著者
梅崎 修
出版者
デジタルアーカイブ学会
雑誌
デジタルアーカイブ学会誌 (ISSN:24329762)
巻号頁・発行日
vol.5, no.4, pp.232-235, 2021-10-01 (Released:2021-11-15)
参考文献数
3

本稿の目的は、2020年に釜石市内で開催した社会的記憶をテーマとしたアートプロジェクトを紹介し、オーラルヒストリーを利用したアートプロジェクトの可能性について考察することである。多くのオーラルヒストリーは歴史研究や歴史資料の作成・保存という目的のために行われるが、オーラヒストリーの可能性はもっと大きいと考えられる。オーラルヒストリーによるアートプロジェクトとは、人々が歴史に触れる歴史実践であり、多様な歴史意識を形成するものであった。このような歴史実践が、歴史資料に対する見方を変えることで歴史研究や歴史資料のアーカイブを支えていくと考えられる。
著者
久保田 彩乃
出版者
デジタルアーカイブ学会
雑誌
デジタルアーカイブ学会誌 (ISSN:24329762)
巻号頁・発行日
vol.5, no.4, pp.227-231, 2021-10-01 (Released:2021-11-15)
参考文献数
18

本稿では福島における3.11アーカイブの現状とその課題を整理する。そして、それに対して“福島をキーワードに持つ人々”の声を収録したラジオ番組「Voice of Fukushima」の活動事例を取り上げ、この取り組みが3.11アーカイブの中で現在どのような立ち位置にあるか、さらにその意義と今後の可能性について考察する。
著者
佐野 浩彬 三浦 伸也 前田 佐知子 池田 千春 千葉 洋平 臼田 裕一郎
出版者
デジタルアーカイブ学会
雑誌
デジタルアーカイブ学会誌 (ISSN:24329762)
巻号頁・発行日
vol.5, no.3, pp.203-207, 2021-07-01 (Released:2021-07-01)
参考文献数
20

災害発生時には様々な機関からインターネットを通じて数多くの災害・防災情報が発信されるとともに、時々刻々とその情報が変化し更新されていく。そのため、発信された災害・防災情報にはWebサイト上での記載がなくなり、情報そのもの自体が消失するなど、タイミングを逃すと取得できないものが出てくる。こうした災害・防災情報のデジタルアーカイブを行うことは、災害の動向を時系列で把握する上で重要である。本研究では2019年に発生した風水害を対象として、インターネット上の災害・防災情報の網羅的収集に関する実践事例を紹介し、そこで浮かび上がった課題を述べる。
著者
三宅 茜巳
出版者
デジタルアーカイブ学会
雑誌
デジタルアーカイブ学会誌 (ISSN:24329762)
巻号頁・発行日
vol.5, no.3, pp.198-202, 2021-07-01 (Released:2021-07-01)
参考文献数
19

我が国においては、全国紙のみならず地方紙のデジタル化も徐々に進んでおり、こうした地方紙のデジタルデータの活用における課題として注目されているのが教育利用である。そこで本研究では岐阜の郷土紙を発行する岐阜新聞社と連携し、創刊以来140年にわたって蓄積されてきた岐阜新聞のデジタルデータを活用して地域学習のための教材を作成した。結果、岐阜新聞社には記事以外にも地域学習の教材となる画像が数多く収蔵されていることが分かった。今後の課題は、岐阜新聞のデータベースを県内すべての学校で利用できる仕組みを作り、教育利用を進めていくことである。
著者
大井 将生 中川 亮 岑 天霞 Desislava Bankova ピーピョミッ 季高 駿士 趙 誼 朴 美煕 張 宇傑 飯塚 陽美 松井 晋 Steven Braun 渡邉 英徳
出版者
デジタルアーカイブ学会
雑誌
デジタルアーカイブ学会誌 (ISSN:24329762)
巻号頁・発行日
vol.5, no.2, pp.119-124, 2021-04-01 (Released:2021-06-01)
参考文献数
20

本調査の目的は、COVID-19禍における国内及び国外の地域に暮らす人々の生活意識を記録することである。そのための手法として、生活実態や意識をはかるアンケートを作成し、スノーボールサンプリング方式で国内外からデータを収集した。収集したデータに対してワードクラウド・グラフを用いて可視化を行い、回答全体の傾向を考察した。また、回答者数の多かった言語・地域については比較分析を行った。その結果、COVID-19の影響によって意識・考え方が「変化し続けている」と感じている回答者が多いことが明らかになった。また、政治及び情報元への信頼性に関するトピックにおいて、人々の意識・考え方に、回答者の居住地域や使用言語属性による差異があることが示唆された。
著者
持田 誠
出版者
デジタルアーカイブ学会
雑誌
デジタルアーカイブ学会誌 (ISSN:24329762)
巻号頁・発行日
vol.5, no.1, pp.47-52, 2021-01-12 (Released:2021-02-24)
参考文献数
6

新型コロナウイルス感染症が地域社会へ及ぼした影響を示す資料を「コロナ関係資料」と呼ぶ。コロナ関係資料の多くは、一過性の配付物や掲示物などのエフェメラであり、感染拡大の渦中にあるうちに収集しなければ、すぐに世の中から消え去ってしまう。これらは、感染症下で人々の暮らしを知る上で、有益な情報を与えてくれる歴史資料的な価値がある。いっぽう、コロナ社会を象徴する物としてマスクがある。浦幌町立博物館では、特に手づくりのマスクに着目した展覧会を開催した。コロナ関係資料の収集は、パンデミック下における資料収集と地域の記録化という博物館の使命のひとつであり、博物館資料論上の新しい課題ともいえる。
著者
五月女 賢司
出版者
デジタルアーカイブ学会
雑誌
デジタルアーカイブ学会誌 (ISSN:24329762)
巻号頁・発行日
vol.5, no.1, pp.53-55, 2021-01-12 (Released:2021-02-24)

吹田市立博物館では、新型コロナに関連する資料の収集を行っている。こうした資料は、次世代の人々が感染拡大の実態を知る上で貴重な歴史資料となる。同館ではまた、新型コロナに関連したミニ展示を開催した。収集資料の一部を展示することで、次なる収集につなげることとともに、コロナ禍が日本や地域社会に何をもたらしたのか、また私たちに何を託したのか、来館者一人一人が、これからの日本のあり方、みずからの生き方を考えるきっかけとしてもらうことを目的としていた。モノからコトへ、というように博物館の社会的役割が変化する時代の中で、モノとともに市民による新型コロナ体験の証言を収集・アーカイブする活動が重要となろう。
著者
呉宮 百合香 溝端 俊夫 及川 英貴 松尾 邦彦
出版者
デジタルアーカイブ学会
雑誌
デジタルアーカイブ学会誌 (ISSN:24329762)
巻号頁・発行日
vol.4, no.s1, pp.s45-s48, 2020 (Released:2020-10-09)
参考文献数
6

NPO法人ダンスアーカイヴ構想は、舞踏家大野一雄と大野慶人が創設した大野一雄舞踏研究所のアーカイヴ活動を引き継ぐために2016年に設立された。日本独自のダンス形式として海外で高く評価されている舞踏(Butoh)を中心に、広く日本洋舞史の資料を収集保存し、積極的な公開と活用を通じてダンスアーカイヴの社会的認知向上に取り組んでいる。また、公的機関に対するアーカイヴ設立の提言と並行して、現存するアーカイヴ間のネットワーク構築に取り組み、上演と同時に消失する舞踊芸術におけるアーカイヴのあり方を共に模索することを目指している。本発表では、今秋に試験版を公開する大野一雄デジタルアーカイヴを例に、ボトムアップ型の横断的アーカイヴ構築の提言を行う。
著者
大井 将生 渡邉 英徳
出版者
デジタルアーカイブ学会
雑誌
デジタルアーカイブ学会誌 (ISSN:24329762)
巻号頁・発行日
vol.4, no.s1, pp.s69-s72, 2020 (Released:2020-10-09)
参考文献数
25

本稿の目的は、初等中等教育におけるデジタルアーカイブを活用したハイブリッド型学習のあり方を提示することである。そのために、遠隔オンライン授業をめぐる社会的背景とこれまでの動向を整理し、遠隔オンライン授業の課題について議論する。本研究ではその課題を解決するための学習デザインとして、デジタルアーカイブを活用した遠隔オンデマンド型授業と対面授業の組み合わせによる、探究的キュレーション授業を提案する。デザインした授業で2020年4月より小学校と中学校で年度を通して授業実践を行い、児童生徒の認識変容を検証する。この手法により、学習指導要領で掲げられたICT・MLA資料の活用や探究的な学びを実現するとともに、休校という社会的要請が生じる感染症や災害等の不測の事態、地方と都市の教育格差、不登校による学習機会の喪失など、社会的諸課題の解決にも寄与することができると考える。