著者
榊原 真奈美 野添 篤毅
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.61, no.1, pp.22-27, 2011-01-01

1990年以降,医学分野では診療レベルにおいて科学的根拠に基づく医療(Evidence-based Medicine:EBM)が普及し,その考え方はEvidence-based Librarianship(EBL)/Evidence-based Library and Information Practice(EBLIP)として図書館情報学分野にも取り入れられた。本論文では,EBL/EBLIPにおける情報学的研究の例として,国内外の医学研究における利益相反(Conflict of interest:COI)調査を取り上げて概観する。医学研究分野において,COIは研究の公正さや透明性,ひいては医療消費者の生命や健康に関わる重大な問題となっている。海外では医学研究とCOIとの関連性を実証的に検証した研究が数多く行われており,これらを整理,展望すると共に,COI研究の問題点と今後の課題を考察する。
著者
伊藤 裕之
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.61, no.9, pp.349-354, 2011-09-01

インターネット上に点在する学術情報資源を効率よく検索するシステムに対する需要が年々高まっている。その背景には,Googleをはじめとするサーチエンジンが学術分野へ広く浸透していることが挙げられるだろう。学術情報資源を効率よく検索するシステムの開発は以前から進められてきたが,システムを提供する側の思惑と,利用者側の期待との間には大きな隔たりがあることが浮き彫りになっている。本稿では,学術情報資源を効率よく検索するシステムとして横断検索システムと統合検索システムを取り上げ,両者の特徴および違いについて整理する。あわせて,統合検索システムの一例として,Ex LibrisのPrimoとPrimo Centralの特徴および取り組みについて述べる。
著者
寺井 仁
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.61, no.1, pp.15-21, 2011-01-01

Webに代表される電子的情報源と書籍に代表される物理的情報源からなるハイブリッドな情報環境は,現在の情報社会において日常的なものとなっている。著者らは,日常的な情報探索行動の解明のために,ハイブリッドな情報空間の一例として大学図書館を取り上げ,そこでの情報探索行動を実験的に捉えてきた。実験では,大学生を対象に実験課題としてレポート課題を実施し,視線計測等による情報探索中の行動を含むデータを網羅的に収集してきた。本論文では,大学生の問題解決に伴う情報探索行動を対象にした実験における,実験手法と分析のための方法論およびその結果について紹介する。
著者
佐藤 康之
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.61, no.5, pp.200-206, 2011-05-01

2010年3月,慶應義塾大学メディアセンターは,最初の導入から3世代目となる新図書館システムKOSMOSIIIを導入し,ディスカバリー・インターフェースKOSMOSの利用者への提供を開始した。これらのシステムは,イスラエルのEx Libris社が開発した統合型図書館システムAlephとディスカバリー・インターフェースPrimoで構成されている。2004年に開始された選定作業は約4年に及んだ。背景には,中期計画における次世代サービスの検討,MARC21書誌レコードの継承,書誌ユーティリティの動向,トロント大学図書館の事例などがある。本稿では,システム選定の過程を振り返り,その選定の背景を紹介する。
著者
黒澤 公人
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.61, no.5, pp.194-199, 2011-05-01

日本の図書館システムの発展に,国立国会図書館,国立情報学研究所がどのような影響を与えてきたのか概観し,大学図書館システム,公共図書館システム,学校図書館システムの現状を考察した。大学図書館システムと公共図書館システムは別々に発展してきた。現在,ほとんどの図書館は,業者の作成した図書館システムパッケージソフトを使用しているが,定期的に更新していく必要がある。図書館サービスの継続には,システム仕様書が重要である。オープンソース図書館システムの登場や図書館員による図書館システムの研究も活発になりつつある。
著者
大谷 和利
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.49, no.12, pp.632-638, 1999-12-01

コンピュータが単なるコンピュータからビジネスのツールや情報メディアへと進化する過程において,操作性や使い勝手の改善がその機能性以上に重要なポイントとなった。Xeroxはコンピュータの画面を日常的に存在する事物の「メタファ(隠喩)」で置き換えることでこの問題を解決しようとし,仮想的なデスクトップの上に配された書類やフォルダをマウスで操作するGUI (Graphical User Interface)の基本概念を案出する。後にGUIは,Apple社のMac OSによって細部にいたるまで洗練される形で完成され,その後を追ったMicrosoftのWindowsによって大衆化された。今後のインターフェース技術の進化の中でも,GUIは重要な要素として存続するだろう。
著者
入江 伸
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.59, no.9, pp.450-456, 2009-09-01

本格的な電子図書館設立へ向けてメタデータ,全文テキスト,全文画像を持った電子図書館モデルを開発し,10万冊の電子図書館を想定した検索実験を行った。検索エンジンは,eコマースで使われているエンジンを中心として選定し,これまでの図書館システムとは異なった新しい可能性を評価することを目的とした。これまでの図書館システムの検索は,目録データだけを対象としているため,全文検索には対応することができない。図書館のこれからのサービスへ向けて,Webテクノロジーと融合していくため,新しいサービスのためのテクノロジーを評価し,図書館システムへ活用していくことが必要である。ここでは,この実験の目的,モデル,経過,評価について報告したい。
著者
渡邊 隆弘
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.56, no.3, pp.108-113, 2006-03-01

目録の集中機能を担う典拠コントロールは,レファレンスの品質を確実にするためにも欠かせないものである。本稿では,典拠コントロールの2つのトピック,FRARとLCSHを概説する。FRAE(『典拠レコードの機能要件』)は,IFLAがFRBRに続いて作成している,名前典拠を主対象としたE-R分析による概念モデルである。公開草案に述べられた典拠ファイルの機能と利用者タスク,さらに「実体」「属性」「関連」の分析について述べる。世界的に広く用いられている件名標目表であるLCSH(米国議会図書館件名標目表)については,その基本的特徴や標目・細目・参照構造の概略,さらに近年の動向について述べる。
著者
研谷 紀夫
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.58, no.11, pp.554-559, 2008-11-01

文書館制度の発達が図書館や博物館と比較して遅れた日本においては,図書館において歴史資料が保存される傾向が強かった。しかし,その情報の付与や秩序構成が図書とは根本的に異なる文書資料は,一般の図書刊行本とは別に扱われ,それら資料の認知や利用の簡便性も必ずしも高いものではなかった。しかし,近年のデジタルアーカイブやデジタルライブラリーの進展によって,図書館における文書資料の電子化が積極的に推進されている。これら電子化された資料は,文書資料の特性やBorn Digital Contentsに対応するメタデータの設計を行い,その他の資料や他の機関との相互連携の枠組みを発展させる必要がある。
著者
李 常慶
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.59, no.12, pp.597-603, 2009-12-01

清朝の末,中国における近代的図書館が誕生してまもなく,最初の図書館規則が作られた。民国時代になると,図書館の設立が盛んになり,図書館法制度も大きな進展を見せるようになった。だが,新中国成立後の最初の30年間,イデオロギーや政治闘争が優先されたことで,図書館法制度の整備が軽視され,図書館法制度は大きく後退した。1980年代からの改革開放路線により,図書館は大きな発展を遂げただけでなく,図書館法制度も整備されるようになった。しかし,これまでの中国における図書館法制度の整備は,主に行政府部門の主導で制定し公布した「条例」や「規程」などの形によってなされ,立法機関が制定した正式な図書館法がいまだに存在しない。これは,中国社会における図書館の低い影響力や国家法制度確立の遅れ,異なる官僚組織に所属する図書館組織構造の問題および経済を最優先する現実主義的な考えなどによるところが大きいと思われる。
著者
作佐部 太也
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.52, no.8, pp.425-429, 2002-08-01

医療情報学連合大会では2000年開催の第20回大会より,XMLによる論文原稿の投稿と処理を実施している。執筆者はXML形式で原稿を執筆し電子的に投稿する。大会事務局では受領したXML形式の原稿を電子的に処理し,冊子体の論文集とCD-ROM版の論文集の二つの形態で出版する。この一連の処理を行うため,二つのソフトウェアが開発された。ひとつのソフトウエアは執筆者に配布され,XMLの検証やプレビューの機能を提供する。もうひとつのソフトウェアは電子組版の機能を提供し,印刷用のPostscriptデータとブラウズ用のHTMLデータを生成する。これらのソフトウェアは,複数のプラットホームで動作させることを考慮しJava言語でプログラムされた。
著者
山本 外茂男
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.59, no.6, pp.291-297, 2009-06-01

大学で産学官連携を支援するコーディネーターの多くは,自己の専門性以外の研究テーマ支援活動や,未経験の業種,土地勘のない地域での企業探索など,対応すべき課題がある。これらは,必ずしも個々の自己啓発努力だけでは解決せず,マッチングの質的向上や支援活動の効率向上が望めない状況にある。そこで,本論文では企業保有の特許と大学研究者の論文をテキストマイニング手法によって処理し,可視化することにより,マッチング性のマクロ的分析を支援することを試みた。この結果,コーディネーターが,自らの専門性外のマッチング活動においても,マッチング可能性の評価を踏まえた活動が可能となり,その有効性が示唆された。
著者
川添 歩 嵯峨 園子 篠原 稔和
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.58, no.12, pp.588-594, 2008-12-01

「ユーザビリティ=使いやすさ」の観点から情報の「ファインダビリティ=見つけやすさ」について論じる。まずはじめに,ユーザビリティとファインダビリティの関係について考察し,その後,ユーザビリティがどのようにファインダビリティを向上させうるかということについて「情報のカタチ」という概念を用いて述べる。続いて,ユーザーにとって見つけやすい情報とは何か,それを提供するためのシステムとはどんなものかということを改めて整理し,最終的に,ファインダビリティが優れたシステムを実現するための原則を提示して総括する。
著者
伊藤 白 小澤 弘太
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.58, no.7, pp.361-366, 2008-07-01

県立・政令指定都市立および一部の大学図書館のHPの調査およびアンケートによる調査を行い,国内に存在するWeb上パスファインダーの現況を分析した。結果,HPでWeb上パスファインダーを提供している図書館は約4割にとどまった。またそれらのパスファインダーには,分野による偏りも確認された。この状況の一因は,各機関における作成・提供体制が十分とはいえないこと,また図書館間の協力体制の効率化が徹底されていないことにあると考えられる。今後Web上パスファインダーをより発展させ,それによって人々の情報入手に寄与していくためには,棲み分け・リンク等による連携・協力体制の確立が必要である。
著者
宮本 智佳子
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.47, no.2, pp.72-75, 1997-02-01

外国雑誌の価格は,定期的な値上がりと最近の円安傾向の相乗効果により,飛躍的に高騰している。従来,限られた予算内で雑誌予算を運営する手段は,所蔵タイトルの見直しや契約先の検討,代理店との価格交渉などであった。印刷形態の出版物から電子媒体への移行を背景に,学術雑誌の発行部数は減少し,価格高騰が加速するという悪循環の中で,大学図書館は抜本的な対策を早急に講じる必要性が生じている。外国雑誌を多く所蔵し,そのほとんどを海外代理店から一括購入している国際基督教大学図書館もその例外ではない。円安の影響により,1994年度から国際基督教大学で全学的に進められてきた雑誌の見直し作業は,購読タイトルの半分を占める自然科学系外国雑誌を中心として, 2000年度までに段階的に雑誌本体を中止し,電子媒体で代替していく方向づけがなされつつある。整備された学内ネットワーク環境を背景に,雑誌本体の購読から,情報アクセスや文献入手への移行を押し進めている事例を報告する。