著者
永田 治樹
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.58, no.9, pp.424-429, 2008
参考文献数
14

情報のディジタル化が進展するなかで,利用者の多くはサーチエンジンを選好して,図書館目録は発見ツールとしての中心的な位置を失ってしまった。そこで,ディジタルメディアの進展の状況とその影響を考慮し,かつ米国議会図書館の『書誌コントロールの将来に関するワーキング・グループ報告書』を踏まえて,情報発見システムを支える資源記述(目録)のあり方について検討した。新たな資源記述は,フルテキスト検索に対抗しうる「利用者の関心」を取り込んだ構成で,またその編成においては高い投資収益率を確保するべく,他のコミュニティとの連携が不可欠となっている。
著者
手嶋 毅
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.56, no.6, pp.266-271, 2006-06-01

博物館・美術館は,美術工芸品をはじめ歴史資料などきわめて広い分野にわたり貴重な文化財を保存修復展示している。われわれは,これらのコレクションがさまざまなメディアで広く紹介されることによって,はじめて博物館・美術館へ出かけて本物を観る楽しみへと誘われる。このように所蔵作品の情報公開は,博物館・美術館にとって極めて基本的な活動の一つと位置付けられるようになってきた。近年のデジタルアーカイブ化とインターネットのブロードバンド化の動向により,博物館・美術館の所蔵作品デジタル画像を従来の限られた専門分野のみに提供するのではなく,広く商業的なさまざまな用途へとその利用範囲を広げる先行的な事例が始まってきている。この画像ライセンス事業の事例を報告するとともに権利処理について概観する。
著者
井上 能行
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.65, no.1, pp.21-26, 2015-01-01

東日本大震災から4年近くが経つ。岩手,宮城の津波被災地では復興が進む一方,福島第一原発事故を抱える福島県では未だに12万人を超える人が避難を余儀なくされている。福島県内では政治不信,科学者不信に加えて,マスコミへの不信感も強い。不信の理由は,福島県の現状が伝わっていない,というものだ。象徴的な出来事がマンガ「美味しんぼ」騒動だ。作者の意図はどうであれ,マスコミが大騒ぎし,残ったのは風評被害だけだった。マスコミが伝えていることと,住民が伝えてほしいと考えることのギャップはどこから生まれるのか。解消法はないのか。福島市に住んでいる記者の視点から考察する。
著者
高山 正也
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.55, no.4, pp.178-182, 2005-04-01

情報プロフェッショナルになるには, 検索系情報サービスの専門資格としての司書や学芸員は有利な立場にあると言える。しかし日本の現状ではそこにいくつかの問題点がある。すなわち司書や学芸員に加えて, アーキビストの世界は不可欠であるが, この分野の専門資格がない。また現状の資格のレベルでは, 時代の要求する能力レベルには達していない。このためには自己開発の場としての専門職大学院の活用が考えられるが, 自己責任で専門職大学院で自己開発を行うためのビジネスモデルの開発が不可欠である。
著者
立石 亜紀子 餌取 直子 庄司 三千子
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.65, no.9, pp.379-385, 2015-09-01

千葉大学・お茶の水女子大学・横浜国立大学の三大学連携プロジェクトの一環として,2015年4月〜9月にかけて実施中の電子書籍PDA実験について報告する。三大学は規模や大学の特徴が異なり,選書方針,電子書籍の収集状況,蔵書構築における課題などにも違いがみられる。一方で,和書の電子書籍購入を促進したいという共通の課題があり,丸善(株)の協力のもと,連携事業として実験に取り組むことになった。2015年5月末時点で,電子書籍に対するニーズの把握,利用促進効果などの成果が得られた。今後の課題としては,購読決定の条件について,提供側と図書館側の両者が納得できる適切な条件の設定が挙げられた。
著者
船守 美穂
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.65, no.6, pp.258-263, 2015-06-01

大規模公開オンライン講座(MOOC)は2012年に米国のエリート大学を中心に生み出され,世界的に一世を風靡した。この動きは,cMOOC,反転授業,パーソナライズド学習,ラーニング・アナリティクス,高等教育のアンバンドリングなど,デジタル時代の新たな学習方法にスポットライトを当てていったが,これは振り返ってみると,これまでの計算機やインターネットの発達とともに幾たびとなく取り上げられては,消え入っていた取り組みであった。しかし時代の進行とともに,これら取り組みは実質度を増し,着実に社会に定着している。本稿では,MOOCを軸に,これらデジタル時代における大学教育の学習形態等について紹介し,近未来の大学教育像を提示する。
著者
後藤 嘉宏
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.57, no.11, pp.519-525, 2007-11-01
被引用文献数
1

本稿では国立国会図書館の納本制度を考え,その際,初代副館長の中井正一(1900-1952)の思想を手がかりにした。中井は納本制度と表裏一体の関係にある支部図書館制度の産みの親の一人ともされる。中井の「機能概念の美学への寄与」(1930)での「機能概念」,「委員会の論理」(1936)での「印刷される論理」,『美学入門』(1951)での映画のカットの議論(「コプラの不在」)を紹介し,それらと彼の図書館思想との関係を考察した。その上で彼の描く支部図書館制度は,それを通じての納入の仕組みとは異なるということを,彼の商品としての本(書籍)に対する二律背反的な態度を踏まえつつ考察した。さらに納入物として望ましいものと情報アクセスの射程として望ましいものとの区別を考えていく必要性があると指摘した。
著者
中林 雅士
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.61, no.8, pp.317-323, 2011
参考文献数
5

大学財政規模が縮小する中,図書館運営予算も削減を余儀なくされている。加えて,大学間の競争は激しさを増しており,図書館はこのような環境変化の中で,自らのミッションを堅持しつつも,新たな環境に適応する必要に迫られている。直近の課題の1つは,図書館運営費の安定確保である。図書館を取り巻く多くのステークホルダーに対する社会的責務を果たすためには,財政問題を避けては通れない。本稿では,図書館運営費の安定確保について,図書館と国庫助成,図書費,業務委託費を取り上げつつ考察する。
著者
坂井 華奈子
出版者
情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 = The journal of Information Science and Technology Association (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.62, no.1, pp.8-15, 2012-01-01
参考文献数
11

アジア経済研究所(アジ研)は,開発途上国・地域の政治,経済,社会に関する社会科学分野の基礎的総合的研究を行う研究機関である。研究活動の現地主義に対応し,アジ研図書館でも現地刊行の現地語の資料を重視し,現地に根ざした資料収集を行っている。特に,現地書店との直接取引による購入,現地研究機関や大学,政府機関等との資料交換,直接現地を訪問しての資料収集活動が特徴的である。本稿では,インドの現地資料収集について,アジ研図書館のこの特徴ある資料収集活動を基にご紹介してみたい。また,後半では2007 年にデリーを訪問して資料事情に関する現地調査を行った際の体験についても触れる。
著者
田中 均
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.55, no.7, pp.284-288, 2005
参考文献数
12

図書館の理想や実態は, 利用者に正確に伝わっているとは言えない。図書館の存在やサービス, 社会的意義は何故理解されないのであろうか。これからの図書館広報のあり方を考察するために, 図書館における広報活動とPR活動の意義・必要性, 方法論を整理し, 現代的課題として情報化社会における利用者の意識の変化, 公聴活動の重要性, 広報内容の充実と注意点, パソコン利用, ウェブコンテンツJISを取り上げる。加えて改革の進む動物園から旭山動物園の事例を分析して, 堅実な理念に基づいた理想的な図書館の実現へ向けた図書館職員一丸となった努力が重要であることを明らかにする。
著者
手塚 敏廣
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.43, no.8, pp.690-700, 1993-08-01

特許を代表とする知的財産に関する最近の状況変化はめまぐるしく,その管理部門の強化などが叫ばれる中,特許情報などの情報を企業活動に如何に有効的,効率的に活用していくかが問われている。パテント・クリアランスと言った総合的特許管理体制の中で知的財産情報としての特許情報というものの本質を十分に理解し,その戦略的活用として研究開発,営業活動,ひいては経営戦略などの状況に応じた情報の提供と評価,判断が必要となってきており,場面,状況に応じて要求される特許情報とは何か,どのようにして実際に活用しているのか,などを述べるとともに,特許情報以外の知的財産情報や企業秘密との関係についても述べている。
著者
林 和弘
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.64, no.12, pp.496-500, 2014-12-01

計量書誌学は,学術ジャーナルを中心として発展し,引用をベースにしたネットワーク解析は,現在学術・科学技術研究のインパクトを測る上でもっとも信頼性が高い手法となった。Webの情報流通基盤が整うことで,計量書誌学は,短期的にはデータベースの連携やリンクを中心としたインパクト分析が進む。一方,長期的には研究成果の公開の在り方そのものの変化に応じた手法が開発され,科学計量学の再構成が行われ,研究活動計量学と呼べるものに発展する可能性がある。変動期にある学術情報流通基盤を踏まえ,短期的,長期的展望を能動的に持った上で,短いサイクルで行う実践と評価の繰り返しと新しい計量に対するコンセンサスの形成が求められる。
著者
南崎 紀子
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.61, no.7, pp.270-275, 2011-07-01

新事業や新製品の開発現場では,知財部門との協働・連携は欠かせない。開発の初期から上市に至るまでの各段階で,各種の情報調査,出願・権利化,障害特許対応などの知財アクション,知的財産戦略の策定など様々な知財機能が関わってくる。事業サイドで新事業・新製品開発を担当する部門から知財機能に期待することは,高品質な実務に加えて,情報分析やアドバイス,提言といった戦略策定に関わる支援機能である。本稿では,情報部門から,事業部門に異動して,異なった視座から見た知財機能への期待を,特に情報調査機能を中心に述べる。
著者
南山 宏之
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.46, no.4, pp.177-186, 1996-04-01

プレゼンテーションは,受け手が自らの力で「発見」「創作」できる状況を意図的,計画的に送り手が仕掛けることである。プレゼンテーションのポイントは,伝えたい「概念(concept)」「信念(belief)」を,プライマリー・オリジネーションとして創作するその在り方にある。プレゼンテーションの基本フレームは, E.H.エリクソンのアイデンティティ・モデルで説明できる。我々は,「認識スキーマ」「記号とメタファー」「プレゼンツルギー」といった技術を現実世界の経験として磨く必要がある。時代環境変化の中で, 日本固有のプレゼンテーション法の研究教育体系の開発と実現が期待されている。
著者
住 太陽
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.54, no.2, pp.72-77, 2004-02-01

インターネット検索エンジン業界の勢力地図について解説する。検索エンジン市場の,検索プロバイダ,ディレクトリプロバイダ,広告ブロバイダ,ポータルサイトの4者のプレーヤーの業務提携や企業買収,検索技術の開発などの話題について述べる。