著者
村井 潤一郎
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
性格心理学研究 (ISSN:13453629)
巻号頁・発行日
vol.9, no.1, pp.56-57, 2000-09-30
著者
菅原 ますみ
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
性格心理学研究 (ISSN:13453629)
巻号頁・発行日
vol.5, no.1, pp.38-55, 1997-03-31 (Released:2017-07-24)
被引用文献数
6 1

本論文は, 抑うつの母親を持つ子どもの適応に関する心理学的および精神医学的研究の展望である. 発達精神病理学の方法と研究パラダイムの発達とともに, 過去10年間に抑うつの母親を持つ子どもについての多くの研究がなされた. これらの研究から, 抑うつの母親を持つ子どもは精神疾患の発生を含めて広範な適応上の問題を引き起こしやすいこと, また不適応の生起に関するメカニズムはかなり複雑であることが明らかになった. なぜ抑うつの母親を持つ子どもに高頻度に不適応が生ずるのかを知るためには, 母親の抑うつの子どもの発達に対する単純な影響モデルではなく, 複数の危険因子を含んだ相互作用モデルが有効である. この研究領域についての方法論的な問題が論じられ, 将来の研究に対する示唆がなされている.
著者
高山 緑 下仲 順子 中里 克治 権藤 恭之
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
性格心理学研究 (ISSN:13453629)
巻号頁・発行日
vol.9, no.1, pp.22-35, 2000-09-30 (Released:2017-07-24)
被引用文献数
4

本研究ではBaltesらの知恵の測定法の日本語版を作成し, その信頼性と妥当性の検討を行った.知恵は知恵に関わる5つの知識(宣言的知識, 手続き的知識, 文脈理解, 価値相対性の理解, 不確実性の理解)から評定し, 総合得点を知恵とした.課題には人生計画課題(様々な人生場面における仕事と家庭との葛藤を解決する)と人生回顧課題(架空の人物の人生を回顧する)を用いた.成人・高齢者197名(60-86歳)を対象に調査を実施し, 信頼性と基準関連妥当性の検討を行ったところ, 以下の結果が得られた.1)信頼性に関して, 人生計画, 人生回顧課題ともに高い評定者間信頼性が得られた.2)理論モデルから予想されたように, 知恵に関わる知識間には中程度以上の相関関係が示された.3)知能, 日常的知能, 教育年数を外部基準とした基準関連妥当性の検討からは, 人生計画場面において十分な妥当性が示された.4)人生回顧場面でも妥当性を示す根拠がいくつか示された.
著者
村上 宣寛
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
性格心理学研究 (ISSN:13453629)
巻号頁・発行日
vol.11, no.2, pp.70-85, 2003-03-27 (Released:2017-07-24)
被引用文献数
10 11

本研究の目的は,語彙アプローチによって日本語におけるビッグ・ファイブを導くことである.かつてのSD法におけるEPA構造の普遍性の問題から推測すると,ビッグ・ファイブを得るための心理測定的条件は,1.用語の熟知度や使用頻度が高いこと,2.用語の分散が大きく,評定値が中央付近に位置すること,と推測される.分析1では村上(2002)の基本的な性格表現用語から原則として抹消率13%以下の用語を収集し,同義語と反意語を整理し,554語を調査対象とした.被験者は大学生男性150名,女性220名の計370名であった.分散の高い317語を選択して対角成分にSMCを入れて30因子まで抽出した.スクリー法で因子数を5と定め,オーソマックス回転を施すと,外向性(E),協調性(A),勤勉性(C),情緒安定性(N),知性(O)のビッグ・ファイブが得られた.語彙アプローチ研究によって日本語でもビッグ・ファイブが得られることが証明された.分析2では各因子の因子負荷量の大きな20語を抽出し,100語でビッグ・ファイブ構造を再確認し,各因子ごとに主因子法とオブリミン回転を適用し,側面因子を求めた.結果は,外向性では活動性,閉鎖性,自制,協調性では妬み,怒り,身勝手,勤勉性では親切さ,ねばり強さ,従順さ,情緒安定性では活動力,楽観性,知性では小心さ,愚かさ,意志薄弱の側面因子が得られた.日本語でのビッグ・ファイブは,細部では英語圏の内容と異なっている可能性が示唆された.
著者
菅原 健介
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
性格心理学研究 (ISSN:13453629)
巻号頁・発行日
vol.7, no.1, pp.22-32, 1998-09-30 (Released:2017-07-24)
被引用文献数
4 7

本研究はシャイネスの主要な2つの要素である対人不安傾向と対人消極傾向に注目し, これらを独立した特性次元として考えることができるのか, また, 両傾向は他のどのような心理特性と関連しているのかを検討した.大学生男女を対象とした2つの質問紙調査を行い次のような結果を得た.対人不安傾向と対人消極傾向とは因子構造上, 異なる特性として抽出可能であることが示された.前者は公的自意識, 拒否回避欲求と正の相関, 自尊感情と負の相関が見られ, 後者は社会的スキル, 賞賛獲得欲求と負の相関が認められた.これらから, 対人不安傾向は社会的拒否に対する過敏性の表れとして, 対人消極傾向は対人関係に対する無力感の表れとして解釈できると考えられた.以上の結果は, Leary(1983b)の自己呈示モデルとの関連から考察され, シャイネスのメカニズムに関して新たなモデルが提起された.
著者
向田 久美子
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
性格心理学研究 (ISSN:13453629)
巻号頁・発行日
vol.6, no.2, pp.82-94, 1998-03-31 (Released:2017-07-24)
被引用文献数
1

本研究では, 大学生とその親の偏見の強さを比較することにより, 子どもの偏見に及ぼす親の影響について検討が行われた.偏見の強さを測定する独自の尺度を作成し, 227名の大学生には, 自分自身と自分の認知した親の偏見について, 父親150名と母親152名には, 自分自身の偏見について評定してもらった.親子の相関をとると, 子どもと認知された親との相関が高く, 子どもと実際の親の相関は低くなっていた.パス解析の結果から, 子どもの偏見は, 親自身から直接的に影響を受けているというよりも, 認知された親イメージを媒介として影響を受けていることが示唆された.親子の関連の強さに影響する要因として, (1)親との同居の有無, (2)母親の就業状況, (3)幼少期の親の養育態度の3点について検討が行われた.その結果, 子どもが親に対してポジティブなイメージをもっており, 親子のコミュニケーションがより充実している場合には, 親から子への影響力が強くなり, 偏見の強さというよりも偏見のなさのほうが伝わっている可能性のあることが示唆された.
著者
森脇 愛子 坂本 真士 丹野 義彦
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
性格心理学研究 (ISSN:13453629)
巻号頁・発行日
vol.11, no.1, pp.12-23, 2002-09-30 (Released:2017-07-24)
被引用文献数
2 3

本研究では,どのように開示するかを測定するための「適切な自己開示尺度」および「不適切な自己開示尺度」を作成し,その因子構造,信頼性および妥当性を検討した.さらに,被開示者の反応を測定するための「聞き手の受容的反応尺度」および「聞き手の拒絶的反応尺度」を作成し,因子構造,尺度の信頼性および妥当性について検討した.研究1では,適切な自己開示尺度および不適切な自己開示尺度についてそれぞれ3因子,4因子を採用した.聞き手の受容的反応尺度および拒絶的反応尺度については,それぞれ4因子を採用した.内的整合性がよく,再検査信頼性が高かった.研究2では,これらの尺度の併存的妥当性がある程度示された.今後はさらに,サンプル等を配慮して検討していきたい.
著者
飯島 婦佐子
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
性格心理学研究 (ISSN:13453629)
巻号頁・発行日
vol.6, no.1, pp.50-64, 1997-10-09 (Released:2017-07-24)

本研究の目的は, 父親の性役割観, 母親からみた父親のソーシャルサポート, 母性意識と幼児の自己(自己抑制, 自己主張・実現)の発達の関係をみることである. 東京の304名の両親が参加した. 方法は質問紙法を用いた. 自己尺度は保育者によって評定された. 女子の場合には, 父親が家事・育児に参加するようになり, 性役割分業観も変化していることを反映して, 家事・育児共有観が実質的サポートを高め, それが専業主婦の母親の母性の受容を高めた. しかし, 母性の受容と子どもの自己の発達の間には何らの関係もなかった. ここに, 何らかの媒介変数を考慮する必要がある. 男子の場合には, 父親の家事・育児への参加の考えは母親の母性の受容を低下した. 別のモデルを考えるべきである.
著者
尾見 康博 川野 健治
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
性格心理学研究 (ISSN:13453629)
巻号頁・発行日
vol.2, no.1, pp.56-67, 1994-03-31 (Released:2017-07-24)
被引用文献数
2 1

Most psychologists are highly familiar with various statistical methods. Some researchers, however, have pointed out various problems associated with the use of statistical methodology. Study 1 examined the data analytical techniques employed in the articles that appeared in nine Japanese psychological journals between February 1992 and July 1993. It was found that the most frequently used were analysis of variance and t-test, which together accounted for about half of the articles. Among multivariate analytical methods, factor analysis was the most frequently used. Study 2 examined the responses of thirty-seven psychologists and nine psychology-major seniors to the questions regarding; (1) the kinds of data analytical techniques they have ever used in their everyday work; (2) their merits and demerits; and (3) their misgivings and troubles concerning data analysis. The results revealed that most psychologists use a great variety of statistical methods in their everyday work, and they are also frequently troubled with statistical methodology in psychological research.
著者
有光 興記
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
性格心理学研究 (ISSN:13453629)
巻号頁・発行日
vol.7, no.2, pp.77-87, 1999-03-30 (Released:2017-07-24)

本研究は, スポーツを行う前の"心構え"の実態を明らかにするために行われた. 予備調査では, 大学の運動部に所属する選手を対象に, 普段から行っている"心構え"を調査し, その結果より96項目からなるスポーツにおける心構え尺度 (PPIS) を作成した. 研究1では, PPISを大学の運動部員に対して調査し, 因子分析の結果, 積極性, "平常心", "コンディション", "ルール準拠", "気分高揚"の5因子構造からなることを示し, 簡便に回答ができる24項目版のPPIS (BPPIS) を作成した. 研究2では, BPPISの因子的信頼性を確かめ, さらに"心構え"が運動能力により変化するかを明らかにするために行われた. その結果, "気分高揚"が"積極性"因子に負荷することから, BPPISは4因子が妥当であること, "ルール準拠"以外で運動能力の高い選手が有意に高い得点を示した. 研究3では, 運動選手の"心構え"が-般の大学生やサークルに所属している大学生よりも高い評定値を示すのかどうか確かめるために行われた. その結果, いずれの因子でも運動選手の得点は運動選手でない大学生に比べて高く, "心構え"の必要性が示唆された.
著者
有光 興記
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
性格心理学研究 (ISSN:13453629)
巻号頁・発行日
vol.9, no.2, pp.71-86, 2001-03-30 (Released:2017-07-24)
被引用文献数
5

本研究は, 罪悪感と羞恥心(恥の意識, コミュニケーション不安)の関係および性格特性との関連を明確にするために行われた. 大学生292名を対象に, 罪悪感喚起状況尺度, 状況別羞恥感情尺度, 自己意識尺度, Big Five尺度による自記式調査を実施した. その結果, 罪悪感と羞恥心間に高い正の相関関係が認められた. また, 羞恥心の影響を除去した純粋な罪悪感は, 調和性, 私的自己意識と正の相関が認められ, 罪悪感の影響を除去した純粋な恥の意識は, 情緒不安定性, 公的自己意識と正の相関, 調和性と負の相関が認められた. 罪悪感の影響を除去した純粋な気恥ずかしさ(コミュニケーション不安の下位因子)は, 情緒不安定性, 公的自己意識と正の相関, 外向性, 開放性, 調和性と負の相関が認められた. 以上の結果, 罪悪感には社会的適応機能があり, 羞恥心は不適応行動につながる可能性が示唆された. また, 罪悪感, 羞恥心と自己意識の関係は男女で異なっており, その原因として性役割の違いが論議された.
著者
村上 宣寛
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
性格心理学研究 (ISSN:13453629)
巻号頁・発行日
vol.11, no.2, pp.70-85, 2003
被引用文献数
11

本研究の目的は,語彙アプローチによって日本語におけるビッグ・ファイブを導くことである.かつてのSD法におけるEPA構造の普遍性の問題から推測すると,ビッグ・ファイブを得るための心理測定的条件は,1.用語の熟知度や使用頻度が高いこと,2.用語の分散が大きく,評定値が中央付近に位置すること,と推測される.分析1では村上(2002)の基本的な性格表現用語から原則として抹消率13%以下の用語を収集し,同義語と反意語を整理し,554語を調査対象とした.被験者は大学生男性150名,女性220名の計370名であった.分散の高い317語を選択して対角成分にSMCを入れて30因子まで抽出した.スクリー法で因子数を5と定め,オーソマックス回転を施すと,外向性(E),協調性(A),勤勉性(C),情緒安定性(N),知性(O)のビッグ・ファイブが得られた.語彙アプローチ研究によって日本語でもビッグ・ファイブが得られることが証明された.分析2では各因子の因子負荷量の大きな20語を抽出し,100語でビッグ・ファイブ構造を再確認し,各因子ごとに主因子法とオブリミン回転を適用し,側面因子を求めた.結果は,外向性では活動性,閉鎖性,自制,協調性では妬み,怒り,身勝手,勤勉性では親切さ,ねばり強さ,従順さ,情緒安定性では活動力,楽観性,知性では小心さ,愚かさ,意志薄弱の側面因子が得られた.日本語でのビッグ・ファイブは,細部では英語圏の内容と異なっている可能性が示唆された.
著者
森本 幸子 丹野 義彦 坂本 真士 石垣 琢麿
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
性格心理学研究 (ISSN:13453629)
巻号頁・発行日
vol.11, no.1, pp.2-11, 2002-09-30 (Released:2017-07-24)
被引用文献数
3

本研究の目的は,大学生の被害妄想的観念を素因ストレスモデルを用いて検討することである。大学生117名を対象として,2週間おきに縦断調査をおこなった.第1回調査では,被害観念の17の素因候補変数を測定した.第2回調査では被害妄想的観念を測定した.第3回調査では,第2回と第3回調査の間に体験した被害妄想的観念とストレッサーを測定した.分析には,第2回調査時から第3回調査時までの間の被害妄想的観念の変化を予測することが可能となる,セットワイズ階層的重回帰分析を用いた。その結果,ストレッサーと2つの素因候補(恨み,ネガティブヒアリングボイス)の間に有意な交互作用が得られた.この結果より,これらの2つの素因候補得点が高い学生は,ストレッサーを体験したときに,被害妄想的観念を持ちやすくなることが示唆された.
著者
堀井 俊章 槌谷 笑子
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
性格心理学研究 (ISSN:13453629)
巻号頁・発行日
vol.3, no.1, pp.27-36, 1995-03-31 (Released:2017-07-24)
被引用文献数
3

The purpose of the present study was to construct a reliable and valid psychological scale of interpersonal trust, and examine the relationship between interpersonal trust and the earliest recollection (ER). In Study 1, high school and college students, 538 in all, filled a questionnaire, and a l7-item Interpersonal Trust Scale (ITS) was constructed. The scale had high internal consistency and test-retest reliability. In Study 2, data from 523 high school and college students showed meaningful correlations between ITS and several conceptually-related personality scales, suggesting its validity. In Study 3, the relationship between the ITS score and ER was examined with the data of 488 college undergraduates, who gave answers to an open-ended questionnaire. The result showed that students with high ITS scores remembered significantly more positive feelings and less negative feelings for their ER than those with low ITS scores. It was also found that interpersonal trust was related to feelings attached to human figures in ER.
著者
菅原 健介
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
性格心理学研究 (ISSN:13453629)
巻号頁・発行日
vol.7, no.1, pp.22-32, 1998
被引用文献数
1 7

本研究はシャイネスの主要な2つの要素である対人不安傾向と対人消極傾向に注目し, これらを独立した特性次元として考えることができるのか, また, 両傾向は他のどのような心理特性と関連しているのかを検討した.大学生男女を対象とした2つの質問紙調査を行い次のような結果を得た.対人不安傾向と対人消極傾向とは因子構造上, 異なる特性として抽出可能であることが示された.前者は公的自意識, 拒否回避欲求と正の相関, 自尊感情と負の相関が見られ, 後者は社会的スキル, 賞賛獲得欲求と負の相関が認められた.これらから, 対人不安傾向は社会的拒否に対する過敏性の表れとして, 対人消極傾向は対人関係に対する無力感の表れとして解釈できると考えられた.以上の結果は, Leary(1983b)の自己呈示モデルとの関連から考察され, シャイネスのメカニズムに関して新たなモデルが提起された.
著者
田島 信元
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
性格心理学研究 (ISSN:13453629)
巻号頁・発行日
vol.6, no.1, pp.40-49, 1997

母親の自己イメージ, 妊娠受容感と子どもの誕生後における母親の育児態度, 子どもへの慟きかけ行動との関連が調べられた. 妊娠中に母親に自己イメージと母親イメージ, 妊娠受容感について評定を依頼した. また, 生後1か月時および8か月時において, 育児感想について母親に評定してもらった. 生後3か月時の家庭訪問時に, 母子の社会的相互交渉が観察された. その結果, 母親の自己イメージや妊娠受容感は1か月時の育児感想とは関連がみられたが, 8か月時への影響は示されなかった. 8か月時の育児感想は, むしろ3か月時に観察された母子の社会的相互交渉のなかでみられた, 子どもの行動と母親の付随的な応答と関係が示された. 母親の母性は, 自己イメージや妊娠受容感などの母親の背景要因のみに影響されるのではなく, 現実の母子相互交渉のなかで形成され変化するものであることが示唆された.