著者
山本 淳一 澁谷 尚樹
出版者
一般社団法人 日本行動分析学会
雑誌
行動分析学研究 (ISSN:09138013)
巻号頁・発行日
vol.23, no.1, pp.46-70, 2009
被引用文献数
3

本論文では、2004年にわが国で制定された「発達障害者支援法」が示している発達障害への支援のありかたについて、応用行動分析学がどのように貢献できるかを概説した。応用行動分析学のもつ「科学性」と「包括性」を整理し、それが、「発達障害者支援法」にうたわれている理念に一致していることを指摘した。次に、「自閉性障害」「注意欠陥/多動性障害」「学習障害」をとりあげて、以下の点についてエビデンスにもとづく支援方法を吟味した。(1)それぞれの発達障害にはどのような特徴があるか?(2)科学的な発達支援方法がどのように明らかにされてきたか?(3)より大きな支援プログラムがどのようにつくられ、その効果が大規模研究によってどのように分析されてきたか?(4)そのような研究を基盤にして、どのように支援ガイドラインが提示されてきたか?(5)様々な特徴をもつ個人に対して、様々な実践現場で活用するために、新たな研究と実践がどのように発展してきたか?その結果、研究成果を受けてガイドラインが提示され、ガイドラインをさまざまなニーズをもつ個人に適用するための方法が開発され、さらに新たな支援成果が蓄積される、という一連の発達支援の発展を抽出した。研究というのは、研究そのもので完結するのではなく、支援そのものの質の向上を促すための必要条件であることを示し、今後の研究課題を討議した。
著者
平澤 紀子
出版者
日本行動分析学会
雑誌
行動分析学研究 (ISSN:09138013)
巻号頁・発行日
vol.23, no.1, pp.33-45, 2009-03-30

発達障害者の行動問題は、教育や福祉の制約をもたらしやすい。本研究では、エビデンスに基づく支援によって、こうした課題を解決するために、応用行動分析学がどのように貢献しうるのかについて、米国の動向を基に、わが国の現状を踏まえて検討した。米国においては、公的機関や関係団体が応用行動分析学の支援方法を推奨していた。そのエビデンスとして、シングルケース研究のメタアナリシスは、行動的介入が重度から軽度の知的障害を有する発達障害者の自傷や攻撃、常同行動を中心として、行動問題の低減に一定の効果をもち、機能的アセスメントがその効果に貢献していることを示していた。一方、適応行動の拡大を目指すpositive behavior supportは、エビデンスに先行して、障害のある個人教育法(IDEA)に反映され、急速に拡大していた。その背景には、米国における権利保障の制度的基盤や教育改革において、対象者の権利を保障する実質的な方法論を求める動きがあった。権利保障の基盤が不十分なわが国においては、行動問題に対する支援方法の不備が教育や福祉の制約に直結しうる。したがって、応用行動分析学のエビデンスに基づいて対象者の権利を保障していくことが極めて重要となる。そのためには、教育・福祉現場や行政当局と協働したエビデンスの開発や使用の方向性が考えられた。
著者
望月 昭
出版者
日本行動分析学会
雑誌
行動分析学研究 (ISSN:09138013)
巻号頁・発行日
vol.22, no.2, pp.114-115, 2008-03-31
著者
武藤 崇
出版者
日本行動分析学会
雑誌
行動分析学研究 (ISSN:09138013)
巻号頁・発行日
vol.21, no.1, pp.7-23, 2007-06-30
被引用文献数
1

本稿の目的は、従来からなされてきた特別支援教育に対する行動分析学の寄与を普通教育にまで拡大することの必要性を検討することである。そのため、(1)徹底的行動主義の観点から、現状の特別支援・普通教育に対する新たな問題解決の方向性を明示し、(2)その方向性を支持・示唆する欧米の研究動向を概観し、(3)その概観を踏まえた今後の課題を提示する、という3つの部分から構成されている。その新たな問題解決の方向性とは、(a)学校の構成員全体に関係する社会的随伴性、(b)学級内での一斉指導における教授・マネジメント方法、(C)教育サービスの「質」のマネジメント方法、という3つの事項に関する検討である。
著者
中島 定彦
出版者
日本行動分析学会
雑誌
行動分析学研究 (ISSN:09138013)
巻号頁・発行日
vol.8, no.2, pp.160-176, 1995-06-15
被引用文献数
1

多くの動物(ヒトを含む)研究が見本合わせ手続きまたはその変法を、記憶(想起行動)、注意、概念、刺激等価性の研究法として用いてきた。この論文の前半ではそれらの手続きを、実験者が動物に要求する行動という観点から、選択型見本合わせ、Go/No-Go型見本合わせ、Yes/No型見本合わせの3つに分類した。見本合わせ手続きはまた、第1標準見本刺激と第2テスト比較刺激との対応関係から、同一見本合わせ、象徴見本合わせ、非見本合わせに分類できる。さらに、見本刺激と比較刺激との時間的関係から、同時見本合わせと遅延見本合わせに分類される。論文の後半では、見本合わせ手続きの多くの変法を、この手続き内で生じる出来事の系列に沿って分類した。
著者
佐伯 大輔
出版者
一般社団法人 日本行動分析学会
雑誌
行動分析学研究 (ISSN:09138013)
巻号頁・発行日
vol.16, no.2, pp.154-169, 2002

これまで、経済学と心理学は、遅延時間の経過に伴う報酬の価値の減衰を、時間選好または遅延による報酬の価値割引と呼び、この現象の説明を異なる学問的立場から異なる方法論を用いて行ってきた。経済学における初期の研究は、公理的アプローチにより、財消費の現在と未来への合理的配分を表すことのできる指数関数モデルを提案した。しかし、最近の経済学研究は、経済学や心理学における実証的研究の結果から、指数関数モデルでは記述できない逸脱現象を見出し、これらを記述できる新たな割引モデルを提案している。一方、心理学では、ヒトや動物の遅延による価値割引が、指数関数モデルよりも双曲線関数モデルによってうまく記述できることや、収入水準やインフレーションなどの経済学的変数が割引率に関係する事実が明らかになった。今後、仮想報酬間での選択場面を用いてきた経済学の時間選好研究には、実際の選択場面を用いた割引率の測定が求められる。一方、心理学の価値割引研究には、経済学が報告した逸脱現象が、実際の選択場面においても生起するか否かを検討することが求められる。2つの価値割引研究の融合により、この現象のさらなる理解を可能にする学際的研究領域の確立が期待される。
著者
大屋 藍子 武藤 崇
出版者
一般社団法人 日本行動分析学会
雑誌
行動分析学研究 (ISSN:09138013)
巻号頁・発行日
vol.31, no.1, pp.30-39, 2016-08-25 (Released:2017-08-25)
参考文献数
19

研究の目的 本研究は、野菜摂取行動に対するパーセンタイルスケジュールが大学生の野菜摂取行動の変動性を増大させるかどうか、また食習慣が改善するかどうか検討した。実験デザイン 参加者間多層ベースラインデザインとABABデザインを組み合わせて用いた。場面 参加者は様々な野菜を摂取するよう教示を受け毎日ウェブアンケートの回答が求められた。参加者 野菜摂取が不足していると感じている7名の大学生がプログラムへ参加した。介入 ベースラインフェイズでは、参加者は毎日その日に摂取した野菜品目名をウェブアンケートへ回答した。介入フェイズでは、ウェブアンケートに加え、パーセンタイルスケジュールが実施された。その日摂取した野菜の種類が直前1週間の野菜摂取を基に算出した基準値より少なかった場合、それを称賛するメッセージが電子メールで送信された。行動の指標 野菜摂取行動に関する異反応数を行動変動性の指標として用いた。またDIHAL.2 (Diagnostic Inventory of Health and Life Habit)と言語報告を食習慣の改善の指標として用いた。結果 一部の参加者において、介入フェイズで異反応数が増大し、食習慣の改善が見られた。結論 野菜摂取行動の拡大においてパーセンタイルスケジュールは明確な効果を示さなかったが一部の参加者に対しては有効であった。
著者
竹内 康二 園山 繁樹
出版者
一般社団法人 日本行動分析学会
雑誌
行動分析学研究 (ISSN:09138013)
巻号頁・発行日
vol.20, no.2, pp.88-100, 2007 (Released:2017-06-28)
被引用文献数
4

これまで様々な自己管理スキルを発達障害児者の問題に適用した研究が行われてきたものの、自己管理の方略を体系的に整理することは十分にはなされていない。そこで本論文では、様々な自己管理スキルを応用行動分析学的観点から体系的に整理し、自己管理を計画、実施、評価、分析、支援するための新たな枠組みとして「自己管理スキル支援システム」を提案することを目的とした。「自己管理スキル支援システム」は、(1)「標的行動の定義」、「弁別刺激の整備」、「自己記録」からなる手続きの段階、(2)「目標やルールの設定」と「自己評価」からなる手続きの段階、(3)「強化子(または弱化子)の選択・準備」と「自己確立操作」、「自己強化(自己弱化)」からなる手続きの段階の3つの段階から構成されるものであり、また競合行動への介入にも焦点を当てるところに特徴がある。この「自己管理スキル支援システム」の利点を「支援付き自己管理」の観点から考察した。
著者
サトウ タツヤ 渡邊 芳之
出版者
日本行動分析学会
雑誌
行動分析学研究 (ISSN:09138013)
巻号頁・発行日
vol.26, no.1, pp.55-58, 2011-07-25
被引用文献数
1
著者
大久保 賢一 井口 貴道 石塚 誠之
出版者
一般社団法人 日本行動分析学会
雑誌
行動分析学研究 (ISSN:09138013)
巻号頁・発行日
vol.29, no.2, pp.68-85, 2015-02-25 (Released:2017-06-28)

研究の目的 本研究では、機能的アセスメントにおける情報収集と行動支援計画の立案を標的とした研修プログラムを実施し、その効果を検討した。研究計画 異なった順番で手続きを実施する2グループを設け、事前テスト、中間テスト、事後テスト、維持テストの結果から介入の各要素の効果を明らかにすることを試みた。場面 大学研究室において実施した。参加者 教員養成課程に在籍する6名の大学生が対象であった。介入 行動分析学に関する基礎的な内容、そして機能的アセスメントの実施と行動支援計画の立案に関する「講義」と、チェックリストとフィードバックを用いた「演習」を実施した。行動の指標 架空事例に対して参加者が収集した情報の分析、立案した支援計画における方略の種類と数、および妥当性、行動分析学に関する知識、そして研修プログラムに関する感想に関するデータを収集した。結果 ほぼ、すべての従属変数において改善がみられ、特に「結果事象」に関する情報収集と方略の立案においては事前テストからの大きな変化がみられた。結論 本研究において実施した研修プログラムによって全般的な改善がみられたが、グループ間によって異なる傾向がみられた。以上のことから、妥当性の高い行動支援計画を立案するためには、チェックリストやフィードバックを用いたトレーニングを行うだけでは不十分であり、行動分析学に関する基礎的な知識が前提条件となる可能性が示唆された。
著者
小井田 久実 園山 繁樹 竹内 康二
出版者
日本行動分析学会
雑誌
行動分析学研究 (ISSN:09138013)
巻号頁・発行日
vol.18, no.2, pp.120-130, 2004-06-30

PECS(The Picture Exchange Communication System)は、自閉性障害児や発達障害児に対して、自分から始発する機能的なコミュニケーション行動を比較的短期間で教える訓練方法であり、FrostとBondyにより開発された。PECSは拡大・代替コミュニケーションの領域で確立され、その理論的背景には応用行動分析学の原理が組み込まれている。PECSトレーニングマニュアルの初版が1994年に、改訂版が2002年に出版された。PECSでは最初に、欲しい物を表す絵カードを聞き手に手渡して、欲しい物の実物を受け取ることから教え、最終的には、絵カードを用いて文を作ることや、要求行動の一部として色や形などの属性の理解と表現を促すこと、簡単な質問に答えることなどを教える。PECSは、叙述言語行動としての機能よりも先に要求言語行動としての機能を発達させることを強調する。本論文では、PECSの特徴、その具体的手続き、PECSによるコミュニケーション訓練の効果、今後の課題について述べた。
著者
下山 真衣 園山 繁樹
出版者
日本行動分析学会
雑誌
行動分析学研究 (ISSN:09138013)
巻号頁・発行日
vol.25, no.1, pp.30-41, 2010-09-23

研究の目的 激しい自傷行動を示す自閉性障害児を対象にカリキュラム修正と前兆行動を利用した代替行動の形成を行い、自傷行動の軽減に対する効果を検討した。研究計画 フェイズ1と2のみ場面間多層ベースラインデザインを用いた。場面 大学相談室及び小学校の特別支援学級で行った。参加者 特別支援学級に在籍する9歳の自閉性障害男児1名が参加した。介入 フェイズ1では学習課題に対象児の好きな物を取り入れ、課題の順序を選択できる内容に変更した。前兆行動が生起したときに、フェイズ2では対象児に前兆行動が生起したことを担任が知らせてから休憩をとらせ、フェイズ3では対象児が休憩要請をした場合に休憩をとらせ、フェイズ4では対象児が軽く机を叩くようにした。行動の指標 問題行動と代替行動の生起頻度についてデータを収集した。結果 フェイズ2までで激しい自傷行動は減少し、フェイズ3とフェイズ4では休憩要請行動が増加し、自傷行動はほとんど生起しなくなった。結論 カリキュラム修正を行い、前兆行動を利用することで激しい自傷行動を減らし、代替行動を促進する可能性が示された。
著者
中鹿 直樹
出版者
一般社団法人 日本行動分析学会
雑誌
行動分析学研究 (ISSN:09138013)
巻号頁・発行日
vol.19, no.2, pp.137-147, 2005-04-30 (Released:2017-06-28)

研究の目的 : ハトが他個体の反応位置を手がかりにして、2種類の条件性弁別課題を行うことができるかどうかを調べた。またその行動を2羽の他個体に応じて使い分けられるかどうかを検討した。手続き : 被験体(反応ハト)は強化子を得るために、他個体(刺激ハト)の反応位置を弁別刺激として反応することが求められた。2羽の刺激ハトのうち1羽の刺激ハトが提示されたときには、反応ハトは、刺激ハトが反応しているのと同じ側のキーに反応しなければならなかった。一方、別の刺激ハトが提示されたときには、反応ハトは、刺激ハトの反応しているキーの反対側のキーに反応しなければならなかった。被験体 : 2羽のハトを反応ハトとして用いた。さらに3羽のハトを刺激ハトとした。行動の指標 : 反応ハトの正答率と反応数を指標とした。結論 : 反応ハトは、刺激ハトの反応位置を手がかりにして、2種類の条件性弁別課題を行うことができた。また2羽の刺激ハトに応じてその行動を使い分けることができた。
著者
長谷川 芳典
出版者
一般社団法人 日本行動分析学会
雑誌
行動分析学研究 (ISSN:09138013)
巻号頁・発行日
vol.22, no.2, pp.164-173, 2008-03-31 (Released:2017-06-28)

過去50年以上に及ぶ「乱数生成行動」研究を概観し、行動変動性研究に関する3論文をコメントし、今後の展望を述べた。乱数生成行動研究は概ね1950年代から始まっているが、「なるべくランダムに」という言語的教示の曖昧さ、被験者が投げやりに振る舞っても対処できないこと、学習要因を考慮に入れていないこと、といった問題点があった。いっぽう行動変動性の研究は、それらの問題点を解消し、「人間が生成した乱数列はどこに問題があるのか」という特性論的な見方から、「オペラント条件づけ手続によってどこまでランダムな乱数列を生成させることが可能か」という、行動変容の視点で新たな可能性を開いた。しかし、一口に行動変動性と言っても、反応のトポグラフィーやIRTに関する微視的な変動性から、ランダムな選択行動や新しい形を作るといった巨視的な変動性までいろいろある。微視的な変動性は分化強化として扱えるが、巨視的な選択行動の変動性は弁別行動として論じるべきである。今後の展望としては、微視的、巨視的という区別に留意しつつ、発達障害児の一部で見られる常同的・反復的な選択行動を改善するための効果的な支援方法の確立といった現実的な課題にさらに取り組む必要がある。さらに長期的なライフスタイルにおける一貫性と変動性をめぐる問題も、行動分析学の課題になりうる。