著者
夏原 隆之 中山 雅雄 加藤 貴昭 永野 智久 吉田 拓矢 佐々木 亮太 浅井 武
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
体育学研究 (ISSN:04846710)
巻号頁・発行日
vol.60, no.1, pp.71-85, 2015 (Released:2015-06-13)
参考文献数
31
被引用文献数
4 3

Some of the mechanisms underlying superior performance in sports may be clarified by investigating the role of visual information in the execution of particular responses by expert athletes. The aim of this study was to examine how soccer players process visual information when executing a tactical pass in a 4 vs. 4 attacking play scenario. To identify the cognitive processes operating during task execution, we measured eye movement and correlated it with verbal reports from players. The subjects comprised 30 soccer players with differing proficiencies (15 “experts” and 15 “sub-experts”). 2 tests were carried out: a test to evaluate the level of passing skill, and a decision-making test to evaluate the reproducibility of tactical passing and the accuracy of passes aimed to specific locations. Eye movements were measured during the decision-making test. Furthermore, in each trial of the decision-making test, verbal reports were collected. These related to how and why participants decided to pass the ball to any particular player among the 4 attackers on screen and, in order to determine their best judgment, how they captured the play situation and what they paid attention to. The results revealed that for execution of the pass, the experts were significantly more proficient at passing accurately to the aimed location, and their passing judgment was more reproducible in comparison to the sub-experts, although both groups had a uniform level of passing skill in terms of pass execution. In addition, eye movement data obtained during pass execution confirmed that in the play observation phase, while experts maintained their line of sight on other objects, they also maintained a longer gaze on defensive players to identify gaps between them. Also in the ball approach phase, the experts maintained a longer gaze on the player who was judged to be the best choice for receiving an accurate pass. These observations suggest that the superior passing performance of expert soccer players is attributable to accurate and efficient extraction of visual information and utilizing it in the context of their accumulated knowledge base.
著者
加藤 貴昭 福田 忠彦
出版者
Japan Ergonomics Society
雑誌
人間工学 (ISSN:05494974)
巻号頁・発行日
vol.38, no.6, pp.333-340, 2002-12-15 (Released:2010-03-12)
参考文献数
19
被引用文献数
16 12

本研究では野球の打撃において, 打者が投手の投球動作から視覚情報を得る準備時間相に注目し, 熟練打者と非熟練打者の眼球運動から視覚探索活動における有効なストラテジーについて考察した. 特にライブ状況でのフィールド実験により, 実践的な場面における周辺視特性の活用について考察を行った. 熟練者グループとして大学野球部員, 非熟練者グループとして一般の大学生が実験に参加した. 被験者は実際に打席に立ち, 投手による投球を観察し, その際の眼球運動が計測された. その結果, 熟練者の視線配置分布は非熟練者のものと比べ狭い範囲に及んでいた. 特に熟練者は投球動作を予測して投球腕が振られるであろう位置にあらかじめ視線を固定させ, 投球腕の肘近辺を中心に視支点を置き, 網膜の周辺部分で投手像全体を捉えて, 投球動作から動的な情報を効率よく収集する体系的な視覚探索ストラテジーを用いていることが確認された.
著者
西山 勇毅 柿野 優衣 中 縁嗣 野田 悠加 羽柴 彩月 山田 佑亮 佐々木 航 大越 匡 中澤 仁 森 将輝 水鳥 寿思 塩田 琴美 永野 智久 東海林 祐子 加藤 貴昭
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.62, no.10, pp.1630-1643, 2021-10-15

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界的な感染拡大にともない,多くの大学ではキャンパス内での感染予防のために,キャンパスの封鎖とインターネット越しに授業を配信するオンライン授業が導入され,学生たちは自宅から授業に参加している.このような在宅中心の新しい生活様式は,感染予防効果が見込める一方で,運動不足による二次的な健康被害が懸念される.新しい生活様式における大学生の身体活動の実態,特に学生の属性や時間帯ごとの身体活動量とその内容を明らかにすることは,二次的な健康被害を予防するうえで必要不可欠である.そこで本研究では,日常生活中の身体活動データ(歩数と6種類の行動種別)を大学生が所有するスマートフォンを用いて自動収集し,大学生の身体活動量を明らかにする.身体活動データは,必修の体育授業を履修する大学1年生305名から10週間収集した.その結果,通学(7時から10時)や教室での授業,課外活動(11時から24時)の時間帯における歩数の減少と静止時間の長時間化が明らかになった.本結果は,新しい生活様式における大学生活が平日の身体活動量の低下を招く可能性を示唆する.
著者
西山 勇毅 加藤 貴昭 瀬崎 薫
雑誌
研究報告ユビキタスコンピューティングシステム(UBI) (ISSN:21888698)
巻号頁・発行日
vol.2023-UBI-78, no.10, pp.1-8, 2023-05-17

学生アスリートにとって心身のストレスとその回復状態を手軽に認識できることは,競技と学業生活を健康に過ごす上で非常に重要である.既存研究では,アンケート調査や血液検査,高性能な生体センサを用いて心身のストレス状態の計測が行われているが,計測負荷が大きく継続利用は難しい.そこで本研究では,市販のスマートフォン・ウェアラブルデバイスに搭載されたセンサを活用し,低負荷にアスリートのコンディションを検出するシステムを開発する.特に本稿では,アスリートのコンディション検知に向けて,データ収集基盤の設計と実装する.さらにデータ収集実験を実施し,収集データからコンディション検知に機構に向けた基礎的な調査を行う.
著者
加藤 貴昭 福田 忠彦
出版者
一般社団法人 日本人間工学会
雑誌
人間工学 (ISSN:05494974)
巻号頁・発行日
vol.38, no.6, pp.333-340, 2002
被引用文献数
12

本研究では野球の打撃において, 打者が投手の投球動作から視覚情報を得る準備時間相に注目し, 熟練打者と非熟練打者の眼球運動から視覚探索活動における有効なストラテジーについて考察した. 特にライブ状況でのフィールド実験により, 実践的な場面における周辺視特性の活用について考察を行った. 熟練者グループとして大学野球部員, 非熟練者グループとして一般の大学生が実験に参加した. 被験者は実際に打席に立ち, 投手による投球を観察し, その際の眼球運動が計測された. その結果, 熟練者の視線配置分布は非熟練者のものと比べ狭い範囲に及んでいた. 特に熟練者は投球動作を予測して投球腕が振られるであろう位置にあらかじめ視線を固定させ, 投球腕の肘近辺を中心に視支点を置き, 網膜の周辺部分で投手像全体を捉えて, 投球動作から動的な情報を効率よく収集する体系的な視覚探索ストラテジーを用いていることが確認された.
著者
夏原 隆之 加藤 貴昭 中山 雅雄 浅井 武
出版者
The Japan Journal of Coaching Studies
雑誌
コーチング学研究 (ISSN:21851646)
巻号頁・発行日
vol.31, no.1, pp.1-10, 2017-10-01 (Released:2019-03-01)
参考文献数
78
被引用文献数
1

Accurately judging a situation during soccer is one of the important factors for executing superior performance. In order to acquire decision making ability, in practice and instruction sessions, it is considered desirable to adapt scientific knowledge to coaches' rules of thumb and experiences. However, it has been pointed out that practice and instructions based on scientific evidence are hardly executed. Therefore, in this review, we aimed to examine the relationship between the perceptual-cognitive skills and coaching science related to decision making for the perceptual-cognitive skill research in soccer through an overview of the research results that have been clarified so far about each factor of pattern recognition, visual search behaviors, and anticipation that constitute perceptual-cognitive skills, and the knowledge that supports them. In addition, one of the important tasks in perceptual-cognitive skill research is acquiring perceptual-cognitive skills and developing effective coaching and training methods. Therefore, from the standpoint of motor learning research, we discuss future works on perceptual-cognitive skills of soccer, while exploring the relationship between acquisition of perceptual-cognitive skills and coaching science. It is suggested that the theoretical background clarified through this review would be useful for obtaining scientific knowledge about decision making in an environment with severe temporal and spatial constraints.
著者
加藤 貴昭
出版者
慶應義塾大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

本研究の主題は、主に野球の打撃動作に注目し、競技者の知覚スキルについて実験的検討を行うとともに、熟達化についてdeliberate practiceに関する調査を行うことにより、熟練したスキルを支えるメカニズムを検証することである。具体的には、蔽技術を用いた視覚刺激に対する打者の知覚スキル、打撃動作における知覚-行為カップリング、スキルの熟練度と練習の微細構造の関係について検討を行った。
著者
加藤 貴昭
出版者
慶應義塾大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2005

本年度(平成18年度)の研究目的は、各種スポーツ競技のライブ状況下における競技者の眼球運動測定データを蓄積すると共に、新たなデータ計測および解析方法について検討し、さらに熟練選手に共通する視覚探索パターンの解明を試みることである。本年度は野球競技における走者の盗塁時の測定、スキー競技におけるスキーヤーのスラローム時の測定、アイススケート競技におけるコーナリング、スピン時の測定を重点的に行った。特に昨年度に引き続き行った雪上でのアルペンスキー競技の実験においては、2台のハイビジョンカメラレコーダを用いて身体運動の映像を撮影し、眼球運動を測定するための専用ハードシェルリュックを作成した。身体運動計測、眼球運動計測共にキャリブレーション方法や撮影機器の準備には工夫を凝らし、これまで以上に詳細なデータを計測することが可能となった。このスキー実験の手法を基に、スケート競技においては実際の氷上のリンク上にて身体運動と眼球運動を計測し、スピードスケート競技者とショートトラックの競技者のコーナリング時における視線、および身体動作の制御方法について考察した。また、各実験において得られた知見をもとに、各種スポーツ競技場面における熟練選手の視覚探索活動を総括し、熟練選手共通の視覚探索パターンについて考察した。特に時間的な変化を伴う情報や空間の位置関係を把握するのに優れた特性を持つ視覚機能である周辺視システムを活用しているとの仮説に対する検証を行った。周辺視システムを活川するためのストラテジーとして視覚対象の中心付近に視支点(visual pivot)を定め、その結果として身体運動の安定、制御を巧みに行っていることが示唆された。このような眼球運動と身体運動のコーディネーションによって、熟練選手が持つスポーツ競技特有の視覚情報獲得スキルが成り立つことが考察できた。