (Released:2020-06-16)
参考文献数
21

本研究の目的は,里親養育支援の実態を明らかにするとともに,その支援が里親養育支援に対する満足度にどのような影響を与えているのかについて分析することである.全国の里親家庭4,038カ所を対象に郵送法による質問紙調査を実施した.里親養育支援の実態を探索的因子分析した結果,「里子が委託される前の里親への養育支援状況」を構成する因子として「委託前支援」と「未委託里親への支援」の2因子が抽出,また,「里子が委託されてからの里親への養育支援状況」を構成する因子として「里子のニーズと里親の意向を尊重した里親子支援」,「里親研修」,「里親養育をささえるつながりづくりの支援」,「不調時の危機介入」,「レスパイト」の5因子が抽出された.また,得られた因子が里親の満足度にどのような影響を与えているのかを重回帰分析したところ,「里親養育をささえるつながりづくり支援」と「委託前支援」のみが貢献していた.
著者
夏堀 摂
出版者
一般社団法人 日本社会福祉学会
雑誌
社会福祉学 (ISSN:09110232)
巻号頁・発行日
vol.44, no.1, pp.23-33, 2003-07-31 (Released:2018-07-20)
被引用文献数
5

本稿では,障害児の親がになわされてきた「親役割」を明らかにし,見直すための作業の端緒として,「親の障害受容」を1つの鍵概念とし,現代日本における「障害受容」論の2つの主要な流れである「共同療育者」論と「認識変容」論について検討した.前者は親が「共同療育者」としての役割を果たすために,後者は障害児の「代弁者」となるための「認識変容」として,「受容」を位置づけるものである.これらの検討を通じて,それぞれの研究のなかに埋め込まれた「望ましい」とされる親像が専門家や研究者によって描かれ,メッセージとして発信されてきたことが明らかになった.
著者
角森 輝美 山口 洋史
出版者
一般社団法人 日本社会福祉学会
雑誌
社会福祉学 (ISSN:09110232)
巻号頁・発行日
vol.53, no.3, pp.46-56, 2012-11-30 (Released:2018-07-20)

本研究の目的は,次の2点を解明することにある.男性への視点を加味した,親性の力=親力が育つための支援赤ちゃんの泣きへの対処法の支援を行う基礎資料のために,対児感情と,赤ちゃん泣き声の認知が,妊娠前期,後期の父親と母親初産と経産で違いがあるかまた,赤ちゃんの泣きの生起原因を妊娠期の父親母親がどう推察しているかを明らかにすることである.その結果,初産母親のほうが経産母親より対児感情が葛藤状態にあり,赤ちゃん泣き声イメージでも回避的で葛藤状態が高かった.初産父親は対児感情の葛藤が母親より高く,経産父親は対児感情の葛藤と,泣き声イメージの葛藤が母親より高く,接近感情は母親より低かった.初産父親と母親は,経産に比べ,赤ちゃんが泣く理由として「抱っこしてほしいとき」とした人が少なかった.母親だけでなく父親へも,乳児との接触機会の提供や,赤ちゃんの泣きへの対処法の支援が必要と考える.
著者
石川 時子
出版者
一般社団法人 日本社会福祉学会
雑誌
社会福祉学 (ISSN:09110232)
巻号頁・発行日
vol.48, no.1, pp.5-16, 2007

本稿は,従来社会福祉においてパターナリズムという語が,自律を抑圧すると否定的に集約されがちなことから,その概念と正当化基準を検討し再考したものである.先行研究からは5つの正当化基準を導き,近年は抑圧を回避すると考えられている「自律を尊重するパターナリズム」が論じられる傾向にあることを明らかにした.この基準は,被干渉者の個別性や自律を重視する社会福祉においても,親和性の高い基準といえる.しかし,通常パターナリズムとは批判的に扱われるため,その批判がどのような思想に基づいているのかを3点に要約した.パターナリズムを必要と考える場合と批判的にとらえる場合の相違点は自律の解釈にあるといえる.最後に,自律を尊重するパターナリズムの論には,自律概念の多義性と自律概念に内在しうる価値判断によって,抑圧的に作用する場合もあり,パターナリズムの正当化基準においては十分とはいえないことを明らかにした.
著者
天畠 大輔
出版者
一般社団法人 日本社会福祉学会
雑誌
社会福祉学 (ISSN:09110232)
巻号頁・発行日
vol.60, no.4, pp.28-41, 2020

<p>本研究の目的は,兵庫青い芝の会会長澤田隆司の介護思想とその実践について検討し,その問題点を浮かび上がらせることで,いまだ解明されていない「発話困難な重度身体障がい者」の介護思想の枠組みを模索することである.</p><p>はじめに,青い芝の会の活動の中心を担った横塚晃一の主張に着目し,青い芝の会の思想である「健全者文明の否定」や「健全者手足論」について考察する.次に,横塚の思想に影響を受けた澤田がどのような実践を行っていたのかを整理する.次に,特に重度の発話障がいを抱えていた澤田の,青い芝の会の介護思想を実践することへの限界と課題に言及する.また,介護者が兵庫青い芝の会会長という属性による解釈を行ったことから,両者の間に生じた問題を明らかにする.最後に,本研究の結論として,澤田独自の介護思想とその実践から,「発話困難な重度身体障がい者」における介護思想を考察する.</p>
著者
永野 叙子
出版者
一般社団法人 日本社会福祉学会
雑誌
社会福祉学 (ISSN:09110232)
巻号頁・発行日
vol.55, no.3, pp.78-93, 2014

本研究では,市民後見人の役割を明らかにすることを目的とした.研究方法は,半構造化面接法によって得た各種情報を集計し分析すると同時に,発言を逐語記録から記述し,エスノグラフイーを用いて再構成した.その結果,市民後見人の役割として,(1)定期的な面談によって被後見人(以下,本人)の状況把握や本人の希望を確認する,(2)本人にとっての最善を見いだす,(3)本人の能力に働きかけ発揮できるよう環境を調整する,(4)身上監護が適切に行われているかを見極める,(5)本人の権利擁護に取り組む,(6)生活者の視点で後見活動に付随したインフォーマルな支援を行う,などの状況が確認された.加えて,個人としての存在が認められ価値がある人として大切にされるよう,その人にとっての最善を共に考え,その実現に向けて支援すること,また,成年後見制度を提供する立場で意見し,より良い制度となるよう提言する役割を担っているのではないかと考えられた.
著者
衣笠 一茂
出版者
一般社団法人 日本社会福祉学会
雑誌
社会福祉学 (ISSN:09110232)
巻号頁・発行日
vol.49, no.4, pp.14-26, 2009

本論文は,ソーシャルワークの価値理論の構造的な問題を明らかにしようとするものである.従来からソーシャルワークの価値である「個人の尊厳の尊重と保障」を具象化するために「自己決定の原理」が重要視されてきたが,近年はこの原理を実現するうえでの倫理的ジレンマも多くみられる.本論文では,こうした実践のジレンマを方法や技術といった機能論的な理解ではなく,ソーシャルワークの価値理論が構造的に内包している問題に端を発するものであると考え,その問題構造を論証する・具体的には,ソーシャルワークの価値についての議論が多くみられる1990年代以降のアメリカとイギリスにおける先行研究をレビューし,そこから整理された価値の理論構造をカント哲学を中心とする近代社会思想に準拠して分析することにより,特に自己決定の原理が有している構造的問題を解明し,実践に寄与しうる新たなソーシャルワークの価値理論を,ソーシャルワーク実践を帰納的な方法で科学的に分析することにより構築する必要性を提起する.
著者
平塚 良子
出版者
一般社団法人 日本社会福祉学会
雑誌
社会福祉学 (ISSN:09110232)
巻号頁・発行日
vol.32, no.2, pp.105-128, 1991-10-15 (Released:2018-07-20)

Value is a significant theme for the profession of Social Work. It has been considered a central base of social work practice. But there is not a clear consensus of social work values in these days. In this paper, I review some articles on values in social work and discuss about values in frameworks of social work practice, functions of values, levels of values, professional values and so on, in social work. Through this process I describe the nature of value, the mechanism offiltered values in social work practice and design for a value system of social work. And I point out tasks of the study on values in social work. The value system consists of social welfare values and social work values, which is influenced by societal values, group values and individual values. Social worker produce values in one's practice, which are consistent with client's values, conflicting with professional values and and other values, using knowledge and skills. But values are invisible, so we can only guess them. Therefore value has risk. So we will need making a tool of the analysis of values as a profession of social work in order to have responsibility to clients.
著者
中山 忠政
出版者
一般社団法人 日本社会福祉学会
雑誌
社会福祉学 (ISSN:09110232)
巻号頁・発行日
vol.40, no.1, pp.271-286, 1999

The facilities for children with autism are the only welfare service peculiar to persons with autism in our country. This research aimed to clarify the development of the welfare for persons with autism by analyzing process of installation and institutionalization of the facilities for children with autism. At first, the facilities for children with autism were set up as facilities specific to autism in 1969. Later, it was reexamined what the facilities for children with autism should be like on ground of various problems in management of the facilities for children with autism. The discussion to emphasize "Realistic countermeasure" which is that an intellectual handicaps accompanied autism was performed there. Thus, the facilities for children with autism were turned over in legal facilities, and assumed to be a kind of the facilities for children with intellectual handicaps. The principle of the treatment in the intellectual handicaps frame to persons with autism which ran here now established.
著者
三島 亜紀子
出版者
一般社団法人 日本社会福祉学会
雑誌
社会福祉学 (ISSN:09110232)
巻号頁・発行日
vol.57, no.1, pp.113-124, 2016-05-31 (Released:2019-02-15)
参考文献数
47

2014年7月に採択された「ソーシャルワークのグローバル定義」で,ソーシャルワークは「学問」であると初めて明記された.その「知(knowledge)」は学際的なものであり「ソーシャルワーク固有の理論的基盤および研究」に加え,「他の人間諸科学の理論」も援用するとされる.さらに「地域・民族固有の知(indigenous knowledge:IK)」もこれらと同等の一つの知と明記された.本稿ではほかの学問分野におけるIKに関わる議論も参考にしながら,これが重視された背景や日本における展開を考察する.ソーシャルワークの知の変化の背景として,ソーシャルワークには先住民族をはじめ社会的弱者を迫害した歴史があったことを真摯に受け止めなければならないという機運が高まったこと,ソーシャルワークの知はサービス利用者と共に生み出すことをよしとする風潮が生まれたこと,西洋的な価値観に基づくソーシャルワークへの批判などがあり,これが新定義に反映されたといえる.
著者
堀 真紀子
出版者
一般社団法人 日本社会福祉学会
雑誌
社会福祉学 (ISSN:09110232)
巻号頁・発行日
vol.42, no.1, pp.68-76, 2001

少子化が進むなか,政策レベルにおいて育児支援策拡充の議論が活発になされている。本稿は,このような議論がなされる背後には国家が想定する一定の家族モデルが存在し,その家族モデルは政策に反映するという問題意識に基づいて,既存の児童福祉政策における家族モデルの抽出を試みたものである。ここでは,単親家庭の児童養育に対する経済的援助制度を分析の対象とし,諸外国の制度との比較を通してその特徴をとらえ,その特徴に着目して国家の指向する家族モデルを検討している。この分析によって,児童扶養手当制度が前提とする家族モデルは性別役割分業に基づく近代家族モデルであり,この家族モデルから外れた家族を制度の対象としているということが明らかとなった。また,近代家族モデルがもたらしている問題点や制度の潜在的機能,私的扶養義務を追及する制度をもたない意味などについての考察も行った。
著者
堅田 香緒里
出版者
一般社団法人 日本社会福祉学会
雑誌
社会福祉学 (ISSN:09110232)
巻号頁・発行日
vol.46, no.1, pp.16-28, 2005-07-31 (Released:2018-07-20)

「脱工業化」社会の貧困の多くも,従来の貧困同様,社会的要因に起因するものであるが,それへの社会的対応の一つとしての再分配が十全には行われていない.こうした状況が許される背景として,特定の言説の影響が考えられる.本稿ではまず,そうした言説の一つとしてアンダークラス言説を取り上げ,それが再分配に与える影響について考察している.その結果,アンダークラス言説は,アンダークラスをアブノーマルなものとして構成することによって,再分配を脱正当化しているということが明らかになった.続いて,今日,十全な再分配を要求し得るアプローチの一つとして,ナンシー・フレイザーの「再分配と承認」アプローチを検討している.その結果,彼女のアプローチは,経済的な再分配と象徴的な承認という二側面を包含している点および承認の対象を地位に求めている点において,十全な再分配の要求ないし貧困の政治にとって有用であることが確認された.
著者
松宮 透高 八重樫 牧子
出版者
一般社団法人 日本社会福祉学会
雑誌
社会福祉学 (ISSN:09110232)
巻号頁・発行日
vol.53, no.4, pp.123-136, 2013-02-28 (Released:2018-07-20)

メンタルヘルス問題のある親による虐待事例への支援においては,児童福祉と精神保健福祉連携が不可欠であるが,実際には不十分な状況にある.本研究は,その要因のひとつと考えられる両領域間の相談援助職の認識を明らかにすることを目的として,児童福祉施設および相談機関の相談援助職と精神科医療機関に所属する精神保健福祉士を対象に,当該事例に対する関与実態と認識についての質問紙調査を行った.その結果,当該事例について相談援助職間で認識の差異があることが明らかになった.またその背景には,精神保健福祉士の当該事例への関与機会の乏しさ,相互の領域に関する研修の乏しさなどがみられた.こうした不十分な連携と支援プログラムの乏しさのなかで,児童福祉の相談援助職は強い困難感やストレスを抱きながら当該事例への支援を多く担っていた.研修体制の拡充や適切な人員の配置により,支援環境の整備と両分野における認識の共有を図る必要があるといえる.