著者
成瀬 光栄 立木 美香 馬越 洋宜 田辺 晶代
出版者
日本内分泌外科学会・日本甲状腺外科学会
雑誌
日本内分泌・甲状腺外科学会雑誌 (ISSN:21869545)
巻号頁・発行日
vol.32, no.4, pp.243-245, 2015 (Released:2016-03-04)
参考文献数
4

褐色細胞腫・パラガングリオーマは適切な診断と治療により治癒が期待できる一方,診断の遅れは,高血圧クリーゼ,不整脈,たこつぼ型心筋症などを合併する。更に約10%が悪性で,初期の診断が困難かつ有効な治療法がない。著者らは日本内分泌学会臨床重要課題委員会と厚労省難治性疾患克服研究事業研究班との協力で褐色細胞腫診療指針2012年を取りまとめたが,本稿では2014年に米国内分泌学会から発表された褐色細胞腫・パラガングリオーマ診療ガイドラインの要点を解説する。根拠となる論文には4段階のエビデンスレベル,診療行為には2段階の推奨グレードが付記されている。基本的な点は我が国における診療指針と同様であるが,機能検査,画像検査,遺伝子検査などの各点で差異を認める。我が国の保険医療制度を考慮して日常診療に活用する必要がある。
著者
長沼 廣
出版者
日本内分泌外科学会・日本甲状腺外科学会
雑誌
日本内分泌・甲状腺外科学会雑誌 (ISSN:21869545)
巻号頁・発行日
vol.33, no.2, pp.69-72, 2016 (Released:2016-07-28)
参考文献数
8

甲状腺結節性病変の鑑別診断についてはガイドラインなどが示されている[1]。甲状腺結節性病変は術前の超音波,CT,MRI,細胞診などでかなり質的に診断が出来ているが,手術適応に関しては画像診断と併せて細胞診の診断が重要である。さまざまな組織像を示す結節性病変の中で濾胞性腫瘍の良悪性の診断は依然として容易ではない。正確に病理診断をするためには切除甲状腺の取扱いも大切である。濾胞腺腫と微少浸潤型濾胞癌の鑑別は肉眼所見にはきわめてむずかしい。適確な濾胞性腫瘍の診断には良好な固定状態で検査することが望まれ,濾胞癌の診断基準を標準化することが重要である。甲状腺癌取扱い規約第7版では切除検体の取扱いは簡略化したが,濾胞癌の診断基準である脈管浸潤,被膜外浸潤ついて前版より詳細に記載した。濾胞性腫瘍の鑑別診断に役立てていただきたい。
著者
亀山 香織
出版者
日本内分泌外科学会・日本甲状腺外科学会
雑誌
日本内分泌・甲状腺外科学会雑誌 (ISSN:21869545)
巻号頁・発行日
vol.31, no.2, pp.115-119, 2014 (Released:2014-08-07)
参考文献数
5

2013年に甲状腺結節取扱い診療ガイドラインが発刊された。ここではこれまですべて鑑別困難と報告していた濾胞性腫瘍疑いの例を,細胞所見よりfavor benign,borderline,favor malignantの3群に亜分類し,ある程度臨床医のニーズに応えることとした。この3群の分類は元々伊藤病院で行っているものであり,ガイドラインへの収載に際しては病理委員4名で検証を行い,有効性を確認した。一方で2007年に欧米でベセスダ方式という,やはり甲状腺細胞診の診断様式が発表されている。わが国のガイドラインと類似しているが,定義や臨床的取扱いなど課題もみられる。各施設ではどの様式を使っても,その判定に対する臨床的取扱いについては病理医と臨床医できちんと取り決めをしておくことが重要である。
著者
工藤 篤 田邉 稔
出版者
日本内分泌外科学会・日本甲状腺外科学会
雑誌
日本内分泌・甲状腺外科学会雑誌 (ISSN:21869545)
巻号頁・発行日
vol.31, no.4, pp.290-297, 2014 (Released:2015-02-17)
参考文献数
53

膵神経内分泌腫瘍の術後5年生存率は60~80%,肝転移再発率は30~85%と報告されている。原発巣切除の意義は極めて高く,リンパ節郭清が必要である。核出術が選択可能な腫瘍の肉眼型分類は,理論上被膜形成のある単純結節型に限定されるが,被膜形成や被膜外浸潤などの病理学的所見を術前に判定することは極めて困難であることは極めて明白であり,リンパ節郭清を伴う定型的切除を選択することがベストである。また,本邦においては初診時に遠隔転移を認める症例が約2割,非機能性NECに至っては半数を占める。肝転移を伴う症例の予後は極めて不良であり,集学的治療の一環としての外科切除が果たす役割は極めて重い。しかしながら,切除だけで根治を狙うことには限界がある。従来のソマトスタチンアナログ製剤に加えて,2011年にエベロリムスが2012年にスニチニブが保険適応となった。近年の大腸癌に対する集学的治療の革新的な進歩がそうであったように,膵神経内分泌腫瘍においても分子標的療法の発展に伴い外科治療の適応は今後ますます拡大していくことが予想される。
著者
坂本 穆彦
出版者
日本内分泌外科学会・日本甲状腺外科学会
雑誌
日本内分泌・甲状腺外科学会雑誌 (ISSN:21869545)
巻号頁・発行日
vol.31, no.2, pp.104-107, 2014 (Released:2014-08-07)
参考文献数
10

日本甲状腺学会は2013年8月に「甲状腺結節取扱い診療ガイドライン2013」を刊行し,その中で穿刺吸引細胞診分類を提起した。わが国ではすでに作成当時の国際標準に準拠した甲状腺細胞診判定基準が「甲状腺癌取扱い規約」第6版(2005年)に掲載されており,このたびの日本甲状腺学会のガイドライン刊行によって,わが国にはあたかも2つの細胞診判定基準が生じたかの様な状態となった。他方,「甲状腺癌取扱い規約」は近年改訂されることになっており,ここでは2008年に米国より示されたベセスダ・システムに基づいた変更が行われる。このことは,「規約」刊行母体の日本甲状腺外科学会ではすでに機関決定されている。この様な状況をふまえ,本稿ではベセスダ・システムの概容と意義について概説する。甲状腺細胞診の判定基準が国内に複数存在するという事態は是非とも回避されねばならない。
著者
土井 隆一郎 阿部 由督 伊藤 孝 中村 直人 松林 潤 余語 覚匡 鬼頭 祥悟 浦 克明 豊田 英治 平良 薫 大江 秀明 川島 和彦 石上 俊一
出版者
日本内分泌外科学会・日本甲状腺外科学会
雑誌
日本内分泌・甲状腺外科学会雑誌 (ISSN:21869545)
巻号頁・発行日
vol.30, no.4, pp.256-261, 2013 (Released:2014-01-31)
参考文献数
9
被引用文献数
1

膵神経内分泌腫瘍(pNET)は神経内分泌組織にある腸クロム親和性細胞由来の腫瘍であるとされる。実際に遭遇する腫瘍の種類は多く,腫瘍ごとに症状が異なるため診断方法もさまざまである。しかしながらpNETと診断された場合はすべて外科切除の適応と考えるべきである。インスリノーマ以外の腫瘍は転移・再発のリスクが極めて高く,リンパ節郭清が必要である。肝転移を伴っている場合は予後不良であるが,一方,切除によるメリットがあると判断される場合は肝切除の適応がある。外科切除のみで根治できない症例が多く,集学的治療を考慮しなければならない。pNETに対する分子標的治療薬を組み込んだ治療体系の整理が必要である。
著者
関 智史 茂松 直之 白石 悠 深田 淳一 伊藤 公一 高見 博
出版者
日本内分泌外科学会・日本甲状腺外科学会
雑誌
日本内分泌・甲状腺外科学会雑誌 (ISSN:21869545)
巻号頁・発行日
vol.29, no.1, pp.50-56, 2012 (Released:2013-01-31)
参考文献数
23

放射線治療は外科手術,化学療法とならぶ悪性腫瘍の治療の一つの柱である。根治治療の他,治癒不能な進行例の場合でも緩和治療として広く用いられる。ここでは甲状腺癌や甲状腺機能亢進といった甲状腺疾患の放射線治療について述べる。甲状腺癌に対する放射線治療は,131Iを用いたアイソトープ内用療法と高エネルギー放射線治療装置を用いた外照射の二つがある。アイソトープ内用療法は,ヨード摂取能のある濾胞癌や乳頭癌に治療適応がある。術後の再発予防や,残存病変の治療,若年者の多発肺転移などに特に有効とされるが,本邦では法的規制が厳しく,実施可能施設が限られる。外照射は手術不能例や術後の高リスク例,緩和的治療に適応となるが,合併症を生じないよう照射法の工夫が必要である。甲状腺機能亢進症に対する放射線治療は,抗甲状腺薬不応例などに131Iアイソトープ内用療法が適応となるほか,甲状腺眼症の緩和目的に放射線外照射が適応となる。
著者
鈴木 尚宜 竹内 靖博
出版者
日本内分泌外科学会・日本甲状腺外科学会
雑誌
日本内分泌・甲状腺外科学会雑誌 (ISSN:21869545)
巻号頁・発行日
vol.31, no.1, pp.2-4, 2014 (Released:2014-04-30)
参考文献数
9
被引用文献数
1

甲状腺手術後の副甲状腺機能低下症における臨床的問題は低カルシウム血症とその関連事象である。副甲状腺ホルモン不足による副甲状腺機能低下症に対する治療は,活性型ビタミンD3製剤の投与が主体となる。血清カルシウム濃度は,ある程度の過換気状態でも低カルシウム血症による自覚症状が生じないレベル(補正カルシウム濃度8.0mg/dL程度)を維持する。尿路結石症や腎機能低下のリスクを抑えるために,随時尿のカルシウム(mg/dL)/クレアチニン(mg/dL)比を0.3以下にする。高カルシウム尿症を生じる場合や尿路結石の合併例には,サイアザイド系利尿薬の併用を検討する。副甲状腺機能低下症患者に副甲状腺ホルモン製剤を併用した場合に,活性型ビタミンD3製剤の必要量の減少,および尿中カルシウム排泄の改善が報告されている。副甲状腺ホルモン不足による副甲状腺機能低下症を副甲状腺ホルモン製剤で治療することは今後の検討課題である。
著者
壁谷 雅之 北野 睦三 齊藤 祐毅 古川 麻世 杉谷 巌
出版者
日本内分泌外科学会・日本甲状腺外科学会
雑誌
日本内分泌・甲状腺外科学会雑誌 (ISSN:21869545)
巻号頁・発行日
vol.29, no.4, pp.322-325, 2012 (Released:2013-05-01)
参考文献数
13

症例は,甲状腺乳頭癌の38歳,女性。甲状腺癌(T4aN0M1,stageⅡ)の診断で,34歳7カ月時点に甲状腺全摘,気管合併切除(気管輪1-5,端々吻合),中心領域郭清術が施行された。術後,多発肺転移に対し内照射療法を計4回施行しているが,肺転移巣は徐々に増多,増大した。38歳4カ月時点で軽い上気道炎を契機に呼吸苦が出現した。入院の上全身管理を行ったが呼吸不全のため永眠された。甲状腺乳頭癌は,非常に予後が良いことで知られ,特に若年で発症した場合は更に高い治癒率のため本疾患で亡くなることは稀有である。また,本疾患は腫瘍増殖速度が非常に緩徐である,疾患特異的治療として内照射療法が有効である,などの他の悪性腫瘍とは異なる特徴がある。これら本来治療する上で利点と言える特性は,がん終末期においては反対にその対策を困難にする。今回,生命予後が予測できず対応に苦慮した症例を経験したので報告した。
著者
横井 忠郎 森 祐輔 橘 正剛 佐藤 伸也 山下 弘幸
出版者
日本内分泌外科学会・日本甲状腺外科学会
雑誌
日本内分泌・甲状腺外科学会雑誌 (ISSN:21869545)
巻号頁・発行日
vol.31, no.3, pp.197-201, 2014 (Released:2014-10-31)
参考文献数
22

古典的な原発性副甲状腺機能亢進症(PHPT)を日常診療で診ることは相対的に少なくなっており,むしろ無症候性で発見されることが増えている。さらには正カルシウム血症であることもしばしば認められる。これらの病態はPHPTの前駆あるいは初期像と考えられているが,結論は出ていない。正確な診断についてはPTH不適合分泌を見逃さないことや,ビタミンD不足を初めとする二次性副甲状腺機能亢進症の合併を除外することが大切である。治療に当たってはNIHガイドラインを参考にする施設が多いと思われるが,ガイドライン自体にも問題点が多い。ガイドライン上の手術適応に固執すると,適切な治療時期を逸することもあり,注意が必要である。
著者
貴田岡 正史
出版者
日本内分泌外科学会・日本甲状腺外科学会
雑誌
日本内分泌・甲状腺外科学会雑誌 (ISSN:21869545)
巻号頁・発行日
vol.34, no.1, pp.2-6, 2017 (Released:2017-04-28)
参考文献数
12

超音波の臨床医学への適応は和賀井ら先人の努力によりその基礎から臨床応用まで,日本が世界に先駆けて研究を進めてきた。その中で乳腺・甲状腺をはじめとする表在臓器は比較的早い時期から超音波の臨床的有用性の検討がなされてきた。甲状腺における超音波診断の意義は結節性病変の存在診断と良悪性の鑑別診断が優先されてきた。甲状腺結節の超音波診断基準策定はその生みの苦しみを経て,より完成度の高いものへと昇華され,さらに進化しつつある。甲状腺の超音波診断への国民の関心は極めて高く,血流評価やわが国における縦横比の豊富な症例数による評価,エラストグラフィの積極的な臨床応用とこれからやるべき課題は多い。
著者
小野田 尚佳 神森 眞 岡本 高宏 中島 範昭 伊藤 研一 宮崎 眞和 吉田 明
出版者
日本内分泌外科学会・日本甲状腺外科学会
雑誌
日本内分泌・甲状腺外科学会雑誌 (ISSN:21869545)
巻号頁・発行日
vol.33, no.2, pp.110-114, 2016 (Released:2016-07-28)
参考文献数
9

甲状腺乳頭癌(PTC)に対する放射性ヨウ素内用療法の現状を把握し,意義を見出すため,多施設共同の後ろ向き研究を行った。ʼ03~ʼ12年に初発のPTCに対し全摘術を受けた患者1,324例のデータを7施設から集積した。全摘,内用療法施行とも増加傾向にありʼ12年には全初発PTC手術例の60%,25%を越えた。内用療法は480例に施行され全摘例の36%に相当,M1,Stage ⅣB,ⅣC症例の2/3に施行されていた。疾患特異的生存率は内用療法施行群で有意に不良であった。予後リスクによって層別化すると内用療法施行により生命予後に差は認めなかったが,中間リスクの施行例は非施行例に比し術後診断の進行度が有意に高かった。本研究により内用療法の現状が明らかとなり,中間リスク患者での効果が示唆されたが,適応や治療法の問題点も確認され,内用療法の意義を見出すためにはさらなる症例集積研究が必要と考えられた。
著者
窪田 和雄
出版者
日本内分泌外科学会・日本甲状腺外科学会
雑誌
日本内分泌・甲状腺外科学会雑誌 (ISSN:21869545)
巻号頁・発行日
vol.32, no.2, pp.112-115, 2015 (Released:2015-09-02)
参考文献数
11

ソマトスタチン受容体に結合する標識オクトレオチドを用いたPET/CTおよびSPECT/CTは,膵・消化管の神経内分泌腫瘍(NET)の病巣診断・転移診断に有用である。また,ペプチド受容体放射性核種治療の適応判定や,オクトレオチド製剤の治療効果予測にも利用される。ソマトスタチン受容体イメージングがNETの高分化な特質を評価するのに対し,FDGPET/CTはNETの増殖や悪性度を評価するのに有用であり,相補的な機能画像情報を提供する。
著者
赤水 尚史
出版者
日本内分泌外科学会・日本甲状腺外科学会
雑誌
日本内分泌・甲状腺外科学会雑誌 (ISSN:21869545)
巻号頁・発行日
vol.30, no.2, pp.137-141, 2013 (Released:2013-08-30)
参考文献数
11
被引用文献数
1

バセドウ病の治療に関する調査が,1980年代後半に欧日米の各甲状腺学会で実施された。その中に同一患者に対する治療法選択のアンケートがあり,国際的異同が論じられた。最近,同様な調査が欧日米で再び実施された。本稿ではこれらの調査を紹介し,バセドウ病治療の多様性やその要因に関して論じる。それによって,同治療の理解が深まり,選択の最適化につながれば幸いである。
著者
河本 泉 今村 正之
出版者
日本内分泌外科学会・日本甲状腺外科学会
雑誌
日本内分泌・甲状腺外科学会雑誌 (ISSN:21869545)
巻号頁・発行日
vol.33, no.2, pp.97-100, 2016 (Released:2016-07-28)
参考文献数
13

本邦では2015年4月に「膵・消化管神経内分泌腫瘍(NET)診療ガイドライン 2015年第1版」が発刊された[1]。ガストリノーマの診断と治療に関してはCQ1-2「ガストリノーマをうたがう症状は何か?」,CQ3-2「ガストリノーマの手術適応と術式は?」,CQ4-2「十二指腸NETに対する内視鏡的治療の適応および推奨される手技は何か?」,CQ4-4「膵・消化管NETの内分泌症状に対して推奨される薬物療法は何か?」に記載されている。またガストリノーマは多発性内分泌腫瘍症1型(MEN1)に伴い発症することが多いこと,転移をきたすことが多く悪性度が高いことが知られており,ガイドラインにはMEN1に伴う膵・消化管NETの手術適応と術式,NET(G1/G2)に対して推奨される抗腫瘍薬についても記載されている。ガイドラインをもとにガストリノーマの診断と治療について解説を行う。
著者
福成 信博
出版者
日本内分泌外科学会・日本甲状腺外科学会
雑誌
日本内分泌・甲状腺外科学会雑誌 (ISSN:21869545)
巻号頁・発行日
vol.34, no.1, pp.1-1, 2017 (Released:2017-04-28)

甲状腺結節に対する超音波診断が,結節の検出および良性・悪性の鑑別においてFirst-Lineの検査法であることは異論のないところである。しかしながら,2000年頃よりフルデジタル化された表在臓器様高周波超音波機器の国際的な普及に伴い,超音波スクリーニングにより無症候性の低危険度微小乳頭癌が数多く検出される事態となった。甲状腺癌自体の死亡率は変わらないため,米国,韓国から過剰診断,過剰診療であると報告され,ATAガイドラインにおける大幅な改訂がなされた。このような状況のなかで,甲状腺超音波検査そのものを無用の長物とする過激な意見も聞くことがある。はたして,約20年前の触診ベースで行っていた甲状腺診療に戻るべきなのであろうか?わが国では,1970年代より積極的に超音波診断を臨床応用し,海外に先駆けて超音波ガイド下FNAやカラードプラ,エラストグラフィという技術を開発し,臨床に用いてきた。RI治療の制限もあり,不必要な甲状腺全摘を避け,甲状腺癌の生物学的特徴を考慮した加療方針が選択されてきた。更に多数例の臨床研究から微小乳頭癌に対する非手術・経過観察を世界に先駆けて発信してきたのもわが国であり,その基盤には詳細な甲状腺超音波診断と高い診断能を有するFNAの技術があったからに他ならない。本企画では,このようなわが国における甲状腺超音波検査の歴史を貴田岡正史先生に紐解いて頂き,FNAの適応とコツに関して,北川亘先生に解説をお願いした。また,諸外国では得ることの出来ない多数例の微小癌経過観察における超音波所見の特徴に関しても福島光浩先生から貴重な報告を頂けることとなった。乳頭癌と異なりFNAにて診断困難となることの多い濾胞性腫瘍に関する超音波上の知見,腫瘍内血流や組織弾性を加味した超音波診断の可能性について,多くの臨床例を経験されている村上司先生に解説をお願いした。福島原発事故後の小児甲状腺に対する超音波を用いた県民健康調査の結果およびその推移は,甲状腺疾患を専門とするものにとって未だ最大の懸案事項である。不幸な結果に終わらぬよう祈念するとともに,これまで得られなかった小児甲状腺超音波の特徴が解明されきており,鈴木眞一先生にそのご報告頂く。甲状腺結節の診断,そして治療方針決定の基盤となる超音波検査とFNAをもう一度振り返り,また将来への新たな展望が開けることを期待している。
著者
杉谷 巌 藤本 吉秀
出版者
日本内分泌外科学会・日本甲状腺外科学会
雑誌
日本内分泌・甲状腺外科学会雑誌 (ISSN:21869545)
巻号頁・発行日
vol.30, no.1, pp.18-22, 2013 (Released:2013-05-31)
参考文献数
9

一般的に予後の良い甲状腺乳頭癌に対しては可及的に甲状腺を温存する手術を行って甲状腺機能を維持し,骨密度低下の懸念もあるTSH抑制療法は積極的には行わないという治療方針は,日本では主流であったが,欧米のガイドラインとは相反する。われわれの方針の妥当性を立証するためにTSH抑制療法の乳頭癌に対する再発抑制効果についてのランダム化比較試験を行った。患者登録開始から13年を要したが,無再発生存率においてTSH抑制療法非施行群の成績は,施行群に比較して10%以上劣っていないことが証明され,5%以上劣っていないことが示された。また,ランダム化試験に並行してTSH抑制の骨密度に及ぼす影響についての前向き比較試験を施行した。その結果,とくに閉経後女性ではTSH抑制による骨密度低下が顕著となる傾向があることが示された。これらの研究を通じて気づいた,高位のエビデンスを得るための研究を日本から世界に発信するうえで必要なことについて述べる。
著者
野口 靖志
出版者
日本内分泌外科学会・日本甲状腺外科学会
雑誌
日本内分泌・甲状腺外科学会雑誌 (ISSN:21869545)
巻号頁・発行日
vol.32, no.4, pp.264-266, 2015 (Released:2016-03-04)
参考文献数
2

米国甲状腺学会の新しいガイドラインでは,ablationをriskの低い症例では推奨しないとされており,従来のようにriskを問わず,全ての甲状腺癌患者に全摘術を施行してablationを行う方針から大きな方向転換を示している。また,adjuvant therapyという新しい考え方も示されており,今後の更に変化を示そうとしている。この様なablationの考え方の変化と,我が国の現状,更には我が国とのヨード制限の差異についても解説し,今後,われわれに求められるevidenceについて述べる。
著者
菅間 博 岡本 高宏
出版者
日本内分泌外科学会・日本甲状腺外科学会
雑誌
日本内分泌・甲状腺外科学会雑誌 (ISSN:21869545)
巻号頁・発行日
vol.33, no.2, pp.65-65, 2016 (Released:2016-07-28)

甲状腺癌取扱い規約の初版の序によれば,1966年にUICC(国際対癌連合)のConference on Thyroid Cancerが契機となり甲状腺外科検討会が発足し,その後UICCのTNM分類ではあきたらず,もっと詳しい臨床所見の記載と病理組織学的な分類の統一を図ることが必要となり,「甲状腺癌取扱い規約」を作ることになったとある。1977年に初版が発刊されて以来,甲状腺外科検討会の発展と共に改訂が繰返され,2015年10月に甲状腺外科学会に移行してからは初めて,第7改訂版が発刊された。甲状腺癌取扱い規約は甲状腺癌の臨床記録事項と病理組織学的分類からなる。臨床記録事項は,手術前ならびに手術時の所見を記録する事項を標準化統一し,甲状腺癌の進行度を評価する病期(Stage)を定めるものである。また,2011年から開始されたNational Clinical Database(NCD)による全国登録の前提となる。今回の改訂では,UICC第7版(2009年)のTNM分類に準拠しつつ,これまでの取扱い規約の歴史を踏まえて妥当と思われる変更点が追加されている。甲状腺腫瘍の病理組織学的分類の世界標準はWHO分類で,2004年に第3版が刊行されてから10年以上が経過している。2005年の第6版甲状腺癌取扱い規約で,第3版のWHO分類に準拠して改訂がなされたが,乳頭癌の特殊型や低分化癌に関しては整合性が十分にとれていなかった。今回,これらの点が追加改訂されるとともに,より精確な甲状腺腫瘍の組織診断に資するように本文と図が大幅に刷新されている。さらに細胞診報告様式が,2007年の「米国国立癌研究所甲状腺穿刺吸引細胞診断学術会議」によりまとめられたべセスダシステムに沿って改訂されている。特集1では,甲状腺癌取扱い規約委員会委員長の岡本から第7版の甲状腺癌取扱い規約の臨床記録事項の変更点について,同規約病理委員会の各委員から病理組織学的分類について解説する。甲状腺癌取扱い規約が日本国内の医療施設において的確に運用され,わが国における甲状腺腫瘍診療の質向上に資するために,本稿が会員諸氏の理解の一助となれば幸いである。
著者
野口 仁志 内野 眞也 村上 司 山下 裕人 野口 志郎
出版者
日本内分泌外科学会・日本甲状腺外科学会
雑誌
日本内分泌・甲状腺外科学会雑誌 (ISSN:21869545)
巻号頁・発行日
vol.33, no.2, pp.128-134, 2016 (Released:2016-08-02)
参考文献数
5

甲状腺未分化癌は極めて予後不良な疾患であり,確立した治療法は今のところ存在しない。われわれは2006年からドキソルビシン(DXR)とシスプラチン(CDDP)を使用する化学療法にバルプロ酸を併用する方法を試行しており,手術と放射線治療を加えた集学的治療によって予後の改善に努めている。その結果として,手術から2年以上経過しても無再発生存している症例を3例経験したのでここに報告する。