著者
佐藤 圭吾 鍋倉 義仁 青木 俊夫 金桶 光起 渡辺 健一 月岡 本
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.97, no.5, pp.377-381, 2002-05-15 (Released:2011-09-20)
参考文献数
14

市販の低アルコール, ソフトタイプ清酒27点について一般成分分析, 糖組成および有機酸組成の分析を行い結果を得た.1.一般成分の分析を行ったところ, 酸度, アミノ酸度, 日本酒度およびアルコール分は幅広い成分値を示していた.また, 日本酒度および酸度に直線関係がみられた.2.糖組成は, その主たる成分はグルコースであった.3.有機酸組成は, 乳酸が主体であったが, いくつかの試料はクエン酸またはリンゴ酸の含有量が比較的高いものがみられた.4.官能評価において香味の不調和を指摘する意見が多かった.また, ピルビン酸を前駆体とするダイアセチル臭やアルデヒド臭の指摘が散見された.
著者
平野 博之 佐野 芳雄
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.88, no.8, pp.613-617, 1993-08-15 (Released:2011-09-20)
参考文献数
24

日本で好まれる米はジャポニカ米だが, 海外ではインディ力米が好まれる。前者は粘りがあるのに比して, 後者はパサパサである。この米の品質はアミロースの含量によっている。そのアミロースの合成はWaxy (wx) 座と呼ばれる遺伝子座の働きによって調節されている。イネwx座の遺伝子産物 (Wxタンパク質) はアミロースの合成を触媒するスターチシンターゼ (EC2.4, 1.21) である。米の品質を左右するwx座の性質と機能についての先端的な遺伝学的, 分子生物学的研究をわかり易く解説していただいた。
著者
髙橋 梯二
出版者
日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.109, no.1, pp.29-35, 2014

わが国の酒類の「地理的表示」としては,これまでに清酒の白山,単式蒸留しょうちゅうの薩摩,琉球,球磨,壱岐が指定されていたが,新たに果実酒(ワイン)の山梨が指定された。わが国では,酒類だけでなく,様々な飲食物で産地の名称を使用したものが多くあるが,法律に基づく地理的表示の整備はまだこれからである。今回は,地理的表示の持つ意義や今後の課題について,詳しく解説していただいた。
著者
楠見 晴重
出版者
日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.109, no.1, pp.36-43, 2014
被引用文献数
1

京都盆地の地下には約211億トンという,琵琶湖に匹敵する豊富な水量の水瓶(京都水盆)がある。この京都水盆へは,京都府から滋賀県,三重県にまたがる7,050km2の地域に降った雨から毎年45億トンが供給される。<br>平安京の昔から1200年間,京都の文化や伝統産業,たとえば茶道,京友禅,京豆腐や湯葉,伏見や京都の酒造りをこの良質で豊富な地下水が育んできた。<br>この大切な地下水資源を将来にわたって守り抜くために,著者は3次元地質構造モデルを作成され,地下水汚染対策に利用されています。<br>地球上では水不足が進行しており,2025年には48カ国17億人が深刻な水不足になると予想されている。この大切な水を守るために京都や日本から発信する必要があると述べられています。
著者
本藤 智
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.84, no.7, pp.453-459, 1989-07-15 (Released:2011-09-20)
参考文献数
73

米味噌の一般成分の中で水分を除けば最も多いのは炭水化物である。その主要構成成分をなす糖類の種類はま複雑多岐に亘っている。それらは大豆と米に由来し, 原料処理, 製麹, 発酵工程を経る間にダイナミックな変化を見せ, 製品の色, 香り, 味, 物性などに著しい影響を及ぼす。味噌製造中における糖類の果す役割に視点をおいて, これまでに得られた知見をまとめていただいた。
著者
舘 博
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.93, no.4, pp.251-256, 1998-04-15 (Released:2011-09-20)
参考文献数
28

醤油中にはジペプチドとして幾つかのX-Proが認められている。ペプチドのアミノ末端よりX-Proを特異的に遊離させるX-プロリルジペプチジルーアミノペプチダーゼ (XPAP) を筆者は麹菌から初めて見出した。またこの酵素は熟成の呈味形成に大きく関与することも明らかにした。本酵素の作用機作と呈味形成の役割を詳しく解説いただいた。
著者
安藤 義則
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.107, no.5, pp.300-305, 2012 (Released:2017-12-12)
参考文献数
18
被引用文献数
1 3

本格焼酎は日本古来の蒸留酒として,主に南九州で生産消費されてきた。1965年頃から現在に至る焼酎ブームにより全国に拡がり,日本の代表的な蒸留酒となってきた。本格焼酎は原料由来の独特な風味を持っているが,業界では消費者嗜好にあった焼酎の開発,研究が進められてきた。本格焼酎の中で,穀類焼酎は原料風味を弱く,芋焼酎・黒糖焼酎は原料の香味を強くする方向に流れになってきたが,香味成分の研究により原料の特徴の弱いあるいは強い商品など多様な商品群ができて欲しい。近年分析技術の進歩により,その原料風味の解明がなされるようになってきたので,今回は本格焼酎の香味成分の研究を紹介していただいた。
著者
堀江 修二 土佐 典照 細谷 達夫
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.87, no.1, pp.57-61, 1992-01-15 (Released:2011-09-20)
参考文献数
4
被引用文献数
2 2

A method for evaluating the quality of koji from various analytical data was proposed. Koji was digested in a solution containing acetate buffer, pH 5.0, at 55°C for 5 hr, and the filtrate of digestswas analyzed for specific gravity (Bé degree), glucose and amino acids. Moisture content (KM) of koji was also determined. From these results, true digestion value (SS), true saccharification value (ST), total potency (TR=SS×ST), true amino acidity (S A), saccharification ratio (1/SS), amino acid ratio (SA/TR), and true glucose (SG) were calculated by equations respectively defined. When values of koji for highly ranked sake (ginjo-koji) and for common sake were compared during the process of koji making, changes in measured values other than SA were smaller for the former koji than for the latter at the time of shimai-shigoto (2 nd mixing operation) and thereafter. When properties of koji were plotted in a 3-axle radar chart prepared from axles of TR, SA/TR, and ST/TR, koji for highly ranked sake showed lower TR and higher SA/TR than koji for common sake. A 5-axle radar chart prepared from axles of SS, ST, SA, KM and SG showed that koji for highly ranked sake gave almost regular pentagonal shapes, while koji for lowly ranked sake gave irregular pentagonal shapes having high KM and SG.
著者
塩谷 育生 築山 良一 古林 万木夫
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.98, no.11, pp.768-774, 2003-11-15 (Released:2011-09-20)
参考文献数
11

醤油は単に調味料というより素材を活かす天然の消臭素材であり, 醤油麹抽出物もまた消臭活性を有する食品素材である。ここでは, 醤油麹抽出物の消臭活性と食品加工への利用について解説していただいた。
著者
諏訪 芳秀
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.101, no.6, pp.376-383, 2006-06-15 (Released:2011-09-20)
参考文献数
12

レストラン等で「とりあえずビール」と注文されるように, ビールはアペリティフとして食欲を刺激し食事を美味しく感じさせて, 我々の食生活を豊かにしてくれる。本稿では, 食物認知としての食物刺激ではなく, 飲用後のビールが消化管内に到達した後の普遍的な生理特性としてのビールのアペリティフ効果のメカニズムと関連成分について解説していただいた。
著者
小林 統
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.91, no.7, pp.465-471, 1996-07-15 (Released:2011-09-20)
参考文献数
19
被引用文献数
1 1

酵母の凝集に関しては, 清酒酵母でも泡なし酵母でも種々研究され, 細胞壁の構造が関与していることが解明され, 実用化が進んでいる。ビール酵母でも酵母の凝集は発酵に大きな作用を及ぼすことは昔から知られていた。ここでは, 凝集に関与する遺伝子について筆者の研究をも紹介しながら, 分かりやすく解説していただいた。
著者
山口 仁美
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.108, no.10, pp.716-723, 2013 (Released:2018-02-13)
参考文献数
31

ニコチアナミンは高等植物に広く存在する非タンパク質構成アミノ酸である。近年,ニコチアナミンの抗高血圧作用が報告されており,食品に含まれるニコチアナミンの健康作用が期待され,様々な植物性食品における含量が報告されている。しかし,これまでの分析法には,醤油中ニコチアナミンを測定する上で問題があった。そこで,著者はマルチモードODSカラムのScherzo SW-C18を用いる高速液体クロマトグラフィー-タンデム質量分析法(LC-MS/MS)による,醤油およびその他の植物性食品のニコチアナミン分析法を確立したので,解説いただいた。今回示した分析法は,複雑なマトリックス(夾雑成分)の中から,イオン性で高極性の微量な機能性成分を,汎用的な手法で選択的かつ高感度に分析することを可能にしたものであり,食品中の他の機能性成分や危害要因の分析に,今後,この手法を応用できるので,ご一読いただきたい。
著者
吉田 元
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.95, no.10, pp.763-768, 2000-10-15 (Released:2011-09-20)
参考文献数
17

奄美諸島は現在は鹿児島県大島郡に属しているが, 中世は琉球王国に属していたこともあり, 独特の風俗習慣が残っている興味深い地域である。島特産の発酵食品はこのような他の地方にない奄美諸島の歴史と伝統から生まれたものである。
著者
橋爪 克己
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.110, no.1, pp.2-7, 2015 (Released:2018-04-12)
参考文献数
21

清酒には多数の苦味物質が含まれるが,大部分は閾値以下の濃度であり,単独で苦味を感じさせるものは少ない。著者らは以前,清酒のHPLC画分から呈味を手掛かりに苦味ペプチドを同定した。さらに最近,同様の方法で,フェルラ酸およびそのエチルエステルが強い苦味を呈することを見出した。フェルラ酸を含むフェノール酸は植物細胞壁の構成成分であり,清酒製造工程において麹の酵素によって遊離すると考えられている。本記事では,苦味物質としてのフェルラ酸等の同定,フェノール酸の原料米中の分布とその遊離に関わる麹菌酵素について,最新の研究成果をもとに解説いただいた。これらの苦味物質は特に活性炭未処理清酒で濃度が高く,近年増加している「無濾過」清酒の品質を考えるうえで,大変興味深い研究である。
著者
高島 正一
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.86, no.2, pp.115-119, 1991-02-15 (Released:2011-09-20)
参考文献数
5
被引用文献数
1

わが国の経済の進展は, 国民生活の上にもいろいろな形で波及し, 特に食生活では外食の機会の増加, 主婦の調理時間の短縮をはじめ, 世界の珍味を居ながらにして味わえるなど, その様変わりは彩しいものがある。いうまでもなく, それらが醤油の生産にも問題を投げかけている。永年醤油製造の第一線に携わって来られた筆者に忌憚ない見解を吐露していただいた。
著者
山本 綽
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.107, no.7, pp.499-506, 2012 (Released:2017-12-12)

この論文は,昨秋,札幌で行われたIUSM 2011 Sapporoでの明治の大化学者,高峰・北里両巨人についての講演から,高峰博士の業績を中心に,博士に私淑する著者によりまとめられたものである。著者は酵素工業の研究・生産・経営に長く携わってこられている方で,高峰博士の理解のための好適の一文である。
著者
井沢 真吾
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.105, no.2, pp.63-68, 2010 (Released:2012-02-13)
参考文献数
26

酵母が発酵によって生産するエタノールは,一方で酵母細胞自身にとって増殖や生理活性を阻害する毒物でもある。したがって,酵母はエタノールストレスに対する耐性メカニズムを備えていると考えられるが,その研究は主にmRNAの転写レベルで行われてきた。本論文の著者らは,エタノールストレス適応においてmRNA転写後の翻訳に至る過程で様々な調節が行われていることを明らかにした。また,清酒醸造においては酵母細胞内のmRNAの動態が他のエタノール発酵系と異なることを示した。