- 著者
-
石崎 正和
- 出版者
- Japan Society of Civil Engineers
- 雑誌
- 日本土木史研究発表会論文集 (ISSN:09134107)
- 巻号頁・発行日
- vol.7, pp.253-258, 1987-06-20 (Released:2010-06-15)
- 参考文献数
- 13
- 被引用文献数
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蛇籠はわが国において古くより護岸・水制に利用されてきた代表的な資材である。これまで蛇籠が初めて使用されたのは, おそらく「漢書・溝洫誌」をもとにしたと考えられる「倭訓栞」により河平元年 (紀元前28年) とするのが一般的であったが, 「長江水利史略」などの中国の水利文献によると, すでにそれ以前に都江堰の築造 (紀元前360~250年) に際して用いられたとしている。また, 蛇籠がわが国に伝来したのは, 「古事記」の記述をもとに330~640年頃といわれているが, 時代を特定することは困難である。いずれにしても蛇籠は, 農書, 地方書などでも必ず取り上げられ, 近世には相当普及していた。蛇籠の詰石そのもは今日も変りはないが, 籠の部分は竹や柳などの植物から, 明治中頃には竹籠を鉄線で補強したものが現われ, その後機械編の亜鉛メッキ鉄線が普及した。戦後に至り, 蛇籠の構造についての規格化が図られ, 永久化工法の研究などを含め, 種々改良が試みられてきた。しかし, コンクリートブロックの普及などに伴って, 蛇籠の利用も次第にその利用範囲が縮小し, 応急的かつ暫定的な側面が強くなっている。近年, わが国古来の伝統的な河川工法についての見直しがなされる傾向にある。本稿では, 蛇籠の歴史的な側面について報告するとともに, 今日なお竹蛇籠を使用している中国の概況について報告したが, 屈撓性, 透過性, 経済性などの特性を有する蛇籠について, 歴史的な資材として見捨てること無く, その特性を生かした現代的な利用法が積極的に検討されることを期待する。