- 著者
-
藤 健一
- 出版者
- 日本動物心理学会
- 雑誌
- 動物心理学研究 (ISSN:09168419)
- 巻号頁・発行日
- vol.52, no.1, pp.9-14, 2002-06-25 (Released:2011-03-14)
- 参考文献数
- 19
野外の自然場面における野生のハトを対象として, オペラント条件づけを試みた。1つの反応キーと1つの強化子提示用のフィーダとを備えた野外用スキナー箱を使用した。飛来する野生のハトを対象として, 漸次接近法によるキーつつき反応の形成を試みた。さらにキーつつき反応を獲得した個体と未獲得の個体との行動上の相互作用について, 検討した。FRサイズが1から40までの定率強化スケジュールを用いた。強化子には, 市販のハト用混合飼料を用いた。飛来する野生のハトの個体識別を, 目視や写真を利用して行なった。実験期間は, 3月から7月にかけての84日間89セッションであった。実験の結果, この期間中のハトの延べ飛来数は628羽, 同定できた個体数は29羽であった。実験者によって2羽の個体が選定され, その個体に対して漸次接近法によるキーつつき反応の形成を行なった。その結果, 1羽は反応形成訓練開始から4セッションめにおいて, もう1羽は3セッションめにおいてキーつつき反応を自発するようになった。漸次接近法による反応形成訓練を受けていない個体の中で, 7個体がキーつつき反応を自発させた。このうちの2羽が, キーつつき反応を維持した。キーつつき反応を形成したハトに対して, 定率強化スケジュールのFR値を徐々に40まで増大させたところ, それぞれのFR値の下で安定した反応を示した。キーつつき反応を維持した個体のうち, 1羽はつがいで飛来していた。そのつがいの2羽のうち, 1羽は常にキーつつきを行い, もう1羽が常に強化子を摂食した。このつがいによるキーつつき反応の累積反応記録は, 1個体の場合とほとんど違いが見いだされなかった。