著者
吉本 慎吾 新見 龍男 加藤 弘義 関 卓哉
出版者
一般社団法人 セメント協会
雑誌
セメント・コンクリート論文集 (ISSN:09163182)
巻号頁・発行日
vol.73, no.1, pp.208-213, 2020-03-31 (Released:2020-03-31)
参考文献数
5

近年、環境問題として地球温暖化が深刻な問題となっており、普通ポルトランドセメントに比べてCO2排出量が少ない高炉セメントの使用推進が求められる。しかしながら、高炉セメントは初期強度発現性が低いことが課題である。本検討では、高炉セメントの初期強度発現性の改善として早強ポルトランドセメントと高炉セメントB種を混合した試製混合セメントの強度性状について検討を行った。その結果、材齢28日の圧縮強度が普通ポルトランドセメントと同程度となる水セメント比において、高炉セメントB種の混合率が70%未満であれば普通ポルトランドセメントと同程度以上の材齢1日強度を確保可能であり、CO2削減効果についても試算された。
著者
栗原 哲彦 吉田 拓矢 榎本 太一 甲賀 覚
出版者
一般社団法人 セメント協会
雑誌
セメント・コンクリート論文集 (ISSN:09163182)
巻号頁・発行日
vol.73, no.1, pp.340-347, 2020-03-31 (Released:2020-03-31)
参考文献数
11

化学目粗し法により打ち継いだ付着部は母材で破壊が生じるほどの付着強度を発揮し、NEXCO「構造物施工管理要領」の規定値1.5N/mm2を上回ることが分かった。また、母材が普通コンクリートであれば、ブラスト処理面より化学的目粗した粗面のせん断強度の方が大きくなった。これより従来工法であるブラスト処理と同程度の付着特性を発揮することが分かった。付着面の付着強度ならびにせん断強度と表面粗さとの関係については、RzJISとともにSpcも評価指標に加えて用いる方がより的確な評価が可能になることが分かった。
著者
栖原 健太郎 辻 幸和 真下 昌章 小竹 弘寿
出版者
一般社団法人 セメント協会
雑誌
セメント・コンクリート論文集 (ISSN:09163182)
巻号頁・発行日
vol.72, no.1, pp.166-172, 2019-03-29 (Released:2019-03-29)
参考文献数
4

膨張コンクリートの一軸拘束膨張試験方法のA法および一軸拘束膨張・収縮試験方法のB法について、JIS A 6202に規定されているダイヤルゲージ法だけでなくコンタクトゲージ法も併用し、A法およびB法のPC鋼棒とコンクリートとの付着が長さ変化率に及ぼす影響を実験的に検討した。その結果、A法では収縮率が-200×10-6程度まではB法と同様に収縮率が測定できることを、B法では収縮率が-300×10-6程度を超えるとPC鋼棒の転造ねじによる付着が端部で充分でなくなり、コンタクトゲージ法に比べて、ダイヤルゲージ法による収縮率の絶対値が小さくなることを、それぞれ明らかとした。B法における収縮率の適用範囲を限定する必要があること、およびA法にコンタクトゲージ法も併用すると、膨張コンクリートの一軸拘束状態の膨張率の測定を経た後の、拘束の無い収縮率も測定できる可能性を示した。
著者
田中舘 悠登 羽原 俊祐
出版者
一般社団法人 セメント協会
雑誌
セメント・コンクリート論文集 (ISSN:09163182)
巻号頁・発行日
vol.73, no.1, pp.244-250, 2020-03-31 (Released:2020-03-31)
参考文献数
12

凍結防止剤溶液の凍結と融解過程がスケーリングに及ぼす影響を明らかにするため、種々の凍結防止剤溶液の凝固点以下-30~-5℃において、様々な温度範囲で降温と昇温を繰り返し行った。凍結防止剤の種類によってスケーリングが起こる温度域が異なる結果となった。全ての凍結防止剤溶液において、スケーリングが起こる温度域は凝固点と共晶点の間であり、純氷と高濃度の凍結防止剤溶液が混在する状態である。一方、凍結防止剤の結晶と純氷の2成分の固体状態である共晶点以下では、スケーリングは起こらなかった。温度変化に伴い凍結防止剤溶液の一部分において凍結と融解が起こることにより、スケーリングが起こると考えられる。
著者
須田 裕哉 富山 潤 斎藤 豪 佐伯 竜彦
出版者
一般社団法人 セメント協会
雑誌
セメント・コンクリート論文集 (ISSN:09163182)
巻号頁・発行日
vol.73, no.1, pp.71-78, 2020
被引用文献数
2

<p>本研究は、セメント硬化体の炭酸化に及ぼす相対湿度の影響を評価する目的で、20℃環境下のもと相対湿度11%、43%、66%、85%における炭酸化による収縮挙動と組織構造の変化に着目し検討を行った。その結果、乾燥時の相対湿度の違いにより炭酸化収縮の進行程度は異なり、相対湿度43%において収縮量が最も大きくなった。一方で炭酸化による水酸化カルシウムの残存量は相対湿度66%が最も少なく、炭酸カルシウム生成量と収縮量の関係は炭酸化時の湿度によって異なる傾向を示した。この傾向を明らかにする目的で、粉末X線回折、窒素吸着試験および熱力学的相平衡計算を実施した結果、炭酸化時の湿度の違いにより水酸化カルシウムとC-S-Hの炭酸化挙動が異なることが明らかとなった。</p>
著者
上田 隆雄 河野 惇平 飯干 富広 江里口 玲
出版者
一般社団法人 セメント協会
雑誌
セメント・コンクリート論文集 (ISSN:09163182)
巻号頁・発行日
vol.70, no.1, pp.321-327, 2017-03-31 (Released:2017-03-31)
参考文献数
7
被引用文献数
1 1

アミノ酸の一種であるアルギニンを混入したコンクリートは、海洋環境においてコンクリート表面への藻類の付着が促進され、魚類等の生物生息環境が改善できることや、高い塩基性によりコンクリート中の鉄筋腐食環境を改善することが報告されている。本研究ではフライアッシュコンクリートや高炉セメントを用いたコンクリートにアルギニンを添加した場合の自己治癒性能について実験的に検討を実施した。この結果、特にフライアッシュコンクリートでは、圧縮載荷によって発生した損傷の自己治癒性能が、アルギニンを添加することによって向上する傾向を示した。
著者
加納 侑岳 上原 匠 湯川 圭悟 梶原 教裕
出版者
一般社団法人 セメント協会
雑誌
セメント・コンクリート論文集 (ISSN:09163182)
巻号頁・発行日
vol.69, no.1, pp.695-702, 2016-03-31 (Released:2016-03-31)
参考文献数
5

産業廃棄物の1つである廃石膏ボードの有効利用を目的に、粉砕・加熱処理された廃石膏ボード粉(以下無水リサイクル石膏)の混和により生じる現象の把握を行い、セメントモルタルでの反応性及び強度について考察を行った。SEM写真の観察から、無水リサイクル石膏を混和したモルタルは材齢が進むに従い、未混入のモルタルと生成される水和物が異なることが確認された。標準養生中は水和反応が進行し膨張するとともに強度低下が生じる。そこで、膨張を伴う強度低下の改善としてフライアッシュ(以下FA)を混和することで強度制御を試みた。
著者
久我 龍一郎 森 寛晃 小川 彰一
出版者
一般社団法人 セメント協会
雑誌
セメント・コンクリート論文集 (ISSN:09163182)
巻号頁・発行日
vol.66, no.1, pp.34-40, 2013-02-25 (Released:2013-12-02)
参考文献数
21
被引用文献数
1

CaCl2による化学的劣化の一要因と考えられている3CaO・CaCl2・15H2Oについて、セメント硬化体における3CaO・CaCl2・15H2O生成におよぼすCaCl2溶液濃度、および環境温度の影響を、実験的検討と熱力学的相平衡計算から検討した。CaCl2溶液へのセメント硬化体の浸漬では、より高い濃度CaCl2溶液への浸漬と、より低い温度環境で、Ca(OH)2は消失し3CaO・CaCl2・15H2Oが生成した。熱力学的相平衡計算から求めた構成相の変化は実験結果と概ね一致し、計算結果から3CaO・CaCl2・15H2O生成に伴って水和物の総体積が増大した。セメント硬化体の浸漬試験から、3CaO・CaCl2・15H2O生成が体積膨張の原因と推定した。
著者
大石 幸紀 藤井 隆史 綾野 克紀
出版者
一般社団法人 セメント協会
雑誌
セメント・コンクリート論文集 (ISSN:09163182)
巻号頁・発行日
vol.71, no.1, pp.288-294, 2018-03-30 (Released:2018-03-30)
参考文献数
4

本研究は、コンクリートの養生中の温度履歴がコンクリートの乾燥収縮ひずみおよび細孔構造に与える影響について検討を行ったものである。高温で養生されたコンクリートでは、直径6nm以下の微細な細孔の容積は減少し、直径50nmから100nmの細孔容積が増加する。直径6nm以下の細孔容積と乾燥収縮ひずみとの間には相関関係がみられることから、高い温度で長く養生されたコンクリートは細孔構造が粗になることで、乾燥に伴う水分損失量は多くなるが乾燥収縮ひずみは小さくなる。
著者
佐川 孝広 濱 幸雄 塚本 康誉
出版者
一般社団法人 セメント協会
雑誌
セメント・コンクリート論文集 (ISSN:09163182)
巻号頁・発行日
vol.68, no.1, pp.239-245, 2015-03-31 (Released:2015-03-27)
参考文献数
27
被引用文献数
1 2

本研究では現在JIS規格はあるがほとんど生産されていない高炉セメントA種に着目し、高炉セメントA種の強度発現と水和反応に及ぼす無水石こうや石灰石微粉末の影響について検討した。水和反応の評価にはX線回折/リートベルト解析の外部標準法を用いた。その結果、高炉スラグ微粉末の混合量が20%の高炉セメントA種を用いたモルタル圧縮強度は、初期材齢で普通ポルトランドセメント(OPC)の75%程度、材齢91日までにOPCと同等となった。無水石こうや石灰石微粉末の混和による圧縮強度の変化は、水和反応解析により求めたセメントや高炉スラグ微粉末の反応率、水和生成物量、空隙量の変化でよく説明できた。
著者
吉田 亮 齊藤 和秀 吉澤 千秋
出版者
一般社団法人 セメント協会
雑誌
セメント・コンクリート論文集 (ISSN:09163182)
巻号頁・発行日
vol.71, no.1, pp.587-594, 2018-03-30 (Released:2018-03-30)
参考文献数
12
被引用文献数
3

本研究では、高炉スラグ細骨材に含まれる微粒分を除去することで、高炉スラグ細骨材と高炉スラグ微粉末が緻密化する空隙構造の差異を、水銀圧入試験により明確にした。高炉スラグ細骨材を使用することで、直径400nm以上の空隙が緻密化される。細骨材周りの元素分析では、天然細骨材に検出された遷移帯の特徴が、高炉スラグ細骨材の周りでは示されなかった。水銀圧入法で捉えた直径400nm以上の空隙量と乾燥収縮、透気係数との間には強い相関関係が確認できた。高炉スラグ細骨材は、直径400nm以上の空隙(遷移帯)を緻密化することで、セメントペーストと細骨材の付着を強固とし乾燥収縮抵抗性を向上させ、また透気抵抗性を高めていることが示唆された。
著者
広野 真一 安藤 陽子 大代 武志 鳥居 和之
出版者
一般社団法人 セメント協会
雑誌
セメント・コンクリート論文集 (ISSN:09163182)
巻号頁・発行日
vol.67, no.1, pp.441-448, 2014-02-25 (Released:2015-02-25)
参考文献数
11
被引用文献数
2

北陸地方では深刻なアルカリシリカ反応(ASR)が発生し、現在でも収束していない。地域の事情を考慮したASR抑制対策としては、フライアッシュセメントの使用が最も有効である。分級フライアッシュと高炉スラグ微粉末によるASR抑制効果を、富山県の代表的な反応性骨材に対し、JIS A 1146とデンマーク法により検証した。その結果、分級フライアッシュ15%置換は高炉スラグ42%置換よりも優れた効果を発揮したが、JIS A 1146で特に優位であった理由として、SEM-EDSで確認された微細な粒子周囲の反応相増大と0.9程度の低Ca/Si比のC-S-Hの生成によるアルカリ吸着がもたらす細孔溶液のOH-減少の効果が最も大きいと推察された。
著者
山田 義智 赤嶺 糸織 伊波 咲子 浦野 真次
出版者
一般社団法人 セメント協会
雑誌
セメント・コンクリート論文集 (ISSN:09163182)
巻号頁・発行日
vol.66, no.1, pp.661-668, 2013-02-25 (Released:2013-12-02)
参考文献数
6
被引用文献数
1 2

本研究では、ペーストからモルタルさらにコンクリートへと展開する新たな粘度式を提案した。そして、この粘度式を用いて、ペースト、モルタル、コンクリートのレオロジー定数を調合(配合)から推定する手法を示した。ここで、提案手法で求めたペーストとモルタルのレオロジー定数の有効性については、既往の実験結果との関係を比較・検討することで確認した。一方、コンクリートのレオロジー定数の有効性については、提案手法で求めたレオロジー定数を入力値として有限要素法でスランプシミュレーションを行い、実測結果と比較することで確認を行った。
著者
伊藤 将志 半井 健一郎 林 明彦 河合 研至
出版者
一般社団法人 セメント協会
雑誌
セメント・コンクリート論文集 (ISSN:09163182)
巻号頁・発行日
vol.67, no.1, pp.210-215, 2014-02-25 (Released:2015-02-25)
参考文献数
4
被引用文献数
1

福島第一原子力発電所の事故により、広範囲に拡散した大量の放射性物質を適切に除染するとともに、汚染された災害廃棄物を適切に処理、処分することが求められている。そこで本研究では、モルタル中でのセシウムの吸着、浸透、溶出挙動を把握することを目的とした。実験結果から、セメントや各種細骨材にセシウムは吸着しにくく、飽水処理したモルタル供試体では、供試体表面および内部ともに80%ものセシウムは可溶性として存在していた。一方で乾燥させた供試体の表面付近では60%のセシウムが非可溶性であり炭酸化の影響が示唆された。