著者
鈴木 康司 飯島 和丸 坂本 幹太 佐見 学 山下 博
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.101, no.2, pp.94-103, 2006-02-15 (Released:2011-09-20)
参考文献数
36
被引用文献数
1 1

乳酸菌の中にビールを濁らせる菌と濁らせない菌が存在し, その形質がホップ耐性の有無と密接に関連することは以前から知られていたが, 筆者らは最新の遺伝子組替え手法を駆使してホップ耐性を司る遺伝子を特定した。これまで不明であったホップ耐性の機構解明のみならず, 現場的な微生物管理にも応用可能であり, 今後の展開が期待される研究である。
著者
木下 恵美子 山越 純 菊地 護
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.89, no.2, pp.126-130, 1994-02-15 (Released:2011-09-20)
参考文献数
20
被引用文献数
2 9

筆者らは醤油のエタノール処理分画物から, 高血圧モデルラットに対し経口投与で顕著な血圧降下作用を示すことを見出し, これが大豆に含まれるニコチアナミンであることを推定した。しかし, この物質は大豆食品の加工方法によっては消滅し, 血圧降下機能も低下する。この種の生体関係の話の内容は難解なものになり勝ちであるが, 極めて平易に解説していただいた。
著者
Tomoko KOBAYAKAWA
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
JOURNAL OF THE BREWING SOCIETY OF JAPAN (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.106, no.2, pp.81-89, 2011 (Released:2016-06-14)
参考文献数
27

淡口醤油は国内醤油の15%を占めるに過ぎないが,調理素材の色や味を生かし,だし風味を生かすので,特にうす味嗜好の関西地方で使用されている。著者は濃口醤油より淡口醤油の方が,塩味の閾値は低く,かつおだしや昆布だし風味の閾値も低く,さらに淡口醤油とかつおだしとの併用により塩味が増強されることを官能評価より明らかにし,調理に淡口醤油を使用することは,目的とする塩味に調節し易く,だし風味を効かせた低塩料理につながることを示唆しているので,解説いただいた。
著者
菅野 道廣 高松 清治
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.99, no.3, pp.148-155, 2004-03-15 (Released:2011-09-20)
参考文献数
34
被引用文献数
1 1

大豆は米と共に最も馴染み深い食品であり, 機能性の優れた食品でもある。このことは大豆を使った食品群の豊富なことからも経験的に感じてきたことである。その機能性の宝庫である大豆タンパク質の生理活性成分の効用について先端的な研究例を紹介していただいた.(ここで言う大豆タンパク質とは, 学術研究に汎用されている純度90%程度の分離大豆タンパク質標品で, タンパク質以外にイソフラボン, サポニンなどを含んでいる。)
著者
川戸 章嗣
出版者
日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.109, no.12, pp.846-851, 2014-12

「和食:日本人の伝統的な食文化」が無形文化遺産に登録されるまでもなく,国内には創業900年になろうとする日本酒の蔵元で製造が続いており,世界に例を見ない。大手日本酒メーカーの歴史を通して世界へのアピールを纏めていただきましたので,日本人の遠慮深さを少し返上するべくご一読を!!日本各地には数百年の歴史ある蔵元があり,立派な土蔵の中に保存されている古文書の整理は手つかずとの話をよく聞く。そういった中から歴史の隙間を埋める資料が発見される事を待ちたい。
著者
鈴木 基子
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.100, no.9, pp.598-606, 2005

近年, 日本酒の海外輸出量の伸びが著しく増えており, 国税当局も輸出促進セミナーを開催するなどの支援を表明している。本稿では, アメリカ在住の筆者に, 現在のアメリカにおける日本酒事情を流通の面からご紹介いただいた。日本酒メーカの方だけでなく, 様々な立場の方にも参考になる解説である。
著者
岩屋 あまね
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.97, no.11, pp.760-765, 2002-11-15 (Released:2011-09-20)
参考文献数
12

γ-アミノ酪酸 (GABA) は, 動植物など自然界に広く分布するアミノ酸の一種で, 哺乳動物の脳や脊髄に存在する抑制系の神経伝達物質であり, 血圧上昇抑制・抗更年期・脳代謝亢進作用等を有することで知られ, GABA高含有機能性食品開発を目的とした研究も数多くなされている。麹菌は, グルタミン酸を脱炭酸してGABAを生成する。味噌用米麹および米味噌のGABA含量, GABA高含量米味噌製造方法の検討もなされている。今回は, 筆者に, 鹿児島県の人々に好んで食べられる, 麹歩合のきわめて高い短期間熟成の, 独特の香味を持つ麦味噌 (多麹麦味噌) の機能性について, 麦麹由来のGABAを中心に, 抗酸化活性についても, 詳細に解説していただいた。
著者
工藤 デヴィッド
出版者
日本醸造協会
巻号頁・発行日
vol.104, no.7, pp.524-530, 2009 (Released:2011-03-05)
著者
小泉 淳一
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.86, no.1, pp.8-12, 1991-01-15 (Released:2011-09-20)
参考文献数
2

醸造分野のみでなく伝統産業全般に通じる技の伝承にコンピュータがどこまでサポートしてくれるかを解説していただいた。目新しい用語も多く出てくるが, その解説から, 現段階でコンピュータが代替できる機能とその内部構造, 人間との違いと将来機械がどのように進化しても限界のある点を明示し, コンピュータと共存繁栄できる新時代の匠をめざす人たちには役立つところが多い。
著者
小泉 淳一
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.86, no.1, pp.8-12, 1991

醸造分野のみでなく伝統産業全般に通じる技の伝承にコンピュータがどこまでサポートしてくれるかを解説していただいた。目新しい用語も多く出てくるが, その解説から, 現段階でコンピュータが代替できる機能とその内部構造, 人間との違いと将来機械がどのように進化しても限界のある点を明示し, コンピュータと共存繁栄できる新時代の匠をめざす人たちには役立つところが多い。
著者
小関 卓也 岩野 君夫
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.93, no.7, pp.510-517, 1998-07-15 (Released:2011-09-20)
参考文献数
29
被引用文献数
2 6

焼酎製造には様々な原料が使用されており, その原料の違いによる個性が備わっていると考えられる。しかしながら, 芋焼酎でその特徴香が甘藷から由来するモノテルペンアルコール類であることが明らかにされていることなど以外に, 原料由来の香味についての詳細な研究は多くはない。本解説では焼酎, 特に泡盛中のバニリンの由来を探求し, バニリンが植物細胞壁のリグニンから麹菌の酵素, 蒸留中の化学反応, さらには貯蔵中の化学反応を経て生成されることを明らかにし, さらには関与する酵素の遺伝子レベルでの研究も含めて, 一連の研究成果について紹介していただいた。このような研究の積み重ねにより, 焼酎をはじめとする酒類の香味に対する原料の意義や, 貯蔵も含めた製造工程の意義が明らかにされ, 酒類の多様化にも寄与していくことが期待される。
著者
山岡 千鶴 栗田 修
出版者
日本醸造協会
巻号頁・発行日
vol.110, no.7, pp.462-469, 2015 (Released:2016-01-20)
著者
山岡 千鶴 栗田 修
出版者
日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.110, no.7, pp.462-469, 2015-07

清酒の多様化を図る上での重要な要素は,味と香りの構成成分とその濃度であり,それらを変化させるための技術開発が求められる。清酒は,酒母工程で酵母を純粋培養することによって野生酵母の影響を受けずに安定した製造が行われてきた。酒質にはその酵母の特徴が反映されるため,清酒の多様化・高品質化を目指して,数多くの酵母が育種されてきた。味では多酸性酵母や高リンゴ酸生産性酵母,香りでは酢酸イソアミル高生産性酵母やカプロン酸エチル高生産性酵母が例として挙げられる。今や吟醸酒の製造にはカプロン酸エチル高生産性酵母が欠かせない存在となっているが,もろみ後半でのキレが鈍って低温長期もろみになりやすいという傾向やカプロン酸エチル過多により香味バランスが崩れる場合がある。そこで,これらの対策として,単一の酵母でなく,タイプの異なる複数の清酒酵母を用いて仕込む混合培養法がとられている。このように,清酒製造では,単一酵母の純粋培養だけでなく,同種酵母の混合培養が酒質の安定製造に重点をおいた手段として利用されている。一方,ワインにおいては,清酒が同種酵母の利用だけに留まるのに対して,古くから土着の微生物を積極的に利用している。発酵初期において,Kloeckera属やHanseniaspora属,Candida属,Pichia属やKluyveromyces属などの酵母が関与し,主発酵酵母であるSaccharomyces属がアルコール発酵する段階で死滅するが,これらの非ワイン酵母はワインの香りや味に作用している。例えば,混合培養にH. uvarumやC. stellataを用いるとワインの香り(アロマ)が向上することや,C. cantarelliiを用いると味に幅をもたらす効果のあるグリセロールが増加することが報告されている。筆者らは,清酒の多様化を図る手段として,このワイン製造における異種酵母の混合培養の考え方に着目し,清酒製造への導入を検討したので紹介する。
著者
久寿米木 一裕
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.96, no.1, pp.33-42, 2001-01-15 (Released:2011-09-20)
参考文献数
33
被引用文献数
1 3

醤油および味噌醸造にとって耐塩性酵母の関与は重要である。また乳酸菌と酵母との拮抗作用によっても成分バランスが崩れ製品の品質を微妙に左右する。筆者はこれまでの一連の研究で酵母を改変し, 幾つかの優良変異株を取得した。ここでは, 酵母の育種方法と取得した変異株の諸性質及び利用について解説していただいた。
著者
有山 薫
出版者
日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.109, no.6, pp.402-409, 2014-06

昨年の秋ごろレストランにおける食材の誤表示が発覚し,食品の原材料,産地の表示問題が改めて注目を集めた,酒類については地理的表示に関する表示基準により,本格焼酎の「壱岐」,「球磨」,「琉球」,「薩摩」,清酒の「白山」が保護されているところであるが,平成25年7月,ワインの「山梨」も新たに国税庁長官から指定されている。また,果実酒の平成24年度の課税移出数量は約35万KLとなっており,ワインがかなり普及してきている。しかしながら,本稿には日本産ブドウ原料との表示がある市販ワインの原料が外国産である可能性が示されている。ワイン製造に携る方々には本稿をよくお読みいただき,もう一度自社製品の表示について消費者の視点に立って見直して頂きたい。
著者
古川 壮一 平山 悟 森永 康
出版者
日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 = Journal of the Brewing Society of Japan (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.109, no.4, pp.228-238, 2014-04

日本の伝統的発酵食品に関与する微生物は,麹菌,乳酸菌,酵母,酢酸菌などであり,これらの微生物は古くから生育環境が類似しているため共に協力しながら,共存・共生する環境で利用されてきました。こうした微生物内の相互作用が,発酵プロセスの安定化に重要な役割を果たしてきたと思われます。ここでは伝統的発酵食品として,清酒・ワイン・ビール・蒸留酒・酢・醤油・味噌・乳製品などに関わる微生物の共存と共生の意義について解説して頂きました。