1 0 0 0 OA 発酵と貯酒

著者
宮島 豊
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.95, no.12, pp.856-866, 2000-12-15 (Released:2011-09-20)
参考文献数
15

従来, 日本のビールの大部分が含まれる下面発酵ビ地ルでは, 通気した冷麦汁ヘビール酵母を添加してアルコール発酵を起こさせ, 麦汁中の発酵性糖の大部分をエタノールに変える “発酵” と, 発酵の終わった発酵液を熟成し嗜好性のある飲料に仕上げる “貯酒” の2つに分かれていた。しかしながら近年, 香味の熟成に関する研究成果と, 技術革新による発酵・貯酒タンクの大型化・自動化により2つの役割を従来通りには考えない醸造方法が一般化してきている。
著者
松山 治雄
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.92, no.8, pp.588-591, 1997-08-15 (Released:2011-09-20)
参考文献数
5
被引用文献数
2 2

1994年酒税法の改正により小口醸造ビール (いわゆる地ビール) の製造が可能になり約3年後の現在では百社を超えるメーカーでエールやヴァイツェン等の様々なビールが造られるようになった。本場ドイツ仕込みのビール醸造技術者で, 永年にわたりビール醸造に携わってきた筆者が, 欧米の小口醸造ビールの成り立ちに触れるとともに, これからの地ビールのあり方について述べており, 清酒, ワイン, 本格しょうちゅう等の地酒メーカーにとっても, 大いに参考になると思われる。
著者
岩本 將稔
出版者
日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 = Journal of the Brewing Society of Japan (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.108, no.5, pp.318-325, 2013-05-15
参考文献数
21

カキは,中国が原生地であるとされているが,日本の風土に溶け込んだ極めて日本的な果樹で,学名をDiospyros kakiといい,海外でもkakiで通用している。7世紀末の藤原宮跡からは,モモ,クリなどとともに,多数のカキの種子が発掘されている。このように古い歴史を有するカキを原材料にして柿渋は製造されるが,その起源については十分わかっていない。ただ,長い歴史の中でこの柿渋を見事なまでに活用してきたのは日本人であろう。柿渋は柿タンニンを多く含むことから防水,防腐効果を有するため,古くから木製品・和紙への塗布や麻・木綿などの染色に利用されてきた。特に,農山漁村の自給自足の生活では日常的に用いられた。考古学の分野では,11世紀中葉には漆器の下地に柿渋が使用されていたという知見がある。戦国時代には,上杉謙信(1530~1578)が渋紙製の紙衣陣羽織(山形県上杉神社に現存)を鎧の上からまとい,戦障の指揮を執ったとされる。江戸時代になると庶民にも広まり,松尾芭蕉(1644~1694)は「奥の細道」の旅に出る際,防水,保温性に富んだ紙衣(紙子)を必需品として持って出かけたという。また,江戸時代には,庶民の生活必需品の枠を超え,各種産業へも利用が広がった。酒袋などの醸造用の搾り袋,漁網,渋紙,紙子,和傘,団扇等の生産や建材塗装には欠かせないものであった。このような柿渋も,現在では酒類清澄剤をはじめとして柿渋染めや建材への塗布などの利用はあるが,多用途に利用されていた時代と比較するとその利用は限られたものとなっている。本稿では,醸造分野における柿渋の利用の歴史の概要,さらに柿渋の主成分である高分子柿タンニンの分離法等,当社のこれまでの取り組みを紹介したい。
著者
丸山 新次
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.83, no.1, pp.8-16, 1988-01-15 (Released:2011-09-20)
参考文献数
4
被引用文献数
1

良い清酒を造るためには, 良い原料を上手に精米することが必要である。最近, 酒造原料の重量分布を調べ, 白米の品質チェックに役立てようとする試みがなされている。ここでは, その方法を紹介していただいた。
著者
大内 弘造
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.105, no.4, pp.184-187, 2010 (Released:2012-02-24)
参考文献数
18
被引用文献数
1 4
著者
河辺 達也
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 = Journal of the Brewing Society of Japan (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.102, no.6, pp.422-431, 2007-06-15
参考文献数
18
被引用文献数
2

日本醸造協会が関係する醤油, 味噌, 清酒, みりん, 酢は, 和食の「うまみ」を支え合う仲間といえる。麹を使用しアミノ酸が多いことが, これらの相性の良さにつながっていると考えられている。<BR>さて, みりんや清酒を使うと, 料理がおいしくなることは経験的に知られていたが, 科学的解明が行われるようになったのは最近のことである。筆者らは, 本みりん・清酒の調理効果について, 客観的なデータを基に検証を進め, また, 新たな効果や機能を見いだしている。若い人たちや海外の日本食レストランの方々にも, これらの調理効果をより一層PRしたいものである。
著者
平石 隆義
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.111, no.9, pp.594-599, 2016 (Released:2018-08-03)
参考文献数
3

酒類に用いられる容器は,新素材の登場や飲酒形態の変化など時代の要請とともに変わってくる。清酒では,一升瓶が減少し少量ガラス瓶容器が増えてきている。ワイン国であるフランスでも,核家族化等により1回の食事等では750ml瓶は消費しきれず,開封後も鮮度が保たれるバッグインボックス入りワインが普及してきている。これをさらに進めたPouch Up容器を清酒に取り入れたメーカーがある。この容器の利点や酒質への影響,さらにはリサイクル制度への対応などと今後の展望を解説いただいた。
著者
林 京子 田中 昭弘
出版者
日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 = Journal of the Brewing Society of Japan (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.108, no.6, pp.401-412, 2013-06-15
参考文献数
14

マイタケはサルノコシカケ目サルノコシカケ科のキノコであるが,所謂,サルノコシカケとは異なり,食用としても,香り,味および歯応えが良好で,現在は広く食卓に供されている。元来は深山幽谷に発生する希少なキノコであったが,1980年初め頃より栽培技術の開発および量産化に成功して生産販売が開始され,食品としての市場を確立して現在に至っている。量産技術により生み出されるマイタケは,季節を問わずに入手可能かつ品質に差が少ないという利点もあり,1980年後半より,抽出物あるいはその画分の研究が精力的になされた。その結果,抗腫湯化学療法剤による骨髄抑制の回復樹状細胞の成熟化などの免疫に関する薬理効果,あるいは,降圧血糖値低下血中脂質低下等,主に食物繊維が関与する機能と考えられる薬理効果が報告されている。(株)雪国まいたけ(以後当社と表記)は熱風乾燥マイタケ抽出物を健康食品MDフラクション(R)(以下MDと省略)として1997年に日本で,また,2000年に米国で発売を開始しており,この抽出物については,米国スローンーケタリング記念がんセンター(以下,MSKCCと省略)が,2001年から薬理研究を開始し,その後2004年には,手術および化学療法を施して既に治癒している元乳癌患者(治験時点では健常者の範疇)を対象として臨床試験(第一相:P-I/II;乳癌罹患歴があるためP-Iではない)を実施したへその結果,MDは一方的に免疫を尤進するのではなく免疫を制御する可能性が示され,その結果を2008年6月に第44回米国腫蕩学会(ASCO)で発表した。そこで,当社はこの免疫制御作用に着目して2008年に,(独)農業・食品産業技術総合研究機構生物系特定産業技術研究支援センター(生研センター)の平成20年度民間実用化研究促進事業に「まいたけ免疫制御成分の特定と機能性食品としての開発研究」をテーマとして応募し,採択され,3年間を事業期間として研究開発に着手した。研究開発の基本的なコンセプトを,マイタケに含有され,従来から免疫を允進する作用が明らかになっているB-グルカン以外の免疫制御成分を同定することに置いた。その結果,マイタケの貯蔵多糖と考えられるa-(1→6)分岐-a-(1→4)グルカンが意外にもインフルエンザ治療効果を有することを見出した(インフルエンザ治療効果評価は富山大学医学薬学研究部薬用生物資源学研究室が遂行)ので紹介する。しかしながら,マイタケの仕グルカンは生育,保存,抽出等の様々な条件で大きく含有量,分岐構造あるいは分子量が大きく変化し,その変化がインフルエンザ治療効果と密接に関係することが判明したため,先ずは,マイタケに含有されるa-グルカンについて説明する。

1 0 0 0 OA 大麦・麦芽 (1)

著者
福嶋 禎久
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.95, no.6, pp.395-403, 2000-06-15 (Released:2011-09-20)

穀物を原料とする酒は世界に数多くあるが, ビールほど穀物の生命力を巧みに利用している例は他にみられない。大麦は単なるデンプン原料ではなく, その発芽に伴うメタボリズムがビール造りに余すところなく活用されている。製麦は大麦のもつ生物としての能力をビール造りに結び付けるビール製造工程の第一歩である。
著者
山本 精一郎
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.99, no.2, pp.100-105, 2004

味噌の機能性として, コレステロール制御, 抗腫瘍性, 抗変異原性, 抗酸化作用などが知られている。特に, 1981年に平山雄博士 (元国立がんセンター研究所疫学部長) が, 味噌汁の摂取頻度と胃がん死亡率について疫学的調査を行い,"味噌汁ががん予防に効果がある" という説を出されて以来, 味噌の機能性に関心が集まり, 種々の機能が次々に明らかにされてきた。筆者は, 1990年にスタートしたコホート研究に携わられ, 大豆, イソフラボンの摂取が乳がんリスクの減少と関係があることを示して注目された。(編集部)
著者
上田 誠之助
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.92, no.10, pp.725-727, 1997-10-15 (Released:2011-09-20)
参考文献数
23

前報では, 米粉を固めて造るしとぎが口嘴酒にされ御神酒として供される風習について解説されたが, 今回は筆者の古代から現代に亘る幅広い調査結果に基づき, しとぎや牙米 (発芽米) から造られる醴酒 (一夜酒) を通じた古代の酒の変遷が明らかにされている。
著者
田村 博康 平田 大 栗林 喬 久米 一規 五島 徹也 中村 諒 渡邊 健一 赤尾 健 下飯 仁 水沼 正樹
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.110, no.12, pp.820-826, 2015
被引用文献数
2

今現在,大吟醸酒に代表される高級清酒の醸造には,広くカプロン酸エチルを高生産する酵母が使用されているが,様々な変異処理をほどこしているために,発酵が緩慢となり,さらには目的以外の変異がはいるというリスクもあった。筆者はそのリスクを取り除くための自然発生的な方法で目的株を分離することに成功し,遊離脂肪酸を測定することで迅速に識別する方法まで示した大変興味深い解説文である。ぜひご一読願いたい。
著者
包 啓安
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.91, no.8, pp.563-564, 1996-08-15 (Released:2011-09-20)

蘇東披は蘇転といい, 唐宗八大家として有名な詩人 (赤壁の賦など) 書家。北宗 (11世紀後半) の行政官と仕官したが, 時の高官とあわず, 江南 (杭州, 黄州) や華南 (広東, 海南島) に赴任させられた。広東での生活では自から酒を醸していた由で, 著書の中にこの酒経があるという。著者はこの風麹を検討してAsp oryzaeが主であることを明らかにしている。
著者
花井 四郎
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.89, no.1, pp.53-59, 1994

長い伝統に根ざした中国の酒類製造技術は日本の醸造技術にも影響を与えたとされているが, 両者は異なる道を歩んできた。中国には日本とは比較にならないほどの多種多様な酒類があり, 特に蒸留酒の白酒は顕著な香味の個性を有している。中国に度々赴かれ現場の様子に精通しておられる筆著に香味の特性に基づいた白酒の分類とそれぞれの特徴, さらには香味成分の分析値と製法の特徴との関連性などについて詳細な解説をしていただいた。
著者
水沼 正樹 平田 大
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.106, no.12, pp.794-800, 2011 (Released:2017-03-28)
参考文献数
35
被引用文献数
1

本誌読者に馴染みの深い出芽酵母Saccharomyces cerevisiaeは,真核モデル生物のひとつとして,種々の研究に用いられている。本稿では,出芽酵母を用いて得られた老化や寿命に関する研究成果を幅広く紹介していただいた。

1 0 0 0 紹興見聞記

著者
茂田井 円
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.88, no.9, pp.690-693, 1993

本年度は, 中国のバラ麹の酒, 中国のピール (次号) と中国に関する話題がいくつか取り上げられたが, 今回は, 日本にとって最もなじみの深い酒類の一つである紹興酒の最新の状況をご紹介いただいた。
著者
秋田 修
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.84, no.11, pp.739-745, 1989-11-15 (Released:2011-09-20)
参考文献数
36
被引用文献数
1

近年の吟醸酒ブームにともない, 香気生成能の高い酵母を造成しようとする試みが数多くなされている。本稿では酵母の香気生成の機構とそれを利用した香気生成能の高い酵母の分離について, 著者のこれまでの研究を中心に幅広く解説していただいた。
著者
渡部 貴志 藤井 力 家藤 治幸 北本 宏子
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.109, no.2, pp.82-88, 2014 (Released:2018-02-16)
参考文献数
23
被引用文献数
1

焼酎蒸留粕の有効かつ効率的な処理技術の確立は,過去20年以上にわたり業界の最重要課題である。筆者らは,酵母を用いた排水処理法という日本発信の技術をベースにして,飼料用酵母Candida utilisによる焼酎蒸留粕排水の窒素除去と資源化の検討を進めている。生物処理は課題が多いが,各種酵母を用いて窒素除去能強化方法の有効性について評価し最適化処理を探っていく手法は,興味深い知見と示唆を与えるものであり,今後の進展に期待したい。
著者
高尾 佳史 高橋 俊成 藤田 晃子 松丸 克己 溝口 晴彦
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.110, no.1, pp.48-55, 2015 (Released:2018-04-12)
参考文献数
18
被引用文献数
2

1)官能評価結果から,対照酒に比べて樽酒を摂取した場合,食品の旨味を強く,長く感じさせる効果があることが示された。2)清酒と料理を組み合わせたときの旨味後味を,味認識装置を用いて評価する方法を設定した。そばつゆやシーフードを食品サンプルとした場合には,対照酒に比べて樽酒では,旨味後味値が強くなっていた。3)食品の旨味後味に及ぼす樽酒の効果は,杉樽から抽出される物質に起因しており,比較的極性が高く,揮発しにくい成分と考えられた。杉樽から溶出するポリフェノールや多糖類の可能性が考えられるが,樽酒ではポリフェノール濃度が高いものの,多糖類の濃度には差が見られず,ポリフェノールやその配糖体の可能性が考えられる。