著者
栗林 喬 金桶 光起 渡邊 健一
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.107, no.9, pp.624-631, 2012 (Released:2017-12-15)
参考文献数
18
被引用文献数
1

セルレニン耐性を指標としたカプロン酸エチル高生産酵母の育種方法は,日本醸造協会をはじめ,各県公設研究機関,酒造メーカーなどで幅広く利用されている。しかし本法による酵母を用いた吟醸酒は,カプロン酸によるオフフレーバーが問題となる場合もある。著者らは,カプロン酸エチル高生産酵母を用いた吟醸酒において総脂肪酸の大部分をカプロン酸が占めるという知見に基づき,酵素法によるカプロン酸の定量法を設定するとともに,本法がカプロン酸エチル濃度の推定にも有効であることを示した。製造現場でも利用できる簡易な方法なので,吟醸酒の品質管理の参考にしていただきたい。
著者
入江 元子
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.105, no.7, pp.440-446, 2010 (Released:2016-01-21)
参考文献数
11
被引用文献数
1

食品由来の特定成分はアルコール代謝に影響を与えることから,二日酔いの軽減や防止などに用いられてきた。著者らは清酒粕による酔いの低減効果を報告しているが,その後新たに乳酸菌発酵酒粕を開発し実験動物を使用して調べた結果,様々な機能性,例えば体重増加抑制,脂肪蓄積抑制,血中脂質改善などの効果を持つことを見出している。更に,飲酒前にこの乳酸菌発酵酒粕を摂取すれば,血中アルコール濃度が低減することも判明した。本稿ではこのアルコール濃度低減効果に関する被験者データおよび推測される作用機序について解説して頂いた。
著者
岡田 孝彦
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.96, no.2, pp.86-93, 2001-02-15 (Released:2011-09-20)
参考文献数
1

ビールの製品ラインは壜, 缶, 樽に大別され, それぞれの容器特性に応じた設備構成となっている。パッケージング工程の役割としては, 醸造工程でつくられたビールを品質低下させることなく容器に充填するのは勿論のこと, その後の保存性を確保するために確実に密封すること, 商品としての美観性を損なわないよう仕上げることが重要である。
著者
町田 晴仁
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本醸造協会誌 = Journal of the Brewing Society of Japan (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.91, no.3, pp.189-193, 1996-03-15

一昨年10月, サッポロビ-ル恵比寿工場跡地に, 新しい都市空間"恵比寿ガーデンプレイス"がオープンした。これは21世紀の都市モデルとして企画された生活と文化の多種機能を有する複合都市である。この事業に当初から係わった筆者に, 開発の経緯や施設, そして1年半経った現在の状況等を紹介していただいた。
著者
小島 正明
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.105, no.5, pp.294-299, 2010 (Released:2012-02-24)
参考文献数
24
被引用文献数
1

味噌は塩分が多いという固定概念から,味噌と高血圧に関する十分なデータがないのにも拘わらず味噌の消費が減少している。そこで,著者らは味噌の消費拡大を目的として,食塩を添加しなくても腐敗することのない大豆発酵物(無塩味噌粉末)の安定した製造方法を確立している。今回はこの無塩味噌粉末のデザート,チーズ製品,総菜への応用と,生理学的機能性としてアレルギーやアトピー症状の軽減や抗肥満効果が期待できることを解説いただいた。
著者
土田 靖久 大江 孝明 岡室 美絵子
出版者
日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.110, no.7, pp.489-495, 2015-07

機能性成分については,疲労回復効果や血流の改善効果を有するクエン酸などの有機酸,糖アルコールの一種で整腸作用を有するソルビトールおよび抗疲労作用や血圧上昇抑制作用を有するポリフェノール類といった梅酒に豊富な成分やフリーラジカル消去活性で示した抗酸化能を対象としてきた。香気成分については,'甲州小梅'でγ-デカラクトン,δ-デカラクトンが甘い香りに大きく寄与することが報告されていたが,全国の60%以上を生産する和歌山県での主力品種'南高'に関する報告はほとんどなかった。'南高'果実は,完熟期が近づくとフルーティーな香りを放ち,このような果実を梅酒原料として用いると,モモ様のフルーティーな香りをもつ梅酒に仕上がることが知られている。よって,我々は'南高'を原料とした梅酒の香気成分を調査し,特徴的な芳香成分の一部が,γ-デカラクトン(モモ様),δ-デカラクトン(モモ様),酪酸エチル(パイナップル様)および酢酸ブチル(リンゴ様)であり,青っぽい香りが安息香酸エチル(シバ様)であることを明らかにした。その上で,これら香気成分や梅酒の苦味成分として報告されているプルナシンおよびシュウ酸を対象として栽培方法との関係を調査してきた。これらの調査の中で,原料果実の収穫時期や追熟処理が機能性成分,香気成分および苦味成分含量に大きく影響することを明らかにしてきた。一方で,果実品質は栽培環境にも影響を受けることが知られており,リンゴ果実では芳香成分量に影響することが報告されている。よって,梅酒についても園地条件などの栽培環境により香気成分量等に違いが生じることが予想される。そこで,我々は現在,栽培環境と梅酒品質との関係を調査しており,ここでは,光条件や土壌条件といった栽培要因が梅酒の品質に及ぼす影響について紹介する。
著者
山田 康枝 江口 将也 伊豆 英恵 後藤 邦康 須藤 茂俊
出版者
日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 = Journal of the Brewing Society of Japan (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.105, no.9, pp.609-614, 2010-09-15
参考文献数
16
被引用文献数
1

本研究では、中枢神経系においてリラックス効果に主要な働きをしているGABAA受容体に対する日本酒成分の効果を明らかにするため、アフリカツメガエル卵母細胞に発現したGABAA受容体のチャンネル活性への日本酒成分の影響を検討した。受容体へ効果のある物質を特定しやすくするため、イオン交換クロマトグラフィーで日本酒を分画し、揮発性成分を除き濃縮するために凍結乾燥を行い、塩基性アミノ酸画分、中・酸性アミノ酸画分、有機酸画分、糖画分を得た。これらの日本酒画分存在下で測定を行った結果、得られた全ての画分にGABAA受容体を活性化する成分が存在することが示された。特に、有機酸を主に含む画分において、GABAが含まれないのにも関わらず、GABA活性が存在し、さらに高い活性化率を示すことがわかった。以上のことから、日本酒にエタノールやGABA以外のGABAA受容体活性化成分が存在することが示唆された。
著者
栗原 雅直
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.95, no.9, pp.620-624, 2000-09-15 (Released:2011-09-20)

酒を多く飲んだときの失敗談はよく聞く話であるが, 生命に関わる問題も発生することを留意する必要がある。本稿では酒を飲んだときの傾向と対策を医学の面から解説していただいた。
著者
柳田 藤治 小泉 幸道 村 清司 田中 秀夫
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.89, no.9, pp.698-703, 1994
被引用文献数
1 1

著者らは今年の4月末から5月上旬のゴールデンウィークを中心として, ベトナムへ渡り, ベトナム各地の魚醤油の加工場や自家製造の現場を幅広く視察してきた。<BR>この案内役のジュオン氏もこの道の大家とあって, 貴重な発見が多々あったと聞いている。
著者
中村 孝士
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.99, no.2, pp.93-99, 2004-02-15 (Released:2011-09-20)

真空凍結乾燥法は食品, 医薬品などの製造に広く利用され, 現在の社会生活を支える上でなくてはならない存在になっている。一口に真空凍結乾燥といっても被乾燥物の性状や乾燥目的によりその方法は異なり, それぞれ最適な方法が選択されている。真空凍結乾燥法の用途は限りなく拡大しつつあるが, コストや操業の季節変動などの課題も抱える。凍結乾燥に詳しい筆者に真空乾燥法の概要と業界の実状などを解説していただいた。
著者
高橋 仁 田口 隆信
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.98, no.9, pp.598-609, 2003-09-15 (Released:2011-09-20)
参考文献数
12
被引用文献数
2

本年度の全国新酒鑑評においても優秀な成績をおさめた酒造好適米の新品種「秋田酒こまち」について, その育成経過と酒造適性について解説していただいた。秋田酒こまちの開発手順は, 現在もしくはこれから酒米の育種に携わる方々に大いに参考となるであろう。
著者
山本 祥一朗
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.99, no.2, pp.106-111, 2004-02-15 (Released:2011-09-20)

酒精強化ワインであるボルトとマディラの伝統的な酒造場の訪問・体験記である。これらは輸出される比率が高く, 現地で一般的に飲まれる酒としての蔭はうすい。それでも今なお人々の誇りであり, 堂々とした存在感がある。その様な現地から眺めた日本の酒類消費に対する提言も汲み取っていただきたい。
著者
萱島 須磨自
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.83, no.1, pp.25-28, 1988-01-15 (Released:2011-09-20)

吟醸酒は, 低落傾向にあった清酒業界の救世主とも称すべき貴重な存在である。しかしながら, この吟醸酒が世に現われ人々にもてはやされるまでには, 長い苦難の道のりが必要であったことを知る人は少ない。筆者は四半世紀も前に吟醸酒の市販を決意し実施に踏切った。今日の吟醸酒時代を招来したパイオニアに25年間の苦心と創意工夫とを語っていただいたが, 吟醸酒をこよなく愛し育ててきた筆者は現在の吟醸酒ブームについて大きな危惧を抱いている。味読をお願いしたい。
著者
国税庁
出版者
日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.111, no.12, pp.790-800, 2016-12
著者
岩崎 功 山中 寿城
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.98, no.10, pp.690-699, 2003-10-15 (Released:2011-09-20)
参考文献数
25

芋焼酎はその特徴的な風味が愛飲家に親しまれている。芋焼酎製造の麹原料にはおもに米麹が使われているが, 最近は品質の多様化の一環として麹も芋から造る純芋焼酎の開発が試みられてきている。筆者らは焙妙処理した芋を使って芋麹について検討し, 効率的な純芋焼酎の開発を行った。麹造りから実仕込みに至るまでの検討過程を紹介していただくとともに, 芋麹における焼酎白麹菌の興味深い酵素生産特性について詳細に記述していただいた。
著者
Kazuo NAKAMURA Kotoyoshi NAKANISHI Hiroto HOMMA
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
JOURNAL OF THE BREWING SOCIETY OF JAPAN (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.107, no.11, pp.830-835, 2012 (Released:2017-12-15)
参考文献数
15

醸造食品の製造には,麹菌Aspergillus oryzaeを中心とした糸状菌が用いられている。糸状菌の仲間には,きのことしてなじみの深い担子菌が自然界に分布していて,春秋の季節には,私たちの食卓に上ることが多い。きのこは糸状菌の仲間であり,麹菌よりも大型で複雑な形態の子実体を形成し,麹菌と同じように分解酵素を生産することが知られている。本解説では,これまで食材として見られていた担子菌・きのこの酵素生産性に着目して,発酵食品の製造への利用への研究が進められていること,著者らが進めているきのこの耐塩性プロテアーゼの検索に関する研究成果ときのこの醸造への利用の展望についてわかりやすく解説していただいた。
著者
田村 隆幸
出版者
日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 = Journal of the Brewing Society of Japan (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.105, no.3, pp.139-147, 2010-03-15
参考文献数
28
被引用文献数
2

酒と料理との関係は,お互いに引き立て合うことが肝要だが,ワインによっては魚介類の生臭味を強調させてしまうことがある。著者らの研究によって,その一因がワインの鉄含量によることが確かめられた。本記事をワインと魚介料理を楽しむための参考にしていただければ幸いである。一読をお薦めしたい。

1 0 0 0 OA 口噛酒とは (1)

著者
山下 勝
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.94, no.1, pp.38-46, 1999-01-15 (Released:2011-09-20)

植物原料を噛んだものを溜めておき, アルコール発酵を誘発してつくられる, いわゆる口噛みの酒は, 酒の起源の一つであろう.中南米, 南太平洋諸島, 東南アジアと広い地域にわたって存在していることが報告されているが, 製法のルーツ, 関連する微生物や製法と製品成分の関係などについては不明の点が多かった。過去の文献データと合わせて, 実際の製造実験で得られた豊富なデータからの考察も含めた一連の研究の集大成から「口噛酒」の謎に迫っていただいた。