著者
夏目 泰忠 古積 博 坂本 尚史
出版者
千葉科学大学
雑誌
千葉科学大学紀要 = The university bulletin of Chiba Institute of Science (ISSN:18823505)
巻号頁・発行日
no.9, pp.161-171, 2016-02

1983年に英国ミルフォードヘブン市アモコ社製油所で発生した、ボイルオーバーを伴った原油タンク火災は、詳細な記録が残る貴重な事例である。このたび、記録を詳細に考察し、他の事例や日本の状況と比較することにより、ボイルオーバー発生時の油飛散範囲、放射熱強度の影響、現場での的確な指揮の難しさ等、原油タンク火災独特の消火活動の困難さについて改めて知見を整理した。これらを提言としてまとめるとともに、危機的状況の中で指揮者を支援する「防災支援システム」を提案した。
著者
奈良 侑画 戸田 和之
出版者
千葉科学大学
雑誌
千葉科学大学紀要 = The University Bulletin of Chiba Insitute of Science (ISSN:18823505)
巻号頁・発行日
no.13, pp.97-102, 2020-02-28

慢性腎不全の患者が透析を行うためには,バスキュラーアクセスという特殊な血管を前腕に構築する必要があり,バスキュラーアクセスの中でも内シャント法が第一選択となっている.しかし,内シャント法による副作用として狭窄の発生が問題になっており,血行力学的要因が関係していると言われてきた.吻合部角度を変化させることで狭窄の発生を抑える試みが,これまで様々な研究者により取り組まれてきたが,静脈の柔軟性は考慮されていない.そこで,内シャント法を模擬した柔軟壁Y字管の2次元拍動流れを,数値流体力学手法(Computational Fluid Dynamics, CFD)を用いて再現し,速度分布と壁面せん断応力の関係や圧力損失を調べた.その結果,吻合部角度を上流側に傾けることで,流れの局所的な不規則が弱まり,せん断応力や圧力損失が小さくなったことより,狭窄の発生を抑えられる可能性が示唆された.
著者
千葉科学大学
出版者
千葉科学大学
巻号頁・発行日
2008
著者
戸塚 唯氏
出版者
千葉科学大学
雑誌
千葉科学大学紀要 = The university bulletin of Chiba Institute of Science (ISSN:18823505)
巻号頁・発行日
no.9, pp.35-41, 2016-02

本研究は、Big Five モデルの枠組みを採用し、開放性の性格側面に関して対人魅力に及ぼす類似性の効果を実験的に検討した。分析対象者は129名(男性68名、女性61名)、平均年齢は18.43歳であり、彼らに架空の人物に関する文章(開放性を高くあるいは低く描写した)を読ませ、その後、質問紙に回答させた。独立変数は参加者開放性(高・低)、描写人物開放性(高・低)、描写人物性(男性・女性)であり、従属変数は好ましさ得点、友人希望得点であった。分析の結果、2つの従属変数に関して参加者開放性の主効果やそれに関係する交互作用は見いだされず、開放性の側面における類似が対人魅力を増加させるという効果は確認できなかった。一方、2つの従属変数に関して描写人物開放性の主効果が見いだされ、社会的に望ましい特徴(本研究の場合には開放性が高いという特徴)が対人魅力に影響を与えていることが示唆された。
著者
下野 純平 冨樫 千秋 青木 君恵 菅谷 しづ子
出版者
千葉科学大学
雑誌
千葉科学大学紀要 = The university bulletin of Chiba Institute of Science (ISSN:18823505)
巻号頁・発行日
no.11, pp.143-149, 2018-02

目的:定期試験において一定基準に到達することができなかった看護学部3年生の学生を対象に行った、学習計画立案フォーマットを用いた学習支援の効果を明らかにし、今後の看護学部学生へのよりよい学習支援を検討することを目的とした。方法:本学看護学部3年生に在籍し、学習計画立案フォーマットを用いて学習支援を受けた学生4名に半構成的面接を実施し、逐語録を質的帰納的に分析した。結果:【面倒くささと気にかけてもらえている嬉しさ】【学習計画立案フォーマットを用いた学習支援に助けられたという実感】【目標に向かって計画的に学習に取り組めたという実感】【学習日記を書きたくないという思い】【学生なりの学習計画立案フォーマットの活用方法の発見】【学習継続に向けた学生それぞれの学習計画立案フォーマットの改善点の発見】【学習計画立案フォーマット使用対象者拡大の可能性】の7つのカテゴリーが抽出された。考察:対象者は継続して学習に取り組めていたことから、学習計画立案フォーマットを使用した学習支援は効果があったと考えられた。その一方で、対象を拡大する場合には、対象学生の学力や学習への主体性などを加味し、再度フォーマットを検討する必要がある。
著者
小濱 剛 加瀬 ちひろ 佐藤 那美 鷹野 翔太 山口 太一 山本 俊政
出版者
千葉科学大学
雑誌
千葉科学大学紀要 (ISSN:18823505)
巻号頁・発行日
no.12, pp.79-84, 2019-02

近年、世界的な水産資源の需要増加に伴い、好適環境水等の人工飼育水を用いた閉鎖循環式陸上養殖が注目を浴びている。本研究では、カクレクマノミ及びニホンウナギをそれぞれ対象にして、人工海水と好適環境水における行動特性の相違を検証する事を目的とした。カクレクマノミの行動結果より、水槽内の平均利用場所は、人工海水下では上面および下面利用率が同等だったにもかかわらず、好適環境水下では下面の利用率が大幅に増加した。条件提示直後の平均活動性より、人工海水提示直後に比べ、好適環境水提示直後で境界線の通過回数が半分以下になることから、現行の好適環境水がカクレクマノミに適さないことが示唆された。一方、ニホンウナギにおいては行動を抑制させるような結果は見られなかった。以上の結果から、好適環境水の塩分及び成分比について、飼育魚種毎に明らかにする必要があると推察された。
著者
王 晋民
出版者
千葉科学大学
雑誌
千葉科学大学紀要 (ISSN:18823505)
巻号頁・発行日
no.2, pp.9-17, 2009-02

組織不正によって消費者や社会全体の利益が損なわれ,また最終的に組織自体の弱体化や解体に至る事例が数多く報道されている.組織不正を防ぐことが組織の危機管理において重要な課題となっている.組織不正を防止するために,「内部告発」が有効な手段の一つとして考えられるが,内部告発者が報復などの不利益を受ける可能性がある.2006年4月に「公益通報者保護法」が施行され,内部告発が行われやすくなり,また内部告発に対する態度がよりポジティブになることが考えられる.本研究はこの法律の施行前後で行った有職者の内部告発に関する調査のデータを比較し,内部告発に対する有職者の態度について検討した.その結果,法律施行後,内部告発者を保護する必要性の認識が強くなったことが確認された.
著者
山下 裕司 山崎 舞 鈴木 真綾 萩原 宏美 田上 八郎 平尾 哲二 坂本 一民
出版者
千葉科学大学
雑誌
千葉科学大学紀要 = The University Bulletin of Chiba Institute of Science (ISSN:18823505)
巻号頁・発行日
no.9, pp.67-74, 2016-02-28

古来から天然の薬として服用されてきた有機ゲルマニウムは、角層中のコーニファイドエンベロープ形成や細胞間脂質を構成するセラミド合成促進などの効果が近年見出され、皮膚への有効性が期待されている。昨年、我々は有機ゲルマニウムを配合したクリームを皮膚に塗布した際の角層水分量と経表皮水分蒸散量(TEWL)の変化について調べ、有機ゲルマニウムに角層の保湿性を向上する傾向があることを報告した。本研究では、剤型をクリームから化粧水に変更し、市販の有機ゲルマニウム含有化粧水と含有されない化粧水を用いて角層水分量、TEWL、皮膚粘弾性、および皮膚色の変化から皮膚への塗布効果を調べた。4週間の連用塗布によって、有機ゲルマニウム配合化粧水は未配合化粧水に比べて有意に角層水分量は増加したが、その他の評価項目に関しては著しい差は見られなかった。また、本研究では、この角層水分量の増加に対して表皮中のフィラグリンから産生されるピロリドンカルボン酸量との関係について調べた。化粧水中の有機ゲルマニウムの有無に関係なく皮膚の保湿能に関係するピロリドンカルボン酸量は変化しておらず、有機ゲルマニウム配合化粧水の高い保湿機能が天然保湿成分の量的変化に関与していないことが示唆された。
著者
横山 悟
出版者
千葉科学大学
雑誌
千葉科学大学紀要 (ISSN:18823505)
巻号頁・発行日
no.9, pp.9-16, 2016-02

近年、学科試験を受けない形で大学に入学させる、アドミッションオフィス入学試験(AO入試)方式や推薦入試などによる入学者選抜方式の利用が増加している。主に高校における成績、各種部活動や委員会などの活動実績、志望理由、面接、小論文などにより、入学希望者を多角的に評価し、入学者を選抜する方法である。しかし、中央教育審議会の場などにおいて、これらのAO入試や推薦入試が大学生の基礎学力低下を引き起こしている可能性がある、と危惧する声も上がっている。このような状況に対し、本論文では、中学・高校・大学において必修科目とされている英語科目の成績を指標とし、入学試験の方式により分類した初年次学生の英語に関するテスト結果のうち、初年次前期の講義開始前に行った英語科目のプレースメントテスト、及び初年次前期の英語科目にて全学的に行った共通定期試験のスコアを項目反応理論による解析を通じて、入学試験区分によって実際の大学入学者の学力差が見られるのかを検証した。結果として、プレースメントテスト、定期試験ともに、AO入試の区分の学生のスコア平均は低く、学科試験を課す入試区分の学生のスコア平均が高かった。一方、学校法人内での特待生推薦入試の区分の学生はスコア平均が高く、一般入試やセンター試験など実質的に学科試験がある入学区分と同等の学力を持っていた。特待生推薦入試の区分では、全ての学生が特待生になるわけではないが、特待生の枠での採用が設定されていることから、学費の減免を目的として、優秀な学生が受験してきている可能性が示唆される。以上より、AO入試・推薦入試の区分が全て学力不足である、という短絡的な一般化には至らないことが確認され、特待生枠などの設定により、学科試験が課されずとも学力が高い学生を確保する方法がある可能性が示された。
著者
田中 厚成 岡本 恒 服部 恭介
出版者
千葉科学大学
雑誌
千葉科学大学紀要 (ISSN:18823505)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.31-48, 2013-02-28

近年発展の極めて著しいスーパー・コンピュータを用いた大規模数値解析により、流体中の圧力の3次元等圧面、および流体が作用する複雑な等応力面が、3次元立体形状として可視化され、更にそれらの形成、移動、および変化を求めることにより複雑で難解な流体現象を説明する方式が確立しつつある。これは単に工学的意義が大きいばかりでなく、今世紀まで残された数学の難問の一つである流動現象の支配方程式の解を3次元的に図示しているとも受取ることができる。この数値解析には世界トップクラスのコンピュータを年単位で連続運用する必要があり、結果の検証には、等圧面、等応力面の形状、強さ、位置、移動速度等の詳細で膨大な基礎データが必要になる。このため長期間かけてシステマチックな基礎実験研究の裏付けに基づいて成されたものである。 本研究では複雑多岐な等圧面、等応力面を用いた流体のダイナミクス(動力学)を流体の支配方程式の解析解(:数式解)と見なしている。第1報で関数解析により有意な解を得る条件を定め、その条件から得られる解により流体中の多数の渦構造圧力が提示できることを示した。第2報では解法の有効性を高める漸近解の収束方式、高次微分の信頼性等を検討した。本報では数値実験で用いている弱周期境界条件を用いても数式解は安定し、且つ、流体中の渦構造圧力の個数、形状、間隔を合わす上で有効であることを示す。これにより本方式の実用化の可能性も提示することができたと考える。
著者
戸塚 唯氏
出版者
千葉科学大学
雑誌
千葉科学大学紀要 = The University bulletin of Chiba Institute of Science (ISSN:18823505)
巻号頁・発行日
no.11, pp.47-56, 2018-02-28

性的マイノリティの児童生徒はいじめや差別の困難に直面している。そのためいじめや差別を低減し、性的マイノリティへの援助意図を高めるような説得が重要となっている。本研究でははじめに性的マイノリティの児童生徒の現状を考察し、その後性的マイノリティへの援助意図を高める要因を検討した。実験参加者は79名の大学生(男性56名、女性23名)であり、11の認知と性的マイノリティへの援助意図を測定した。11の認知とは、迷惑認知、深刻さ認知、二次被害の確率認知、二次被害の深刻さ認知、内的規範認知、義務認知、実行者割合認知、支持認知、意義認知、コスト認知、当惑認知である。重回帰分析の結果、当惑認知と内的規範認知、意義認知が性的マイノリティへの援助意図に影響を与えていたことが明らかとなった。
著者
戸塚 唯氏
出版者
千葉科学大学
雑誌
千葉科学大学紀要 (ISSN:18823505)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.31-43, 2010-02-28

本研究の目的は、大学生が恋人・結婚相手のどのような性格特性を嫌だと思うのかを検討することであった。調査参加者は日本人大学生154名(男性106名、女性48名)で、まず彼らに対して肯定的特性リストを呈示して自分自身にどの程度これらの特性があるかを回答させた。これが自己評価得点である。次に否定的特性リストを呈示し、恋人・結婚相手にこれらの特性があったら、どのくらい嫌だと思うかを回答させた。これが嫌悪得点である。自己評価得点に関して、男女のデータを比較した結果、全体的に見て男女の得点に大きな違いがないことが示唆された。次に、嫌悪得点を従属変数にとして分散分析を行った。独立変数は、性(男性・女性)と対象(恋人・結婚相手)であった。その結果、次のことが示唆された。1. 女性は男性性特性が低い恋人や結婚相手を嫌悪し、男性は女性性特性が低い恋人や結婚相手を嫌悪する傾向があること。2. 男性も女性も、恋人よりも結婚相手に対して高い資質を求めていること。
著者
酒井 明
出版者
千葉科学大学
雑誌
千葉科学大学紀要 (ISSN:18823505)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.89-97, 2008-02-29

我が国の総人口が予想より早く2006年から減少し始めた。生産年齢人口については減少に転じてから12年近くが経過している。我が国を少子化と高齢化という二重の負担が覆っている。日本人労働力の減少を補うために、毎年約60万人の外国人労働者を受け入れなければ、日本は現在の経済水準を維持出来ないと言われている。しかし、受け入れの拡大は犯罪、社会保障、教育などで社会秩序リスクを伴う。一方、国際的な労働移動をめぐる環境も大きく変化している。グローバル社会の到来に対応すべく21世紀において日本はこの外国人労働者受け入れ問題をどの様に考え、実践すればよいのか。本論においては方法論として、まず、なぜ、今、外国人労働者問題なのか、問題の背景に触れ、次に現行の制度の概要と変遷、それをめぐる議論について検証し、どの様な問題が生じ、また、なにが課題となっているかを考察する。その後、それを踏まえて諸外国の例を参考としつつ、新しい21世紀日本の外国人労働者受け入れ政策について提示する。
著者
丹野 志保 田邉 久恵 竹之下 信子 長島 緑
出版者
千葉科学大学
雑誌
千葉科学大学紀要 = The University Bulletin of Chiba Institute of Science (ISSN:18823505)
巻号頁・発行日
no.10, pp.207-218, 2017-02-28

本研究は、A施設における今後の看取りに関する施設内研修を計画する上で、「看取りフローシート」導入1年後の看取り介護の現状と看取り介護に対する職員の思いを把握するために質問紙による調査を行った。さらに、施設と共同で看取り介護をする上で必要な教育的課題を抽出し検討した。 調査の結果、看取り介護の現状では、看取り介護経験がある職員は85.5%で、看取り介護導入時期の判断は「大体できる」が68.4%であった。日々のカンファレンス、デスカンファレンスが十分に行われていないため実施した看取り介護が次の看取り介護に活かされていない、家族と看取りについてのコミュニケーションがなかなか取れない、研修に参加したいが参加できていないという現状を把握することができた。 職員の看取り介護に対する思いについての自由記述を質的に検討したところ、119コードから【家族に対する看取り介護の方法】、【本人に対する看取り介護の方法】、【看取りを支えるための自分の在り方】、【看取り介護の困難感】、【ケア担当者の課題】、【看取り介護システム構築への課題】の6つのカテゴリが抽出された。 量的な調査では実施した看取り介護が次の看取り介護に活かされていないとあった。しかし、自由記述では、看取り介護時の利用者や家族に対する多くの思いが語られており、言語化されてきているため、今後、それらの内容を職種でさらに意味づける作業がなされることで看取り介護が深化していくことが期待される。 今後の教育的課題については、看取りフローシートを見直し、各職種の役割を明示し、新人介護士等にオリエンテーションを行う必要がある。さらに施設の看護師のアセスメント能力を活用し、看取り介護時期の判断の共有化、日々の看取り介護のカンファレンスを行い、言語化し、施設の看取り介護の蓄積を行うことの意味や看取り介護のやりがいにつなげる研修内容にすることが必要である。また、介護職員の平均年齢が30歳代前半であることから、死を身近に経験することが少ないと考えられた。従って、死生観を育む取り組みが必要であることが示唆された。
著者
下野 純平 市原 真穂
出版者
千葉科学大学
雑誌
千葉科学大学紀要 = The University Bulletin of Chiba Institute of Science (ISSN:18823505)
巻号頁・発行日
no.10, pp.91-99, 2017-02-28

目的:本研究は在宅超重症児のきょうだいに関する親の認識と関わりを明らかにし、家族への看護援助を考察することを目的とした。方法:7事例の超重症児の親に半構成的面接を実施し、逐語録を質的帰納的に分析した。結果:在宅超重症児のきょうだいに関する親の認識と関わりとして、【家族全員での対処を促すようにきょうだいに関わる】【きょうだいが家族の状況を察して表出できない思いや気持ちを推し量る】【きょうだいへの関わりに必然的に求められる育児を協働する】【きょうだいに関わることが十分にできないことによる葛藤がある】【きょうだいにとっては普通のきょうだい関係と同じ】【みんな違ってみんないい】【危機は避けたい】【障害があるからといって特別とは思わない】の8つのカテゴリーが抽出された。考察:家族への看護援助として、【家族全員での対処を促すようにきょうだいに関わる】を支えることや在宅での生活を見据えた退院支援をしていくことが必要である。
著者
戸塚 唯氏 上北 彰 狩野 勉
出版者
千葉科学大学
雑誌
千葉科学大学紀要 (ISSN:18823505)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.45-53, 2011-02-28

Byrne & Nelson (1965)は、態度の類似性が、相手への好意度を増加させることを報告している。では、社会的にネガティブな特徴である情緒不安定性に関する類似も相手への好意度を増加させるだろうか。本研究の目的は、情緒不安定性に関する類似性が対人魅力に及ぼす影響を検討することであった。実験参加者は日本人大学生130 名であり、独立変数は参加者の情緒不安定性(高・低)、参加者の性(男性・女性)、描写人物の情緒不安定性(高・低)、描写人物の性(男性・女性)であった。まず実験参加者に情緒不安定性に関する質問項目に回答させ、その後、4 人の描写人物に関する印象を測定した。分散分析の結果、情緒不安定性の類似が対象人物に対する好意を促進する効果は認められなかった。一方で、参加者の情緒が不安定なほど対象人物に対してよりよい印象を持つ傾向があること、情緒が不安定な女性描写人物よりも情緒が不安定な男性描写人物の方がよりよい評定を受けることが明らかとなった。
著者
内川 隆一 市川 真衣 河野 真友 坂井 美穂 吉村 誠人 大山 浩貴 鎌北 直実
出版者
千葉科学大学
雑誌
千葉科学大学紀要 (ISSN:18823505)
巻号頁・発行日
no.7, pp.77-86, 2014-02

千葉県銚子市および茨城県神栖市内におけるペット飼養の実態並びに飼養者の意識を知る目的で平成23および24年の6月から7月にかけて千葉県銚子市内および茨城県神栖市内の学校に通う小学校5年生、中学校2年生、高校2年生を対象として「ヒトとペットに関するアンケート」を実施した。本報ではペットの飼養状況を中心にその結果を報告した。両市の80%以上の学童・生徒は動物に対して好意を抱いており、その40%が犬猫を、30%がその他の動物をペットとして飼養していた。また、現在ペットを飼っていない人もその半数以上がペットを飼いたいと思っていた。動物は嫌いだと答えた人の多くは動物に対して恐怖心を持っており、過去の動物による嫌な経験が一つの原因となっている可能性が指摘された。しかし、犬猫の健康に対する基本的理解度は低く、感染症や予防接種に対しても関心があまり高くないことが明らかとなった。また、現在犬猫を飼養している人においても、不妊・去勢手術に対する関心が低く、手術が行われたのは1/3程度であった。動物アレルギーが強く疑われる学童・生徒が少なからず存在し、息苦しさ、吐き気といった重い症状が現れた人も含まれていた。