著者
中村 正和
出版者
一般社団法人 日本老年歯科医学会
雑誌
老年歯科医学 (ISSN:09143866)
巻号頁・発行日
vol.19, no.4, pp.261-267, 2005-03-31 (Released:2014-02-26)
参考文献数
11
著者
檜原 司 後藤 崇晴 柳沢 志津子 中道 敦子 市川 哲雄
出版者
一般社団法人 日本老年歯科医学会
雑誌
老年歯科医学 (ISSN:09143866)
巻号頁・発行日
vol.32, no.1, pp.33-47, 2017-06-30 (Released:2017-07-26)
参考文献数
40

本研究では身体的フレイルとオーラルフレイルに着目し,被験者自身が自覚する兆候の実態をアンケート調査を用いて検討した。アンケート調査に同意が得られた1,214名を対象とした。本研究は徳島大学病院臨床研究倫理審査委員会の承認を得て行った。身体的フレイルに関連する質問項目として,体重,疲労感,握力,活動量,歩行速度に関する5項目を,オーラルフレイルに関連する質問項目として,咀嚼や嚥下機能に加えて,残存歯,唾液,舌の機能に関する7項目を設定した。質問項目は4段階で評価させ,得点が高いほど虚弱傾向が強くなるように設定した。身体的フレイルに関連する総得点は,男女ともに60歳代が最も低く90歳代が最も高い値を示し,女性の場合60歳代の得点は70歳代と比較して有意に低い値を示した。オーラルフレイルに関連する総得点は身体的フレイルの得点と比較して,年齢階級が上がるごとに漸増する傾向が認められた。オーラルフレイルに関連する質問項目に関しては,一様の増加傾向を示す項目が多かったが,そのなかでも食べこぼし,嚙めない食べ物に関する項目の得点において,虚弱傾向を示す3点,4点を示す被験者数はともに50~60歳代間で有意に増加した。以上の結果より,オーラルフレイルにとっては50~60歳代が一つの重要な年代であり,特に「食べこぼし」や「嚙めない食べ物」に関する評価は重要である可能性が示唆された。
著者
冨士田 益久 木原 秀文 藤本 嘉治 吉田 裕 三吉 一子 米虫 和子
出版者
Japanese Society of Gerodontology
雑誌
老年歯科医学 (ISSN:09143866)
巻号頁・発行日
vol.10, no.3, pp.250-257, 1996

大阪市では在宅寝たきり高齢者の歯科保健対策について調査研究を行うため, 訪問診査を実施している.1993年 (平成5年) 1月から3月まで大阪市内4区 (東部-城東区, 西部-大正区, 南部-東住吉区, 北部-東淀川区) に居住する65歳以上の在宅寝たきり高齢者の歯科保健の実態とニーズを調査し, その概要を把握した.それに基づき, 大阪市東淀川区歯科医師会では1994年 (平成6年) 6月1日より大阪市からポータブル歯科診療器具の貸与を受け, 実際の訪問歯科診療を行っている.今回, 大阪市4区の訪問診査の結果を報告すると共に, 現在実施している大阪市東淀川区の在宅寝たきり高齢者訪問歯科診療について報告する.<BR>訪問診査の調査対象者は, 大阪市環境保健協会訪問指導員による訪問指導を受けている者のうち厚生省寝たきり度判定基準B, Cランクに属し, 65歳以上で, 上記4区に居住し, 訪問診査を希望する者で, 総計52名に実施した.そのうち歯科診療を希望する者が26名 (50.0%) あり, 診査に当たった歯科医師は, 29名 (55.8%) に歯科診療の必要性を認めた.また, 1994年6月1日から1995年3月31日までの間に大阪市東淀川区で実施した訪問歯科診療の件数は, 8名で, 延べ訪問回数は55回であった.<BR>これらの結果から, 在宅寝たきり高齢者の口腔内の状態の改善と向上を図り, 歯科保健指導ならびに訪問歯科診療の推進が必要であり, それらを整備し, 充実することは, 在宅寝たきり高齢者の口腔保健と福祉の向上に有意義であることが示唆された.
著者
金井 康子 溝川 信子
出版者
Japanese Society of Gerodontology
雑誌
老年歯科医学 (ISSN:09143866)
巻号頁・発行日
vol.12, no.2, pp.94-99, 1997

老年者のQ.O.L (生活の質) の維持向上に口腔の担う役割は大きい。今回, 我々は口腔機能の向上を目指す一環として, 老年者の口腔の現状を調査し, その結果とADL (日常生活動作) との関係を報告する。<BR>阪和泉北病院は1, 900余床を有するいわゆる老人病院で歯科受診者の85%が70歳以上である。そのうち当科で義歯作製または床裏装をした65歳以上の入院患者538人を対象とした。調査方法は受診理由・咀嚼能力・残存歯数・ADLの4項目について, まず受診目的とどんな食品が食べられるかもしくは食べているかを問診したのち, 固定性の残存機能歯数を調べ, 厚生省の寝たきり老人判定基準により判定したADLについて比較検討を行った。その結果<BR>1) 受診理由は義歯不適合232人 (43.1%) が圧倒的に多く, 次いで義歯初作製101人 (18.8%) 紛失94人 (17.5%) などであった。<BR>2) 咀嚼能力では流動食, らっきょう, たくあん・おかきを食べている者の合計は98人 (18.3%) と少ないのに対し, お粥138人 (25.7%) ご飯157人 (29.2%) 蒲鉾145人 (27.0%) とその合計は81.7%を占めておりこれらの食品を食べられる者が多かった。<BR>3) 残存歯数が10歯未満の者は442人 (82.2%) と大部分を占め, 10-19歯の者は79人 (14.6%) 20歯以上はわずか17人 (3.2%) であった。また義歯使用者は310人 (57.6%) であった。<BR>4) ADLは「屋内でのみ自立」群2-11人 (39.2%) 「準寝たきり」群176人 (32.7%) 「寝たきり」群151人 (28.1%) であった。<BR>5) ADLと咀嚼能力をみるとADLが高いほど咀嚼能力が高かった。<BR>6) 残存歯数とADLでは残存歯数が多いほどADLは高く, 残存歯数が少なくても義歯で補うことによりADLは高くなることがわかった。
著者
寺岡 加代 森野 智子
出版者
一般社団法人 日本老年歯科医学会
雑誌
老年歯科医学 (ISSN:09143866)
巻号頁・発行日
vol.25, no.2, pp.115-122, 2010 (Released:2011-05-10)
参考文献数
19
被引用文献数
1

高齢者の意欲 (Vitality Index) の1年後の変化ならびに変化に関連する背景因子の分析を目的とする縦断調査を実施した。調査対象は介護老人福祉施設在住の要介護高齢者118名 (男性25名, 女性93名, 平均年齢 : 84.2±7.7歳) である。意欲の評価指標は介護者の観察による客観的評価であるVitality Indexを使用した。また意欲の背景因子のうち口腔機能として, 現在歯数, 簡易機能歯ユニット, 改訂水飲みテスト, その他の因子として, 年齢, 性別, 要介護度, 食形態, 食事の自立度, 体格指数, 血中アルブミン値, 共存疾患数, 認知機能を評価した。分析の結果, 対象者の約6割は1年後にVitality Indexが低下すること, ならびに低下に関連する因子は食事動作の自立度であることが認められた。したがって, 要介護高齢者の意欲の低下を予防するためには, 食事動作の自立を維持することが重要であることが示唆された。
著者
石川 正夫 武井 典子 石井 孝典 高田 康二 濵田 三作男
出版者
Japanese Society of Gerodontology
雑誌
老年歯科医学 (ISSN:09143866)
巻号頁・発行日
vol.30, no.1, pp.37-45, 2015

超高齢社会が進展するなか,介護を必要としないことおよび認知症の予防が急務な課題となっている。そこで,われわれは高齢者の介護予防を目指した口腔機能の評価と管理システムを開発し,ケアハウス入所者において口腔機能の向上に役立つことを確認した。 今回は,本システムが認知機能の低下抑制に役立つか否かを明らかにする目的で,グループホームにて調査を行った。対象者は鹿児島県のグループホーム入所者(「GH-A」)および神奈川県のグループホーム入所者(「GH-B」)である。初回,6カ月後,1年後の検査に参加した GH-A12名および GH-B24名を対象に,口腔機能および認知機能の評価(MMSE)を行った。初回の口腔機能検査(①口腔周囲筋,②咀嚼機能, ③嚥下機能,④口腔清潔度)結果に基づいて,個々人に対応した口腔機能向上プログラムを本人および介護スタッフに提案・実施を依頼した。実施状況は,GH-Aは毎日,GH-Bは半分程度であった。 その結果,②咀嚼機能が 1 年後にGH-Aで改善した。③嚥下機能の指標であるRSST,オーラルディアドコキネシス「pa音」の回数が6カ月後に GH-Aで有意に増加した。さらに,MMSE得点は,GH-Bで1年後に有意に低下したが,GH-Aでは変化はみられなかった。以上の結果より,プログラム実施状況の影響はあるものの,本システムの介入により口腔機能の維持・向上を通して認知機能の低下抑制に貢献できる可能性が示唆された。
著者
平井 敏博
出版者
一般社団法人 日本老年歯科医学会
雑誌
老年歯科医学 (ISSN:09143866)
巻号頁・発行日
vol.9, no.1, pp.3-12, 1994-07-31 (Released:2014-02-26)
参考文献数
53
被引用文献数
4 8
著者
龍口 幹雄 大野 友久 相澤 秀夫 大野 守弘 才川 隆弘 永江 浩史
出版者
一般社団法人 日本老年歯科医学会
雑誌
老年歯科医学 (ISSN:09143866)
巻号頁・発行日
vol.29, no.3, pp.307-312, 2015-01-14 (Released:2015-01-21)
参考文献数
8

骨修飾薬(以下,BMA)は,骨吸収を阻害する薬剤である。骨関連事象を抑制し,患者の予後や生活の質の改善をもたらす大変有用な薬剤であるが,有害事象として顎骨壊死(以下,ONJ)の発症が問題である。BMA を安心して使用するには,ONJ の予防,ONJ 発症後の対応が重要である。静岡県西部地区では,浜松市歯科医師会を中心に BMA 投与に関する連携システムを構築し対応している。本システムを活用し,ONJ 発症後の終末期がん患者の在宅療養を支援することが可能であった症例について報告する。症例は 73 歳男性の終末期胸腺癌患者で,A 大学病院にて骨転移に対してゾレドロン酸を使用された。左下顎側切歯の抜歯後に ONJ を発症したため,ゾレドロン酸は中止となった。A 大学病院歯科口腔外科にてのちに腐骨除去された。その後,左下臼歯部に歯周炎による排膿があり,外来で定期的に洗浄および抗菌薬投与にて対応されていた。終末期となり A 大学病院に入院されたが,在宅療養を希望されたため退院。 ケアマネジャーの紹介により本システムを使用して歯科訪問診療にて対応した。数回の歯科処置を実施し,最期まで良好な口腔内環境を維持し経口摂取を支援できた。在宅療養を希望する終末期がん患者で ONJ を発症している,あるいはそのリスクがある場合,本システムは大きな支援となると考えられる。より多くの患者が恩恵を受けられるよう,今後も本システムの周知活動を各方面に続け,発展させていきたい。
著者
原 豪志 戸原 玄 近藤 和泉 才藤 栄一 東口 髙志 早坂 信哉 植田 耕一郎 菊谷 武 水口 俊介 安細 敏弘
出版者
一般社団法人 日本老年歯科医学会
雑誌
老年歯科医学 (ISSN:09143866)
巻号頁・発行日
vol.29, no.2, pp.57-65, 2014-10-16 (Released:2014-10-25)
参考文献数
32

経皮内視鏡的胃瘻造設術は,経口摂取が困難な患者に対して有用な栄養摂取方法である。しかしその適応基準はあるが,胃瘻造設後の経口開始基準や抜去基準はない。 われわれは,胃瘻療養中の脳血管障害患者の心身機能と摂食状況を,複数の医療機関にて調査したので報告する。133 名 (男性 72 人,女性 61 人)を対象とし,その平均年齢は77.1±11.3 歳であった。患者の基本情報,Japan Coma Scale (JCS),認知症の程度,Activities of daily living (ADL),口腔衛生状態,構音・発声の状態,気管切開の有無,嚥下内視鏡検査 (Videoendoscopic evaluation of swallowing,以下 VE)前の摂食状況スケール (Eating Status Scale,以下 ESS),VE を用いた誤嚥の有無,VE を用いた結果推奨される ESS (VE 後の ESS),の項目を調査した。 居住形態は在宅と特別養護老人ホームで 61.3%を占め,認知症の程度,ADL は不良な対象者が多かったが,半数以上は口腔衛生状態が良好であった。また,言語障害を有する対象者が多かった。対象者の82.7%は食物形態や姿勢調整で誤嚥を防止することができた。また,VE 前・後の ESS の分布は有意に差を認めた (p<0.01)。胃瘻療養患者に対して退院後の摂食・嚥下のフォローアップを含めた環境整備,嚥下機能評価の重要性が示唆された。
著者
佐々木 健 池田 和博
出版者
一般社団法人 日本老年歯科医学会
雑誌
老年歯科医学 (ISSN:09143866)
巻号頁・発行日
vol.29, no.1, pp.29-35, 2014-07-22 (Released:2014-08-15)
参考文献数
10

歯科訪問診療において,歯科医師が認知症患者対応に際し直面する課題や問題点を把握する調査を行った。北海道歯科医師会員から歯科医師 760 人を抽出(抽出率約25%)し調査対象とした。質問紙を用い,平成 22 年 1 月における歯科訪問診療実施の有無,歯科訪問診療対象患者に占める認知症患者の割合,他の医療・介護分野との連携状況,認知症患者への対応に際し直面する課題や問題点等などについてデータ収集した。同月に歯科訪問診療を実施した者のみを分析対象者とした。 分析対象者が実施した歯科訪問診療の対象患者の約 40%は認知症であった。 他の医療・介護分野との連携は,介護事業所・施設との間が 33〜35%,ケアマネジャーとの間が 16%であり,十分とは言いがたかった。 直面する課題や問題点については,「義歯関係の治療の場合,認知症のない方と比べかみ合わせの調整が難しい」75.3%,「言語によるコミュニケーションが難しい」70.0 %,「認知症を考慮した上で,療養上の指導を行うことが難しい」62.4%など,いずれの項目も頻度が高かった。 大半の歯科医師は認知症患者に手探りあるいは試行錯誤しながら対応しているものと推察され,歯科医療従事者向けに何らかの研修システムの導入が望ましいと考えられた。
著者
竹原 祥子 下山 和弘
出版者
一般社団法人 日本老年歯科医学会
雑誌
老年歯科医学 (ISSN:09143866)
巻号頁・発行日
vol.21, no.4, pp.403-406, 2007-03-31 (Released:2014-02-26)
参考文献数
7
被引用文献数
1
著者
竹原 祥子 下山 和弘
雑誌
老年歯科医学 = Japanese journal of gerodontology (ISSN:09143866)
巻号頁・発行日
vol.21, no.1, pp.44-47, 2006-06-30
被引用文献数
1
著者
栗原 由紀夫 大熊 貴子 平田 優子 杉山 清子 高橋 弥生 野中 美保子 宮本 光也 山本 規貴 杉山 総子 米山 武義
出版者
一般社団法人 日本老年歯科医学会
雑誌
老年歯科医学 (ISSN:09143866)
巻号頁・発行日
vol.28, no.1, pp.49-54, 2013-07-20 (Released:2013-07-27)
参考文献数
9

地域の要介護高齢者を支えるために,多職種間の連携・協働は不可欠である。しかしながら,必ずしも歯科医療従事者とその他の職種との連携は十分といえない。そこで「地域における顔の見える連携の構築」を目指して,「口腔ケアネットワーク(三島)」を立ち上げた。現在まで 2 回のシンポジウムを含む研修会を定期的に開催している。平成 24 年 10 月 20 日に開催した地域連携シンポジウムを通じて,患者や家族の思いをとらえ,情報と目的意識を共有して見守っていくことが関わる専門職の責務であり,地域の力になることを提言した。
著者
坪井 真
出版者
一般社団法人 日本老年歯科医学会
雑誌
老年歯科医学 (ISSN:09143866)
巻号頁・発行日
vol.25, no.2, pp.147-152, 2010 (Released:2011-05-10)
参考文献数
6
被引用文献数
1
著者
清住 沙代 雨宮 智美 大屋 朋子 多比良 祐子 高柳 奈見 奥井 沙織 馬場 里奈 藤平 弘子 相川 真澄 並木 修司 會田 貴久 酒井 克彦 山崎 喜範 蔵本 千夏 渡邊 裕 外木 守雄 武井 泉 山根 源之
出版者
一般社団法人 日本老年歯科医学会
雑誌
老年歯科医学 (ISSN:09143866)
巻号頁・発行日
vol.25, no.4, pp.382-386, 2011 (Released:2011-05-25)
参考文献数
18

東京歯科大学市川総合病院 (以下当院) では, 内科, 歯科·口腔外科 (以下当科), 眼科の3科が共同で, 糖尿病患者の状態把握を行う合同調査を開始した。その結果から, 65歳以上の糖尿病患者の口腔衛生状態を調査し, 歯科衛生士がどのように介入すべきか検討を行った。対象は, 平成19年11月から平成20年10月までの1年間に, 当院内科を受診し, 当科の受診に了承された糖尿病患者142名のうち, 65歳以上の有歯顎者43名 (男性20名, 女性23名, 平均年齢69.2歳) とした。診査内容は性別, 年齢, 糖尿病の罹患期間, 網膜症の有無, 糖尿病の治療方法, HbA1c, 歯槽骨吸収程度, 現在歯数, PCR, BOPの10項目である。網膜症は, 糖尿病合併症のうち, 早期に症状が現れるため, 眼科医と協力し診査内容に含めた。今回, これらの診査内容から, 年齢, PCR, BOP, 現在歯数, HbA1cの5項目に着目し検討を行った。年齢とPCR, BOP, 現在歯数の検討を行った結果, 年齢が高い程, PCRとBOPの値は高い傾向を示し, 相関性を認めた。また, 現在歯数は70~74歳で最も多く, 75歳以上では減少傾向を示した。HbA1cとPCR, BOP, 現在歯数の検討を行った結果, 相関性は認められなかった。年齢と口腔衛生状態には相関性が認められ, 糖尿病の病態と口腔衛生状態に相関性は認められなかったことから, 糖尿病罹患の有無にかかわらず, 高齢者の増齢に伴い歯科衛生士による口腔衛生指導が重要であると考えられた。