著者
島田 英昭 北島 宗雄
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.56, no.4, pp.474-486, 2008-12-30 (Released:2013-02-19)
参考文献数
24
被引用文献数
6 7

本研究は, 挿絵が文章理解を促進する効果に対して, 動機づけを高める効果と精緻化を促進する効果の2つがあるとする認知モデル, 2段階モデルを提案した。そして, 既存の防災マニュアルを事例として実験を実施し, 2つの効果を確認した。実験1 (N=34) では, 実験参加者に対して, マニュアル中のページを2秒間見ることを求め, その直後に動機づけに関する質問に答えることを求めた。その結果, 挿絵がマニュアルの読解に対する動機づけを高めることを示した。実験2 (N=23) では, 実験参加者に対して10分間でマニュアルを理解することを求め, 挿絵が注視され, 記憶されていることを明らかにした。さらに, 挿絵の記憶が関連するテキストの記憶を促進することを明らかにした。つまり, 挿絵が精緻化を促進することを示した。
著者
金 多賢 北島 宗雄 李 昇姫
出版者
Japan Society of Kansei Engineering
雑誌
日本感性工学会論文誌 (ISSN:18845258)
巻号頁・発行日
vol.13, no.1, pp.181-189, 2014 (Released:2014-02-25)
参考文献数
23
被引用文献数
1 1

In the research on emotion, films have been used widely as a means for eliciting emotions in a laboratory because they affect psychological states of human beings. The studies by Philippot (1993), Gross & Levenson (1995) and Noguchi (2005) showed that specific emotion states, i.e., amusement, anger, contentment, disgust, fear, happiness, neutral, sadness and surprise, should be reliably elicited by films. In the media society we are living, the use of films as an effective representation for communicating information among ourselves has been increasing. As the previous studies showed, films should elicit emotions, and therefore the films used in the media society should affect the emotional nature of the media society. In order to establish a sound media society, it is required for those who produce films to understand appropriately the psychological states of the people who watch them. The purpose of this study was to develop producers' media literacy by the knowledge how specific films used in the media society should elicit specific emotional states of the viewers. We investigated psychological states of viewers in terms of their Kansei reaction, which is, in this experiment, the ability to induce the preference evaluation, i.e., like or dislike, when watching the films. We used four films associated with different types of information having the same playback time. Forty-nine participants carried out preference evaluations after watching the four films. We measured the Kansei reactions of the participants using 16 emotions proposed by Gross & Levenson (1995) and impression evaluations for 14 adjective pairs proposed by Gwasaki (2002). The result showed the way how the emotions and the impressions affected “like” and “dislike”. In particular, it was found that the emotion of “tension” is the key of the preference evaluation.
著者
赤松 幹之 北島 宗雄
出版者
国立研究開発法人 産業技術総合研究所
雑誌
Synthesiology (ISSN:18826229)
巻号頁・発行日
vol.4, no.3, pp.140-150, 2011 (Released:2011-10-11)
参考文献数
19
被引用文献数
1

単に開発者のアイデアだけで技術開発を行っていると、人に受容される製品やサービスを実現することは容易ではない。それは、さまざまな個性を持つ利用者が実際にそれを使う状況下で何を考え、何を感じているかを、開発者が正しく知ることが困難だからである。そこで、実際の状況下での人の認知行動を把握する手法である認知的クロノエスノグラフィ法を開発した。この方法は、対象とする人の条件を明確化して選定したエリートモニターを用い、製品やシステムの設計につながる変数であるクリティカルパラメータを事前に検討して、それを統制したうえで実生活場面での行動を記録して、それを基に回顧的インタビューを行うことによって認知行動過程を明らかにする。製品やサービスの設計につながることを指向する構成的な研究プロセスの初期段階に適用する手法である。
著者
北島 宗雄
出版者
日本知能情報ファジィ学会
雑誌
日本ファジィ学会誌 (ISSN:0915647X)
巻号頁・発行日
vol.14, no.5, pp.446-460, 2002-10-15
参考文献数
36
被引用文献数
10

本稿では、ウェブサイトユーザビリティ評価法のひとつであるウェブ認知ウォークスルー(CWW;Cognitive Walkthrough for the Web)についてその原理と実施方法について説明する。CWWは、Walk-Up-And-Useデバイスを対象としたユーザビリティインスペクション法として開発された認知ウォークスルーをウェブサイトのユーザビリティ評価に適合するように改良したものである。CWWではユーザがウェブサイトをナビゲートする過程をシミュレートしながらユーザビリティの問題を発見する。ここで、ユーザは、ウェブページのなかから注目すべき部分領域を選択し、そこから情報探索ゴールに意味的にもっとも近いリンクを選択するものとしてモデル化される。ユーザビリティの問題の発見は、部分領域の選択、およびリンクの選択が問題なく行えるかどうかの評価を、潜在意味解析(LSA;Latent Semantic Analysis)を利用してゴールとの意味的類似度を求めることにより客観的に行われる。ゴールの記述には、探索すべき情報ばかりでなく、動機や背景知識も含まれる。また、意味的類似度は、ユーザの知識をもっともよく表現する意味空間を選択して行われる。したがって、CWWでは、多様なゴール、ユーザに対応したユーザビリティ評価が可能となっている。さらに、本稿では、現実のウェブサイトをとりあげて、CWWの実施方法を具体的に説明する。
著者
中台久 和巨 李 昇姫 北島 宗雄 星野 准一
雑誌
研究報告ヒューマンコンピュータインタラクション(HCI)
巻号頁・発行日
vol.2015-HCI-162, no.10, pp.1-8, 2015-03-06

文章を声に出して読む音読は幼少期に行う事で,社会で必要な表現力や想像力を支える基礎をつくるとされ,小学校では読解の授業で音読が多用されている.音読指導では,文章を読む際に相手が理解しやすいように読み方を調整する能力を重視する項目が多く見られる.しかし,児童が学校の授業以外で,聞き手を意識した音読を継続的に行う事は容易ではない.本稿では児童が音読を行う際に,家庭などでひとりでも楽しく音読ができ,聞き手を意識した音読を促す自律アニマトロニクス 「KINIJRO」 を提案する.
著者
生田目 美紀 北島 宗雄
出版者
Japanese Society for the Science of Design
雑誌
日本デザイン学会研究発表大会概要集
巻号頁・発行日
pp.81-81, 2005 (Released:2005-07-20)

聴覚障害者にとってアクセシブルなWebコンテンツは,聴覚情報にアクセスする代替手段だけでは実現できない.眼球運動および操作過程を詳細に比較観察し,聴覚障害者がどのようにウェブを介して提供される情報と対話するのかという研究を基に,聴覚障害者のウェブページの視覚情報の利用特性を解明した.ウェブ利用における聴覚障害者と健聴者の特性の違いは,1)聴覚障害者がテキスト情報を理解するレベルは健聴者より浅い.2)聴覚障害者のスキャンパスは,健聴者のものと比較して戦略性が見られない.というものであった.したがって,聴覚障害者にとってアクセシブルなコンテンツは,1)リンクラベルの表現が直観的に理解できること.2)コンテンツの構造が視覚的に理解しやすいことが重要であると考えられる.このように,ウェブページ上の視覚情報の利用特性を理解することによって,はじめて,音声情報の補償という観点を越えた聴覚障害者のためのデザインによるコンピュータ支援の道が拓けてくる.
著者
島田 英昭 北島 宗雄
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.33, no.2, pp.111-119, 2009
被引用文献数
4

マルチメディアマニュアルの分かりやすさを向上させるため,3種の構成要素(画像,字幕,ナレーション)の提示タイミングと分かりやすさの関係を認知心理学的に議論し,適切な提示タイミングを心理実験により同定した.地震が起きたときの対処手順を説明する防災マニュアルを題材として,3つの実験を実施した.実験参加者は,1秒単位(実験1,2)または0.5秒単位(実験3)で3種の構成要素の提示タイミングが操作されたマニュアルの一場面を見て,分かりやすさを主観的に評価することを求められた.その結果,分かりやすい場面の条件は,画像の1秒後にナレーションが提示されることと,字幕がその間に提示されることの2点であることが明らかになった.
著者
高木 英明 高橋 豊 李 頡 張 勇兵 北島 宗雄 後藤 邦夫
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2001

1.Eコマースサイトのウェッブページのデザイン評価ウェブページに表示されるリンクを逐次選択しながらターゲット情報が提供されているページにたどり着く過程をMarkov連鎖確率過程としてモデル化した。各リンクが選択される確率は、認知工学の技法を用いて計算された百科事典の見出し語間の類似度データベースの検索から自動的に計算して決めることにした。例として、現実の3つの航空会社のiモード航空券予約サイトをMarkov連鎖でモデル化し、予約完了までに要する平均クリック数と操作時間を計算した。その結果、ユーザの習熟度に応じて、3社のサイトの効率の特徴に違いがあることを示した。2.セルラ移動体通信網におけるハンドオーバ数の評価と最適端末位置管理セルラ移動体通信網において、1つの通話中に横切るセルの数(ハンドオーバ数)を評価するモデルを再生過程という確率過程の理論を応用して構築した。また、セルラ移動体通信網においては、基地局が移動端末の位置を時々刻々に記録しておくことが必要であるが、そのコストを節約するために、端末が一定数のセルを横断するごとにページングにより位置を報告させるものとする。端末が通話中に横断するセルの数を遅延再生確率過程でモデル化し、位置管理のコストを最小にするような更新頻度を決定する方法を研究した。3.波長分割多重方式の光通信網における波長割り当てと経路選択の高速解法大規模な波長分割多重方式の光通信網において、送受信の要求が静的に与えられていると仮定するとき、波長割り当てと経路選択を高速で行なう2つのアルゴリズムを開発した。これらを、茨城県および関東地方のNTT電話局の位置から構成した仮想網に対して適用し、既存のアルゴリズムと比較すると、実行速度が格段に短いことが示された。
著者
生田目 美紀 北島 宗雄
出版者
日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
vol.58, no.2, pp.105-112, 2011-07-31

ウェブは,アクセシビリティ要件を満たしていると同時に,ユーザビリティ要件を満たしている必要がある。しかしながら,これらの二つの要件を同時に満たすようなウェブのデザイン方法が確立されている訳ではない。そこで本研究では,これら2つの要件の両立の可能性について検討するため,「理解可能」「操作効率」をとりあげ,ハイパーリンクというデザイン要素に着目し,視線計測実験を行うことにより実験的に検証した。実験は,2種類のユーザー(テキスト情報処理に優れた被験者群・イメージ情報処理に優れた被験者群)を想定し,3種類のハイパーリンクの表現方法(テキストのみ・イメージのみ・テキスト付きイメージ)を提示して行った。その結果,「テキスト付きイメージ」はユーザー特性に関係なく理解可能であり,操作効率が良いことがわかった。デザイン方法の一例として,アクセシビリティ要件とユーザビリティ要件を両立させるハイパーリンクの情報表現について明らかにする事ができた。
著者
生田目 美紀 北島 宗雄
出版者
日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究. 研究発表大会概要集 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
no.56, pp.90-91, 2009-06-20

This paper reports an eye-tracking experiment conducted to compare alternative representations on web pages. The experiment simulated a directory-based information search task to understand how it is performed when directories are represented in text, labeled-pictograms, or unlabeled-pictograms. The eye movement data were analyzed by the parametric ANOVA to understand how the method of directory search adopted by the hearing group and the deaf group might be different under the influence of the differences in directory representations. The result demonstrated that only in the labeled-pictogram representation, the hearing group and the deaf group performed equally well in terms of the eye movement measures.