著者
林 初美 工藤 典代 笹村 佳美
出版者
日本小児耳鼻咽喉科学会
雑誌
小児耳鼻咽喉科 (ISSN:09195858)
巻号頁・発行日
vol.18, no.2, pp.53-58, 1997 (Released:2012-09-24)
参考文献数
5

Deaf children were tested by means of PVT (Picture Vocabulary Test) and WIPPSI or WISC-R, then the relation between speech development and hearing level was discussed. The age of 22 children at the test ranged from 4 years to 13 years. Their average hearing level ranged from 37 dB to 71 dB. Their PIQ (performed IQ) was within the normal range. Results of PVT were almost related to that of VIQ (Verbal IQ), but there was no evident relation between the results of PVT or VIQ and hearing level. Some of the children with mild hearing impairment showed poorer development of their vocabulary and verbalism than expected. We considered that the development of vocabulary and verbalism was affected by several factors besides their hearing level.
著者
臼井 智子 鶴岡 弘美 石川 和代 町野 友美 増田 佐和子
出版者
日本小児耳鼻咽喉科学会
雑誌
小児耳鼻咽喉科 (ISSN:09195858)
巻号頁・発行日
vol.31, no.3, pp.324-329, 2010 (Released:2012-12-28)
参考文献数
19

心因性難聴の診断をきっかけとして,思春期になって不注意優勢型の注意欠如・多動性障害(ADHD)が判明した同胞例を経験した。症例 1(16歳女性)は,14歳時に難聴と診断され補聴器を装用したが効果がなく,当科で心因性難聴と診断した。症例 2(14歳女性)は症例 1 の妹で,幼少時からの滲出性中耳炎改善後も変動する難聴があり,姉と同様補聴器装用効果がなく,当科で心因性難聴と診断した。詳細な問診から 2 例とも聴覚的認知の悪さと能力のアンバランスが判明し,小児神経科での精査の結果不注意優勢型 ADHD と診断された。ADHD に対する薬物療法と介入を行って難聴は改善した。本同胞例は内因子として ADHD を有し,様々な環境因子に適応しにくい状態から二次的に心因性難聴が出現したと推察された。 心因性難聴の診断にあたっては,環境などの外因子だけでなく発達障害などの内因子の存在を念頭におき,小児神経科医などの専門家と協力することが必要であると考えられた。
著者
鈴木 幹男
出版者
日本小児耳鼻咽喉科学会
雑誌
小児耳鼻咽喉科 (ISSN:09195858)
巻号頁・発行日
vol.41, no.1, pp.22-26, 2020

<p>小児の気道異物は呼吸状態が急変することがある。搬送中に死亡する例もあり速やかな対応が必要である。小児の気道異物は0歳から3歳までに多く,ピーナッツなどの豆類が主である。誤嚥のエピソードがはっきりしておれば精査できるが咳嗽のみの症状で発見までに時間を要することがある。さらに食物異物では放射線透過性のことが多いため,原因不明の慢性咳嗽と扱われることもある。診断では,エピソードから異物を疑い,聴診や画像検査を行う。異物摘出では軟性ファイバースコープを用いて気管・気管支内の異物の位置,状態を確認してから硬性気管支鏡を挿入して摘出を行う。摘出終了後,再度軟性ファイバースコープを用いて気道内を観察し,異物断片の残存を確認する。術前の状態,術中の状況により気管切開,体外循環を用いた呼吸管理が必要な時もあるが,できるだけ低侵襲な手術操作を行うことが重要である。</p>
著者
村上 健
出版者
日本小児耳鼻咽喉科学会
雑誌
小児耳鼻咽喉科 (ISSN:09195858)
巻号頁・発行日
vol.41, no.1, pp.4-8, 2020 (Released:2020-11-13)
参考文献数
5

難聴児の中には発達障害を伴う児童が増えている。このような児童には多職種が連携し個別に対応をする必要がある。言語聴覚士の役割としては聴覚管理だけでなく,全体発達および言語発達,コミュニケーションの評価を実施し,医療/療育/教育機関で連携をとりながら難聴児の発達段階に応じたコミュニケーション方法を習得させることが必要である。また評価結果に基づき,児童のもっている能力を最大限に引き出すことが求められる。言語聴覚士の立場から,様々な特性を持つ難聴児一人一人に対する療育・教育における医療/療育/教育機関の連携の重要性と,多職種連携の在り方を述べる。
著者
澤田 正一 小林 泰輔
出版者
日本小児耳鼻咽喉科学会
雑誌
小児耳鼻咽喉科 (ISSN:09195858)
巻号頁・発行日
vol.41, no.1, pp.41-46, 2020 (Released:2020-11-13)
参考文献数
16

小児結膜炎-中耳炎症候群33例と中耳炎を伴わない小児急性結膜炎120例の細菌学的検討を行った。小児結膜炎-中耳炎症候群において,眼脂培養では82%から細菌が検出された。細菌は29株検出され,インフルエンザ菌(HI)25株(89%),肺炎球菌(SP)3株(10%),モラクセラ・カタラーリス(MC)1株(3%)であった。眼脂から培養された29株のうち28株(97%)は同種の細菌が鼻咽腔からも検出された。小児結膜炎-中耳炎症候群では,HIが最も重要な原因菌である。急性結膜炎では,65%から細菌が検出され,HI 64株(69%),SP 16株(17%),MC 5株(5%),その他8株(9%)であった。SPまたはHIが検出されたものについて年代別に検討したところ,月齢が上がってくるとHIの比率が上昇していた。小児結膜炎-中耳炎症候群においてはHIが多いが,低月齢ではSPも想定が必要である。
著者
岡野 由実
出版者
日本小児耳鼻咽喉科学会
雑誌
小児耳鼻咽喉科 (ISSN:09195858)
巻号頁・発行日
vol.39, no.3, pp.270-274, 2018

<p>一側性難聴による聞こえは,限られた聴取場面において困難が生じ,情報の高次化と聴取場面の複雑化に伴い,社会人期において障害が顕在化していく傾向がある。言語発達途上の小児では成人に比べ,より騒音下で聞き取りが困難となることが指摘されており,そのような聴取困難状況が持続することにより,個人差は大きいものの,言語発達や学校適応に影響が生じている例もいる。新生児聴覚スクリーニング検査により,先天性一側性難聴児が一定数発見されているが,一側性難聴児に対する支援方針は確立されていない。また,診断後の一側性難聴に関する情報不足により,将来の見通しが持てず子育てに不安を抱えている家族も少なくない。家族の認識が一側性難聴児本人の障害認識に影響を及ぼす可能性もあり,本人や家族に対し,一側性難聴による障害実態に即した支援や助言が要請されていると考えられる。</p>
著者
上村 佐恵子 島田 茉莉 伊藤 真人 西野 宏
出版者
日本小児耳鼻咽喉科学会
雑誌
小児耳鼻咽喉科 (ISSN:09195858)
巻号頁・発行日
vol.37, no.1, pp.45-51, 2016 (Released:2016-08-01)
参考文献数
16

4 歳 8 カ月女児。夜間の息苦しさで頻回に覚醒するため,睡眠時無呼吸症候群の疑いで受診した。後鼻孔を閉塞する咽頭扁桃肥大,アレルギー性鼻炎の所見に合致する鼻粘膜所見がみられたが,気道閉塞をきたすような口蓋扁桃肥大はなかった。肥満と低身長を認め,易疲労感の訴えがあったため,小児科で精査を依頼した。低身長に対する検査の結果,橋本病と診断され,甲状腺ホルモン補充療法が開始された。治療 2 週間で夜間覚醒の消失を認め,治療 3 カ月で甲状腺ホルモン値は正常化,鼻閉の消失といびきの改善を認めた。簡易終夜睡眠検査上は,初回の無呼吸低呼吸指数(AHI:回/時)53.8,治療 5 カ月後21.9,治療10カ月後26.4,最終的に治療16カ月後に AHI 8.5まで改善した。睡眠時無呼吸症候群と甲状腺機能低下症の症状は類似点が多く,低身長や易疲労感などの甲状腺機能低下症の臨床症状にも留意することが必要である。
著者
髙木 明
出版者
日本小児耳鼻咽喉科学会
雑誌
小児耳鼻咽喉科 (ISSN:09195858)
巻号頁・発行日
vol.40, no.3, pp.219-224, 2019

<p>先天性重度難聴に対する人工内耳の手術年齢は日本では2014年より1歳以上とされているが世界的にはますます低年齢化が進んでいる。低年齢化は生後の脳の発達の見地から望ましいものの円滑な音声言語獲得には術後の母子への適切な介入が必須である。欧米では乳幼児難聴の専門職(Audiologist)が保護者への指導,児への介入を実施し,特に豪州では就学までの適切な介入により大多数が通常校への進学が可能となっている。我が国おいては乳幼児難聴に適切に対応できる専門家は極めて少数である。多くは聾学校幼稚部に在籍する。そして通常校に進級しても中学で聾学校に戻る児が多い。日本の乳幼児難聴への取り組みが今後は医療のみならず,保健・福祉,教育と連携して行われ,かつ,専門家の育成と実践の場の整備が急務であることを述べる。</p>
著者
千田 いづみ
出版者
日本小児耳鼻咽喉科学会
雑誌
小児耳鼻咽喉科 (ISSN:09195858)
巻号頁・発行日
vol.37, no.3, pp.312-317, 2016

&emsp;学校の教室には教師と生徒との間の距離や周囲の雑音があるため,難聴児は補聴器や人工内耳だけでは十分な聴取が得られず,補聴援助システムの併用が必要である。以前より普通学校ではFM補聴援助システムが使用されてきたが,チャンネル干渉が生じやすい欠点があった。最近使用されるようになったデジタル無線方式の補聴援助システムは,デジタル変調方式により音質が向上し,受信器と送信器間のペアリングによりチャンネル干渉が防止できる利点がある。<br/>&emsp;我々は,「徳島県の難聴児を支える連携」を構築し,地域の教育委員会に働きかけ,難聴児が就学する学校に補聴援助システムを導入してきた。また,一側性難聴児は健聴児と比較して騒音環境での語音聴取能が低下していることを明らかにし,一側性難聴児にも学校の教室に補聴援助システムを導入している。徳島県での補聴援助システム導入の現状と実績について報告した。
著者
竹澤 公美子
出版者
日本小児耳鼻咽喉科学会
雑誌
小児耳鼻咽喉科 (ISSN:09195858)
巻号頁・発行日
vol.34, no.3, pp.320-325, 2013

&nbsp;&nbsp;筆者は 2 歳時に原因不明の両側高度感音難聴になり,幼少期から補聴器と読唇,口話,筆談を主なコミュニケーション手段として活用してきた。それらの方法は遊びの中から習得し,また読書の習慣により語彙が増えた。幼稚園から高校まで普通校に通い,2001年に医学部に入学した。大学 2 年の後期から講義の内容を理解することが困難になったため,2003年に右人工内耳埋込術を受けた。まず音が入るようになり,次に言葉が,そして会話が理解できるようになった。それには長期間を要し,今でも十分な聞こえであるとは言えない。しかし,聞こえそのものの獲得はもちろん,コミュニケーションの方法が広がり,会話を楽しむことができるようになったこと,そして何よりも社会の中の自分という視点を得ることができるようになった。幼少期に失聴し,長い失聴期間を経て人工内耳を装用した耳鼻咽喉科医として,経験を報告する。
著者
澤田 正一
出版者
日本小児耳鼻咽喉科学会
雑誌
小児耳鼻咽喉科 (ISSN:09195858)
巻号頁・発行日
vol.38, no.3, pp.316-320, 2017 (Released:2018-03-31)
参考文献数
8

当院におけるreal-time PCRを用いた取り組みを紹介し,小児急性中耳炎の起因微生物の複雑さを明らかにした。肺炎球菌ワクチン導入後,小児急性中耳炎では肺炎球菌が減少し,インフルエンザ菌が増加している。肺炎球菌の感受性ではワクチンタイプが減少したことにより,耐性肺炎球菌が減少し,インフルエンザ菌では耐性化は進む傾向にあった。耐性インフルエンザ菌の増加している状況は,ペニシリン系抗菌薬がどこまで有効か難しいところではあるが,他の抗菌薬に比べ中耳移行の良いペニシリン系抗菌薬は,今後も上手に使っていく必要がある。そのためには,原因菌やその薬剤感受性をしっかり調べることが重要である。さらに小児急性中耳炎で問題となる反復性中耳炎に対する,十全大補湯と鼓膜換気チューブ留置術について検討した。両者とも有効性の高い治療であるが,十分適応を考えて保護者の十分な同意を得て行う必要がある。
著者
樋口 仁美 中川 尚志
出版者
日本小児耳鼻咽喉科学会
雑誌
小児耳鼻咽喉科 (ISSN:09195858)
巻号頁・発行日
vol.31, no.3, pp.312-317, 2010 (Released:2012-12-28)
参考文献数
11

三歳児聴覚検診や新生児聴覚スクリーニングの普及で,難聴の早期診断やその後の療育体制の地域差がクローズアップされている。今回,診断が遅れた先天性難聴の一例を経験した。症例は12歳女児で,主訴は難聴であった。幼少時より両親が難聴に気付き,近医受診するも経過観察となっていた。小学校卒業前に難聴が原因で学業に支障がきているのではと指摘され,精査目的に当科受診となった。構音に若干の歪みを認め,先天性難聴が疑われた。しかし,言語面,学習面での大きな遅れは認めてなかった。地方都市の中心部より離れた地域に住んでいるので,各学年が少人数の一クラスしかなく,両親から学校への要望で教師も学習の進度を気に掛けていたためと推測した。また友人がほぼ同じという環境で,対人のトラブルもなく過ごすことができたものと考えられる。今後,進学や就労時に難聴によって生じる問題への対応などが必要になってくると思われる。
著者
香取 幸夫 川瀬 哲明 小林 俊光
出版者
日本小児耳鼻咽喉科学会
雑誌
小児耳鼻咽喉科 (ISSN:09195858)
巻号頁・発行日
vol.26, no.2, pp.67-74, 2005 (Released:2012-09-24)
参考文献数
19
被引用文献数
1

This paper reviews the diagnosis and treatment of foreign bodies in the tracheobronchial tree of children. From 1986 to 2005, sixty-four cases were treated in the Tohoku University Hospital. According to previous reports, children under the age of three years were the most common sufferers. The most freguently found foreign bodies were peanuts, but non-organic materials were also the cause in a few cases. For the diagnosis and examination of the sites of foreign bodies, the history of aspiration and coughing attacks, weakness of respiratory sounds, chest roentgenogram f indings, and also CT scans were found to be valuable. In all cases, i t was possible to remove the foreign bodies by ventilation bronchoscopy.
著者
有本 友季子 工藤 典代 斎藤 真純 留守 卓也
出版者
日本小児耳鼻咽喉科学会
雑誌
小児耳鼻咽喉科 (ISSN:09195858)
巻号頁・発行日
vol.24, no.2, pp.50-53, 2003 (Released:2012-09-24)
参考文献数
11

Eighty-two children, consisting of 60 males and 22 females who were suffering from language retardation, visited our department over the past two years and contributed to the study. The mean age of the children was 3 years and 3 months at the first consultation. Many of the children were referred to us by otolaryngologists who first found the impairment of language development. Around 88% of the children suffering from language retardation were affected by certain psychiatric problems such as mental retardation (fifty-four children,66%) and autism. Seven patients (9%) were affected by a considerable hearing deficit including five patients with severe hearing loss.
著者
太田 有美
出版者
日本小児耳鼻咽喉科学会
雑誌
小児耳鼻咽喉科 (ISSN:09195858)
巻号頁・発行日
vol.36, no.3, pp.316-320, 2015 (Released:2016-03-31)
参考文献数
7

言語獲得前の小児に対する人工内耳手術においては,術後のハビリテーションに工夫を要する。成人と異なり小児は言葉で答えてはくれないため,言語聴覚士は患児の行動・反応をみてマップの作成や調整をしなければならない。セラピーに乗せるためには,興味を持つおもちゃを用いて条件付けをし,患児と“やりとり”ができるようにしなければならない。小児の人工内耳ハビリテーションを行うには,子供の遊びに付き合う根気強さ,行動・反応を見極める観察眼,発達の程度や個性に合わせて関わり方を変えられる柔軟性,保護者や療育施設の先生との連携をするコミュニケーション能力が必要である。言語獲得前の小児の場合,人工内耳手術はスタートであり,その後のハビリテーション・療育が言語発達ひいては社会性の発達に極めて重要である。
著者
大迫 茂人 坂本 平守 浅井 英世 佐野 光仁 愛場 庸雅 近藤 千雅 北尻 雅則 坂下 啓史 東川 雅彦 村本 大輔 奥村 隆司
出版者
日本小児耳鼻咽喉科学会
雑誌
小児耳鼻咽喉科 (ISSN:09195858)
巻号頁・発行日
vol.30, no.1, pp.10-15, 2009

&nbsp;&nbsp;大阪府における新生児聴覚スクリーニング後の精密聴力検査結果を過去 5 年間にわたり検討し,本事業の評価を試みた。<br/>&nbsp;&nbsp;対象児は聴覚スクリーニング後に要検査児として大阪府下の36精密聴力検査施行病院耳鼻咽喉科に紹介された新生児達である。<br/>&nbsp;&nbsp;調査項目は10項目であるが,今回は上記の目的に関係の深い 3 項目について検討した。<br/>&nbsp;&nbsp;精密聴力検査医療機関を受診した児数は平成14年度159名より年々増加し,平成18年度は372名と順調にのびていた。また,精密聴力検査を受けた児数も平成14年134名から増加し平成18年度は318名であった。<br/>&nbsp;&nbsp;その受診児に対する精密聴力検査の結果の中,難聴児の検出数とその率は平成14年度では63名47%であったがその後,年々増加し平成18年度では194名61%であった。他方,両側性高度難聴児の検出は平成18年度でも受診児中精密検査を受けた318例中29例であった。<br/>&nbsp;&nbsp;スクリーニング検査結果と精密聴力検査結果を比較して両検査結果が一致している割合は平成14年度の35.4%から年々上昇し平成18年度には63.5%と高まっていた。この事実から両検査施行者の検査技術の向上などがうかがわれる。<br/>&nbsp;&nbsp;上述調査の結果は耳鼻咽喉科の観点からみると大阪府における本事業は順調に歩んでいることを示す一面と考えられる。
著者
石田 多恵子 猪野 真純 仲野 敦子 有本 友季子 黒谷 まゆみ 森 史子 工藤 典代 笠井 紀夫 福島 邦博
出版者
日本小児耳鼻咽喉科学会
雑誌
小児耳鼻咽喉科 (ISSN:09195858)
巻号頁・発行日
vol.33, no.1, pp.29-36, 2012-03-01
参考文献数
11

&nbsp;&nbsp;聴覚障害児の日本語言語発達に関する全国研究として,厚生労働科学研究補助金事業「感覚器障害戦略研究&mdash;聴覚分野&mdash;」が実施され,日本語言語発達を評価するテストバッテリー ALADJIN(アラジン・<u>A</u>ssessment of <u>L</u>anguage <u>D</u>evelopment for <u>J</u>apanese ch<u>I</u>ldre<u>N</u>)が提唱されている。当院もこの研究に参加し,4 歳から12歳までの先天性高度聴覚障害児(平均聴力レベル70 dB 以上)計44名に対して ALADJIN を実施し,同事業による聴覚障害児全国集計平均値(平成22年 5 月・感覚器障害戦略研究中間報告)との比較検討を行った。<br/>&nbsp;&nbsp;言語力が高く,音声によるコミュニケーションが可能な児の多くは普通小学校(メインストリーム)に在籍していた。聾学校小学部低学年では言語力の低い児が多くみられたが,同小学部高学年になると全国集計値よりも高い言語力を有する児がみられ,各々の児に適した教育により言語力を伸ばせる可能性が示唆された。
著者
齋藤 昭彦
出版者
日本小児耳鼻咽喉科学会
雑誌
小児耳鼻咽喉科 (ISSN:09195858)
巻号頁・発行日
vol.34, no.3, pp.295-300, 2013 (Released:2014-03-20)
参考文献数
13

2008年以降,国内には 8 つの新しいワクチンが導入され,乳幼児期の予防接種スケジュールは,過密を極めている。ワクチンで予防できる疾患(VPD : Vaccine Preventable Diseases)が増え,国内で接種できるワクチンが増えてきた。また,2013年 4 月には,ヒブワクチン,肺炎球菌ワクチン,ヒトパピローマウイルスワクチンの 3 つのワクチンが,任意接種のワクチンから定期接種のワクチンへ変更された。これらの新しい動きは,日本の予防接種制度の歴史の中でも画期的なことであり,ワクチンギャップを埋める大きな動きであることに間違いない。しかしながら,その具体的な接種方法に関しては,様々な問題点が出てきている。すなわち,元来存在する予防接種制度が,その速い流れに追いついていない現状がある。例えば,水痘ワクチン,おたふくかぜワクチン,B 型肝炎ワクチンなどは,未だに任意接種のワクチンであり,接種する場合には,費用負担が極めて大きい。また,国際的に標準的な医療行為である同時接種が十分に普及していない現状がある。更には,接種部位と接種方法,異なるワクチンの接種間隔,予防接種に関する教育,そして,予防接種の諮問委員会のあり方など,課題は多い。実際の接種をできるだけ実行可能とするために,日本小児科学会は,同時接種に関する考え方,学会推奨のスケジュールを提示したが,その普及にはまだ多くの解決しなくてはいけない課題が存在する。  予防接種の最終的な目的は,予防接種を早期に行い,子どもたちを VPD から守ることである。これを可能にするためには,医療関係者の予防接種に対する正しい理解が必要であり,同時に,予防接種制度の更なる改革が必要である。